スポーツのしおり
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【社会】GPS捜査令状なし違法 大阪地裁「プライバシー侵害」大阪府警が裁判所の令状を得ず、捜査対象の男や知人女性の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を付けて得た資料を裁判の証拠にできるかが争われた広域窃盗事件の公判で、大阪地裁は五日、「プライバシー権への制約が強く司法のコントロールが必要なのに、令状なく長期間捜査を続け違法だ」として、関連の収集証拠を採用しない決定をした。 刑事訴訟法にはGPSの運用に関する直接の規定はない。過去の司法判断では大阪地裁の別の裁判長が関連事件の公判で今年一月に「違法ではない」としており、結論が分かれた。事件の被告側の弁護団によると、捜査の違法性を指摘した決定は全国で初めてとみられる。 長瀬敬昭(たかあき)裁判長は五日の決定理由で、約半年間にわたり十九台の車に端末を付けた捜査手法について「プライバシーを大きく侵害し、強制処分に当たる」と判断。「請求すれば令状が出た可能性は高いのに、警察は取得の検討すらしておらず、令状主義軽視の姿勢がある」と捜査側を批判した。 検察側はGPSの役割を「捜査員の尾行や張り込みの補助」と見なし「位置情報は大まかにしか把握できず、二十四時間記録するわけではないため権利侵害の程度は低い」として、捜査報告書などを証拠採用するよう主張。だが長瀬裁判長は「精度は高く、相手を見失っても位置情報を取得し追尾を続けることができる。目視のみの捜査とは異質だ」と却下。「今後技術の発展に伴い、精度も高まる。将来的な違法捜査の抑止も考慮すべきだ」と述べた。 弁護側は「プライバシー権などへの制約が強く、司法の抑制が必要だ」と訴えていた。 ◆全国での運用実態不明GPSによる捜査は、位置情報の精度が高くプライバシーの侵害が懸念される一方で、令状のいらない任意捜査の補助手段として捉えられており、令状が必要で件数が公表される通信傍受とは違って全国での運用実態は不明だ。 五日の大阪地裁決定は「公判で弁護側が問題にするまで警察は検察にもGPS捜査の結果を伝えず捜査報告書にも記載していない」と批判した。 「ここまでするのかと思った」。車体の下にあったのは黒いビニールテープでぐるぐる巻きにして磁石で設置したGPS端末。地裁で審理されている広域窃盗事件の被告の男(43)は発見時の様子を公判で振り返った。 逮捕の数カ月前に知人のミニバイクへGPS端末が付けられたと知ったのがきっかけだった。「警察がそんなことしていいんですか」。逮捕後の二〇一三年十二月、亀石倫子弁護士との接見で訴えた。 GPS捜査による証拠は当初開示されず、男の訴えを聞いた亀石弁護士らが開示を求めてようやく存在が明らかに。もしGPS端末に気付かなければ警察による位置情報の把握が表面化しなかった可能性がある。 これまでの公判で出廷した捜査員の証言によると、今回の事件では十六台の端末を使用。三〜四日おきに対象車の端末を交換しながら約半年で計十九台の車両に取り付けた。交換などの作業はホテルや商業施設への駐車時にも実施していたという。 亀石弁護士は「GPS活用の有用性は否定しないが、司法のチェックが働かなければ知らない間にプライバシーが侵害される。今回の公判では、警察がこうした捜査をひた隠しにする姿勢が見て取れた」と批判した。 PR情報
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