まだ見ぬ最終回を空想する ~「ゆゆ式」を例題に~

 4コママンガの一つの特性として、「同じことをやり続けてもかまわないこと」があります。変わらない日常、変わらないキャラ、変わらないネタをいつまでも読者に提供し続けるという、ある種のマンネリに対して、4コマ界は寛容です。むしろ積極的に評価しています。いつ雑誌を開いても、そこにはおなじみの面白さがある。それが4コマの効用であり、強みでもあります。
 それはいわゆる萌え4コマ、学園もの4コマでも同じです。特に、雑誌の看板として長期連載化した作品は、時間の進みが遅くなります。高校二年生のバレンタインデーを三回繰り返したりとか、ザラにあります。それでいいのか。いいのです。いや、本当に。
 とはいえ物事には必ず終わりがあるわけで、何らかの事情で連載が止まったりしない限りは、最終回が訪れます。それを創造できるのは、作者に許された最高の特権です。

 でも、空想なら誰でもできます。

 ここはひとつ、最も終わり方の予想できない萌え4コマである「ゆゆ式」(異論はありませんよね、まさか)を題材に、まだ見ぬ未来の最終回を考えてみることにしましょう。


【CASE1】

 いつものように唯の部屋に集まる三人。温まった空気の中、のんびりとくつろいでいる。特に普段と変わった様子はない。
 会話の内容は、一週間前の卒業式について。回想シーンはなく、これまで通り三人の台詞と表情のみで話が進む。
 不意にゆずこがノートを取り出して空白のページを広げる。部活をやらないか、今ここで。そう提案する。
 テーマ:卒業
 最後のコマは、ノートに書かれた部活のまとめ。


 単に卒業するだけでは、空想としてあまり面白みがありません。このケースでは、卒業を取り扱いつつも少し捻った構成にしています。これまでと同じような展開の中、部活のテーマだけが「卒業」になっています。時期は卒業式の後と設定しましたが、逆に卒業式の数日前、最後の部活を描いた最終回を空想するのも良いかもしれません(まあ、これは多少ベタですが)。


【CASE2】

 これまで一度も登場しなかった新キャラクター三人が教室にいる。ノリの良い、たわいもない会話をしている。彼女たちの風貌には、どこか見覚えがある。なじみ深いあの三人の女の子と、それぞれ同じ髪の色をしている。
 どうやらまだ入学したてのようで、放課後、三人は探検がてら廊下を歩く。そしてある部室を見かける。扉には「情報処理部」と書かれている。
 これ、もしかして。
 思わずそろって顔を見合わせる。
 きっとさ。
 これ、ママが言ってたやつだよ。
 三人は前を向く。せーので扉を開ける。部屋の中に入っていく。その後ろ姿が描かれる。


 こちらは、「卒業」ではなく「入学」を最後に持ってきたパターンです。主役は、ヒロイン三人の子供たち。何十年後もゆずこ・縁・唯の友情は続いているんだよということを、間接的に表現した最終回となるようにしてみました。ただ、これが「ゆゆ式」らしいかと言われると微妙なところです。

   *

 あたりまえではありますが、こういう最終回にしてほしいとか、普通の卒業で終わるのは嫌だとか、そういう思いは一切ありません。あくまでこれは、単なるお遊びの一種です。
 しかし、遊びで思いつくほど簡単じゃないですね、「最終回」は。

 ところで、6月22日に最終2巻が発売される4コママンガ「たらちねパラドクス」は、「卒業以外の終わり方」の非常に優れた一例となっているのですが、詳しくは来月、単行本発売の後にレビューします。

(水池亘)