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環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の行方は、参加12カ国を主導する米国…
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の行方は、参加12カ国を主導する米国にかかっていると言っても過言ではない。
当面の焦点は、米議会で審議が進む貿易促進権限(TPA)法案の成否である。
米国では、外国政府との通商交渉は大統領直属の通商代表部(USTR)が担うが、権限自体は議会が持つ。USTRによる交渉に議会がいろいろと口をはさむようでは、交渉相手国はたまったものではない。
だから、交渉権限を大統領に委ね、議会はUSTRがまとめた案を全体として承認するかどうかを判断するようにする。これがTPAである。
TPP交渉は大詰めを迎え、妥協が不可欠な項目に絞り込まれつつあるが、各国ともTPAなしでは譲歩カードを切れず、膠着(こうちゃく)状態に陥っている。
まずは米議会がTPA法案を成立させることだ。上院では既に可決されたが、下院は成立が見通せる状況にない。労働組合に支持された議員が多い民主党内では、自由化で国内産業が受ける影響への懸念が強く、法案への反対につながっている。
次の大統領選への思惑もからんで情勢は複雑だが、オバマ政権や民主・共和両党の議会リーダーは指導力を発揮し、反対・慎重派議員を説得してほしい。
貿易や投資の自由化を進めれば、どの国でも追い風を受ける産業がある一方、逆風にさらされる分野もゼロとはいかない。国民全体、消費者の視点でプラスとなるよう交渉を進め、負の影響を受ける産業に必要な対策をとる。これが基本だ。
高い成長が見込まれるアジア太平洋地域の活力を生かすことは欠かせない。世界貿易機関(WTO)での自由化交渉が先進国と新興国の対立などから暗礁に乗り上げているだけに、地域ごとの「メガ(巨大)協定」の中でも先頭を走るTPPが持つ意義は大きい。
米国内の状況を見るにつけ、痛感するのは説明の大切さだ。
日本政府は5月中旬、参加者を広く募って初の公開説明会を東京都内で開いた。これまでより交渉の状況を伝えようとする姿勢は感じられたが、事前の周知が足らず空席が目立ち、時間の制約から質疑も不十分だった。東京以外でも説明会を開き、インターネットで中継するなど工夫してはどうか。
駆け引きを伴う通商交渉で手の内を全てさらすわけにはいかない。それでも、説明に努める政府の姿勢こそが、政府への信頼を増し、TPPへの理解にもつながるはずだ。
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