彼女はネット[注10]を見るのも嫌になったという。
「(受給者は)甘えているだけ」「クズ」「怠け者」そんな文言がネット掲示板にはあふれている。
8月3日、生活保護の申請・受給の相談に乗っている市民団体「全大阪生活と健康を守る会連合会」(大生連)と大阪府との間で、保護行政のありかたをめぐる集団交渉が行われた。会場となった府庁舎2階の会議室には大生連スタッフをはじめ、100人を超える生活保護受給者も集まった。
会場からは「肩身の狭さ」を訴える声が相次いだ。
「生活保護バッシングの報道を見るたび、身を切られる思いがする」「不正しているのではないかという周囲の視線が怖い」「近所に配慮してエアコンさえつけることができない」。
大生連の大口耕吉郎事務局長は顔を歪めながら話す。
「いったいなぜ、受給者がここまで追い込まれないといけないのか。世間の冷たい視線によって、いま、多くの受給者はますます孤立を深めていますよ」
不正許すまじの大合唱は止まらない。
それにしても、生活保護は「不正受給」によって本当に危機的状況にあるのか。取材を進めてみると意外な事実が見えてきた。
受給者急増の背景
生活保護の受給者数が増え続けているのは事実だ。厚生労働省のまとめによると、全国で生活保護を受けている人は昨年度、月平均で210万人を突破した。生活保護費の総額は2010年度で約3兆3000億円にものぼる。統計が開始された1951年度以来、過去最高の数字だ。
ちなみに同年度の受給者数は約204万人と記録されている。受給者数だけを見れば、戦後混乱期を上回るものだ。もっとも受給者数が少なかったのは1995年度。受給者数は約88万人である。
その後、バブル崩壊の影響などを受けて上昇に転じ、特に09年度以降における伸びが著しい。同年度の受給者数は前年比10パーセント増の約176万人。以降、現在までの間に30万人ほどの増加を見せている。これはリーマンショックの影響でリストラ、派遣切りが相次ぎ、失業者が急増したことが背景にある。
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