ジブリ汗まみれ「日本の若き編集者たちへ!」の回を聴いて思ったこと
スタジオジブリの皆々様,とりわけ鈴木敏夫さんへ
下記を聴いての感想です。
■2012/11/30 鈴木敏夫、太田出版講演会、『日本の若き編集者たちへ!』
http://podcasts.tfm.co.jp/podcasts/tokyo/rg/suzuki_vol246.mp3
聴いていていちばん気になったのは,アリエッティのときに,
先進国の現代人は,自分で生産しない,途上国の生産したものを借り物で生活している,
と仰っていたことです。
ワタシは,そこまでステレオタイプに当てはめて考え,思考停止されていることが,
日本の真の問題に対して鈴木さんが興味をお持ちでないことの証左のように思えてしまいます。
先進国といえども,アメリカだって輸出できるほど肉牛やとうもろこしを生産していますし,
いまワタシがいるドイツだって,広大な大地でじゃがいもとか作って国内消費しています。
十把ひとからげに"先進国"と言ってほしくないです。
日本は官僚独裁政治がはびこり,官僚たちの利益になるように,原発が推進され,
原発に無駄な支援金をたくさん出すことにより,財界政界が潤ってきました。
だからこそ,福島が事故を起こしてさえも,原発を切ることができないのです。
その構造は原発だけでなく,あらゆる産業に浸透しています。
そしてその費用は税金から支出しなければなりませんから,税金も高額になります。
その結果,本来格安で作ることが可能なはずのものが高額になってしまいました。
工業製品はまだ付加価値があるために,日本での生産が可能かも知れませんが,
どこの国でも作れてしまう農産物は,他国に対して競争力がなくなってしまいました。
いまのTPPの真の問題はそこにあります。
自給率を高めるために,TPP参加反対,関税撤廃反対なんて本末転倒もはなはだしい。
むしろ日本の高コスト体質を改めるために,TPPに積極的に参加して,
官僚独裁政治により出来上がったシステムを崩していかねばならないと思います。
その問題については,鈴木さんも体感的によく認識されているのです。
鈴木さんが月に24個もある会議を全部サボって,尾形さんに庇ってもらった
お話をされていましたが,会議に出てそれらしいカオをしているヒトが
生産的な仕事をされていないのは,よくよく理解されているでしょう。
であればこそ,そのような生産的でない仕事をしている,企業の重役や,
官僚たちの仕事を,もっとバッサリと切らねばならぬと思われませんか?
先日も指摘しましたが,ジブリだって,原動画間のフレキシビリティがなくなったとか,
遅刻してくるヒトに対してうるさく言う,とかいう問題があるというのは,
ジブリ自身も,コンプライアンスなどの都合のいい掛け声のもと,
生産的でない管理部門が幅を利かせつつある証左と思います。
だいたい,ドイツなど他の国々では,公務員は民間企業に入れないヒトが
仕方なく就く職業とされているようです。
そのため,官公庁の行う業務は簡素化されスリムになっています。
ドイツの村役場など非常にコンパクトです。
官公庁ではありませんが,たとえば,Deutsche Post など,町村レベルでは
民間の商店に間借りをしている状態です。
日本だと立派な郵便局があるところですが。
ドイツではそうやって,公共サービスは民間企業未満の給料で
最小限の人員でできているものに対して,
日本では,民間企業以上の給料で大勢雇って,さらに省庁間のかけひきなどで
エネルギーやそれに伴う費用が相殺されているのです。
これでは,税金が湯水のように使われてしまうと思われませんか?
鈴木さんは,ご自身の編集者としてのお仕事では,自分で作物こそ作られませんでしたが,
自分の文章がそのまま活字化され出版されて人々の目に触れられた,
これはやはり生産的な仕事と思われませんか?
農民たちが読みたいと思う記事を,作物と物々交換で手に入れているとイメージされれば
分かりやすいと思います。
で,企業の重役などが出なければならない会議は,生産的なのでしょうか?
それに出なかったからといってどうなるのでしょうか?
非生産的であるし,出る必要ありませんよね。
ワタシなどは,そういうものは,社長が強いイニシアチブを取って,いまですと
必要な部署にメールなどで適宜問い合わせ,社長自ら結果を報告に纏めて適宜
社内イントラネットにアップし,社員はそれを閲覧して,問題があれば社長に直接言う,
というスタイルでもなんら問題がないと思います。
それをわざわざ,鈴木さんの時代ですと月間24回の会議を行い,
さも自分が仕事をしていると勘違いし,その対価として巨額を支払われているヒトが
大勢いて,それが問題と思われていないことこそが,日本の抱える真の問題と思います。
それと,鈴木さんは,
「自分は好きなヒトには会わない。実際に会えばイヤなものも出てきてイヤになる。」
みたいなことを仰いましたが,ワタシはその考えには賛成できません。
たとえば昨日たまたま観たのですが,タカラヅカのファントム公演で,
クリスティーヌが,ファントムとの愛を誓い,その上で,嫌がるファントムに対して執拗に
仮面を取ることを迫ったのですが,
にもかかわらず,ファントムのあまりの醜さに逃げ出してしまうという描写がありました。
鈴木さんは,こういうものを見れば逃げてしまう,と仰っています。
ぜんぶ受け入れてしまうとしんどいから,という理由で。
しかし,ファントムのような存在はメタファーです。どこにだってあるのです。
生まれながらに,ダウン症をはじめとした障がいで人から忌避される人もいれば,
交通事故などで後天的に異形となってしまった人もいます。
ワタシのように,個人情報保護法違反を訴えてさえ,本来有り得ない,
日本政府からの忌避により,精神的にファントムのように追い詰められる人間もいます。
それを,鈴木さんは,しんどいから,という理由で拒否される,と仰っている。
それどころか,ハウルの項でしょうか,「強いヒトより弱いヒトのほうが受け入れられる時代」
などとしゃあしゃあと述べて,そういう考えを正当化される。
ワタシはむしろ,ファントムのこの描写を見て,アタマでいくら十分に分かっているつもりでも,
実際に実行するときには違う方法を選んでしまうことこそが人間の弱さであり,
それを改めること,すなわち,悪に対してはたとえ最後の一人になろうともキッチリ立ち向かうこと,
それこそが善であり,時代がどうであろうと,そういうものを目指す姿勢を失った作品を
作っていただきたくないと思います。
今回の発言は,ざっくばらんに仰ったようでいて,鈴木さんという方の
道徳的ないいかげんさが浮き彫りになったようで,非常に不愉快でした。
もっとちゃんと生きてください。
大西秀宜
http://onicchan.cocolog-nifty.com/blog/
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