(吾妻源一郎)やあーっ!!
(戸の開く音)遅いぞ!…武蔵。
(剣道の稽古の音)
(伊丹憲一)小手ーっ!!
(亀山薫)い…クソったれ…!
(伊丹)行くぞ!あ痛ーっ!いい…わかった!もういい…。
参った参った参った…。
(剣道の稽古の音)痛ぇ…あ…ああ…。
フン…未熟者。
(笑い)クッ…クーッ…!ああークソ!こっちはね本格的に始めて間もないんだからしょうがないっすよ。
柔道ならね伊丹なんぞに負けやしませんよ〜。
いや剣道以外なら何ひとつ負けません!
(杉下右京)君は無駄な動きが多すぎますよ。
構えを崩す事は隙を作る事ですからねぇ。
柔剣道さぼってる人に言われたくありませんねぇ。
警察官の義務ですよ〜。
さぼってなどいません。
見た事ないっすよ。
右京さんが竹刀振ってるとこなんて。
僕は僕なりに稽古をしているんです。
僕は剣道も達人なんですよ。
達…!?何ですか?今の。
あいえ別に。
信じていませんね?信じてますよ達人なんでしょ。
ええ。
そうですか。
そうですよ。
(角田六郎)暇か?おはようございます!いや〜伊丹の野郎血相変えて飛び出していきやがったよ。
伊丹が?どこへ?殺されたんだよ。
これの先生が。
…ん?
(パトカーのサイレン)
(三浦信輔)吾妻源一郎…!?
(三浦)警察の道場にもよく教えにきてたな。
(芹沢慶二)元全日本覇者ですからねぇ。
まあ僕なんか恐れ多くて近寄れなかったけど。
あ伊丹先輩はよくこの道場にも通って…。
(ノック)
(ドアの開く音)
(望月勇)伊丹さん…。
師範の望月先生だ。
望月です。
こちらは吾妻先生のご子息俊一君だ。
(伊丹)道場で事務をやっておられる。
この度は…。
朝道場に来てみたらあのような事に?いえ発見したのは我々じゃありません。
桂木です。
桂木さん…?彼女が朝一番に来て道場の掃除をするので。
今母屋のほうにいるはずです。
(小枝を振る音)お見事。
(桂木ふみ)ここに入れてあった居合用の日本刀が見当たらないんです。
もちろん許可を取って登録を済ませた刀ですね?当然です。
よく真剣を使って稽古を?まさか。
一般の生徒さんに真剣を持たせたりはしません。
ここの鍵を自由に使えるのは限られた数人だけです。
他になくなっているものなど変わった点はありませんか?どんな些細な事でも結構です。
いえ。
特に変わったところはありません。
そうですか。
特命係の未熟者。
(三浦)何でここにいるんですか?警部殿。
「現代の侍」と称される剣士が一刀両断に斬殺された。
大変特殊な事件です。
好奇心を抑えられませんでした。
警部…好奇心とは何ですか!?お気に障りましたか?高校の時全日本選手権をテレビで見て以来憧れの剣士だった…。
興味本位で首を突っ込まれると不愉快です!!桂木さんちょっと。
叱られました。
ですね。
(三浦)館長と真剣勝負をして勝てるとしたら誰でしょう?いませんよ。
私なんてまるで歯が立たない。
もちろん私も。
あ俊一さんは?彼は剣道をやらない。
(吾妻俊一)子供の頃からぜんそくがあるもので…。
館長と渡り合える者がいるとしたらやはり関先生くらいのものですが…。
(三浦)関先生とは?関正人七段。
名誉顧問だ。
でもありえません。
関先生と館長はともに30年来切磋琢磨してきた無二の親友です。
先輩!館長の寝室にこんなものが。
(パトカーのサイレン)
(米沢守)事故でないのは確かです。
ガイシャの刃には刃こぼれが少なくとも6か所あります。
激しく刀を合わせて戦ったあげく正面からバッサリって事になると敵も相当腕の立つ剣士…。
おのずと絞り込まれるでしょうね。
むろん犯人が複数であるという可能性は否定できませんがここはやはり1対1の決闘であってほしいところですね。
そうだと思いますよ。
単純に殺害が目的ならばもっと確実な方法がいくらでもあります。
当代随一の剣の使い手に剣で挑むというのは最も成功率の低い殺害方法の1つでしょうからねぇ。
しかし犯人はあえてそれを選んだ。
正々堂々と戦って倒す事にこそ意味があったわけですなぁ。
まさに巌流島の決闘さながら。
入場料を払ってでも見てみたかった一戦ですねぇ。
そういう事言うと伊丹の野郎に叱られますよ。
え?
(三浦)「我等真剣を以って立ち合い候末一方或いは双方命を落とす事と相成り候えども元より覚悟の上なればその罪問う事無きよう書付を以って約し候者也」「関正人。
吾妻源一郎」これは何ですか?
(関正人)武士道というは…死ぬ事と見つけたり。
このまま老いさらばえて病院のベッドで朽ちるのか…。
積年抱き続けてきた思いが抑えがたく…3日ほど前にしたためました。
その思いとは?剣聖吾妻源一郎と真剣をもって切り結び…果てる事ができるなら…。
剣に死するは武芸者の本懐…。
(関)しかし勝負とはわからないものです…。
この老いぼれが生き残ってしもうた…。
(ため息)
(芹沢)覚書の筆跡血判の血液指紋それから道着の返り血…どれも本人たちのものに相違ないそうです。
しかしどうにも理解しがたい話でして…。
(中園照生)部長どう思われます?部長も剣道に打ち込まれた1人として…。
部長?
(内村完爾)まだいたんだなこの国にも侍が…。
剣の道を究めんとした末の悲劇。
…そういう事だろう。
…先輩?
(亀山美和子)「武士道とは死ぬ事と見つけたり」…か。
何だかすごい話だね。
すごいの通り越してバカだよ。
剣道バカ。
時代錯誤もはなはだしい。
(宮部たまき)いくら合意の上とはいっても殺人は殺人なんですよね?同意殺人という事になるでしょうねぇ。
まったくラストサムライの考える事はね俺たち凡人には理解できませんよハハ…。
いらっしゃい。
…えっ!?…熱燗で。
(たまき)はい。
おおっとこりゃ参ったぜ〜。
まさか特命行きつけの店だったとは…。
いや参った参った…ああ…。
「伊丹刑事からこの店の事を訊かれたので教えました」と先ほど米沢さんから連絡がありました。
(舌打ち)俺たちに何の用だよ?おめえに用なんかねえよ。
あるでしょう。
ねえよ!剣道に年齢は関係ないとはいえ関先生に吾妻館長を斬る事が本当に可能でしょうかねぇ。
…独り言ですが。
手合わせをした事がある俺の実感では無理だと思う。
関先生はすでに現役剣士とはいえない。
…独り言だが。
でも他に吾妻館長に太刀打ちできる男がいるのかよ?ああもちろん独り言だが。
ちょっと何なんですか?この面倒くさい会話は…え?男の人とは限らないみたいですよ。
独り言ですけど。
いやたまきさんはいいんですよ。
あれ?桂木先生…。
前歴者カードですね。
未成年の頃は家出を繰り返し傷害その他何度も起訴されている。
父親が何とか更生させようと吾妻館長に預けたらしいがそこで才能が開花したんだな…。
今や日本屈指の女流剣士だ。
だけど女だろう。
俺は…勝てなかった。
ハハ…負けちゃったの?だったら何で伊丹さん自分で追求しないの?刑事部長に止められたんですね?えっ…何でですか?桂木ふみの父親は警察庁警備局長の桂木忠則です。
そういう事か…。
状況証拠と関先生本人の自供起訴するには十分ですからね。
それでおとなしく引き下がったわけだ。
何とでも言え。
憧れの剣士だったんだろう?尊敬する先生だったんだろ?もう少し骨のあるやつだと思ってたけどな!負ける勝負に飛び込むのはバカだ。
引く時は引く!何!?吾妻館長にもそう教わった。
釣りはいい。
変わった方ですねぇ。
あら。
すっかりきれいになりましたね道場の床。
1日でも早く道場を再開する事を館長も願ってると思いまして。
同感です。
じゃ手始めに俺に稽古つけてもらえませんか?桂木先生。
喜んで。
大丈夫ですか?強いったって女性ですからね。
吹っ飛ばされる事はないでしょ。
お願いします!ああー!!参った…参った。
君は期待を裏切りませんねぇ。
ああ…ハァハァ…。
お見それしました。
亀山さんは無駄な動きが多いようです。
無駄な動きはそれだけ攻め込まれる隙を作ります。
同じ事を言われましたこちらの達人にも。
杉下さんともぜひお手合わせしたいですね。
僕はもう十分見稽古をさせていただきました。
見稽古って…。
桂木さんちょっと協力していただけますか?ちょっと気になる事がいくつかありましてねぇ。
どういった点でしょうか?関先生は死後の処理をしてないみたいなんですよ。
死後の処理…?ええ。
命をかけて館長と決闘したんなら死後の資産処理なんかをしておきそうなもんでしょ?でも一切していない。
ちょっと気になりません?関先生がやったのではないかもしれないと?お酒がお好きだったんですねぇ館長は。
父の唯一の楽しみでした。
そうですか…。
これは水墨画…ですか?どちらも宮本武蔵が描いた『古木鳴鵙図』の模写のようですねぇ。
館長と関先生がお描きになったんですね?酔っ払ってよくそんな事を。
へえ〜そんなお茶目な一面もあったんだ。
何だか親しみを感じますね。
ええ。
「剣聖」「現代の侍」…そのような形容詞を聞くと剣の道に没頭するあまりあのような常軌を逸した行動に走る人物たちのように思えますが本当の剣道家とはむしろ人一倍常識やモラル社会性を身につけているものではありませんかねぇ。
いかがでしょう?私もそう思います。
ですが例の覚書が…。
そうなんですよねぇ。
あれが問題なんです。
いずれにしろ近いうちにはっきりします。
また押しかけると思いますがご協力お願いいたします。
もちろんです。
よろしくお願いします…。
おおはい!任せておいてください。
(剣道の稽古の音)
(ふみ)はいもっと声出して!次!…次!もっとこう振りかぶって…!
(子供たち)待てー!待ってよー!あっやっぱりまた押しかけちゃいましたハハ…。
こういうとこでも教えてらっしゃるんですね。
ええ週1回日曜だけですけど。
道場にお伺いしたのですが今日はこちらの剣道教室にいらっしゃるという事でしたので。
朝から生徒さんが来るんで道場には寄らずに直接こっちに。
剣道で子供たちの心身を鍛える。
素晴らしいですねぇ。
実はですね…。
これについてご意見を聞かせてもらえないかな〜と思いまして。
関先生は事件の3日前にこれを作ったって言ってました。
何で作ったその日に決行しなかったんすかね?気持ちが揺れてたのかしら。
あるいは決行するつもりはなかったか…。
この紙ねよく見ると結構汚れてるんすよね。
ね?でほら何か油のシミみたいなのがベタベタついてるんですけども何だと思います?さあわかりません。
うちの鑑識の意見ではするめいかの脂ではないかと。
するめいか?お2人ともお酒がお好きでしたよね。
それが?事務室にあった火鉢の網確かにするめいかのにおいがしたんですよ。
するめいかを肴に酒を飲みながらこれを書いたんだとすると関先生の証言とはちょっとニュアンスが違ってきちゃうんですよねぇ。
あの酔っ払って模写した水墨画。
まさにあれと同じだったのではないでしょうかこの覚書も。
(関)おおうまく書くもんだな。
(吾妻)ハッハッハ…。
この「相成り候えども」ってのがいいな。
よし!せっかくだ。
血判といくか。
よし!よし!
(2人の笑い声)無礼な言い方をすれば「のんべえ2人の悪ふざけ」。
(ふみ)本当に無礼な言い方ですよ。
すみません。
しかしそう考えるほうが僕としては合点がいくんですよ。
関先生は真犯人をかばうためにたまたま酔狂で作った覚書を利用なさったんじゃありませんかねぇ。
どう思います?どうして私に?はい?どうして私に訊くんです?もしかして私の事疑ってらっしゃいます?おやおや。
「おやおや」じゃありません。
いいですか?私の実力は館長の足元にも及びません。
十本やって一本取れれば奇跡。
しかしそれは防具をつけて竹刀で打ち合った場合の話ですよねぇ。
真剣の場合は話が別だと思いますよ。
同じですよ。
むしろ館長のほうが真剣を使い慣れていた分余計歯が立たないでしょう。
僕の言っているのは技術論ではありません。
相手を殺すという事これは心と心の問題です。
殺意があれば殺せる。
なければ殺せない。
問題はそこなんですよ。
私そろそろ行かないと…。
午後のクラスがあるんです。
それはそれは。
お邪魔しちゃってすいませんでした。
いいえ。
関先生が誰かをかばっている…。
望月先生あなたが吾妻心聖館の師範になられたのは割と最近ですねぇ。
ええ。
あのちょっと言いづらいんすけど…。
選手としてこれといった実績のないあなたが何で師範になれたのかな…なんて。
金ですかね。
…金?うちの会社が買い取る事で話がついてたんですよ道場。
買い取るって…?家も丸ごとね。
都心で立地いいでしょあそこ。
うちの会社の福利厚生施設になる予定なんです。
福利厚生施設っていうとその…社員寮とかそういう類の?ええ。
じゃあ道場は?吾妻心聖館の名前は残して小さな道場を敷地内に建てる予定ですけどね。
事実上心聖館の歴史は終わりって事ですよ。
館長も息子の俊一君も我が社の社員として働いてもらう予定でした。
近くに手ごろなマンションを見つけて引っ越す事になってましたし。
その事を他の先生たちは…?知ってたと思いますよ。
納得できない人もいたみたいですが。
とおっしゃいますと?10日ぐらい前だったかな…。
(ふみ)どういう事ですか?
(吾妻)決めたんだ。
(ふみ)道場を売るなんてそんな勝手な…。
君にはすまないと思ってる…。
君に対する気持ちは今も変わってない。
私たちだけの事じゃないわ。
(ふみ)どうなっても知りませんよ。
それって桂木さんと館長が…。
吾妻心聖館館長夫人。
それが桂木ふみの描いた夢だったとしたら…。
そんなふうに思いたくはありませんがね。
(社員)部長ちょっといいですか?
(望月)おう。
出ばな小手打ち。
桂木ふみの得意技です。
もう天下一品。
でもそれ以上に得意な技は男をたらしこむ事…だったりして。
ハハ…。
まあ館長も奥様亡くして長いから仕方ないか…。
ちょっと失礼。
稽古をつけていただきに行ったまでです。
見え透いた事を言うな。
いやぁ本当ですよ。
剣道の魅力にすっかりハマっちゃいまして。
部長も素晴らしい腕の持ち主でしたね。
ああですってね。
もうやられないんですか?俺も部長に稽古つけていただきたかったな〜。
(内村)やめろ。
みんな言ってましたよ。
部長の剣は勇猛果敢決して下がらず前へ前へ。
(内村)うるさい!!うああ…!
(中園)ああ…雑巾雑巾…。
ああもう…!二度とあの道場に行くな。
それだけだ。
失礼します。
失礼します!どうするんですか?右京さん。
攻め込みますよ。
お!大丈夫ですか?糸口は見えています。
何かおわかりになりました?私と館長が恋愛関係にあった…?かつて素行のよろしくなかったあなたがこの道場に預けられて更生したのは剣道の世界に魅せられたからというより吾妻源一郎という男性に魅せられたから…という見方はまんざら見当違いでもないように思うのですが。
もしそうだったとして何か問題ですか?私も館長も独身です。
だがあなたは裏切られた。
館長夫人の夢ははかなく散った。
なるほど。
それで殺意を抱いたと?あなたは館長に形の稽古をつけてほしいとでも言って呼び出してズバー!ではその説によると関先生はなぜ私をかばっているのでしょうか?こういうのはどうです?無二の親友の名誉のため。
名誉?痴情のもつれで女に斬られたとあっちゃあ剣聖吾妻源一郎の名も地に落ちますからねぇ。
関先生と斬り合って果てたってほうがよっぽど世間体がいい。
素晴らしい。
でも単なる仮説。
はいそのとおり単なる仮説です。
攻め方を変えたらどうです?ではそうしましょう。
あまり見たくない写真でしょうが…。
この写真何となく不自然な気がしませんか?さあ。
僕はずっと気になっていたんです。
きれいすぎるんですよ周囲の床が。
至近距離で斬殺しこれだけの出血があったのならば犯人の足にも血液が付着しそうなものですがねぇ。
ところがご覧のように足跡がどこにもありません。
足跡というのは犯人を確定する重要なファクターになります。
ましてや裸足であったならこりゃもう決定的。
つまり…。
用務室から雑巾を持ってきてきれいに拭き取ったのではないでしょうかねぇ。
真犯人を示す証拠を…。
まだ新しい雑巾ですねぇ。
下ろしたばかりですから。
あの日もこうだったんですよ。
…は?我々が最初にここに来た時もここには下ろしたての真新しい雑巾が掛かっていました。
(ふみ)ここの鍵を自由に使えるのは限られた数人だけです。
どういう事ですか?その人物は床の足跡を拭き取りその雑巾を処分した後新しい雑巾を下ろしてここに掛けたんです。
雑巾が汚れたら新しいのを下ろす。
それが一連の動作として習慣になっている人物の仕業に違いない…そう思いましてね。
そんな人物は…。
私くらいでしょうね。
ええ。
さて…どう返します?それ確かですか?はい?あの日本当に新しい雑巾が掛けてありましたか?記憶力だけは自信があるものですから。
そりゃもう異常な記憶力で。
ずるいですよ。
そんなの杉下さんが言い張ったら勝ちじゃありませんか。
では私はこう言います。
あの日雑巾は掛けてありませんでした。
私も記憶力には自信があるんです。
雑巾がないのが変だなと思ったんですよ。
はっきり覚えてます。
ではなぜおっしゃらなかったのですか?僕はお訊きしましたよ。
他になくなっているものなど変わった点はありませんか?どんな些細な事でも結構です。
(ふみ)いえ。
特に変わったところはありません。
あなたははっきりとそうおっしゃいました。
そして確かに雑巾はここにありました。
…前の日です。
館長が亡くなった前日の朝新しい雑巾を下ろしたんです。
思い出しました。
事件の前の日というと日曜日ですねぇ。
あっ日曜日は体育館の剣道教室で道場にはお寄りにならない日のはずですが。
ああ…余計な事しましたね。
無駄な動きは…。
攻め込まれる隙を作る。
今関先生が着ていらした道着を調べ直す手続きをとっています。
万が一繊維に染み込んだ汗や付着した体毛が検出できたらDNA鑑定が可能です。
あの晩あの道着を着ていたのは本当は誰なのか…はっきりします。
桂木さん。
降参。
私の負けです。
本当の事を話してくれますね。
お2人がおっしゃるとおりです。
私がやりました。
どうなさいました?桂木さん俺たちは本当の事を話してくれって言ったんです。
ですから本当の事を。
あなたが真犯人だって言うんですか?あなた方が証明なさったんですよ。
我々が証明したのは事後処理をしたのがあなただという事です。
あなたが犯人だとはまだ言っていません。
私です。
桂木さん!私が犯人です!厳格な警察官僚である父親からのプレッシャーがあなたを一時の非行に走らせたのかもしれません。
でもあなたはそれをバネに剣の道での厳しい修行に耐えうる強さをお持ちです。
しかし世の中あなたのように強い人間ばかりではありません。
違いますか?俊一さん。
やっと出てきてくださいましたか。
俊一君君の事もいろいろ調べたんだ。
君はずっと登校拒否…してたんだってね。
高校も一度も行かずわずか1か月で退学。
それ以後ずっとこの道場で事務をしている。
ですが我々が事務室で見た帳簿や書類はすべて館長と桂木さんの筆跡でした。
だとしたら君の仕事は一体何なのか?やめてください!何もしていない。
ただこの家にいるだけ。
…違うかな?話していただけませんか?「とんびが鷹を生む」の反対鷹がとんびを…。
いや…うじ虫ですね。
父から受け継いだものなんて何もない!
(俊一)ああー!
(吾妻)立て!立てと言ってるんだ!!お前は私の子だ。
弱いはずがない!
(泣き声)男のくせに泣くな!
(竹刀で叩く音)
(吾妻)俊一!出てきなさい!
(ドアを叩く音)なぜ学校へ行かない?俊一!俊一!!
(ため息)
(俊一の声)僕はだんだん外に出られなくなりました。
門弟のどなたに訊いても君がこの家から外出するのを見た事がないって言ってたよ。
館長があなたとの結婚に踏み切れなかったのも俊一さんの事があったからなのでしょうねぇ。
そしてこの道場も家さえも館長は売り払う事を決めた。
スポーツメーカーへの就職も。
館長も苦しんでお決めになられたのでしょう。
すべては俊一さんのためだと信じて。
しかし唯一の居場所を奪われたあなたはますます追い詰められた。
僕だって強くなりたい…。
でも怖いんだ。
少しでも強くなれれば父が考え直してくれるかもしれない。
(俊一の声)父が寝静まった後毎晩ここへ来て刀を振るようになりました。
(俊一の声)そしてあの晩…。
父さん…。
あとで形の稽古をつけてくださいませんか?ああ…わかった。
遅いぞ!武蔵。
…なぁんてな。
(笑い)刃筋を通せ。
こうだろう!
(吾妻)もう1回!何だそのへっぴり腰は!生半可な気持ちで真剣を持つんじゃない!!お前には…この道は向いていないのだ。
無理をするな…。
(俊一)うああーっ!!落ち着け!俊一。
(泣き声)俊一…。
父さんがいたんじゃ前に進めないんだよ…。
いつまでたってもうじ虫なんだよ…!…殺してください。
お願いです…僕を斬ってください。
すまなかった…。
(俊一)うわああー!
(刀で斬る音)そして桂木さんと関先生に相談した。
何が何だかわからなくなりました。
どうして父さんが死んでいるのか…。
僕は殺してほしかったんです…。
父さんに殺してほしかったんだ!あなたに対する贖罪の思いが館長を一瞬剣聖ではなくただの無防備な父親にしたのかもしれませんね。
(ため息)バカげてる…。
あんたも関先生もバカげてる!彼の境遇に同情する気持ちはわかる。
けどだからって無実のあんたたちが彼の罪をかぶるのか!?それがあんたたちの言う武士道ですか?哀れな若君をお守りする侍を気取っていらっしゃるのならばはなはだ考え違いだと思いますよ。
罪をかぶったわけではありません。
はい?私たちも…こうなった責任からは断じて逃れる事ができません。
昔…俊一君が一度だけ外へ出かけていった事があるんです。
勇気を出してアルバイトの面接へ…。
(ふみ)俊一君!
(警官)交差点の真ん中でうずくまっておられました。
(怯える声)余計な事をしなくてもいい。
この道場の名前に泥を塗らなければそれでいいんだ。
あなたはこの道場の事務。
そういう事でいいのよ。
ね?外になんか出なくて大丈夫。
諦めろ。
これも何かの因果だ。
ううっ…!
(ふみの声)俊一君をここまで追い込んだ責任は私たちにもあるはずです。
僕です…。
悪いのは誰でもない。
卑怯にも逃げ隠れしました。
申し訳ありませんでした。
(車のドアを閉める音)お願いします。
いつから彼だと?最初に目をつけたのは亀山君なんです。
彼剣道をやらないはずなのに俺の手握った時にね…。
よろしくお願いします。
小指と薬指の付け根にいいマメができてたんですよ。
俺も最近できたもんで。
あるいはあの時俊一さんは罪を告白しているつもりだったのかもしれませんねぇ。
そうですね…。
桂木さん。
わかってます。
私も罪を償います。
でもその前に杉下さん。
はい。
お手合わせ願えます?
(木刀を合わせる音)何だ!?今の。
巻き技…。
これだけを一生懸命練習したんです。
賢明ですね。
参りました。
ありがとうございました。
どうぞお連れください。
汗を流してお着替えになってはいかがでしょう?あなたが逃げ隠れするとは思っていませんから。
(角田)うん!相手の竹刀を巻き込むようにして手元から竹刀をもぎ取る。
これがね巻き技だよ。
ここのねこの手首の返しこれが肝なんだな。
でも結局はそれだけでしょう?達人とは言えませんよ。
僕は打ち合っても強いんですよ。
そうですか。
そうですよ。
ヘヘ…。
おう!えっ…?ん?はあ?
(角田)何だ?何だ?あいつ。
「これで貸し借りなしだ」?「冷蔵庫で2時間ほど冷やしてお召し上がりください」あっ…!?だそうです。
未熟者め…。
2015/05/25(月) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season5[再][字]
「剣聖」
詳細情報
◇出演者
水谷豊、寺脇康文 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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