住みたい街2015
2015年06月08日(月)

【物件選びの知恵007】 都市に眠る時限爆弾。住宅市場の「2022年問題」で空き家大幅増加懸念~羽生市の先例から学ぶこととは

長嶋修(不動産コンサルタント)

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全国の市街地にはいまだ96万戸、東京都には26万戸分もの住宅用地が眠っており、これらの多くが東京オリンピック後の2022年に一斉に市場放出される可能性がある。そこに新築マンションや一戸建てが建設されれば、すでに全国で820万戸ある空き家が大幅に増大する可能性が高い。これが住宅市場の「2022年問題」である。

※画像:川崎市ホームページより

2022年、空き家がさらに急増する!?

1974年に公布された生産緑地法では,市街化区域内の農地の宅地化を促す目的で、大都市圏の一部自治体では農地の「宅地並み課税」が行われ、これにより都市近郊の農地はそのほとんどが宅地化されることになった。

1992年の同法改正によって一部自治体が指定した土地については、固定資産税は農地並みに軽減され、また相続税の納税猶予が受けられる「生産緑地制度」が適用された。この場合生産緑地の所有者は建築物を建てるなどの行為が制限され、農地としての管理が求められる。「生産緑地」とは原則全て、住宅が建設できる市街化区域内にある。

生産緑地制度が適用されたのは東京23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市、その他整備法に規定する一部地域など。「平成25年都市計画現況調査」(国土交通省)によれば、2013年3月時点の生産緑地は全国で13,859ヘクタール(約4,192万坪)、東京都に3,388ヘクタール(1,024万坪)、23区内には451ヘクタール(136万坪)存在する。

同法の適用は1992年で、期限は30年後の2022年だ。この期限を迎えた時、または所有者が病気などで農業に従事できなくなった、死亡などの場合に、所有者は市区町村の農業員会に土地の買取り申し出を行えるが、市区町村が買い取らなかったり、生産緑地として買う者がいない場合にはこの生産緑地指定が解除される。

これまでの実績では、予算不足などの理由から、自治体による買取りの実績はほとんどみられない。

そうなると固定資産税が跳ね上がるため所有者は土地を維持できず、市場に売りに出すだろう。こういったまとまった土地を仕入れるメインプレイヤーは建売住宅ビルダー、立地が良ければマンションデベロッパーになろう。

固定資産税や相続税評価額が下がるとして賃貸住宅建設が進む可能性もある。事実、多くの建設会社が2022年の生産緑地指定解除を絶好の商機として虎視眈々と狙っている。

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