津田六平
2015年6月3日07時12分
地元の北品川にとどまらず、全国からの常連に愛された老舗の天丼屋(東京都品川区)が、7日でのれんを下ろす。東海道最初の宿場町だった品川宿で、50年以上にわたって江戸前の魚にこだわり、品川の味を守り続けてきた。
旧東海道の脇道にある「船宿天ぷら 三浦屋」。色あせたのれんをくぐると、もう天ぷらの香ばしいにおいが広がっている。古めかしい木造2階建ての1階、わずか7畳の店内に14席。壁には訪れた著名人の色紙が並ぶ。店を切り盛りするのは堀江雅子さん(66)だ。
義兄が三浦屋を開いたのは東京五輪前年の1963年。夫の勝男さんが継いだのは80年ごろのことだ。勝男さん兄弟はこの地域の漁師だった。かつて品川宿の東側は海に面し、ノリ養殖が盛んだった。
漁師だったからこそ、江戸前の魚にこだわる。アナゴにキス、メゴチ……。いいネタが入ればハゼやギンポが丼を彩る。一番人気は極上丼1300円。アナゴやエビが丼からこぼれ落ちそうなくらい豪快だ。タレは濃いめ。「長年継ぎ足してきた秘伝の味」という。
財布に優しいうえ「食べても胸やけしない」と評判に。地元のビジネスマンのほか、飛行機で九州からも客がやって来た。俳優の田中邦衛さんや真琴つばささんも常連だった。
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