社説:自転車の講習 マナー向上に生かそう

毎日新聞 2015年06月06日 02時30分

 危険な交通違反を繰り返した自転車運転者に講習の受講を義務付ける改正道路交通法が施行された。

 自転車は子どもからお年寄りまで手軽に乗れる。環境にもやさしく、特に東日本大震災後は都市部を中心に利用者が増えているといわれる。

 一方で、免許制度がないため、安全教育を受ける機会が限られる。スピードを落とさずに歩道を通行するなどルール違反が目立つ。法の施行を、自転車運転者の安全への意識向上につなげたい。

 改正法では、信号無視や歩道上の徐行違反、酒酔い運転など14類型を危険行為と規定する。14歳以上の人が3年以内に2回以上、危険行為で摘発されれば、有料講習を受けなければならない。講習を受けないと、5万円以下の罰金が科される。

 スマートフォンを利用しながら自転車を運転し、事故を起こせば安全運転義務違反で、危険行為と認定される可能性がある。

 自転車事故は、全交通事故の約2割を占める。交通事故に関与した自転車運転者の3分の2には何らかのルール違反があるという。

 道交法で軽車両に分類される自転車は、原則として車道の左側を走らなければならない。道路標識で指定されていない歩道を例外的に走っていい年齢は「13歳未満か70歳以上」だ。だが、そうした初歩的なルールさえ十分に守られていない。

 その結果、歩道上での歩行者との衝突事故が増えている。死亡させたり、大けがをさせたりした場合、数千万円の高額賠償が命じられる司法判断も定着してきた。運転者が未成年でも例外ではない。

 安全運転を心がけることと同時に、万が一に備えて自転車保険に入っておくことが被害者救済の観点からも必要だ。未成年の子どもを持つ親は、特に目配りをしたい。

 小中高校では、警察と連携しての交通安全教室が盛んだが、その裾野を広げるべきだ。大学や企業が通学や通勤での自転車利用者を対象に教室を開く事例も増えてきた。地域や警察は、交通教育を受ける機会が少ない高齢者対象の自転車教室を積極的に開いてほしい。

 違法駐車を減らし、自転車が安心して車道走行できる環境を作ることも大切だ。欧州の自転車先進国に比べて遅れている自転車専用の走行レーン設置を進めてもらいたい。

 警察庁は2011年、車道の端に設置されているパーキングメーターのうち、利用率の低いものを撤去し、自転車レーンを確保するよう都道府県警察に通達を出し促した。線を引くだけでレーンを確保できる道路も少なくない。地域の交通事情に即した対応が求められる。

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