連鎖世界



 閃光が散る虚空へと再び飛び出したアスランの視界に、シンが繰るデスティニーの背後に迫るミサイル群が入る。
 デスティニーは正面から放たれた無数の光条の対応に追われている。

「シン!」

 咄嗟に、ミサイル群とデスティニーの間に、アスランは割り込む。
「え!? アスランさん!?」
 見慣れぬ機体と聞き覚えのある声に、シンは一瞬呆けた。
「ボサッとしてるな、的になるぞ!」
 反射的にシンは眉をひそめて叫び返す。
「出遅れた人に言われたくありません!」
 同時にインフィニットジャスティに狙いを定めていた小型戦闘機に似たデストロイの指先をシンは打ち落とす。
「ほら、これで借りは返しましたよ!!」
 だが、次の瞬間、デスティニーの背後で爆発が生じる。
「!?」
 驚くシンの目の前で、インフィニットジャスティスの許に、光の刃が回転しながら戻ってくる。
(ビームブーメラン!?)
「これで、また一つ貸しだな?」
 笑いを含んだアスランの一言に、また助けられたのだと悟り、シンはさっと頬を赤らめた。
「すぐに返しますよ!!」
 次の瞬間、二機は散開し、彼らがいた空間を光熱の奔流が浚っていく。
 そして、完全に対照的な位置で機体を翻し、追ってきていたデストロイの指先を打ち落とす。


(何だかんだと言って、息ぴったりだな)


 虚空を駆け抜けながら、認めた二機の動きに、キラはくすりと笑った。
 状況は緊迫しており、笑っている余裕などありはしない。
 だが、心を満たす高揚感が確かに在った。

 シンがいる――憎まれて、挑まれて、一度はキラの死を望んだ少年が。

 アスランがいる――理解できぬまま別れて、再び戦って、遠く離れたと思った幼馴染みが。

 一緒に、同じ未来を望んで、戦っている、生きている、今を。

 そして。

「キラ」

 唐突に入った通信画像に、キラは我に返った。

「ラクス」

 少女の像が乱れているのは戦闘における電波の乱れだろう。
「先ほど、アークエンジェルより連絡がありました」
 凛とした表情でラクスは続けた。
「ミネルバが戦線を離脱し、メサイアへ行くと」
「メサイア?」
「ザフトの移動要塞ですわ。どうやら、議長はそちらへに」
 不意に、キラは不穏な予感を覚えた。
「ラクス」
 見やれば、ラクスもまた緊張を帯びていた。
「えぇ。エターナルも向かいます」
「分かった、こっちは任せて」
 ベルリンと違い、一緒に戦ってくれる存在がいる。
(大丈夫)
「僕もすぐに行くから、だから」
 その瞬間、ラクスはふわりと笑った。
「はい、お待ちしていますわ」
 それと同時に、ラクスの画像が消え、モニターの隅に映っていたエターナルが急速転進する。
 その艦尾を狙うかのように、赤い火線が虚空の闇を横切る。
 次の瞬間、キラはその軌道上に入り、シールドで受け止めた。

「……エターナルは墜とさせないよ」

 そして、キラは無差別に破壊を振り撒く『破壊者』を見据えた。
 あれはだたの『力』だ。
 破壊を齎す意味も、その先の目的もない。

 壊す。
 消す。

 あれは、この世界に不要だ。

 いなかる人の想いを宿さないあれは。

 静かに結論付け、キラはその意志を現実のものとするために決断を下す。

「アスラン! シン!」

 絶えず襲い来る火線を躱し、放った攻撃は悉くリフレクターで阻まれることに焦りを覚えていた二人はキラの強い声に弾かれて意識を向ける。
「キラ!?」
「デストロイを消すよ」
 一瞬、視界を染め上げる光。
 それに伴う衝撃に歯を食い縛りながら、シンが叫ぶ。
「んなの、分かってますって!」
 それができないから、苦労しているのに、この人は今更何を言い出すのか。
 シンの返事に、キラは静かに笑った。
「シン、違うよ。僕は『消す』と言ったんだ」
「は!?」
 訳が分からない。
 シンの困惑が苛立ちに変わる前に、キラは続ける。
(シンはキレると面倒なんだよね)


「オリハルコンを使う」


「「オリハルコン?」」


 不思議そうな二つの声に、キラはふと気付いた。
(ああ、そうか)
 彼らは知らないのだ。
 その瞬間、デストロイの砲口がすべてキラたちに向かう。
「!!」
「しまっ」
 回避できない。
 シンとアスランが表情を強張らせる。

 だが、次の瞬間、三機を取り囲むように淡く輝く、しかし、揺るがない光の障壁が生まれた。

「何!?」
「あ!」

 初めて見るアスランと、この戦いで幾度なく助けられたシンは驚きの声を上げる。

「これがオリハルコンだよ」
『絶対の盾』――『ORIHARUCON』。
 ドラグーンを扱う以上の高度な空間認識能力が必要とされるそれは、以前は改修されたフリーダムに組み込まれていたものだ。
 宇宙空間でのみ使用できる制約があり、シンのインパルスと交戦した時は揮えなかった、キラの、もう一つの……『剣』。
 手元の計器を確認しながら、キラは続けた。
「これで、デストロイを消す。二人とも、手伝ってくれる?」
 そして、キラは一つのポイントを二人に告げる。
「ここに、デストロイを誘導してくれるかな?」
「キラ?」
 訝しげなアスランの呼びかけに、キラはにこりと笑いかけた。
「ここで、終わらせよう」








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