今の中国には世紀末の雰囲気が漂っている。経済成長が急減速していながら、株式市場は活況を続け、不合理に見える高みをめざし続けている。不動産ブームは終わった。1次産品の輸入が落ち込んでいることは、ブラジルやアンゴラの人たちに聞けばわかる。マネーが空前のペースで中国から流出し、資産を海外に移せる人々は万一の事態に備えて避難先の確保に余念がない。
政界では、習近平国家主席が鄧小平以後、ことによると毛沢東以後でも最強の指導者として地位を確立した。集団指導体制から習近平のカリスマ支配への移行が進み、彼の講話が読本として続々刊行されている。それでも、習政権にはもろさがある。徹底した反腐敗運動で既得権益に切り込もうとすればするほど、自分の立場が危うくなっていくおそれがある。米ジョージ・ワシントン大学のデービッド・シャムボー教授のような長年にわたる中国ウオッチャーからも、中国共産党は終わりが近いとする大胆な見方が出ている。
中国共産党は経済発展を正統性の根拠としてきたが、今の中国経済に生じているひずみについては、それほど大胆にならなくても見て取れる。今年1~3月期の成長率は2008年以来の低水準となる7%。実際の減速は公式発表よりはるかに大きいとするエコノミストもいる。たしかに、中国の新興中間層は成長のための成長など求めていない。彼らが求めているのは、良い就職先や大気汚染の解消、食の安全、汚職の撲滅だ。しかし、赤信号が点滅していないか目を凝らせば、すぐにいくつも見えてくる。
たとえば、続騰する株式市場。これを、好調なハイテク部門などへの信頼感の表れと強引に解釈することもできる。しかし、不動産から株式へ急激に資金がシフトしているなかで、この株高は安心でなく不安材料に見える。ハイテク銘柄中心の深圳総合指数は年初来2倍超に急騰した。5月には、上海・深圳両証券取引所の合計出来高がニューヨーク証券取引所の出来高の10倍を突破した。後から加わろうとする投資家は引きも切らず、先週には株式取引口座の新規開設数が過去最高の440万件を記録した。
■火に油を注いでいる中国政府
通常なら、政府が熱を冷まそうとする。ところが、中国政府は火に油を注いでいる。国営メディアは株高を正当化する記事を大きく掲載した。5月には、中国人民銀行(中央銀行)が半年間で3度目となる利下げを実施した。それでも実質資本コストは上がり続けている。鉄鋼などの産業部門では、設備過剰が価格設定力に悪影響を及ぼしている。実質金利は2008年以降で最も高い水準にある。
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