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 全国で初めてヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)の抑止策をまとめた大阪市の条例案が市議会に提出され、5日の財政総務委員会で議論された。委員からは「行政の恣意(しい)的な運用で、表現の自由を侵害する恐れがある」「審議時間が短い」などと慎重論が続出。継続審議とする代わりに、国に早期の法整備を求める意見書が可決される見通しだ。次の9月議会での成立も不透明な情勢となった。

 条例案はヘイトスピーチを、特定の人種もしくは民族の個人や集団を社会から排除し、憎悪や差別意識をあおる目的で、侮蔑や誹謗(ひぼう)中傷するもの――などと定義する。そのうえで、被害を受けた市民からの申し立てで、法律の専門家や弁護士らで構成する「大阪市ヘイトスピーチ審査会」が発言内容などを個別に調査。審査会の意見をもとに大阪市がヘイトスピーチだと認定すれば、表現内容の概要や団体・氏名を市のホームページで公表し、被害者に訴訟費用を貸し付ける。

 ヘイトスピーチをめぐっては昨年7月、橋下徹市長が記者会見で「やり過ぎで問題だ。大阪市内では認めない」と発言。大学教授や弁護士らでつくる市人権施策推進審議会の答申をもとに条例案がつくられた。この日の委員会では自民党などから「審査会の人選次第では、中立性が担保できないのではないか」などと懸念する意見が相次いだ。