韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が広がっている。
感染者は4日午前の時点で死者2人を含む35人に上る。感染者と接触し、自宅や医療機関で隔離対象となった人は1600人を超えた。
インフルエンザに比べて感染力は低いといわれる。過剰に心配せず、冷静に対応したい。
日本にとって、韓国は年間約500万人が往来する隣国でもある。ソウルとの間に週3便が運航する鹿児島空港では、サーモグラフィーによる体温測定を実施し、警戒を強めている。
感染の推移を注視するとともに、国内の空港や港での水際対策を徹底し、予防に万全を期したい。
MERSは、2012年にサウジアラビアで初めて感染が報告された。感染源はラクダといわれる。アラビア半島を中心に千人以上が感染し、400人以上が死亡した。
せきやくしゃみのしぶきで感染し、熱やせきが出て、肺炎、呼吸困難などを引き起こす。ワクチンや有効な治療法はなく、対症療法が中心なのが厄介だ。
韓国では、中東帰りの男性の最初の感染が確認されて以降、病院内を中心に感染が広がった。
韓国当局の初動の遅れや、感染力を過小評価したことが拡大の原因と指摘される。
感染確認後、「2メートル以内の距離で1時間以上」接触した人を隔離したが、その後、男性を5分間診察しただけの医師への感染が分かった。
最初の患者から感染した人を介して、さらに感染が広がる「3次感染」も起きている。
封じ込め策が万全でなかったことで、韓国国内では不安の声が高まっている。
対応に甘さがあったとすればどの部分なのか、日本政府は情報を収集し、教訓としてほしい。
03年の新型肺炎(SARS)や昨年のエボラ出血熱の流行などを受け、国内入国者への検疫態勢は強化されている。
それでも、交通網が発達した今日、感染症の国内侵入を完全に防ぐのは難しい。
MERSも、潜伏期間が2~14日あり、水際で食い止められない可能性もある。
感染疑いのある患者が発生したときの入院や搬送をどうするのか。関係機関は、侵入を前提とした院内感染防止策や情報共有などの対応を再確認してほしい。
海外渡航後に発熱したら、直ちに医療機関を受診するなど、個人としての対応も心がけたい。
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