9きょうの健康 メディカルジャーナル「病気を治して子どもを産みたい」 2015.05.25


「きょうの健康」です。
今回は月に1回最新の医療情報をお伝えする「メディカルジャーナル」。
テーマは「病気を治して子どもを産みたい」です。
ではまず最近実際にありました一つの例からご紹介致します。
去年の8月30歳の女性が子どもを出産しました。
実はこの女性は高校生の時にがんと診断されました。
抗がん剤が使われる事になりましたが治療の前に医師から抗がん剤の副作用によって将来妊娠・出産が難しくなる可能性があると言われました。
そこで女性は治療の前に自分の卵子を凍結保存しました。
女性はがんの治療を終えてその後結婚。
12年の時を経て去年子どもを出産したのです。
こうした実例があった訳なんですけれども今日はこのがんの治療とそして妊娠・出産を両立させる最新医療について詳しくお伝え致します。
お話をして下さる方ご紹介致します。
今日は…産婦人科特に婦人科のがんの治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今の女性の例はがん治療と生殖医療がすばらしい連携によってうまくいった成功例だと思います。
最近がんなどの医学的適応による卵子の凍結保存に非常に注目が集まっていますが2013年には日本生殖医学会がガイドラインで2014年には日本産科婦人科学会が見解でともに医学的適応による卵子ならびに卵巣組織凍結保存を認めています。
はい。
それではまずがんの治療による将来の妊娠への影響について詳しくお伝え頂けますか?はい。
まずその前に基本的なところをお話ししたいと思いますがここにある真ん中がこれは子宮です。
卵管があって卵巣が1つずつ右と左にあります。
この白い所が卵巣なんですがそれぞれの卵巣の中にはたくさんの卵が入っています。
この卵巣の中には一生分の卵がまず入っている訳なんですけれどもその卵が実はお母さんの体の中にいる時には40万個近くの卵が…。
40万個!はい。
持って生まれてくる訳ですか?卵巣の中に含まれて生まれてくる訳なんですね。
それが徐々にその数が減ってきまして初潮の頃初経の頃になりますと大体20万個ぐらいになります。
それが実はこのように数が減っていく訳なんですが月に1個排卵するためには500個から1,000個ぐらいの卵が選ばれてつまり使われて排卵するという事からこれだけもともと数が必要になってくる訳なんですがその数が徐々に減ってきますとさっきの500から1,000個を下回ると閉経になる訳なんですね。
ただ大事な事はお母さんの体で生まれてきた時の卵子の数というのは個人差があるのでこの数は必ずこの赤いラインのとおりにいく訳じゃなくて人によっては少し早めに閉経になる方もいれば少し長くなる方もいるという事なんですね。
そのがん治療を行うと若い女性でも閉経と同じような状態になるという事になってきますか?がん治療を行う事によって例えばこの30歳の方が抗がん剤の影響で少し数が減ってきますとこの線が少し下に下がってなっていくために閉経が早く起こる可能性がある訳なんですね。
実際に抗がん剤のがん治療の副作用というのは今のお話ですけども一部の抗がん剤の副作用だったりとかあるいは骨盤に直接放射線治療を行わなきゃいけない受ける場合にその副作用として先ほどのように少し数が減って早く閉経が来る。
早発閉経といいますが早期に卵巣の機能が少し衰えてしまう可能性があります。
しかしただこの患者さんはがんの患者さんですのでやはりがん治療を最優先するべきだと思います。
まず命。
自分の。
まずはそうですね。
ですからこういった副作用はあるんですがまずはがん治療を優先していくべきだと思います。
それではまずどうなんでしょう一部の抗がん剤の場合ですねどんな方が影響があるのか具体的に教えて頂けますか?まず2つなんですが抗がん剤の種類によってあと年齢この2つがとても重要です。
抗がん剤の種類というのがさっき一部と言ったんですがアルキル化剤など例えば白血病の方だったり乳がんの方だったりとかそういった方々で使う可能性があるんですが全ての抗がん剤じゃないんですが一部のこういった抗がん剤が副作用として卵巣の機能が衰えてしまうと。
ただ先ほども申し上げたんですが年齢によるんですね。
卵子の数というのは若い方はたくさん数があるんですがある年齢になると数が減ってくる。
これも個人差があるのでですから年齢と薬の種類によって将来の妊娠・出産の可能性というのが必ずしも全員ではないんですが一部の方が少し可能性が低くなるという事です。
そういう意味ではよくお医者様と相談という事が必要ですね。
ですから全てではないので是非主治医の先生とその可能性に関しては相談して頂きたいと思います。
がんのほかにそれでは治療の影響などで出産とかそれから妊娠ですね難しくなる病気というのはあるんでしょうか?はい。
例えば膠原病自己免疫性疾患などの時でも抗がん剤を使う事によってこういったアルキル化剤を使う場合では同じような事が起こる可能性があると思いますね。
でも今日のお話の内容ですねこうした方々でも凍結保存をすると将来妊娠・出産できる可能性があるという事なんですね。
はい。
将来妊娠・出産の可能性としての凍結保存はここに示しています3つの方法があります。
古くから行われているこの受精卵の凍結と新しい技術である卵子未受精卵ですね。
あとは更にまた新しい卵巣組織の凍結。
この3つの凍結保存方法があります。
受精卵の凍結保存に関しましてはパートナーの方がいる場合には卵を取り出してこのパートナーの精子と体外受精をして体外受精をした受精卵を凍結保存しておく。
これが一つの技術です。
治療が終わって少し先が見えてきてこれで主治医の先生が妊娠しても大丈夫だという時期が来たら解凍して受精卵を移植する事になる訳ですね。
一方で新しい技術の一つの卵子の凍結。
先ほどの女性がそうだったと思うんですがこの卵子というのはパートナーがいない方に対する一つの凍結の技術でして卵を取っておいて未受精卵子を採取してそのままこれを凍結保存しておくんですね。
将来治療が…先ほどと同じです主治医の先生が妊娠の許可を出してかつ相手の方が見つかった将来その精子と凍結しておいた卵を体外受精して移植をする。
これが卵子の凍結です。
先ほどの方12年たってという事ですもんね。
この技術は特に日本はすばらしい技術を持っている先生方が多いのでさっきのようにすばらしい結果になった訳なんですが海外ではまだまだ技術が未熟な点があるのでその中での成功はすばらしい結果だったんではないかと思います。
もう一つは最近卵巣組織そのものを凍結する方法が開発されました。
これは先ほどお見せした2つある卵巣の原則として1つの卵巣を取り出してそしてそれを凍結して保存するんですが…。
組織ごと凍結しちゃう?はい。
このように卵巣の中にはたくさん卵子が含まれているのでその卵子を含んだ卵巣組織をそのまま凍結保存しておく訳です。
ただ先ほどと同様で主治医の先生から妊娠の許可が出た場合にその時の生理の状況によってはこの組織片を解凍して例えば片側に残っている卵巣に移植をしたりとかあるいはおなかの中の一部に移植をする事によって保存しておいた卵巣の機能を更にまた復活させる訳なんですが元あった卵巣の場合は自然妊娠する可能性もありますし状況によっては先ほどと同じように体外受精を行う事ができる訳です。
成功例としてはどうなんですか?この技術は1997年からヨーロッパで行われているんですが97年から?97年から。
現在分かっているところでは40名ちょっと40名強の方が…。
世界で?はい。
この技術で出産に成功しているようです。
そしてこの3つのパターンなんですがこれもご説明して頂けますか?どのように選ぶかという事ですよね?まずこの2つを同時に話したいと思うんですが卵子と受精卵は治療までの時間が限られたりとかすると凍結できる数がどうしても少なくなってしまう。
ですからがん治療の内容によってはすぐ治療をしなきゃいけないとか排卵誘発をする事ができなかったりとかあるいは感染とか出血などが心配な場合必ずこれはできる訳じゃないんですがただパートナーがいる方いない方のこの卵子に関しては凍結できる数が少なくなってしまうのが一つのポイントです。
一方で卵巣組織に関しましては卵巣の組織の中にたくさんの卵子が含まれているので数という点では一部の卵巣を取る事によって多く凍結保存する事ができるんですね。
組織ごとですからね。
もう一つの利点は卵を取るための準備だったりとか卵が排卵するためのタイミングが合わせる事なく手術で卵巣を一部取る事ができるというメリットがあります。
しかしこちらの卵巣組織凍結は例えばこの卵巣の組織の中にがんがあるケース。
白血病の方だったりとか卵巣がんの方は凍結する事によってがん細胞が中に含まれてしまう可能性があるのでそういった方は適応対象にはならないんですね。
ただ一方で受精卵や卵子というのはがん細胞の混入は考えなくていいのでそういったケースのメリットはあると思います。
でもがんの治療の内容によっては卵子受精卵の適応も限られてきますし必ずこれを取っておいたから将来絶対大丈夫という訳ではないんですね。
ですからこういった生殖医療という技術は非常に進歩してきているんですが進歩しているは進歩していても絶対的にうまくいく訳ではない中でもまだまだ技術の改良が特に卵子卵巣組織に関しては必要になってきている訳です。
本当こう拝見しますとそれぞれメリットデメリットあって本当にすごく迷いますよね。
どうしたらいいのか。
やはり主治医の先生とよく相談して頂く。
で主治医の先生がやはり相談していく中で生殖を専門とする産婦人科の医師と共に連携してこの治療法を人に合った状況で検討して考えていく必要性があるんじゃないかなと思います。
ご本人も迷うしあと先生とのコミュニケーションといいましょうか患者さんがどういうお気持ちでいるのかという話し合いも非常にやっぱり大切になってまいりますよね。
ただでさえがんの治療を頑張って受けていかなきゃいけない事を先生から説明を受けて精神的にまいっている中で将来のこういった妊娠・出産を考えなければいけないのでそういう点ではなかなか自分の意思で簡単に決める事はできないと思うんですね。
そういった点ではそういった患者さんの気持ちをサポートしていくような体制が必要じゃないかなと思います。
そういう中で凍結保存ですけどどういう所で受けられるかという事なんですけど。
日本産科婦人科学会のホームページを見て頂きますと医学的適応先ほどのがん治療などによって将来妊娠・出産の可能性影響がある場合において未受精卵子ですね卵巣組織の採取・凍結・保存に関する登録をする事が去年から始まりましてこのホームページを見ますと大体全国20か所程度のこういった登録施設が現在一覧となっています。
徐々に数も増えてきているという事なんですがやはりまずはこういう事もそうなんですが主治医の先生にしっかり相談して頂く事が重要じゃないかなというふうに思います。
でも本当に例えば卵子そして組織ごとに凍結保存というといろいろ考える事もあると思うんですけれども今後の課題というとどういう事になりますか?まずはこの技術はとても進歩してきている訳です。
がんの治療も生殖医療も。
その技術の進歩に伴ってがんを専門とする医師と生殖医療を専門とする産婦人科の医師がやはり密な連携をしていく必要がある。
密な連携?密な連携ですね。
その密接な密な連携を更に強化していく必要性があると思うんですね。
それが今後の課題であって技術が進歩してもその技術をしっかり患者さんに対して提供できなければどうしても意味がなくなってしまいますので。
研究会も立ち上げられたんですね。
そういった意味で私どもは日本がん・生殖医療研究会というのを立ち上げさせて頂いてがんの専門の先生方と私ども日本の産婦人科の医師との連携を少しでも強く更に強固にしていくためにそういった活動をさせて頂いてます。
今日お話を伺って本当に自分の命とそして将来赤ちゃんを持てる可能性が非常に高まってきたと。
医療の進歩によって。
そういう実感を持ちましたけれども。
やはりこういった生殖医療があるいはがんの医療が進歩した中でもどうしてもこの患者さんたちはがんを闘っていく必要性がある訳です。
ですからそこら辺をよく理解してあげるためには医師だけでなく例えば一番近くにいる看護師さんであったりとかあるいは精神的なサポートをしてもらえる心理士さんあるいはソーシャルワーカーの方々などが一丸となってこういった患者さんを守っていくそういった医療体制を構築していく必要性があるんじゃないかなと思います。
どうもありがとうございました。
今日は「メディカルジャーナル」お伝え致しました。
2015/05/25(月) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「病気を治して子どもを産みたい」[解][字]

がんなどの女性患者が治療前に卵子や卵巣組織などを凍結保存しておいて、将来の妊娠の可能性を確保する生殖医療が注目されている。この新たな方法について詳しく伝える。

詳細情報
番組内容
がんなどの女性患者が治療を受ける前に、卵子、受精卵、卵巣組織を凍結保存しておいて、将来の妊娠の可能性を確保する生殖医療が注目されている。日本生殖医学会は2013年11月にガイドラインを決定、日本産科婦人科学会は2014年4月に見解を発表し、ともにがんなどの医学的理由による卵子・卵巣組織の凍結保存を認めた。病気を克服したのちに自分の卵子で子どもを産むという新たな方法について専門家に詳しく聞く。
出演者
【講師】聖マリアンナ医科大学教授…鈴木直,【キャスター】桜井洋子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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