およそ法たり得ないものが国会で論議されているという根本的な指摘に、政府…
あってはならないトラブルが起きた。 那覇空港で、自衛隊のヘリコプター…[続きを読む]
およそ法たり得ないものが国会で論議されているという根本的な指摘に、政府と与党は耳を傾けるべきだ。
国会で審議が続く安全保障関連法案は憲法に違反する。集団的自衛権の行使を認めるという中身も、憲法改正をせずに事実上の改憲をしようとする手続きのいずれにおいても――。
衆院憲法審査会で憲法学者3人がそろって「憲法違反」との見解を示した。ほかの多くの憲法学者や日本弁護士連合会も相次いで声明を出している。
日本は立法、行政、司法が分かれ、互いに監視しあう三権分立をとる。しかしこの相互チェックは、その響きが与える印象ほど行き届いてはいない。
たとえば、違憲のおそれが強い法がうまれようとするとき、「憲法の番人」といわれる最高裁に出る幕はない。
ドイツなど一部の国には憲法裁判所があり、それぞれの法律が憲法に適合するか直接判断する。日本はそのしくみをとらず、裁判所に持ち込まれた個々の事件について判断する。
つまり、違憲のおそれがある法律については、それによってもたらされた結果について異議や救済を申し立てる裁判が起こされ、そこで初めて司法のチェックが入るのだ。
裁判になっても、訴えた人の権利が実質的に侵害されたとみなされなければ、違憲かどうかの本題に入る前に門前払いされることもある。司法チェックはかなりの時差と回り道を伴う。
今回の安保関連法案も、仮に国会で成立したら、司法判断が示されるのは、自衛隊員が死傷したり、自衛隊の行為で外国人が危害を受けたりして、訴訟になってからかもしれない。
だからこそ法を世に出す国会の責任は重い。国会は、みずからの立法行為が将来の司法による審判に本当に堪えうるものなのかどうか、入念に審査する必要がある。その責任が三権分立には織り込まれていると考えるべきだ。
専門家からの相次ぐ疑義の声を受けて、きのうの衆院特別委員会で、民主党議員は法案撤回を求めた。
内閣の提出した法案が、国会の場で次々と「違憲」の烙印(らくいん)を押されるのは異常事態と言うほかない。もはや論議の土台が崩れつつあるのではないか。
ところが、中谷防衛相ら政府側は「行政府による憲法解釈の裁量の範囲内」と言い切る。
根源的な問いかけを無視し、なにごともなかったかのように国会審議を続けるとしたら、法治国家の体をなさない。
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