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「13兆円規模」インフラ投資と日本の財政問題

2015年06月07日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

安倍晋三首相が、今後5年間でアジアのインフラに日本が約13兆円を投じる旨を発言した。ADB(アジア開発銀行)やODA(政府開発援助)を通じた融資などを行うようだ。

この安倍首相の発言について、AIIB(アジアインフラ投資銀行)が台頭する中でADBの存在感を高める狙いがあるとの解説がある一方、現在の日本の財政難を理由にそのような余裕はないと牽制する向きもある。一体、どうなのだろうか。

まず、日本の財政状況はどうなのか。財政赤字がひどいとマスコミは言うが、アベノミクス効果で財政は急速に好転しているのが実情だ。しかし、政府・自民党も「まだまだ財政再建は必要」と主張し、中期財政試算にもとづく財政再建計画を作ろうとしている。
この政府による中期財政試算が曲者だ。

現時点の中期財政試算では、2020年度の基礎的財政収支は▲9・4兆円、GDP比▲1・6%とされている。このようなシミュレーションでは税収の見積もりが重要になってくるが、そのカギになるのは、税収の弾性値(名目経済成長率の伸び率に対する税収の伸び率)である。

税収の弾性値は、中期財政試算では、1を少し上回る程度に設定されている。実際には、景気の回復局面では税収弾性値は3~4程度になって、景気が巡航速度に達するにつれて低くなり、1を少し上回る程度に近くなる。このため、景気回復局面での税収の伸びは現実値を下回ることがしばしばである。

この点を指摘すると、財務省は税収見積もりは保守的に行うべきであり、現実のデータを無視しようと主張する。こうした口車にのる政治家も多いのは情けない。保守的に見積もるのは、財務省の戦略としては正しいが、それで増税を決めるのは日本経済全体のマクロ経済政策としてはまずい。

また、中期財政試算において、日本のCPI(消費者物価指数)上昇率とGDPデフレータには1%の差があるという前提も問題だ。'81年~'13年のデータがある先進国28ヵ国で、「CPI総合-デフレータ上昇率」をみると、平均で0・09%である。

こうした税収弾性値とGDPデフレータを「まともな数値」にして計算すると、'20~'23年度くらいで財政再建はできてしまう。要は、日本の財政状況は悪くない。

しかも、アベノミクス以前には、100兆円の資金を投入して外為特会によって為替介入していたが、もはや金融政策をしっかり行えば外為介入は不要になる。そのうえ、アベノミクスによる円安で、外為資金では20兆円も差益がでている。

安倍首相のアジアインフラ投資は、この外為資金と大いに関係していると見られる。つまり、外為資金100兆円の一部を使えば、アジアインフラ投資の資金は簡単にまかなえる。

さらに、そうすれば外為差益20兆円も引き出せる。外為資金100兆円を活用すれば、新たな国民負担なしでアジアインフラ投資への資金投下も可能だし、その上、これまでの差益を国民に還元することもできる。これは、アベノミクスの成果をよりわかりやすい形で、国民に還元できる話だ。

ついでに、日本は財政危機という戯言は、葬り去って欲しいものだ。

『週刊現代』2015年6月13日号より


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