またエレベーターもなるべく使わないようにしてください。
≫いつ何時・
(ノック)・
(祐子)篠田さん。
食事の時間よ。
・
(ドアノブを回す音)・
(ノック)・
(祐子)篠田さん?
(加奈子・愛)アハハ。
(美砂)何笑ってんの?
(愛)いや。
この人だって。
(祐子)鍵掛けちゃってるみたい。
(愛)えー?寝ちゃったのかな?
(加奈子)かもね。
疲れたって言ってたから。
(美砂)でも晩ご飯しっかり食べて夜ちゃんと寝た方がいいと思うな。
(藤村)そうだよ。
あしたは5時起きで登んだから。
そうだ。
5時だ。
(祐子)ですよね。
早いな。
(祐子)外から声掛けてみる。
あっ。
大丈夫です。
あれ?明かりついてないですね。
(祐子)やっぱり寝てるんだ。
(ノック)
(祐子)篠田さん。
起きて。
鍵締まってますね。
(祐子)うん。
あれ?戻ってご飯を食べましょう。
篠田さんには私が後で声掛けるから。
はい。
うわー。
奇麗。
東京とは全然違うでしょう?ああ。
はい。
(藤村)はい。
ではごゆっくり。
ありがとうございます。
(愛)おいしそう。
(加奈子)岸谷さんは何してる人なんですか?あっ。
公務員です。
(加奈子)ふーん。
あっ。
すいません。
ありがとうございます。
(祐子)どんなお仕事?ああ。
一応警察関係。
(愛)えー!警察の人!?
(加奈子)嘘!そんな驚かなく…。
(愛)いや。
すんごいね。
全然そういうふうに見えなかった。
あっ。
ホントですか?
(愛)うん。
でも今日は関係ないんで。
そうだよね。
いただきます。
いただきます。
・
(ピアノの音)
(愛)下手くそ!どういうこと?ホント。
(加奈子)難しい。
(祐子)お先に頂きました。
次どうぞ。
(愛)あっ。
ああ。
どうぞどうぞ。
(加奈子)どうぞ。
じゃあお先に。
どうでした?気持ち良かったですか?お湯の中で寝そうになっちゃった。
アハハ。
・
(鼻歌)ハァー。
気持ちいい。
(湯川)いくぞ。
(一同)はい。
おおー。
(栗林)いけ。
いけ。
(湯川)この発泡スチロールには超電導物質が包まれている。
超電導物質は極低温まで冷やされるとマイスナー効果とピン止め効果でこのように磁気浮上するんだ。
(一同)ああ。
なるほど。
・うらやましいなぁ。
ハァー。
うらやましい。
(栗林)何だよ?そんなふうに毎日遊んで生きていけたらいいよねぇ。
(栗林)かっ。
これは実験だぞ。
超電導の実験。
何の役に立つの?
(栗林)えっ?発砲スチロールを凍らせて転がしてジェットコースターにしてそれが何の役に立つの?はい。
君たち。
答えてごらんなさい。
(折川)何の役に立つって。
(みさき)それは…。
(栗林)これはな。
四股だ。
(栗林・美砂)しこ?相撲取りは四股を踏む。
足腰の鍛錬のため。
股関節の柔軟性を高めるため。
それによって相撲を取るのに必要不可欠な重心を低く保つためのバランスを身に付けることができる。
四股は基本の稽古だ。
つまり今の君の質問は相撲部屋の朝稽古の見学に行ってあなた方はなぜ四股を踏んでらっしゃるんですかと聞いてるのと同じだ。
われわれが今やってるのは基礎物理の実験でありそれが何の役に立つのかと聞かれたらそれは物理を学ぶために必要だから。
そう答えるしかない。
(栗林)うまい!はいはい。
分かりました。
(栗林)俺たちは今四股踏んでんだよ!分かったっつってんでしょ。
(宇野原)四股って。
(田窪)むしろ。
(萌子)分かりづらい。
それよりも僕はなぜ今君がここでコーヒーをすすりながらこの実験に口を挟んでるのかが疑問だ。
今日の実験は以上だ。
リポートは来週までに提出するように。
(一同)はい。
(栗林)じゃあ片付けよう。
(折川)栗林さん。
お願いします。
(栗林)えっ?
(田窪)俺たち授業があるんで。
(栗林)えっ?また?湯川先生。
1件だけいいですか?12時50分から僕は講義だ。
(栗林)君の相手してるほど暇じゃないんだよ先生は。
勝手にパソコンをいじんなよ!野木祐子さんってご存じですか?NTC製作所の研究員です。
NTC製作所。
理系学生の就職人気ランキングでは常にトップクラス。
(栗林)僕が落ちた会社だ。
その女性の名前は知らないがNTCの研究員なら優秀なんだろう。
そんな女性が人を殺したとしたら?
(栗林)えっ?人を殺した!?山歩きのイベントを自分で企画しそれに参加した女友達を谷底に突き落とした。
(栗林)「山ガール」?しかもこれはある意味密室殺人でもあるんです。
(栗林)密室!?亡くなったのは33歳の女性。
警察は自殺だとみています。
でも私は彼女が殺したと思っています。
科学的な根拠があるんです。
科学的?美人だ。
えっ?確かに。
いや。
そこじゃないでしょ。
今私科学的な根拠って。
野木祐子。
名前もいい。
ハァー。
あーあ。
こういうタイプが好きなわけ?先生たちは。
もう40ですよこの人。
年齢関係ないんだよ。
小娘。
ちょっと見せて。
何でよ?今私が説明…。
血液型見たい。
壊れる。
ホントにこんな奇麗な人が…。
何?いった。
あっ。
えっ?ちょっちょっ。
うわっ。
怖っ。
あっ。
あそこに落ちて篠田さんは亡くなっていたんです。
君の言う科学的根拠とは?それはペンションに着いてから。
(藤村)申し訳ありません。
今日は一部屋しか空いてないんです。
一部屋!?
(藤村)あの自殺騒ぎがあって予約が全部キャンセルされちゃいましてね。
あっ。
じゃあ部屋は空いてるんじゃ?
(藤村)この機会に古いベッドを交換することにしたんです。
はあ。
(藤村)一部屋だけ新しいベッドだったんでお泊まりになれます。
あっいや。
でも…。
(藤村)セミダブルなんでちょっと窮屈かもしれませんが。
あっ。
そういう問題じゃ。
いや。
むしろ問題です。
構いません。
えっ?まったく問題ありません。
(藤村)それにそこは亡くなった女性がお泊まりになった部屋なんですが。
ぜひその部屋で。
ええー!はい。
どうぞ。
食事は6時から8時の間でお願いします。
どうも。
はい。
じゃ失礼します。
あっいや。
ちょっちょっと。
さあ岸谷君。
さあ。
あっ。
ああ。
中島君。
痛て。
ああ。
ちょっと。
聞かせてくれ。
君の科学的根拠とやらを。
あっいや。
その前にまずいでしょ?先生と私がおんなじ部屋だなんて。
大した問題じゃない。
ウップス。
何でよ?僕から見れば君はつまり。
美人じゃない。
ハァー。
女とも思ってない。
それ以前に君は刑事だ。
科学的根拠は?あの日。
あっ。
つまり事件のあった日。
このペンションに最初に着いたのは私でした。
(藤村)《ああ。
早かったね》《えっ?まだ誰も?》
(藤村)《うん。
岸谷さんが一番乗り。
さあどうぞ》次に到着したのが亡くなった篠田真希さんでした。
(真希)《ハァ。
こんにちは》
(藤村)《ああ。
いらっしゃい》《こんにちは。
初めまして。
岸谷美砂です》
(真希)《ああどうも。
篠田真希です。
よろしくね》《実は私山ガールデビューなんです》《色々教えてください》
(真希)《分かった分かった》
(藤村)《今コーヒー入れっから》
(真希)《ああ。
いい》《少し部屋で休ませてください。
ちょっと寝不足なの》《ごめんね》《ああ。
どうぞどうぞ》その後横浜でOLをやっている女性たちが着いて。
(加奈子)《ああ。
着いた》
(愛)《あっ。
いやー。
懐かしい…》そして外が暗くなったころ野木祐子さんが到着しました。
《ごめんなさい。
遅くなっちゃって》《言い出しっぺは私なのに。
野木祐子です》
(愛)《あっ。
潮見です》
(加奈子)《関です》《岸谷です。
よろしくお願いします》
(祐子)《よろしくお願いします》
(藤村)《また実験で時間かかったの?野木さん》
(祐子)《そうなの》彼女はこのペンションの常連のようでした。
《あっ。
実験?》
(祐子)《私NTC製作所で研究員をやってます》
(愛・加奈子)《えー!》
(愛)《理系女子ですね》
(祐子)《あっ。
今回一緒の篠田真希さんは同じ研究仲間で》《あっ。
篠田さんは?》
(藤村)《うん?》
(祐子)《先に着いてるはずなんだけど》
(藤村)《ああ。
疲れたから少し休みたいって》《ああ。
部屋にいらっしゃいますよ》《そう。
彼女もずっと大変だったから》《私の知り合いにも理系の人います》《もうすっごい変人》いきなり僕のことをそう紹介したのか?名前は出してませんよ。
変人物理学者って言っただけ。
その後野木さんは篠田さんを呼びに行きました。
(祐子)《篠田さん。
食事の時間よ》
(ドアノブを回す音)
(ノック)
(祐子)《篠田さん?》《鍵掛けちゃってるみたい》
(愛)《えー?寝ちゃったのかな?》
(加奈子)《かもね。
疲れたって言ってたから》《でも晩ご飯ちゃんと食べて夜しっかり寝た方が》
(藤村)《そうだよ。
あしたは5時起きで登んだから》《5時だ》
(祐子)《ですよね》《早いな》《外から声掛けてみる》《外から?》
(愛)《もう暗いですよ?》《誰か一緒に来て》《あっ。
いいですよ》《あれ?明かりついてないですね》
(祐子)《やっぱり寝てるんだ。
篠田さん》この時点では廊下のドアもベランダの窓も鍵が締められていて。
篠田さんは間違いなくこの部屋の中にいたんです。
結局私たちは篠田さん抜きで晩ご飯を食べました。
事件が起こったのはその1時間後くらいです。
(藤村)《あれ?》ベランダの窓が開いていて彼女の姿が消えていたんです。
捜そうにも外は真っ暗で。
捜索願を出した。
そして彼女は翌朝遺体で発見されました。
なるほど。
地元警察は現場の状況から自殺だとみています。
だが君は納得していない。
だって誰かに呼び出されて突き落とされた可能性もあるでしょ?その誰かが野木さんだと?はい。
だが彼女にはアリバイがあるじゃないか。
君たちとずっと一緒にいた。
食事の後最初にお風呂に入ったの野木さんです。
その20分間彼女は私たちの前から姿を消していたわけです。
風呂?この窓から外に出て篠田さんを誘い出したというのか?はい。
お風呂に入ったふりをして。
そこまで彼女を疑うということはよほどの根拠があるんだろうな?はい。
しかも科学的な?科学的です。
It’sveryveryscientific.ああ。
知りたくてたまらないのね。
ああ。
もうじれったくてじれったくて。
言います言います。
すいません。
あっ。
実はあの夜こんなことがあったんです。
(愛)《下手くそ!》《どういうことよ?》《お先に頂きました。
次どうぞ》
(愛)《ああ。
どうぞどうぞ》
(加奈子)《どうぞ》《じゃあお先に》《どうでした?気持ち良かったですか?》《お湯の中で寝そうになっちゃった》
(愛)《えー?野木さん夏なのにお湯に漬かるんですか?》
(祐子)《うん》
(加奈子)《私はシャワーだけ》《私もお湯に漬かんないと疲れ取れないんですよ》《そうよね》何がおかしい?普通の会話だ。
問題はその後です。
・
(鼻歌)《ハァー。
気持ちいい》《えっ?》泡?ちっちゃな泡が立ったんです。
この辺りに。
それはおかしい。
でしょ?小学生のころだかに本で読んだんです。
お風呂に入って体に泡が付くのは最初に入った人だけだって。
水には大量の空気が溶け込んでいる。
その水を沸かすことで溶け込んだ空気が泡となって出てこようとする。
それを過飽和という。
これですよね?最初に風呂に入ったとき体にたくさんの気泡が付くのはそれまで辛うじて水に溶けていた空気が刺激によって一気に放出されるからだ。
そう書いてます。
君が入るより前に野木祐子が風呂に入っていたとしたら過飽和の状態はすでに終わっていて君の体に気泡が付くことはあり得ない。
つまり美人の野木さんは…。
《お湯の中で寝そうになっちゃった》嘘をついた。
どうしてそんな嘘を?嘘をつかなければならない理由があったからだ。
お風呂に入っていた20分間に野木さんは窓から抜け出し篠田さんを連れ出してあの谷底に突き落としそしてまた窓から戻って何食わぬ顔で私たちの前に出てきた。
そう。
シャワーで髪の毛をぬらすことは忘れずに。
実に面白い。
よっしゃ。
早速実験開始だ。
えっ?仮説は実証して初めて真実となる。
準備ができた。
始めるぞ。
はい。
・
(ノック)近っ。
(たたく音)えっ?もうすでに1分経過した。
急ごう。
えっ?あっ。
ちょっと。
靴どうすんの?サンダルがある。
えっ?篠田さんは何て言われてベランダ窓から?そんなことはいい。
不審に思わなかったんでしょうか?今は20分以内に犯行が可能かどうかの検証だ。
ちょっと。
湯川先生?ちょっと速いな。
もう4分たった。
急ごう。
急げって言われて急ぐかな?あと6分以内に君を突き落とさないと間に合わない。
変!ハァー。
間に合わない。
走るぞ。
走る!?ちょっと。
もう!おおっ。
湯川先生!何?こっちの方が近い。
えっ?いや。
サンダルが脱げる。
無理。
もう。
ちょっ。
あっ!ここで君を突き落とす。
えっ?いきなり!?君は谷底に落ちていく。
少しは口論になるとか。
君が死んだのを確認した。
もみ合いになるとか。
間に合わない。
急ぐぞ。
えっ?ちょっ。
もう!23分26秒。
ハァー。
(男性)あっ。
こんちは。
(女性)こんにちは。
(男性)足気を付けて。
(女性)うん。
(男性)大丈夫?うわっ!あっ。
おろろろ。
ハァー。
やはり20分で篠田真希さんを殺して戻ってくることは不可能だ。
じゃあ私の体に付いてた泡は?過飽和の現象はどう説明するんですか?野木さんは風呂に漬からなかったんだろう。
じゃあどうして彼女は嘘を?それと科学的な根拠とは無関係の問題だ。
しかし目の付けどころは悪くなかった。
文系の君にしては上出来だ。
先生はおかしいと思わなかったんですか?君はどうしても野木祐子を犯人にしたいのか?質問してるのは私です。
まさか非論理的な刑事の勘?いいえ。
女の勘。
さらに非論理的だ。
ハァ。
先生には分からないんです。
野木祐子は絶対に魔性の女だって。
そろそろ食事の支度をしてもよろしいですか?お願いします。
はい。
先生。
やっぱ駄目ですって。
おんなじ部屋に泊まるのは。
2人で同じベッドに寝るなんて。
食事が終わったら僕は出ていく。
えっ?近くに友人の別荘があるんだ。
今夜はそこに泊まることにした。
今度は野木祐子本人に会わせてくれ。
はっ?あっ。
やっぱり会いたいのね。
(祐子)どうぞ。
どうも。
それが篠田真希さんです。
どうぞ。
ありがとうございます。
篠田さんもあなたと一緒に研究を?ええ。
担当は違いましたけど。
あっ。
実は篠田さんが亡くなったことについてお伺いしたいことがあります。
やっぱりそのこと。
私も篠田さんのことが頭から離れないんです。
彼女は優秀な研究員でした。
性格も明るくて。
私にとっては部下というよりホントに仲間だったんです。
岸谷君は篠田さんの死を他殺だと考えています。
えっ?そして犯人は。
野木さん。
あなたではないかと疑っています。
湯川先生。
一つだけ質問をさせてください。
はい。
事件の夜最初に風呂に入ったのはあなたですよね?ええ。
そのときあなたは湯船に漬かりましたか?いいえ。
漬かっていません。
あのときはシャワーを浴びただけです。
そうですか。
嘘。
お風呂で寝そうになったって言いましたよね?言ってませんそんなこと。
それが篠田さんのことと何の関係があるんですか?私が疑われる理由になるんですか?しらばっくれないで。
申し訳ありませんでした。
お時間を取らせてしまった上につらい話を思い出させてしまった。
湯川先生。
次はぜひ先生のご研究のお話を。
おいしいコーヒーをありがとうございました。
では失礼します。
あっ。
ちょっ。
先生。
彼女を信じるんですか?風呂場から抜け出して20分で殺害を実行することは不可能だ。
その上湯船に漬かってないと言われれば彼女を疑う理由がなくなる。
あれは嘘だって。
見てて分かんなかったの?一瞬固まってたじゃない。
人間観察には興味はない。
そして事件捜査に協力するほど僕は暇ではない。
どうして簡単にだまされんの?彼女が美人だから?それはまったく別の話だ。
どうせ私は違うわよ。
自慢できるようなスタイルでもないしカワイイしぐさなんて絶対にできないし。
その上高学歴な女なのかもしれません。
でもそれ以前に私は刑事なの。
刑事の勘と女の勘の両方が指さしてるんです。
野木祐子が怪しいって。
それは実に非論理…。
非論理的。
分かってますそんなこと。
でも一人の女性が亡くなってるんです。
自殺する理由なんてない優秀な研究者が。
ハァー。
私が間違ってんだったらそれでいい。
でも真実ははっきりさせたいの。
亡くなった篠田さんのためにも。
私一人で聞き込み続けます。
(研究員)《じゃあ皆さん。
笑顔で。
はいチーズ》
(研究員)《ちゃんと撮れてます?》
(真希)《ありがとうございます》
(祐子)《篠田さん。
おめでと》
(真希)《主任。
ありがとうございます》
(研究員)《篠田さん。
おめでとうございます》
(真希)《やだ。
ありがとう!》
(研究員)《若いのにすごい》《いやいやいや。
そんなことないですって》
(研究員)《ちょっと見せて…》
(真希)《どうぞどうぞ》
(大倉)篠田さんの人間関係?はい。
(大倉)まあねたんでる人はいたかもね。
優秀だったから?
(大倉)自分をアピールするタイプだったし。
帰国子女にありがちな?
(大倉)じゃあ。
あの。
例えば野木さんとは?
(まゆみ)主任自身が篠田さんを嫌ってたってことはないと思うけど。
けど?
(まゆみ)若い世代がどんどん育ってくるから主任自身色々焦ってるみたいで。
(まゆみ)じゃあすいません。
(久保田)お待たせしました。
いえ。
(久保田)これでよろしいですか?
(久保田)いまさら何調べてんですか?自殺だったんでしょ?彼女。
(警備員)今日はもうお帰りください。
分かりました。
(アイザック)わざわざコピーを取り寄せたんですか?篠田さんの体に不審な点は?
(アイザック)被害者の爪に誰かの皮膚が付いていたわけでもないし。
言い争う暇もなくいきなり突き落とされたからじゃ?
(アイザック)他殺を疑う理由はありませんね。
(研究者)いやー。
若い世代の研究者ってのは面白いですね。
(研究者)われわれの世代とは根本的な発想からして違いますからね。
歴史上の科学者たちもやがては次世代の優秀な科学者に越えられていく。
それが研究者の宿命でしょう。
(研究者)湯川先生に限ってはそんなことはないでしょう。
(研究者)次のフォーラム湯川先生に講演をお願いしたいですね。
機会があればぜひとも。
それでは。
(太田川)岸谷。
お前山梨県警の事件に首突っ込んでんのか?太田川さんには関係ありません。
(太田川)いや。
課長んとこに県警から電話入ったんだって。
(太田川)お宅の若いのがうちの捜査に口出ししてるっつって。
いいかげんにしないとお前処分されるぞ。
ああ。
ハハハ。
処分。
えー!?
(バイブレーターの音)ハァー。
(バイブレーターの音)何でしょう?女の勘と刑事の勘が同じシグナルを発してるからといって合わせ技一本という論理は決して成り立たない。
はあ?もし彼女が本当は風呂に入っていないにもかかわらず君に対して「風呂に入った」と嘘をついているのだとしたらもう一度君の仮説の実証を試みてもいい。
えっ?もし君が自分の金で高価な服を買うとしたらそれはどういうときだ?高価な服?
(祐子)これ見せてください。
おそらく自分の1カ月の収入を優に超える額を惜しげもなく使うんだ。
喜々とした表情で。
えっ?目的を果たした自分へのご褒美?自分へのご褒美。
えっ?捜査に協力してくれるんですか?協力するわけじゃない。
真実をはっきりさせたいだけだ。
それで?調べてくれ。
野木祐子は今までどんな研究をしてきたのか。
もう調べてます。
どこに行けばいいんですか?だから?何でここなの?はい。
ハァー。
350万!?野木祐子は東京化学技術大学。
ああ。
やっぱり喫茶店にしましょう。
先生。
ここは落ち着かない。
篠田真希さんはUCLA。
先生!入社してからの実績は篠田さんの方が上だ。
野木祐子は努力型。
篠田真希は天才肌の研究者だったそうです。
会社の上司の話では。
そして野木祐子は最近思うように研究の成果が上がらず仕事に行き詰まりを感じていたようです。
同じ分野の研究で後輩の篠田さんに先を越され彼女の研究は時代遅れだと言い切った同僚がいたそうです。
「コヒーレンス」このままじゃ自分は必要とされなくなり管理職に回されるというプレッシャーもあったんでしょう。
・
(女性)すごい。
アハッ。
アハハ。
すごい迫力だね。
篠田さんは野木祐子のことを気兼ねのいらない上司だと思っていたかもしれませんが彼女からすればいまいましい部下だったのかもしれません。
《密室殺人》
(祐子)《光子と電子の相互作用》《目的を果たした自分へのご褒美?》そういうことか。
このテーブルは幾ら?幾らなの!?岸谷君。
1週間後の夜僕の研究室に来てくれ。
よ…夜?そう。
夜だ。
湯川先生?岸谷です。
・入ってくれ。
えっ?どうして明かりつけないんですか?先生。
今日は栗林さんいないんですか?コーヒー飲まないんですか?湯川先生?えっ?僕はここだ。
あれはホログラム。
ホ…ホログラム?野木祐子がかつて研究していたコヒーレンスとはホログラム。
つまり立体映像に応用される技術だ。
このホログラムを使えば篠田さんの部屋を密室に見せ掛けることができ彼女自身のアリバイも立証することができる。
お話というのは?湯川先生が一つの仮説を立ててくれました。
あなたが篠田真希さんを殺せるただ一つの方法。
篠田さんはあなたがお風呂に入っていた20分間ではなくもっと前に殺されていた。
あなたがあのペンションに到着する前に。
《あっ。
もしもし?祐子さん?》《ああ。
ちょっと疲れてうとうとしてました》あなたは篠田さんに電話をかけ誰にも気付かれないようにベランダから出てつり橋まで来るようにと指示をした。
岸谷さん。
篠田さんを待ち受けていたあなたは。
《篠田さん》《どうしたんですか?祐子さん》
(祐子)《ちょっと下見て》
(真希)《下?》
(真希)《あっ!》目的を果たしたあなたはペンションに向かった。
ちょっと待って。
あなたの知識が生かされるのはここからです。
ペンションに着いたあなたは中には入らず篠田さんの部屋に向かい。
まず用意してきたサンダルを篠田さんの部屋のベランダに置き窓にある細工をした。
そして何事もなかったかのように。
《ごめんなさい。
遅れちゃって。
言い出しっぺは私なのに》《篠田さんは?》
(藤村)《うん?》《先に着いてるはずなんだけど》《篠田さん。
食事の時間よ》あれはお芝居だった。
そしてわざわざ私と窓を確認しに行った。
《篠田さん。
起きて》あのとき確かに鍵は締まっていました。
だから当然篠田さんは部屋の中にいると私は思った。
あれはホログラムだったんですね。
《見る人間の立ち位置と光を当てる角度によって何もない空間に立体映像をつくりだすことができるんだ》《野木祐子はこれと同じ方法を使ったんだ》《どういうこと?》《鍵が締められているように見えるホログラムシールが貼られていたんだ》あなたがペンションに入る前にした細工とは窓にホログラムシールを貼ること。
《そしてその映像が完全に立体的に見えるためには光の当て方が重要なんだ。
ほら》
(ノック)
(祐子)《篠田さん。
起きて》
(ノック)
(祐子)《篠田さん》《あれ?》《戻ってご飯を食べましょう》《篠田さんには私が後で声掛けるから》《はい。
うわー。
奇麗》《東京とは全然違うでしょう?》《はい》食事が終わってあなたはお風呂に入りそして外に出た。
ホログラムシールを剥がすために。
《お先に頂きました。
次どうぞ》《じゃあお先に》《どうでした?気持ち良かったですか?》《お湯の中で寝そうになっちゃった。
フフッ》緻密に計算された犯行でした。
でも唯一の誤算は文系の私に水の過飽和という妙な知識があったということ。
今言ったのはあくまでも湯川先生の仮説です。
いかがですか?野木さん。
やっぱり悪いことはできないわね。
きっと私がどうして篠田さんを殺したのかも分かってるんでしょ?刑事さんは。
そ…それは自白と取ってよろしいですか?どうせだましとおせるはずはない。
私は篠田さんを…。
私を上司だと慕ってくれてた若くて優秀な研究者を殺してしまいました。
あの子がいなくなれば楽になれると思ったのに。
逆だった。
楽になるどころか…。
野木祐子が全て自白しました。
殺害手段とトリックは湯川先生の仮説どおり。
殺害動機は私の推理どおりでした。
そうか。
がっかりしてるんでしょ?先生。
美人な同業者が恐ろしい犯罪を犯していたから。
先生が彼女のことを疑ったのは高級ブティックでぜいたくな買い物をしてるところを見たからでしたっけ?答えは合っていたけど途中の計算式は間違ってたみたいな。
どういう意味だ?あのときの買い物で彼女は貯金のほとんどを使い果たしたそうです。
つまり後先考えない無茶な買い物だった。
そういうことするのはストレスをためまくってるとき。
彼女は自分を責め続けていたんですよ。
自分へのご褒美なんかじゃない。
彼女は根っからの悪人じゃありません。
よかったですね。
先生。
自分へのご褒美と言ったのは君の方だ。
言ってません。
言ったじゃないか。
言ったのは先生でしょ。
君は根に持ってるのか?はあ?僕が君のことを美人じゃないと言ったことに対して。
別に。
カワイイって言われることあるもん。
フッ。
それはよかったな。
だがしかしカワイイと美人は別物だ。
まったく違うカテゴリーなんだ。
はあ?美人かどうかは顔の長さ。
そう。
目と口の距離が顔の長さの36%。
両目の間隔が顔の幅の46%の割合で顔面に配置されてるかどうかという黄金比率と呼ばれる数値的根拠が存在するんだ。
しかしカワイイには数値的根拠は存在しない。
つまりカワイイとは限りなく非論理的な感覚的主観でしかないということなんだ。
しゅ…主観で結構。
カワイイって言われて何が悪いの?めちゃめちゃうれしいです。
ああ。
だからよかったじゃないか。
僕は数値的根拠のない感覚的主観であるカワイイにはまったく興味がないと言ってるんだ。
分かったら帰ってくれ。
ううー。
2015/05/25(月) 14:55〜15:50
関西テレビ1
ガリレオ #06[再][字]
「密室る(とじる)vs女性科学者!!空白の20分の殺人術」
福山雅治 吉高由里子 渡辺いっけい 澤部佑 夏川結衣 ほか
詳細情報
番組内容
帝都大学物理学科准教授・湯川学(福山雅治)のもとを訪れた貝塚北署の岸谷美砂(吉高由里子)は、山歩きのイベントで起きた殺人事件への捜査協力を依頼する。
事件当日、美砂は、某有名企業の主任研究者・野木祐子(夏川結衣)が主催する山歩きのイベントに参加していた。死亡したのは、イベント参加者のひとりで、祐子の同僚でもある篠田真希(遊井亮子)。美砂に続いて宿泊先のペンションに到着した真希は、
番組内容2
美砂やペンションのオーナー・藤村伸一(おかやまはじめ)に挨拶をすると、疲れているからと言ってすぐに部屋にこもり、夕食の時間になっても姿を現さなかった。心配した祐子は、美砂とともに、ベランダ側に回って真希に声をかけた。だが、窓は施錠されており、返事もなかった。ところがその1時間ほど後、藤村は、真希がベランダから出ていったらしいことに気付く。渓流で真希の死体が発見されたのは、翌朝のことだった。
番組内容3
地元警察は、現場の状況から自殺だと判断していた。
だが美砂は、祐子に疑いの目を向けていた。食事の後、最初に風呂に入ったのは祐子で、その間の20分間、彼女は美砂たちの前から姿を消していたのだ。実は美砂が祐子を疑ったのは、もうひとつ、科学的なある理由があったからだった。祐子の写真を見て「美人だ」と反応した湯川は、美砂の言う「科学的な理由」に興味を抱き、事件があったペンションを訪れるが…。
出演者
福山雅治
吉高由里子
澤部佑(ハライチ)
渡辺いっけい
ほか
スタッフ
【原作】
東野圭吾
【脚本】
福田靖
【企画】
鈴木吉弘
【プロデュース】
牧野正
【演出】
西坂瑞城
澤田鎌作
【音楽】
福山雅治
菅野祐悟
『オリジナルサウンドトラック』(ユニバーサルミュージック)
【主題歌】
KOH+『恋の魔力』(ユニバーサル J)
【制作】
フジテレビドラマ制作センター
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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