【社説】MERS対策、今こそ朴大統領は陣頭指揮を

 しかし政府の説明を額面通り受け取るわけにいかないことは、国民の方がよく理解している。政府はこれまで「3次感染」について「世界的に見ても前例はあまりない」「可能性はほぼない」などの認識を示してきた。ところが今月2-3日に新たに3人の感染が確認されると、伝染病の感染対策を担当する疾病管理本部などは「医療機関の建物の中での感染」という言葉を使い、あくまで3次感染とは異なるかのような見方を示している。MERS中央対策本部企画総括班のクォン・ジュンウク班長も「今のところ地域社会に感染が拡大しているような状況ではない」と断言した。

 伝染病はいったん感染が始まると、手が付けられないほど急速に広がるため、政府は初期の段階から過度と感じられるほど強い警告と警戒を呼び掛けるのが常識だ。ところが政府は今回、MERSの感染力を過小評価し、国民の不安を抑えるための説明ばかりを繰り返した。国立中央医療院の院長に至っては、最初の患者が確認された翌日「(MERSは)感染力が非常に低い」とコメントした。このような認識の甘さが原因となり、当初隔離の対象となったのは最初の患者と同じ病室を使った別の入院患者だけという、あまりにもずさんな対応しか取られなかった。

 患者の数が12人となった先月30日、MERS中央対策本部はブリーフィングで「今後、患者の数がさらに増えるとは考えていない」との見方を示し、また保健福祉部の文亨杓長官も前日の29日「あり1匹さえ通れないほどの徹底した姿勢で対応に当たる」と発言していた。ところが患者の数が引き続き増え続けると、文長官と保健福祉部は31日と2日に立て続けに国民に謝罪した。保健福祉部は「(MERSの感染源とされる)ラクダとの密接な接触を避ける」という指針を発表したが、街中では「それなら当分はラクダに乗ってはいけないな」という具合に政府を皮肉る声が相次いでおり、また今後病院以外の場所でも3次感染者が確認された場合、国民は政府が何を言っても本当に信じなくなるだろう。

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