世界経済は回復基調を保っているものの、さまざまなリスクが点在している。そんな中で開いた日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が閉幕した。
議長国ドイツはG7首脳会議の準備会合と位置づけ、共同声明の採択や議長声明を出すことをあえて控えた。首脳会議で成果を出すため一層の努力が必要だ。
先進国経済は2008年のリーマン・ショックの負の遺産をなお引きずり、経済の実力を示す潜在成長率が低下している。構造改革によって経済成長を促す必要があるとの認識で今回の会議が一致したのは、妥当といえる。
こうした中長期の取り組みはもちろん大事だが、G7は目先の世界経済の安定にもきちんと責任を果たさなくてはならない。
まずは、資金繰りが苦しく債務不履行(デフォルト)の懸念が出ているギリシャの問題を、早期に解決することだ。ギリシャでは民間銀行から預金の流出が続き、信用不安が高まっている。
ギリシャ政府と、支援する側の欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)は融資の前提となる改革案を協議しているが、なお双方の主張の隔たりは大きい。
期限の6月末までに協議が整わないと「不測の事態が起きかねない」とルー米財務長官が警鐘を鳴らしたのは、当然だ。ギリシャもEU・IMFもそれぞれ歩み寄り、決着を急ぐべきだ。
外国為替市場ではドル高・円安が進んでいる。米連邦準備理事会(FRB)が年内に利上げに踏み切る、との市場関係者の見方が背景にある。米国では労働市場の改善が続く一方、厳冬の影響もあって1~3月期の実質経済成長率はマイナスに陥った。先行きの景気や雇用情勢の見極めは難しい。
FRBは市場との対話を丁寧に進め、金融市場の混乱を最小限におさえ込むよう政策運営に努めてほしい。日本の課題は、経済成長と財政健全化を両立させる道筋を定めることだ。
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への対応で、G7は足並みの乱れを露呈した。欧州勢が参加を決めた一方、日米カナダは見送った。
次の焦点はIMFの準備資産に中国の人民元を採用するかどうかをめぐる問題だ。今度こそG7は結束し、中国に資本規制の自由化などを働きかけていくべきだ。