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「艦長、フリーダムから打電です!」 「何!?」 鋭くオペレーターに、マリューは問いかけた。 「『オリハルコンを使用、所定のポイントまでデストロイを』と!」 その瞬間、マリューは息を呑んだ。 「!?」 「どういう意味でしょう、オリハルコンなら、もう使っていますよね?」 チャンドラの呟きに、マリューは唇を噛み締めた。 「あるのよ、もう一つの使い方が」 「え」 そして、マリューは厳しい顔つきで問う。 「キラ君の言ったポイントまでの距離は!?」 驚きながらも返ってきた報告に、マリューは一つ頷いた。 確かに、これ以上の時間をかけるのは得策ではない。 連合、ザフトが前面衝突する前にデストロイを落とさねば、途はない。 (やるしか、ない……!) そして、マリューは鋭く告げた。 「『ガーディ・ルー』にも打電! デストロイを追い込むわ!!」 不意に、入ってきた通信文に、自身のパーソナルカラーに染まったウィンダムを繰りながら、ネオは軽く眉を上げた。 「『オリハルコンをフリーダムが使用、所定ポイントまでデストロイを追い込まれたし』?」 追尾してくるミサイルを打ち落として、意図が掴めない内容に、ネオは思案を巡らす。 オリハルコンの使用など、今も使っているではないが。 (それを今更連絡?) オリハルコンは「光の壁」ではないのか。 否、そうではあるまい。 ユーラシア連邦が有していたモビルスーツ『ハイペリオン』のアルミューレ・リュミエール――アルテミスの傘を改良した防御システム――とは違い、展開に制限範囲はなく、また起点や支点となるべき装置もない絶対の『盾』。 その対応速度は尋常ではなく、手に入った情報と相違ない。 「何か別の使い方があると考えるべきか……」 同じ武器でも使い手によっては、桁外れの威力や効果を導くことが多々ある。 単純に、『盾』しか使えないと考えるのは思い込みなのかもしれない。 ネオは手早く、ガーティ・ルーに連絡を取る。 すでに、ガーティ・ルーの艦橋にも同様の通信文が来ていたらしく、思慮深げなイアンの顔が現われる。 「追い込めっていうからには、それなりの勝算があるんだろうが」 「罠、という可能性は?」 実直なイアンらしい慎重な発言に、ネオは薄く笑った。 「ここまで来て? いや、それはないさ」 第一、あのアークエンジェルの艦長がそんな真似ができるはずがない。 デストロイを破壊するついでに、ネオたちまでどうにかしようなどと考えもしていないだろう。 「カオス、アビスに連絡しろ。連絡のあったポイントに追い込めと。その後は、撤退しろ」 「大佐?」 言葉少なく問われ、ネオは軽く肩を竦めた。 「あっちが何を仕出かす気か分からないんだ。下手に突っ込んで、バカ見るのも嫌だろう?」 障壁が消えると同時に、三機はそれぞれに放火を放ち、続けて襲ってくるミサイル群を打ち抜く。 虚空を彩る熱量の光を裂いて、シンがデストロイの突っ込んだ。 光刃とリフレクターがぶつかり、火花が散る。 わずかにリフレタクターの強度が落ち、今少しといったところでデストロイの円周部の砲口がデスティニーを射程に捉えた。 「!」 舌打ちをして、シンはレバーを引いた。 紙一重の差で火線を躱すデスティニーの背後から、続けてジャスティスが突っ込み、リフレクターを打ち破る。 そして、そのまま、臨界を突破して今にも打ち放たれようと胸部のスキュラに向かって、光刃を突き立てた。 次の瞬間、圧縮されたエネルギーが制御を失い、膨張し、弾ける。 その衝撃に押し返されるようにインフィニットジャスティスが退く。 「アスランさん!」 「大丈夫だ!」 その爆発に均衡を失い、デストロイの巨体が傾ぐ。 その隙を二人は逃がさない。 二機のガンダムがすべての砲門をデストロイのスラスターに向けて打ち放った。 「アスラン、シン!!」 危機を知らせるキラの声と同時に、警告音がコックピット内に響き渡る。 いつの間に展開されたのか、ミサイル群の布陣がデスティニーとインフィニットジャスティスを包み込もうとしていた。 だが、次の瞬間、太い光の一条が、ミサイル群を呑み込んで消滅させた。 「な!?」 驚きの声を洩らすアスランの傍らのモニターが不意に通信画像を受信する。 「油断大敵ってヤツだな?」 ニヤリとふてぶてしく笑う顔に、アスランは我に返った。 「ディアッカ!!」 巨大な砲身を抱えた緑色のザクが飛来し、再び砲火を放ち、デストロイの火器の一部を爆散させる。 「ふん、調子に乗っているからだ!!」 刺々しく吐き捨てて、現われたブレイズザクファントムがデストロイに砲火を浴びせる。 その見覚えのあるパーソナルカラーに、アスランは呆然と呼びかけた。 「イザーク?」 「ボケッとするな、この大バカ野郎。さっさと潰すぞ!!」 「な」 「あー、まぁ、何だ? こことどうにかしないと全面対決な訳でさ」 唖然となるアスランに、ディアッカが苦笑しながら端的に説明した。 「やっぱ、こっちとしても、戦わずにすむなら、そっちの方がいい訳だし」 「ベラベラとしゃべるな、ディアッカ!!」 鋭く叫ばれ、ディアッカは軽く肩を竦めて見せた。 「ま、そういうことだ」 そして、一向に落ちる気配のないデストロイの火力に、二機のザクは立ち向かっていく。 「なぁ、スティング! 俺、ちょっと考えたんだけど〜」 「あぁん!? 何だよ!?」 目まぐるしく襲ってくるデストロイの攻撃をかいくぐり、懐に飛び込んでバックポットのミサイルを放ちながら、スティングは聞き返した。 この騒ぎの中、何を言い出すのかとアウルに舌打ちする。 「人にさ〜、ワザワザ、潜入までさせてモビルスーツ掻っ攫わせておいて、コレってひどくねぇ?」 「あ!?」 ぶつくさと文句を言いながら、ビームランスを一閃し、アウルは周囲を飛び交っていたデストロイの指先を爆散させる。 「やっぱ、ムカつく!!」 放ったビームの連射は悉くリフレクターに阻まれ、アビスに弾き返される。 「!?」 だが、不意にアビスに真正面に現われた機体が掲げたシールドにそれを防いだ。 「な」 大きく広がった翼、白い機体は、今まで幾度なく煮え湯を呑まされた相手だ。 「気をつけて、デストロイのリフレクターはまだ生きてるから!」 言い放ち、追撃してくるミサイルをすべてビームライフルで迎撃すると、その機体――ストライクフリーダムはデストロイとは別の方向に駆けて行く。 ぽかんと見送り、動きを止めたアビスに、スティングは声をかけた。 「おい、アウル!?」 「…………かっけ〜」 「は!?」 (何だと!?) 何語だと問うより早く、突然、興奮気味にアウルが騒ぎ出す。 「今の見た、今の! 連射だぜ、連・射! 一撃必殺!」 (幾つだ、お前は) スティングの額に青筋が浮き上がる。 切迫した状況下だということを理解しているのだろうか。 「いいな、あれ。俺もやりたい」 ふっと、双眸を鋭く細め、アウルは呟く。 「後にしろ、後で!」 投げやりに言い放ったものの、素直に言うことを聞くアウルではない。 「あ、チャーンス!」 見やった先には、ミサイル群に狙われている、妙な光の翼をつけたモビルスーツがいた。 スティングが制止する前に、アビスのビームライフルが狙いを定める。 次々と鮮やかな火線がミサイルを打ち抜き、虚空に閃光を散らした。 「1,2,3,4,5、……ラスト〜っ!! って、あ!」 戦闘中でなければ、スティングは額に手を当てていただろう。 最後の一撃はミサイルから外れ、ミサイルに狙われていたモビルスーツ目掛けて走る。 咄嗟に、気付いた相手が振り返り様にシールドを掲げ、次いで迫ってきたミサイルを打ち落とす。 同時に、乱れた通信画像が入ってくる。 「何すんだよ!!」 怒りに赤い双眸を吊り上げた少年が激しく叫んだ。 「俺を殺す気かよ!?」 「はぁ〜? 当たる方がマヌケなんだよ!!」 「何だと!?」 「大体、お前ら敵じゃん!?」 「それはこっちの台詞だ!!」 口論を繰り広げながら、張り合うように襲ってくるデストロイの攻撃を応戦する二人の死角から、ミサイル群が迫るのをスティングは気付いた。 「あの、バカが!」 舌打ちし、スティングはミサイル群に照準を当てる。 「な!?」 「あ!?」 突然、警告音が鳴り、同時に周囲で引き起こされる爆発と衝撃にシンとアウルは驚きの声を上げる。 「何すんだよ、スティング!!」 「死にたかったのかよ、バーカ!」 今度は、鼻で笑うスティングに突っかかっていくアウルに、シンは呆けて呟いた。 「何なんだよ、あいつら……」 「シン!!」 「あ!」 直後、モニターに入ってきたアスランの叱咤にシンは我に返って戦闘に戻るために意識を集中させた。 |
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