【長崎聯合ニュース】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が世界文化遺産への登録を勧告した「明治日本の産業革命遺産」(全23施設)について、長崎大の高実康稔名誉教授が4日までに聯合ニュースのインタビューに応じ、ユネスコがしっかりと役割を果たす必要があるとの意見を述べた。
産業革命遺産は日本による植民地時代に朝鮮人を強制労働させた歴史を排除したまま、世界遺産登録が推進されている。朝鮮人の強制連行問題に長年取り組んできた高実氏は、ユネスコ側が韓国と日本政府で協議し良い結論を出せと言うのは大変無責任なことだと指摘。ユネスコは世界遺産条約に基づき人類の普遍的な価値を保護するという立場から判断を示す必要があるとした。予断は許されないものの、日本政府の案の通りに登録された場合、ユネスコは大きな禍根を残すことになると懸念を示した。
高実氏は日本政府が産業革命遺産の対象期間を1850年代~1910年に限定したことについて、日本の近代化における富国強兵政策とその後の侵略、植民地支配が表裏一体の関係にあることを隠すための戦略だと指摘した。朝鮮人が強制労働させられた炭鉱がある端島(軍艦島)の場合、最も古い施設は1916年に建設されたもので、観光客は1910年以前の産業施設を見に行くとは言い難いとした。
また、吉田松陰が開いた私塾「松下村塾」が産業革命遺産に含まれていることも問題視した。吉田松陰は朝鮮征伐を主張するなど日本の侵略、植民地支配の思想的基盤を提供した人物で、松下村塾が人類の普遍的な価値を持つ遺産と見なすのは難しく、産業施設にも該当しないと説明した。
高実氏は日本の加害責任に関する資料を展示する「岡まさはる記念長崎平和資料館」の理事長や「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の代表を務めている。