こんにちは、パリッコです。
今回も調査という名の飲み歩き活動にいそしんでいきたいと思います。
さて、日本国民のほとんどの方にとってあまり馴染みがないかとは思うのですが、東京都西東京市に「田無(たなし)」という街があります。新宿から川越までを結ぶ「西武新宿線」上にあり、この路線の中ではわりと大きな駅です。僕はここから遠くない練馬区の外れで生まれ育ったもので、子供の頃からその名は知っていて、また大人になって気付いた、絶妙に寂れたような味わいのある地方都市感にも好感を抱いており、用もないのに飲みに行ったりするお気に入りの街のひとつです。
この田無の街に、最近知って大好きになった「一国」という焼きとん屋さんがあります。何を頼んでも安くて美味しく、いつも常連さんでにぎわう大衆的な雰囲気が素敵で、そして何より、店員さんたちの真面目で明るい人柄が素晴らしいんです!
そして、ここの煮込みがちょっとおもしろい。どんな風におもしろいかというと、それは今回の記事を読んでいただければわかるという寸法です。
まぁ、記事タイトルですでにネタバレしてるような気がしないでもないですが……。
隣の客とも気軽に話せるアットホームな店「一国」
というわけで今回も、「メシ通」スタッフのM氏と2人でお店へと向かいます。
田無駅の南口を降りるとすぐ目の前にある、こんなビル1階の飲食街。
こういう路地に無性にワクワクする僕。
ズンズンと入ってゆくと、
一番奥にあるのが「一国」。
通路にまでテーブルが並び、いかにもアジア的なパワフルさを感じます。
お店は連日大盛況。
オープンからまだ2年と少しだそうですが、完全に地元密着の人気店となっていますね。
以前、必ず開店時間と同時に来るという常連のおじさまと隣り合わせになり、少し話をさせてもらったんですが、田無にはこういった気楽でアットホームな店がそんなに多くないらしく、ここができて本当にみんな喜んでいるんだそうです。
それを聞いただけで僕もここを大好きになっちゃいましたよね。
だってお客さんがそんな風に語るというのが、何よりの名店の証拠じゃないですか。
レギュラーメニューはこんな感じ。
加えて、日々変化するボードメニューが見逃せない。
頼もしい店員さんたち。
大将、店員さんともにみな若く、テキパキと働く様子を眺めているだけでも酒が進んでしまいます。
では、まずはやっぱりこちら、
生ビール(530円)で、乾杯! ……っくぅ~~~!
吹き抜ける風に夏の空気が混じりだすこの季節、オープンエアーの居酒屋でゴクゴクと飲む1杯目のビールのうまさ、何物にも代えられません!
外見はおでんだが、口の中で煮込みに化ける!
落ち着いたところで本題に入りましょう。
先ほど「煮込みがおもしろい」とお伝えしましたよね。
店員さんに「煮込みを全部盛りでお願いします!」とお願いしてみましょう。
ほどなくしてやってくるのが、
これら!
左はわかるでしょう? いわゆるオーソドックスな豚のモツ煮込みです。
ちょっとかきわけてみます。
焼きとん屋さんらしく、様々な部位がゴロゴロッと入ったモツ。その下には大ぶりの豆腐が隠れていました。
各種モツの旨味が醤油ベースのスープに溶け出し、臭みは一切感じず、間違いなく絶品の煮込みです!
……で、こっちは?
おでんです。
どう見てもおでんです。
ただしここで「おでんなんか頼んでないよ!」とかクレームを付けたりしないで下さいね。
実はこれらの具、全て厨房の真ん中にある、同じ大きな煮込み鍋から取り出されたものなんです! つまり、煮込みの鍋でモツと一緒に煮られた、煮込みの味が染み込んだおでんダネというわけ。
元々はお客さんからのリクエストだったそうですが、それが定番化し、種類も増え、今や常に鍋の中で出番を待つこの店の名物となっているんですね。
で、実際うまいんでしょうか?
それを今からレポートしてみようと思います。
この断面。
僕、ちくわぶ大好きなんですよね。
トロトロに煮込まれ、しっかりとダシの色に染まった外側。
練った小麦粉の頑固さからか、ほんの一層だけ白さを保つアルデンテな内側。
ちくわぶ好きから見てもパーフェクトな仕上がりです。
口に運ぶと、うん、とろけるような口当たりのあとに心地良い弾力があり、すごく良い食感。
それからじんわりと染み込んだダシの味が広がるんですが、これがいわゆるおでんダシとは全く別物の、動物的な力強さと濃厚な甘じょっぱさを合わせ持つ煮込みのそれ。
この見事な化けっぷり、一瞬不思議な感じがしますが、すぐに頭が状況を理解し、幸せな味として認識します。
う、うまい! これはこれで、すっごくうまい!
大根もこの有様。
大根、そしてこんにゃくに関しては、先ほどのちくわぶの感想を元に、みなさん各自で想像してみてください。
……ね? 最高でしょ?
ところで我々がいるのはカウンター席。
他のお客さんたちのためにも、空いたお皿はなるべく早く片付けてもらって快適にスペース使う必要がありますので、
一切れ残った大根を煮込みの皿に移動。
こんなことしたって、全然ルール違反じゃないんですよ。
だって同じ味なんだもん!
ただし大根をモツ煮の皿に移動させる時、何か悪いことをしているような、謎の罪悪感はどうしても感じてしまうんですが。
あ、ちなみに煮込みメニューにはもうひとつ、
煮込み玉子もあるんですが、これはまぁどっちに入っててもおかしくない食材であるため、違和感なしにうまかったです。
というわけで結論としましては、煮込み味のおでん、煮込みともおでんとも違うけど、そんなことどうでもよくなるくらいうまい! といったところでしょうか。
境界線が判明した後はひたすら絶品モツ焼&サワーを堪能!
メシ通スタッフM氏「いや~パリッコさん、ネタ的にもおもしろいし、すごく美味しかったし、これは最高の煮込みですね!」
パリッコ「ですよね! 良かったっす~」
M氏「じゃあ今回はこれで、無事取材終了ということで!」
パリッコ「あ! ち、ちょっと待ってください!」
今日はまだ煮込みしかご紹介してませんよね。
しかし冒頭でもお伝えした通り、こちらは焼きとん屋さん。
しかもご主人、実は野方に本店を構える超名店「秋元屋」で修行された方。
パリッコ「M氏、ここは念のため、少しだけ他のメニューにも触れておいた方がいいんじゃないですか? ほら、予備ってやつですよ、予備!」
M氏「う~ん、それもそうですね。じゃあ少しだけ」
パリッコ「すいませ~ん、カシラアブラを味噌で2本お願いしま~す!」
カシラアブラ串 / 味噌(1本100円)。
豚のカシラ(頭)の近くの脂身の多い部分。
サクッとした食感とともに脂の旨味が広がり、そこにこんがりと焦げ目の付いた秋元屋直伝の味噌ダレの濃厚なコクが加わり、文句なしの絶品!
続いて……
チレ(脾臓)とカシラ(各100円)も味噌ダレで。
それぞれに食感と味わいが異なり、みんな違って、みんないい。
M氏「いや~うまい。確かにこれは味わっておくべきでしたね! それでは今度こそ取材終了ということで……」
パリッコ「M氏! ここはシャリ金ホッピーも飲めるんですよ! こういう大衆酒場ならではの酒は、念のため紹介しておいた方がいいんじゃないですか!? ほら、予備で!」
M氏「え、あ、はぁ……」
シャリキンホッピーセット。
関東の大衆酒場を中心に人気の「ホッピー」は、三重県は宮崎本店の「キンミヤ焼酎」で割るのが定番となっています。
シャリキンとは、
このように、そのキンミヤ焼酎をシャーベット状に凍らせたもの。シャリシャリのキンミヤですね。
これをホッピーで割って飲むのですが、氷を入れる必要がないので薄まることがなく、さらにいつまでも冷たさがキープされるという合理的かつ爽快な飲み方なんです。
あまりにも爽やかなので、ついつい飲み過ぎてしまうという危険性もあるわけですが……。
パリッコ「M氏、ホッピーを頼んだら今度はつまみが足りなくなってしまいました! ここは何か、M氏が気になるものなんかも予備で頼んでおきませんか?」
M氏「う~ん、それじゃあ強いて言えば……」
ハツのスタミナ漬け(180円)。
パリッコ「うお、渋いっすね! ナイスチョイスです!」
ボイルした豚のハツ(心臓)を酸味のあるタレで和えた冷製のおつまみ。
さっぱりとしてまたお酒が進んでしまいます。
パリッコ「こりゃあ僕も負けてられないっすね! では予備の予備で……」
チレユッケ(350円)。
ユッケといっても豚の新鮮なチレであり、提供が禁止されているものではないのでご心配なく。
プリプリ、クニュクニュとした独特の歯応えと、ごま油と塩による鉄板の味付けを卵黄がまろやかにまとめます。
パリッコ「うわ、今度はなぜか飲み物が足りなくなってしまいました! なかなかバランスが難しいなぁ。う~む、ここはやむを得ずで……」
バイスサワー(380円)。
こちらも大衆酒場の定番、赤じそ風味のサワー飲料。爽やかな酸味と美しいピンク色が素敵です。
パリッコ「それにしてもM氏、さっきのスタミナ漬けのチョイスはお見事でしたね~。良かったらもっとその華麗なチョイスを見せてくれませんか!? どうせ予備にも使えることだし」
M氏「そう、なんですかね……」
マカロニサラダ(250円)。
パリッコ「うわ、おっかねー! 完全にノーチェックでしたが、これはすごい! なかなかお目にかかれないマカロニサラダですよ!」
こっくりと濃厚な味付けのマカロニに、粉チーズと黒胡椒がワンランク上の大人の装いを加えています。
パリッコ「M氏、今気付いたんですが、ここ一国という名店において、煮込みとおでんの境界なんて微々たる問題でしたね。ここからはもう、さらなる予備(という名の単に飲み食いしたいもの)をただただ堪能しましょう!」
M氏「……」
ホイス。酎ハイの元祖といわれるホイスサワーもここではいただけます。
一般的な酎ハイよりさらに爽やかな飲み口で、どこまでも飲めてしまいそう!
半焼きハツ / 半焼きレバー(各100円)。
やっぱり半焼き、いわゆるレアの串も味わっておかないと。
プリプリで柔らか~いハツ、とろけるような甘味のレバー、最高です。
カキの肉巻き(280円)。
焼きとん以外の串も楽しめるのがまたいいんすよね。
久々に感じる海の味、ものすごく濃密な旨味です!
豆乳割り(380円)。
パリッコ「すんません、ちょっといったん豆乳の優しさで胃をいたわらせて下さい! まぁ酒ではありますが」
M氏「(なら頼まなければいいのでは……)」※心の声(想像)
パリッコ「よし、これで大丈夫です。じゃあ最後は、男らしく日本酒で〆ることにします!」
M氏「……」
菊正宗 一合(300円)。
パリッコ「それと、もう胃に余裕はないんですが、念のためもう一品だけ頼んでおきましょう。すいませ~ん、店員さん! 予備で菜花のごま和えを!」
菜花のごま和え(250円)。
すごい、こんなに満腹なのにまだうまい! 甘過ぎない味付けが酒のつまみにぴったりだ!
……はい、というわけでこれ以上は本当に何も飲めないし食べられません。
当初の目的を忘れ、取材に乗じてただただ思いっきり飲み食いしてしまいました。
というか、あきらかに飲みすぎですね。
ですが、ひとつだけ言い訳をさせてもらえれば、一国の料理の美味しさ、そして雰囲気の良さによって、現場ではそうせざるを得なかったんです!
読者のみなさまも、もしも西東京方面にご用の際は、是非足を運んでみて下さいね。
あ、ちなみにこちらのお店、別に男性店員さんばかりのお店というわけではありません。
「きゃ~、写真恥ずかしい~」とのことだったのでイラストで!
お店情報
一国(いっこく)
住所: 東京都西東京市南町4-1-1
電話番号:非公開
営業時間:17:00~23:00
定休日:月曜日
書いた人:パリッコ
DJ/トラックメイカー/漫画家/居酒屋ライター/他。FUNKY DANCE MUSIC LABEL「LBT」代表。酒好きが高じ、雑誌、Webなどの媒体で居酒屋に関する記事を多数執筆中。