十勝毎日新聞社ニュース
本、本、本…もう満杯 十勝の図書館“危機”間近
- 2015年6月5日 13時50分
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帯広市図書館の閉架書庫。書棚には本や歴史資料などが所狭しと並ぶ
【十勝】膨大な資料がそろい、人々の好奇心や探究心を満たしてくれる図書館。近年は場所を取らない電子書籍も出てきたが、「原本」での保存が欠かせない図書館では本が増え続け、その収蔵スペース確保が大きな悩みだ。十勝管内の多くの市町村立図書館でも保管能力は限界に達しつつあり、利用増などに努めて“危機”をしのいでいる。
■帯広は4~5年
「あと4~5年で満杯になる見通し。何か見直しを考えないと」。管内図書館で最も規模が大きい帯広市図書館。想定上の収蔵能力は開架・閉架図書合わせて約50万冊だが、所蔵冊数は50万6000冊(2015年3月末現在)とそれを上回る。同じ種類で数冊ある本などは、年1回のリサイクル市で市民に無料提供するなど「除籍」に努めているが、それでも年間約1万2000冊のペースで増え続けているという。
町村の図書館も同様。十勝毎日新聞社の調べによると、新得と浦幌を除く管内16町村で所蔵冊数が収蔵能力と同じ、もしくはそれを上回る「飽和状態」にある。スペース確保の対策としては、足寄町が町民センターの改修に伴い図書室の拡大(開架図書で3~4万冊)を計画する他、池田は隣接する町総合体育館の空き倉庫を書庫として活用したい考え。ただ、こうしたケースはまれで、多くは費用面が壁となり、増築計画の見通しはつかないのが現状だ。
■貸し出しに工夫
現時点で“打開策”の1つは、いかに多くの本を借りてもらうか。各図書館はその地域ならではの資料充実や工夫で、魅力ある図書館づくりに努める。
例えば、サンタの町で知られる広尾町は、サンタクロースやクリスマスに関係する本を多くそろえる。他にも、鹿追町はジオパーク関連、清水町は酪農や「第九の町」としての関連資料を重点的に所蔵。帯広では図書館に来られない人のために、移動図書館バス「なうまん号」の運行や、各コミセンや福祉施設への一括貸し出しで利用増を図る。
それでも保管能力は限界に達しつつある。ある町村の図書館は「町村と中核図書館(帯広市など)の役割分担が必要」とし、町村図書館は郷土史など地域密着の書籍、中核図書館は古書など、収蔵のすみ分けを提案する。帯広畜産大学付属図書館の高野直樹学術情報室長によると、既に海外では学術雑誌を大学間で分担保存する仕組みがあり、「今後、日本でも図書館同士で助け合う方法が検討されるだろう」と話す。
図書館は単に本の貸し借りだけでなく、その土地の歴史を振り返る郷土資料の「保存機関」でもある。限られたスペースを有効活用し、利用者のニーズに応える姿勢がますます求められる。