安全保障関連法案の改正をめぐって与野党の攻防が続いている衆院安全法制特別委員会で、中谷元防衛相が「現在の憲法を、いかにこの法案に適応させていけばいいのか、という議論を踏まえて閣議決定を行なった」という驚きの発言を繰り広げたことで話題を呼んでいる。
どうやら中谷防衛相としては、「安保関連法案が違憲かどうか」を問題にするのではなく、「憲法を法案に適応させていく」つもりなのだ。
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憲法学者が「違憲」
すでに伝えているように、安全保障関連法案の衆院憲法審査会では、自民党ら与野党が推薦した３人の憲法学者がいずれも、違憲であるという見解を示したことで与党は対応に追われている。
これに対して、自民党・高村正彦副総裁が「憲法学者はどうしても憲法９条２項の字面に拘泥する」と反発するなど、ワケが分からない政府が火消しに追われる事態となっている。
しかしこうした中で中谷防衛相が、そもそも「違憲かどうか」ではなく「憲法をいかに法案に沿わせて解釈するか」を問題にするべきだと考えていることが明らかとなり、ますます議論は紛糾しそうだ。
そもそも立憲主義とは
中谷防衛相の発言は、安倍内閣が立憲主義の概念をほとんど理解していないことを改めて露呈させた。言うまでもなく、憲法は国家の最高法規であり、そもそも国家の統治の根本的な法規範となるもの。
「法案に合わせて憲法を解釈するべき」という見解は、立憲主義の原則を全く無視したものとなる。もし法案に合わせて憲法の解釈がコロコロ変わるのであれば、時の政府によって、国民の権利が侵害される事態が容易に起こり得る。
この意味で、中谷防衛相の認識は大いに問い直されるべきで、今後の議論に注目が集まる。