あってはならないトラブルが起きた。

 那覇空港で、自衛隊のヘリコプターと全日本空輸(ANA)、日本トランスオーシャン航空(JTA)の民間航空機2機がからんだ一件である。

 管制官は、滑走路脇の誘導路にいた自衛隊機に待機を指示しつつ、ANA機に離陸を許可した。ANA機は滑走路で離陸走行を始めたが、自衛隊機が飛び立ってANA機前方の滑走路上空を横切ったため、離陸を中止。これを受けて管制官はJTA機に着陸やり直しを指示したが、JTA機はANA機の後方で着陸した。

 これが、おおよその経緯だ。

 ANA機への離陸許可を自衛隊機が自らへの許可だと誤ったのが発端だという。管制官とのやり取りは復唱で確認するルールの下で、なぜトラブルが生じ、連鎖したのか。

 一歩間違えれば大惨事になっていた。国の運輸安全委員会は交信記録などデータの分析を進め、関係者からの聞き取りと合わせて事実と原因を明らかにしてほしい。

 そのうえで、改めて思い起こすべきことがある。航空機の運航は、管制に使う機器や滑走路などの空港施設という「モノ」と、管制官や機長らのやりとりや判断という「人」の両方に支えられていることだ。

 機器や施設に不備があればそれだけで危険が生じる。時々の気象など状況は刻々と変わるため、最後は人が頼りだ。両者は不可分に結び付いており、一方の問題は他方に影響・拡大し、事故につながりかねない。課題を徹底的に洗い出し、必要な対策を講じていく必要がある。

 那覇のように発着便数が多い空港ほど、管制官には高度な熟練と集中力が求められ、勤務に伴うストレスは増す。神業にも映る管制業務がしばしば話題になるが、そうした状況が限界に達していないか。

 民間機だけでなく自衛隊機も発着する共用空港では、戦闘機やヘリコプターなど速度や性能が異なる機体をまじえた管制となり、難度が高まるという。那覇空港では、ヘリコプターが誘導路から滑走路上空を横切ることも珍しくないようだが、そうした運用や空港の構造に問題はないのか。

 管制がからんだ離着陸トラブルは、今年4月の徳島空港、昨年4月の那覇空港など、しばしば生じている。状況や原因はさまざまだが、根本的な検証と対応を求めたい。

 トラブルから事故を防ぐ教訓を引き出さねばならない。