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ウェントス・フロームンドの日常
プロローグ
「…お前は本当に魔王なのか?」
恐る恐る聞き直すと、
「そうだと言っておろう⁉︎わしの姿をよく見てみい!」
そう言われ青年ウェントス・フロームンドはもう一度よく見てみる。
その姿は、見るものを恐怖に陥れ世界を破滅させる魔王の…姿ではなかった。
「幼女じゃねーか」
自称魔王はまるっきり幼女であった。
†††
魔王が三人の英雄によって滅ぼされてから20年あまりが過ぎた。
魔王は倒されても倒されても次へ次へと現れていく。
それがこの世界の理で、人間と魔族は無限に争い続けていくのだと言わんばかりに。
人間側もそうだった。
魔王が現れる度に英雄が現れ、魔王を滅ぼしてゆく。
これが、神の作りたもうた世界ならば神こそが魔王の所業である。
だが、人間も魔族もそれが当然のように争い生きている。
それでは神の思うつぼなのではないか。
青年ウェントスはふと考える。
人間と魔族が共に過ごせる世界になったら、どうなるのだろうと。
ウェンは物思いに耽っていると、
「ウェン!宿屋の確保完了したぜ、はやくいこうや」
現在、パーティを組んでいる相棒のテルスが帰ってきた。
図体がでかく、男前と言うよりはかっこいい感じで、歴戦の戦士みたいだ。
筋肉隆々でしなやかさはないが力強さはうかがえる。
そしてそのなりにあった斧を肩から引っさげている。
テルスは街に到着するなり、宿を探してくると言って走り出していった。
「よくこの時間に宿が見つかったな、俺はもう今日は野宿かと思ったぞ」
もうすっかり日は落ちていて何処もいっぱいだろうと半ば諦めていたウェンは早々に近くで休んでいたのだがまさかテルスが見つけて来るなんて思っていなかった。
何せ、テルスが極度の方向音痴だからである。
テルスの所為で今まで何度迷った事だろう。
一度や二度のことではない。
今日は雨ではなかったが、槍でも降るのではなかろうかと空を見上げる。
降りそうにはなかった。
まぁ当たり前である。
「だろ?俺は別に方向音痴じゃねーんだよ。ほらいくぞ」
間違いなく方向音痴だが、ここで方向音痴かそうでないかを言いあった所で意味もないので隣に置いていた刀を腰にかけ、ついていく。
テルスは石が敷き詰められた道を、少し歩いて右に曲がり、白塗りの家の列を壁伝いに歩き、また右に曲がりつきあたりのT字路を右に曲がった。
ウェンは一抹の不安を覚えた。
テルスが右にばっか曲がるからである。
そして、その不安は的中した。
「あれ?戻ってきちまった。」
ウェンが休んでいた地点に戻ってきたのである。
門の隣はちょっとした広場になっていてウェンはそこで休んでいた。
「右にばっか曲がってたら戻ってくるに決まってんだろ!お前は馬鹿なのか?そうなんだろ⁉︎」
「お、俺は確かにこの道の先に宿屋を見つけたんだぜ?
少し古ぼけてたがよ、一部屋空いてるって言ってたから予約してもらってきたんだ」
「たどり着けなきゃ意味ないだろう!」
ウェンは仰々しく両手を高く振り上げた。
「悪かったって、そう怒んなよ」
ウェンはドスッドスッと大きく足跡を立てながら
「次は俺が先頭だ」
こいつでは一生たどり着けないと思い、自分で行くことにした。
「おいおい、お前場所知ってんのかよ!」
「適当だ!感で行く!」
半ばやけくそに答える。
「まぁいいぜ、どちらが早く見つけられるか勝負しようじゃねーか」
テルスはニヤリと笑い、そう言った。
ウェンは、方向音痴のくせになに笑ってんだと思いながらも勝負に乗るのだった。
†††
朝である。
暗かったはずの夜空は夜明けとともに光が溢れ出し、世界を照らしている。
それを合図だとでも言うかのように、次々と白塗りの家から人が出てくる。
殆どが女である。どこにいても主婦とは往々にして忙しいのだ。
皆出てきたら直ぐに足を伸ばし、手を合わせたまま上に向かって伸ばす。
今日も一日頑張ろうと全身で表してるようだ。
そんな人達を他所にウェンとテルスは疲れ果て顔を見合わせていた。
ウェンはそもそもどの宿屋なのか分からず、ただひたすら走り回っていた。
テルスは目的の宿屋を知っているのにも関わらず、街中駆け回ったあげく見つけることが出来なかった。
馬鹿二人である。
「テルス!お前目的地知ってんのになんで見つけてねーんだよ!」
「ウェンこそ、何処か分かってねーのに何走り回ってんだ!馬鹿だろ!」
互いに睨み合い、やがて力尽きたように間抜けな顔になって、呟いた。
「「先に進もう」」
二人はとぼとぼ門に向かって歩き出した。
その背中はとても歴戦の冒険者とは思えなかった。
街を出ると、北にはこの街から伸びる道が、延々通っている。
北西の方角には山があり、その手前には小規模な森林になっている。
東側には川がまっすぐ北に通っていて、町からの道と並行して並んでいる。
近場に橋はなさそうだ。
「テルス、地図見せてくれ地図」
「ああ、ほらよ」
テルスは肩にかけていたバックから地図を取り出すとウェンに手渡した。
その鞄の中には地図の他に、持ち前の食料とコルクの蓋で閉まった回復薬<エリクサー>や、コンパスなど冒険者には必須のアイテムで詰まっていた。
ちなみにウェンは刀しか持っていない。
ウェンの持ち物もテルスのバッグに入っているからだ。
力持ちなんだから持っとけと半ば強引に突っ込まれたのをテルスはまだ根に持っている。
ウェンが地図を広げると、北への道をそのまま進んだら、鋼鉄都市シュタールがあることが分かった。
「なぁテルス。俺達が受けた依頼ってシュタールに依頼人がいるのか?」
「ああ。その街のお偉いさんの護衛だとよ」
「貴族かなんかなんだろ?精々機嫌を損ねないようにしないとな」
「まったくだ」
そう言い合いながら真っ直ぐ北へ歩き始めた。
†††
丁度、先の街とシュタールの中間地点辺りで休憩をとることにする。
東の川の側面が道に近づいていたのでうってつけだと思ったのだ。
「魔物に出逢わなかったな」
「ああ、魔物が近頃、多くなってきた気がしていたんだけどな」
とウェンは丁度いい大きさの岩を見つけ、座りながら答え返す。
「それは俺も感じていたぜ?何か近い内に起きそうだよな…っと」
テルスは火を起こすための薪を集めるために、肩から引っさげていた斧を使って木を切っていた。
流石の斧捌きである。一振りするだけで、木が切り落とされ、落とされた木を丁寧にそれでいて速く切り分けていく。
あっという間に薪ができ、石で囲んだ所にくべていく。
そうして、くべ終わるとテルスは手をくべた方へ掲げ、呪文を詠唱する。
『我、火の理を知りて火と成す』
唱え終わるとテルスの掌から薪へと火が移される。
「納得いかないよなぁ」
テルスの一連の動きを見ながらウェンは言った。
それを聞いたテルスは「何がだ?」と聞くと、
「そんなでかい図体してるお前が魔法使えるのに、何故俺は使えないのかって事だよ」
そうである。ウェンは魔力量がごくわずかで使えるものといったら詠唱要らずの防御壁ぐらいだ。
薄皮一枚の防御壁で、低級の魔物くらいにしか通じないだろう。
「今更だな、仕方ないだろう?魔力の量は生まれつき決まってるもんだ、増やすことも減らすこともできん」
そう答え返しながらテルスは、鍋を火の上に設置し元々持っていた材料で料理を作り始める。
「そりゃあそうだけどさ、やっぱかっこよく詠唱唱えてみたいんだよ!『我、火の理を知りて火と成す』ってよ」
テルスの動作を真似しながら同じ魔法を唱えるふりをする。
「辞めろよ!恥ずかしいだろうが。これは見本の詠唱だけど普通は自分で考えるんだぞ!」
「使えなきゃ考えたって意味ねーよ」
魔法と言うのは、ようはイメージの具現化である。
自分が起こしたい現象に置いてイメージを張り巡らせていくのである。
火を出したいのであれば、どうやって火がつくのかを想像する。
小さな火を起こしたければ紅蓮の炎を想像するのではなく、ポッと灯った蝋燭を想像するのである。
そのイメージがより鮮明な程完全な火へと変わるのである。
逆に、あやふやなイメージを想像したならば本当に火なのだろうかと思う程のものが出来上がる。
つまり、まったく熱くないのだ。
結論的に言うと、詠唱とはその魔法ごとに詠唱があるのではなく、鮮明なイメージをより鮮明にさせるための補助的な役割である。
そのため、詠唱とはその人が一番イメージ湧きやすい言葉が連なるのだ。
もちろん難しい呪文程莫大な魔力量と鮮明なイメージを要するため、詠唱は長くなる事が多い。
それを短く、速く唱えることができるものが大魔術師、または英雄と言われるもの達である。
「俺がどんだけ、魔法の勉強したと思ってんだ!師匠にお前は魔法の才がないと言われた俺の事も考えろってんだ!」
ウェンは身を乗り出しながら言った。
「知らねーよ!急に怒んじゃねーよ。鍋がこぼれちまう!……ん?お前師匠なんていたのか?」
テルスは鍋をかき混ぜながら、疑問に思った事を口にした。
「言ってなかったか?」
そう問い返すと、
「ああ。俺は結構お前の事知らないからな」
「気にしていたのか?」
とウェンは軽くからかってみる。
そしたら意外な言葉が帰ってきた。
「まぁな…お前と知り合ってから結構経つからよお、俺の方はお前の事、悪友だと思ってるんだぜ?」
照れ臭い事を真正面から言われ、少し狼狽したウェンだったが、すぐに落ち着きを取り戻し、こう尋ねる。
「しゃーねえな。俺の過去はちょっと壮大だぜ?覚悟はあるかテルス」
「拍子抜けさせるなよ?」とテルスは答える。
「ふふっ、そうか。じゃあやはりここから話すとしようか。」
ウェンは前置きをした後、つらつらと語り始めた。
「俺はな、異世界からやって来たんだよ」
拙いかもしれないですが、根気よく読んでくださるとありがたいです。
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