【コラム】今なお韓国人につきまとう「セウォル号の悪魔」

セウォル号の惨事を招いた韓国政府の無能とリーダーシップの欠如、今回のMERS問題でも繰り返す
この国家的危機を前にしても、大統領と与野党は政争に没頭…悲しいが、これが韓国政治のレベル

 中東呼吸器症候群(MERS)問題でも、全く同じ悪魔の顔がちらついている。今回も、公共機関や官僚組織の無能・安逸・保身主義が初期対応を誤らせた。最初の発病者は、十日でなんと4カ所もの病院を転々とした。最後に訪れた総合病院が、この患者の症状や中東への渡航歴(バーレーン)などを疾病管理本部に伝えたが、バーレーンはMERS発病国ではないという理由で、さらに二日が経過した。自ら隔離治療を願い出た患者を、保健当局が受け入れなかったケースもあった。MERSの感染者が出国するという事態まで発生した。医療大国を自認してきたこの韓国で、最も基礎的な防疫の原則すら守られなかったのだ。あり得ない、あってはならないことが続いたにもかかわらず、現政権の高官は腕組みしてただ眺めるだけだった。MERSが韓国国民全体を不安に陥れる段階にまでなって、ようやく閣僚が乗り出し、首相代行が関係機関対策会議を開くかと思えば、今度は青瓦台(韓国大統領府)に緊急対策班をつくるなど、騒々しくなった。

 韓国政府が1年前に打ち出したセウォル号対策の核心は、韓国社会にはびこる積年の弊害をえぐり出すことだった。中でも、官僚組織の改革を真っ先に打ち出した。しかし、官僚社会の慢性的な病は、一つも治らなかった。逆に官僚組織は、今年の公務員年金改革問題を経る中で、利益集団にまで変貌した。与党セヌリ党の大物議員は「与党内には『官僚組織が動かない』という懸念の声が少なくない。結局MERSの問題も、こうした状況と無関係ではないという認識が多い」と語った。官フィア(官僚とマフィアを合わせた造語)の威勢も依然として強い。現政権が語る官僚改革は、問題の根本には手を付けないまま、セウォル号の初期対応に失敗した海洋警察をなくしてしまうという、即興的なレベルから脱し得ないものだった。ならば今回は、疾病管理本部が解体の対象だ。

朴斗植(パク・トゥシク)論説委員
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