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NPOとベンチャーは近づいていく

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@ 2000年11月20日(月曜日)

西本願寺でシンポを企画するSCCJ事務局長、浅野令子さん 「NPO」がベンチャーと並んで時代のキーワードになってきた。Non-Profit Organization=非営利組織。金銭以外の目的によって集まった人々がつくる組織のことだ。そのNPOと、営利企業の先端を走るベンチャーとの相性が案外いい、という常識破りの議論をする人たちがいるという。その真意は何か。12月に全国から論客を集めて議論をするという京都のNPO、SCCJ(高木治夫代表)の浅野令子事務局長を訪ねた。
(聞き手は本紙編集長・築地達郎)
■NPOとベンチャーを考えるというシンポジウムを企画されていますね。
「昨年12月3日に西本願寺で第1回のシンポを開き、今年(12月1日)で2回目になります。昨年はベンチャー研究第一人者の國領二郎慶応大学大学院助教授(現教授)や加藤敏春・エコマネーネットワーク代表、大橋進・米eBay副社長などの皆さんに参加してもらい起業とNPOとが案外近しい関係にあるということを確認してもらいました。今年は國領さんや加藤さんに加えてNPO研究の第一人者である山内直人・大阪大学大学院国際公共政策研究科助教授にも参加してもらいますので、さらに深めた議論をしてもらえると思います」。
■どうしてNPOとベンチャーが近しいと考えるようになったのですか?
「営利、非営利と形態は異なりますが、自己実現のために新しいことを立ち上げるという“思い”はNPOもベンチャーも同じだと思います。その違いは本来、利益を配分するかしないか、というだけのことです。福祉国家への幻想が一般化したことも大きな要素ですね」。
「ただ、今まではNPOを立ち上げるためのフォーミュラ(型)が定まっていませんでしたから、NPOを創って何かを成し遂げるという発想に立つ人が相対的に少なかったのではないか。また、ベンチャーは成長チャンスをつかむと急激な拡大を見せますが、NPOは漢方薬的というか、時間をかけてコンセンサスを醸成し、まったりゆっくり進んで行くしかない。だから、全然違うものと思われていたです」。
「ところがここへ来て情報化が一気に進むと、営利企業の側がコミュニティーを活用しながら知識・人・モノ・カネを集めるという手法に変わってきた。一方、NPOも情報化によってコミュニティーを活用する速度が上がった。両者がコミュニティーを中心にする同心円内に入ってきたのがこの数年だと思います。星雲が星になるように集約されてきている」。
「昨年のシンポジウムはNPOとベンチャーを掛け合わせるという意外性で注目を集めましたが、今年はもはや意外とは受け止められない。変化の速さを感じますね」。
■NPO立ち上げの“型”というのは固まってきたのですか?
「米国では『ソーシャル・ベンチャー』(社会的ベンチャー)という考え方が市民権を持ってきました。立ち上げる人はNPOの起業家と見られる。事業プランをきちんとつくり、ソーシャルインベストメント(社会的投資)を受け、ソーシャルサティスファクション(社会的満足)を返す──、そういう起業家です。日本でもコミュニティビジネス、マイクロビジネスといった表現で語られるようになってますね。コミュニティの中で、例えば環境にやさしいモノをつくる会社やアトピー児向けの自然食品を商う店を作ろうといった事例がそれに当たります。こうなるとNPOと営利企業はほとんど分けられない。『ハイブリッドセクター』と呼びたいですね」。
■「コミュニティー」が第3のキーワードのようですが、どうもよく分からない。
「英語的な表現で“あなたはいくつの帽子をかぶっていますか”という言い方がありますが、1人の人が1つのコミュニティーに所属している必要はないんです。自己形成の過程で同時にいろんなコミュニティーに入っていていい」。
「私は昨年ぐらいからコミュニティーの意訳として『くに』という表現を使っています。自分の意志で帰属している集団ということでしょうか。文化や共通認識を担う単位でもあります。歴史学的な『クニ』との使い分けのためにひらがなで書きます」。
■京都で繰り返しシンポを開く意味は?
「NPOやベンチャーといった先端的なテーマをお寺で議論するといったミスマッチのおもしろさは京都ならではです。豊かな発想のためには舞台設定が大切ですね。京都でほっこりと発想転換を──というのが隠れたスローガンです」。
浅野 令子(あさの・れいこ)
SCCJ事務局長。日本NPO学会理事。大津市生まれ、関西大文学部、シアトル大社会学部卒。シアトル大大学院で「非営利団体経営修士号」取得。97年に帰国。99年1月から現職。大津市在住。
〔一期一会〕
当たりは軟らかい。どこにでもいそうな普通のインテリ女性に見えるが、その実態は日本NPO学会きっての論客だ。学術界、ビジネス界を問わず、“変革派”の人々に幅広いネットワークを持つ。
1年半前以来、中高年者向けのパソコン教室を経営するネットイン京都の高木治夫社長との二人三脚で日本サスティナブル・コミュニティ・センター(現SCCJ=http://www.sccj.com/)を引っ張ってきた。ほとんどの催しや会合を京都で開きつつ、常に全国から参加者を集めているのがその真骨頂だ。12月のシンポにも宮城県をはじめ遠方からの参加者があるという。
「SCCJがインキュベーションする企業のストックオプションで財をなし、プライベートファンデーエションを作る」のが夢、という。(第478号)


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