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【社説】

沖縄知事訪米 辺野古阻止への一歩に

 沖縄県の翁長雄志知事が訪米を終えた。米軍普天間飛行場の「辺野古移設」に反対する民意を米政府や議会に直接伝えるのが目的だった。日米両政府の壁は厚いが、辺野古阻止に向けた一歩にしたい。

 昨年十一月の県知事選で初当選した翁長氏にとって、就任後初めての訪米である。ホノルルでイゲ・ハワイ州知事、ワシントンでマケイン上院軍事委員長ら議会関係者、国務省のヤング日本部長、国防総省のアバクロンビー副次官補代行ら政府関係者と会談したほか、シンクタンク関係者との意見交換にも臨んだ。

 翁長氏が一連の会談で訴えたのは、国土面積の1%にも満たない狭隘(きょうあい)な沖縄県に在日米軍基地の約74%が集中し、普天間飛行場(宜野湾市)返還のためとはいえ、同じ県内の名護市辺野古に新基地を建設する県内移設では基地負担の抜本的軽減にならず、県民の多くが反対しているという現実だ。

 これに対し、「辺野古移設」方針を堅持する米側の反応は「想定の範囲内」(翁長氏)とはいえ厳しいものがあったのではないか。

 国務省は会談後に発表した声明で、辺野古移設について「新基地ではなく、既存基地に機能を追加するものだ」「普天間飛行場の継続使用を回避する唯一の解決策」などと、知事の主張を一蹴した。

 マケイン氏も同様に「沖縄の米海兵隊を移設する現在の計画を支持する」と声明を発表した。

 とはいえ、全くの無駄足だったというわけでもないようだ。

 翁長氏は記者会見で、会談した議員から「沖縄を訪問して調査したい」との発言があったことを紹介し、「一歩一歩前進している。まったくの暗中模索の中から一筋の光が見えてきた」と総括した。

 日米両政府は、翁長氏が訴える普天間飛行場の国外・県外移設には、選挙という民意の裏付けがあることを忘れてはなるまい。

 外交・防衛は国の仕事だが、米軍基地周辺住民の理解と協力が得られなければ、基地提供という日米安全保障条約上の義務も円滑には果たせまい。

 日米両国が民主主義という基本的価値を共有するというのなら、米軍統治下で基地建設のために土地を強制収用され、今も過重な基地負担に苦しむ沖縄県民の思いに真摯(しんし)に耳を傾けるべきではないか。

 それができないのなら、どこかの独裁国家や一党支配国家と同じだ。それでいいのか。翁長氏の訴えは、日米両政府に民主主義のありようも問い掛けている。

 

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