衆院厚生労働委員会は3日、日本年金機構から公的年金の個人情報が流出した問題に関する集中審議を開いた。水島藤一郎同機構理事長は、現在約125万件と公表している流出件数がさらに増える可能性を示唆した。厚労省や年金機構の新たな不手際も発覚し、全容解明と事態収拾は見通せない状況だ。
水島理事長「残念ながら、さらに流出件数が拡大する懸念はある」
今回の問題では、機構の多数のパソコンがウイルスに感染した。そうした端末のハードディスクに機密情報があれば、そこから年金情報の流出の可能性が残る。水島氏は「警察に届けている(端末の)記録を解析した結果を踏まえて分かる」とし、被害範囲が確定できていないと認めた。
情報漏れした約125万件のうち、基礎年金番号、住所、氏名、生年月日の4情報すべてが流出した件数は約5万2000件。重複ケースがあると見られ、少なくとも約1万6000人の4情報が流出したもようだ。
塩崎恭久厚生労働相「何もしていなかったわけではない」
問題の発端は5月8日に九州ブロック本部(福岡市)で受信した不正メールの添付ファイルを開いたことだ。民主党は機構と厚労省が同日中に最初のウイルス感染を把握しながら、全パソコンのインターネット接続を遮断しなかったと指摘。「大規模な情報流出は防げたはずだ」と言う。
塩崎厚労相は数日後から新ワクチンを機構の全端末にインストールした例を挙げ「対策は順次進めた」と反論した。機構は職員に不審なメールを開かないよう注意喚起したが、全端末のネット接続の遮断など抜本策は取らなかった。
水島理事長「掲示板の書き込みは承知している」
民主党は問題公表前の5月28日から、ネットの掲示板に情報流出に関する内部情報とみられる書き込みがあったと指摘した。水島理事長は「極めて遺憾だ」と事実上、職員の書き込みであると認めた。情報管理のずさんさは前身の旧社会保険庁でも問題視されていた。
民主党の枝野幸男幹事長は3日、塩崎厚労相の責任問題について記者団に「当然、近い将来そういう話になる」と語った。第1次安倍政権は「消えた年金」問題をきっかけに失速した。岡田克也代表は今回の問題を「漏れた年金」と位置づけ、政権や閣僚の責任問題も追及していく方針だ。
日本年金機構は3日、個人情報が流出した加入者に対し、おわびの文書の発送を始めたと発表した。文書には流出した情報の種類や基礎年金番号の変更なども通知している。同日だけで約9千人に郵送した。
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