2015-06-04 夜が寝苦しい……
■[言語]小島剛一氏への応答
に対して,以下のようなコメントを投稿しました。
はじめまして。
まず誤解があると思いますが,わたしはエスペラント批判者であってエスペランティストではありません。それは前の記事へのブックマークコメントでも表明しましたし(http://b.hatena.ne.jp/entry/fjii.blog.fc2.com/blog-entry-485.html),過去に以下のような記事も書いております。とはいえ流れ的にわたしをエスペラント擁護者だと誤解するのはやむないことでしょうから,そこをあげつらうつもりは毛頭ありません。ついでに申し上げれば,漢字廃止論はわたしの敵です(ただし,漢字をなくしても日本語が言語として存続していくことは可能であると考えています。その点で漢字廃止論に理を認めた上で反対しているのです)。
http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20120324/1332591207
>でもその場合の「言語」は、「情報伝達・交信に用いる記号体系」という意味であって、自然言語にとって重要な要素である「音韻体系」や「語域」は、そもそも問題になり得ません
わたしはコンピュータ言語には詳しくないので何とも言えませんが,手話は命名の恣意性や二重分節性などを備えておりますし,ピジン手話からクレオール手話が誕生したりするなど(ニカラグア手話の例をご参照ください),音声言語とは別のもう一つの自然言語体系と呼んで差し支えないと思いますが。
>「母音音素」「拍」「音節」「声調」などの用語を用いた会話や文書では「話題になっているのが音声を使う言語だけであること」は歴然としています
「エスペラントの正体」の2つの記事において,母音だの音節だの声調だのといった話題は出てきていませんから(コメント投稿時確認),話題が音声言語に限られるとは読解できません。
>同様に「語域」を問題にする場合「コンピューター言語も手話も話題になっていない」ことは明らかです
手話に関してはろう者コミュニティという立派な語域があると思いますが。ろう者コミュニティは人工的な集合であり自然のコミュニティとはいえない,という立場は,様々な危機に瀕した言語の継承を危うくするロジックなので,頷きかねます。
>「言語」という言葉を使う時に、いちいち「但しコンピューター言語や手話を除く」との断り書きを要求される謂(いわ)れはありません
一般的にはそうでしょう。わたしもたとえば「世界の多くの言語には○○という発音がある」という話をしているひとに向けて「それって手話やコンピュータ言語にも当てはまるの?」と問いはしません。“言語”という語には“狭義の言語(音声による自然言語)”と“広義の言語(手話や人工言語を含む)”の二つの意味があるのですから。しかしある言語を,前者に該当しないという意味で「言語ではない」と名指すのであれば,「後者には当てはまっているのにどうして『言語ではない』と言えるのか?」という疑問は呈されて当然ではないでしょうか。狭義の語義に当てはまらないという理由で広義の語義に当てはまることをも否定しているように読めるのですから。その場合はきちんと「狭義の意味での言語ではない」と言った方がよいと思います。
ところでもちろんご存知でしょうが,自然言語と人工言語という二項対立は(大雑把な分類の指標としてはアリでしょうが)根本的に成り立ちません。どの自然言語にも人為的な介入は行われていて,突き詰めると自然言語と人工言語の境界はあやふやなものです。この辺を短く整理したものとして,木村護郎クリストフ「言語における『自然』と『人為』――説明用語から分析対象へ」『ことばと社会』10号,2007年,120-135頁があります。より詳細な事例研究として,木村護郎クリストフ『言語にとって「人為性」とはなにか――言語構築と言語イデオロギー:ケルノウ語・ソルブ語を事例として』三元社,2005年もご参照ください。また,過去にhttp://d.hatena.ne.jp/Mukke/20091103/1257259347という記事も書いていますのでご笑覧いただければ。
>「Mukke」さんは、ご自分のロゴとして、逆さの卍(まんじ)、つまりナチスの象徴の鉤十字を使っています。なぜなのでしょう
よく誤解されるのですが,これはナチスの紋章ではなくフィンランド空軍の紋章「幸運の青い鉤十字」です(遡ればスウェーデン貴族の紋章ですが)。ナチスは関係ありません。赤地に黒い鉤十字ならばともかく,白地に青い鉤十字なのですから,ナチスのものと短絡されるのはいかがなものでしょうか(鉤十字が伝統的に幸運のシンボルであり,ナチスによってイメージが悪化したことは有名な話かと存じます)。
>「手話も言語だ」と言う人達は、余程の馬鹿でなければ「手話は、音声を用いる(= 本来の意味での)言語と同列には扱えない」ことは百も承知のはずです
手話に関しては,語を構成する要素に音声を用いるか手指の動きを用いるかという違いがあるだけで,あとは他の言語と同列に語られうる立派な言語である……ということはてっきり言語学に携わる人びとのあいだでは常識だと思っておりましたが,どうもそうではないようで,認識を改めなければなりませんね。
このコメントは承認されていませんが,このコメントへの応答がupされたのでそれに応答しておきます。
初投稿のためご存じなかったこととは思いますが、「ウィキペディア」などの匿名のサイトのリンクを貼ったコメントの表示はお断りすることに決めています。実名を名乗らないブログへのリンクも同じ扱いにしています。F爺は、大原則として、提供者不明の情報を信用しないのです。理由は、間違いや剽窃、誹謗中傷などがあった場合に誰も責任を取らないからです。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
わたしが貼ったリンクの第一のものは,「わたしはエスペランティストだとあなたは考えているようだが,それは間違いで,わたしはエスペラントを攻撃している」という事実を提示するものであり,その立証に際してわたしが書いたブログ記事を提示するのは根拠として十分ではないでしょうか。一律にそのようなコメントの処理を行っているようなのでまああまり強くは言いませんけど,ネット上に非実名で書き込んだ人間の(ネットで表明された限りでの)思想信条について問題にするのであればネット上に同じ非実名の者が書き込んだテクストは十分な典拠たり得る……という話であって。
というか,たとえば,「Wikipediaにおけるら抜き言葉の用例」とか,「twitterにおけるレイシズム」とか,そういったテーマは普通に学問として成立する話ですよね。Wikipediaや個人サイトを引用することが一律にいけないのではなく不適切な局面で引用するからいけないのだ……ということはこのひとに限らずもっと周知徹底されるべきだと思いました(上記のようなテーマの論文にWikipediaやtwitterからの引用がなかったらそっちの方が学問として不誠実でしょう)。
「超」という字を付けたくなるほど長文のご投稿の一部だけ、引用または要約することにします。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
引用部分も入れて2,000文字にも満たないのでさしたる長文とも思えませんが,それはさておき。
一つ、「わたしはエスペラント批判者であってエスペランティストではありません。それは前の記事へのブックマークコメントでも表明しました」とおっしゃいますが、F爺は、「エスペラントの正体(3)」を書いた時点では「Mukke」さんの「前の記事へのブックマークコメント」なるものの存在さえも知りませんでした。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
ええ,ですから「とはいえ流れ的にわたしをエスペラント擁護者だと誤解するのはやむないことでしょうから,そこをあげつらうつもりは毛頭ありません」と書き添えたわけですが。
エスペラントの規範逸脱の例を一つだけ挙げることがなぜ「そこまであげつらう」という評価に繋がるのか、F爺には理解できません。価値判断を表明する時に論拠を示し、少なくとも一つだけは例を挙げるのが当然の作法ではないのですか。価値観の全く違う世界の片鱗を見せられる思いです。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
もちろん,規範逸脱の例を挙げるのがよくないと言っているのではありません。その程度の逸脱の例がなぜエスペラントをそのように否定的に論ずる根拠たり得るのか理解できないという話です。これはわたしの書き方が悪かったのでしょうけれど。
二つ、このブログでは、今まで一度も「コンピューター言語」や「手話」を扱った記事を立てていません。〈「母音音素」「拍」「音節」「声調」などの用語を用いた会話や文書では「話題になっているのが音声を使う言語だけであること」は歴然としています〉と書いた時にF爺が言及していたのは、このブログ全体です。個々の記事のことではありません。
まさかとは思いますが、「Mukkeにそれが読み取れなかったのは偏(ひとえ)にF爺の書き方が悪いせいだ。Mukke自身は、いつも誤解の余地のない文章を書く」とはおっしゃらないでしょうね。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
「会話」や「文書」でブログ全体のことを指すとは少なくともわたしは読み取りませんが,まあこのくらいの行き違いでいちいちあなたに責任を負わせはしませんのでご安心ください。
>ろう者コミュニティは人工的な集合であり自然のコミュニティとはいえない,という立場は,様々な危機に瀕した言語の継承を危うくするロジックなので,頷きかねます。
このブログでは「ろう者コミュニティ」のことを一度も話題にしておりません。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
エスペラント学習者のみが集まることで人為的に形成された“エスペランティストの会合”を自然なコミュニティたる“語域”とはいえない,という立論からは,(マーサズ・ヴィニヤード島などの例外を除けば)ふつうは分散して暮らしているろう者が集まることで形成されたろう者コミュニティも同様であるという結論が導かれるのではありませんか? あなたの立論から導かれる帰結を論じているのであって,あなたのブログで過去ろう者について話題にしたなどとは一度も言っておりません。
五つ、
>ナチスは関係ありません。赤地に黒い鉤十字ならばともかく,白地に青い鉤十字なのですから,ナチスのものと短絡されるのはいかがなものでしょうか
F爺の生活圏では、嫌がらせ目的で鉤十字を壁に描いたり、残虐な場合にはナイフで顔に彫り込んだり・・・という忌まわしい事件が起こります。色は問題になりません。角度も問題になりません。かつてはナチス、今は謂わゆる「ネオナチ」の被害は、日常茶飯事なのです。このブログのいくつかの記事をお読みになったのなら、「ナチスの鉤十字に似ているだけの物も同一視され、訴訟沙汰になり得る」というF爺の居住地の事情を斟酌せず質問もしないで、直ちに「短絡」と形容するのは、いかがなものでしょうか。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
たとえば,わたしがあなたの住居なりフランスのドメインで開設したブログなりに「幸運の青い鉤十字」を掲示したのなら,あなたのそのご主張は正しい。「そんなものを掲示されたらここではナチスと同一視され,訴訟沙汰になるかもしれない。どういうつもりなんだ」。まことにごもっともです。しかし,はてなブックマークにおけるアイコンという,あなたがその帰結について法的責任を問われようはずもない場所でわたしはこの紋章を使っています。それに対してあなたは「それはナチスの紋章だ。どういうつもりだ」とおっしゃったのですよ。残念ながら,あるいは幸運なことに,ここはフランスでもドイツでもありません。
〈手話も「広義には」言語だ〉と言う時の「言語」と〈日本語は、話者数が一億人を超える言語だ〉と言う時の「言語」とは意味が違う、ということには賛同なさるのですね。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
これはわたしの書き方が悪かったですね。広義,狭義といわず,「一般的に通用している意味」「一般的に通用してはいないがそれに含まれ(得)るもの」とでもしておいた方がよかったでしょうか。この点は誤解して当然の書き方(というか,明白にわたしの間違い)ですので撤回してお詫びします。
もちろん,「手話は言語だ」と言うときの「言語」と,「日本語は大言語だ」と言うときの「言語」は,完全にまったく疑問の余地もなく同一の意味だとわたしは思いますよ。視覚言語と音声言語という違いがあるだけで,どちらも言語であることに変わりありませんから。
七つ、多数の日本語の書籍を列挙して「参照してください」とお書きになっていますが、F爺の住んでいる所の近くには日本語の書籍の参照を可能にする設備は無いことに思い至っていないようですね。無駄なことでした。それにF爺は、匿名の人物からの「参照せよ」に応じることはありません。居住地の制約がある以上、日本語発信の情報に疎いのは致し方ないことです。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
わたしが挙げた日本語の文献はわずか2点です(20頁にも見たない論文が1点と,まあ大部ではある書籍が1点)。それを“多数”とおっしゃるのはどれだけ日頃ものを読んでおられないかという話だと思うのですが,それはさておき,「ネット上のあやしげな情報は読まない」だけでなく,「日本語の書籍も読まない」「そもそも匿名の人間が呈示した文献など読まない」というお話でしたら,それはつまりわたしがどのような論拠を提示しようがそれを読む気はなかった,わたしとの議論に応じるつもりは一切なかったと,そういうことなのですね。日本語の書籍が手に入りにくいから参照できない,という事情はよくわかりますが(だから日本語の情報に疎いことそれ自体を責めているわけではない),それでも匿名のサイトでは説得力も薄かろうと思ったからこそ査読された論文や博論をもとにした書籍などを呈示したわけです。もちろん匿名との議論などしたくない,というスタンスでも一向に構わないと思うのですが,だとしたら「どうして『F爺・小島剛一のブログ』の記事を読んだこの人たちの誰一人,F爺宛てにコメントを投稿して反論なり質問なりをしないのでしょうか。エスペランティストを名乗る人からの反論は,一通も届いていません」などと書いたのでしょうか。所詮匿名の戯言だと無視しておけばよかったではないですか。
相互理解が全然成立していません。無駄ですから、議論は、これでおしまいにしましょう。
最後にお知らせしておきますが、勝手な思い込みに基づいて乱暴な言葉で一方的に攻撃するだけの「Mukke」さんのお考えに、これ以上何の興味もありません。ブログは訪問しておりませんし、今後とも訪問する意思はありません。さようなら。
エスペラントの正体%284%29 - F爺・小島剛一のブログ
とのことなので,わたしもこれでおしまいにしたいと思います。向こうがこちらを読まないのであれば議論も何もないですしね。
わたしも色々間違えているやもしれませんから,もしわたしの主張の中に何か誤りなどがあればご指摘いただけますと幸いです。
ところで,手元にある(まだ一部の章しか読めていない)『ケンブリッジ言語政策ハンドブック』には,当然手話の章が設けられています(第19章)。こういうフランスでも入手できそうな文献を提示しときゃよかったですね(Amazonもあるし)。反省。
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あとallezvousさんに個人的な応答。分野が違うと当然の認識が共有されないことがある,というのはその通りで,たとえば「琉球語」と書くか「方言」と書くか,みたいな割と基層的な認識のところで食い違ってるところはよくあると思うんですが,少数言語の継承に熱心に取り組んでおられる学者さんが別の少数言語(この場合は手話)に対してあまりに保守的な認識を示すのにはちょっと驚きました。もちろんわたしは手話については門前の小僧状態ですが,流石にそれが文法体系を備えた立派な言語であることくらいは知っていたので,えっ? となったというか。
- 59 https://www.google.co.jp/
- 24 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CB0QFjAA&url=http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20150326/1427381185&ei=a2JwVaKPOcO0mAW34IDAAw&usg=AFQjCNFFd0X8HMJ_Yq_7U7YbUdJDGqFebA&bvm=bv.94911696,d.dGY
- 13 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0CCQQFjAB&url=http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20140527/1401180027&ei=qFFwVb_XH4X78QXMgYGICw&usg=AFQjCNFW_9vsnf7eX1C_BcC0LA5JM7zvMA&bvm=bv.94911696,d.dGc
- 7 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=1&ved=0CB0QFjAA&url=http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20081126/1227707406&ei=zm1wVYrFIcTKmwX5noCwAQ&usg=AFQjCNGrysHWysbEkweGqDM7c3blJkNLNg&bvm=bv.94911696,d.dGY
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