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各国で鉄鋼過剰への対応を

2015/5/31付
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 中国を中心とした鉄鋼の設備過剰問題について、経済協力開発機構(OECD)が協議を続けている。過剰の解消が遅れ通商摩擦が激化する事態を懸念している。関係国は連携を強め、保護主義的な輸入制限の抑制と過剰解消に向けた取り組みを考えてほしい。

 経済産業省の推計では、2015年の世界の粗鋼生産能力は23億千万トンに及ぶ。一方で生産量は16億6千万トン程度にとどまる見通しで、6億5千万トン分の生産能力が過剰になるわけだ。しかも生産量は需要を大きく上回っていて、生産国の外にあふれ出して貿易摩擦を引き起こしている。

 世界の各国が、ダンピング(不当廉売)や補助金輸出に対抗する措置の発動に向けた調査を開始した件数は、14年に28件に達した。11年の2倍だ。緊急輸入制限発動のための調査を始めた件数も、11年の2件から8件に増えた。

 国際ルールに違反する不当廉売などには適切な対応が必要だ。ただ、保護主義的な措置が連鎖的に広がる事態は貿易の拡大ひいては世界経済の成長を阻害する。

 過剰が長引いている要因のひとつは、中国や韓国など生産国の政策だ。補助金や政府系金融機関の融資などを通じて市場の働きをゆがめているために、新たな過剰設備がつくられたり、不採算企業の退出が遅れたりしている。

 韓国のポスコがインドネシアで13年末に建設し能力増強を検討する高炉製鉄所を、韓国輸出入銀行は多額の融資で後押ししている。国内で能力過剰が深刻な中国は、海外での生産能力増強を政策的に進めようとしている。

 OECD鉄鋼委員会は各国の政府系金融機関などに対し、能力増強への融資などにあたっては現在の設備過剰を十分に踏まえて判断するよう求めた。

 OECDに加盟していない中国が今回の協議に参加しているのは評価できる。鉄鋼に代表される設備過剰は国際問題だとの認識を共有し、20カ国・地域(G20)でも対応を検討してもらいたい。

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