Updated: Tokyo  2015/06/07 09:01  |  New York  2015/06/06 20:01  |  London  2015/06/07 01:01
 

自民・稲田氏:社会保障の世代間格差は「不正義」-改革に意欲 (1)

Share Google チェック

  (ブルームバーグ):自民党の稲田朋美政調会長は、財政再建に関連し、多額の借金で将来世代に負担を先送りして現在の社会保障制度を維持するやり方は給付と負担の世代間格差を招き、「不正義」だとして、歳出改革の中心課題として取り組む必要があるとの認識を示した。

3月31日のブルームバーグのインタビューで語った。稲田氏は「財政再建の問題で一番大きなことは、将来世代との格差。将来世代にまわす大きな借金でいまの社会保障を賄い続けるというのは世代間における不公正であり不正義」と語った。効率化や無駄を排除していくなどの「仕組みを作る」ことで、「切って切ってした、ということではなくて、結果的に歳出改革ができるということになっていきたい」とも述べた。

安倍晋三政権は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する財政健全化目標を達成するための財政再建計画を夏までに策定する。稲田氏は自民党の「財政再建に関する特命委員会」の委員長として、同計画への党としての提言をまとめる立場にある。

歳入改革

内閣府は名目成長率が3%の高成長でも国と地方の基礎的財政収支は20年度で9.4兆円の赤字になると試算している。経済同友会は1月、17年4月に10%への引き上げを予定している消費税率はその後も17%まで段階的に引き上げていくよう求める提言を発表している。

稲田氏は同友会の提言に関して「2%、3%上げるだけでも相当、大変な中で、ここからいきなり17%と言われてもなかなか現実的ではない」と慎重な立場を示した。今回策定する財政再建計画は「こういう税収をということよりも中心は歳出改革になっていくのではないか」と語った。

円安

第2次安倍政権が発足した12年12月26日時点で1ドル=85円台だったドル・円相場は、金融緩和などの影響で急速に円安が進み、3月10日には1ドル=122年03銭と07年7月以来の円安値を記録した。1日午後6時現在は120円台で推移している。

稲田氏は足元の円安水準について、「安倍政権になる前の危機的な円高から脱した。日本が空洞化している状況は食い止められた」と評価した。一方、中小企業は輸入資材の高騰で打撃を受けているとして、経済対策などの目配りが必要と指摘。「今の円安を前提としてさまざまな政策を打っていく」と話した。

地方経済に関しては「民主党政権に比べたら仕事もあるし、雇用もある。ただ、実感はないということも事実なので実感をどう届けていくかということがこれからの課題になる」と語った。

消費者物価について稲田氏は、「着実にデフレから脱却しているし、安倍政権の金融政策は着実に成果を挙げている」と説明。黒田東彦日銀総裁が示している15年度を中心とする期間に上昇率が2%に達するとの見通しは「決して不可能ではない」と述べた。

首相候補

稲田氏は1959年生まれの56歳。早稲田大学法学部卒業後、弁護士活動を経て、郵政民営化が争点となった05年の衆院選に福井1区から出馬し、初当選。その後も連続当選し、現在4期目。12年12月の第2次安倍政権発足時には当選3回で行政改革担当相として入閣し、14年9月には自民党の政調会長に抜擢された。

初の女性初首相候補の1人として名前を挙げられることもある。インタビューで稲田氏は「政治家なら、みんな最終目標として総理を目指している」と発言。自身も目指す気持ちはあるかとの問いには、「目標は高く持って、いま自分が与えられる仕事を着実にやっていくことに尽きる」と述べた。

秋の自民党総裁選については、安倍首相の再選を支持すると明言したうえで、他の候補者が出馬して選挙を戦うことについても「安倍首相とは違う考え方を提示することは自民党の活性化にもつながる」と語った。

「私は日本を守りたい 家族、ふるさと、わが祖国」(PHP研究所)などの著書を出版している保守派の論客でもあり、自民党内に設置した「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」にも携わっている。

稲田氏は同委が「連休が明けて、5月中くらい」に提言をまとめるとの見通しを明らかにした。慰安婦問題などについて触れる考えを示したが、安倍首相の戦後70年談話への意見を盛り込むことは「特に考えているわけではない」と述べた。

政調会長

党内調整を担う政調会長の仕事について、「当選回数を重ねていて、みんなから偉いと思われていないと調整なんてできない。私はほとんど調整はしていないし、自分の好きなことを言っているので怒られることも多い」と語った。

それでも行革担当相として公務員制度改革、政調会長としては自民党内で抵抗も強かった農協改革などの課題に取り組んできた。稲田氏は「怖いもの知らずもあるし、しがらみもなくて、むしろやりたいことをできる環境にあった」と振り返る。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 高橋舞子 mtakahashi61@bloomberg.net;東京 James Mayger jmayger@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Andrew Davis abdavis@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 広川高史, 浅井秀樹,淡路毅

更新日時: 2015/04/01 18:09 JST

 
 
 
最新のマーケット情報を携帯でご覧いただけます。ぜひご利用ください。