千の証言・投稿:<軍歌>記憶に残る空襲の前奏曲=東京都足立区の若月和雄さん(87)

2015年06月04日

 昭和20(1945)年3月10日の東京大空襲の前奏曲。

 前日の3月9日夜に日比谷公会堂にて陸軍戸山学校軍楽隊による「大陸軍の歌」の発表会がありました。文系の大学生は兵役に取られており、会場には旧制中学校の4年生と5年生が多かったです。私も当時は5年生でした。女学生もかなりの数が来場していました。

 東京音楽学校(東京芸術大の前身)に在学中で現役入隊した100人くらいの初年兵が、ステージの後方に立ってコルネットを吹いていました。演奏された軍歌の歌詞は次のように記憶しています。

 <攻むれば全軍弾となり、守れば一兵城となる わが大君の統べ給(たま)う大陸軍の征(ゆ)く所 山河新たに敵もなし>

 指揮は陸軍軍楽少佐、山口常光。客席にも合唱の指導がありました。戦後、軍歌の歌詞を探しましたが、見当たりません。でも、あれから70年、私はまだ忘れていません。

 そして、その深夜から翌未明にかけて大空襲でした。赤坂の自宅はその日は戦禍を免れましたが、国会議事堂の向こうに真っ赤な空が広がっているのが見えました。

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