政府に対する信頼が崩れ、MERS問題はデマゴーグの「遊び場」になってしまった。今からでも、韓国政府は初期対応こそ遅かったが徐々に状況を掌握しつつあると信じさせてくれれば、デマの居場所はたちどころになくなっていくだろう。しかし韓国国民の信頼を得られない状態で、デマゴーグに厳罰を科すという方針を発表したため「国民は伝染病を心配しているのに、政府はデマから取り締まろうとしているのか」という皮肉を呼び込むばかりだった。
結局これらの問題の終着点は、政治のリーダーシップに向かうことになる。MERSに対する韓国国民の不安が頂点に達しつつあったまさにその瞬間、大統領と与野党は数日にわたり、国会法改正案をめぐって正面から激突していた。国会法を通して行政府の施行令などを規制することは違憲か、そうでないかというのが、この問題の核心だ。これもまた、決して軽々しく処理すべきではない問題だ。しかし、毎日のように恐ろしいスピードで感染者や隔離対象者が増えているMERS問題ほどに急ぐべき事案ではない。にもかかわらず、大統領と政界は、国家的危機は後回しにして、国会法改正案をめぐり命懸けの戦いに没頭した。
これが、この国の政治とリーダーシップの水準だ。「セウォル号の中の悪魔」どもが、韓国人の傍らを離れずとどまり続けていられるのは、まさにこのようなみじめで、胸のふさがるような政治指導者がいるからだ。