始めて自転車に乗れるようになったとき、始めて電車で旅をしたとき、始めて遊園地へ行ったとき、そんなことを思い出させてくれる絵本。それが、荒井良二の「バスにのって」だ。
毎日が始めてばかりだった子どもの頃。目に入ってくる景色や音、そんなすべてを鮮やかに感じていた。残念だけど、大人になると、そんなことは忘れてしまう。成長ってやつだ。毎日が退屈に、日常が平凡に思えてくる。
でもね、みんな、子どもだったはず、なんだよ。
表紙を開いてみよう。いきなり、どこの国なのか分からない。どこでもない異国の匂いがする。ちょうど、子どもの頃、自転車で、ほんの少し遠くまで行けるようになったときのような気分が味わえる。ほら、その角を曲がったら「あれ?こんな路地があったんだ」と、新しい発見した瞬間に、とても似ている。
音も同じだ。たぶんね、ページをめくっていくうちに口ずさんでいると思う。これはもう絶対。絵本に書いてある言葉が何度も頭のなかをかけめぐるから。最後まで読み終わったら、必ず、もう一度、最初から読んでみたくなる。
文章とイラストが生み出した魔法だよ。
それが、荒井良二の「バスにのって」。何度も読み返す。もう、何回も何回も、何回も。本がボロボロになるまで手から離せない。夢中になってしまう。絵本の世界から出たくない気持ちになるのが、たったひとつの欠点かもね。
絵本は子どものためにあるんじゃないよ。知らないあいだに、多くの人が惹かれていく児童書は、子どもから大人まで楽しめるものだ。だって、最初の方に書いた。みんな、子どもだったはず。大人になっても、完全に消えるものではない。
いつまでも、新しいものを純粋に受け入れるって、とても、大切なことだと思う。始めてを、恐れちゃったら面白くなくなるよ、きっと。「バスにのって」を読んだら分かる。頭じゃないんだ。素直に感じる、そうすれば、また、世界がキレイに見えてくる、必ずだ。約束する。
by yosh.ash