社説:視点・未成年の飲酒 防止の機運を高めたい

毎日新聞 2015年06月07日 02時30分

 アルコールを買う時、「20歳以上」のパネルをタッチするコンビニが増えた。未成年の飲酒を防ぐ環境はひと昔前に比べ、かなり整ったように見える。だがまだやるべきことはある。

 川崎市の中1男子殺害事件でリーダー格とされる18歳の少年は事件直前に酒を飲んでいた。日ごろから飲酒を繰り返していたという。

 横浜市でも男子高校生ら4人が川の護岸で一緒に酒を飲み、寝込んだ17歳の専門学校生を川に落としたりする暴行を繰り返したとして逮捕された。専門学校生は死亡した。

 4人は中学の同級生で、現場近くのコンビニで焼酎やビールを買い、ゲームに負けると罰として一気飲みをする遊びをしていたという。

 未成年の場合、大量に飲んで急性アルコール中毒に陥りやすい。アルコール自体も成長期の身体への悪影響が大きい。未成年のうちに飲み始めると、成人後にアルコール依存症になりやすいといわれる。

 また過度の飲酒は人の判断能力を低下させ、暴力を起こしやすくする。海外の研究などによると、未成年の場合、成人に比べて事件や事故につながる可能性が高い。

 2000年以降、法律改正により、未成年と知りながら酒類を販売・提供した時の罰則が強化された。客の年齢確認も義務づけられた。ビール酒造組合も啓発活動をしている。

 成果は出ている。厚生労働省の委託を受けた専門家の調査によると、高校の男子生徒で月に1回でも飲酒する割合は、00年度の約5割から12年度には2割以下に減った。とはいえ、中高生で月に1回でも飲酒するのは推計で約75万人、1週間以内での飲酒は約15万人に上る。

 コンビニで販売禁止が徹底されているとはまだ言い難い。年齢確認をすると、怒った客が暴言を吐くことが少なくない。中には店員が暴行を受けることもあるため、トラブルを避けようと見過ごす事情もあるようだ。

 ノンアルコール飲料についても気になる調査結果がある。飲酒する中高生で、ノンアルコールを飲んだことがある人が、ない人より4倍以上高かった。人によってノンアルコールが飲酒への入り口になっている可能性がある。

 厚労省は22年までに未成年の飲酒をゼロにすることを目指すという。大学を含む教育現場や警察、業界がいっそうの連携を図り、機運を盛り上げる必要がある。未成年の飲酒に社会が寛容であってはならない。

 ことは命にかかわる。【論説委員・花谷寿人】

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