相棒 season5 2015.05.26


『アヴェ・マリア』
(長沢智世の悲鳴)『アヴェ・マリア』
(男の笑い声)
(智世の苦しむ声)『アヴェ・マリア』
(ラジオDJ)「おはようございます」「11月6日時刻は午前8時を回りました」「『モーニング・クラシック』の時間です」「本日もここ日比谷のスタジオから素敵な曲を皆様にお届けしてまいります」「『アメイジング・グレイス』」
(亀山薫)徹夜で張り込みしたってのに空振りでしたね。
(杉下右京)空振りでしたねぇ。
結局ヤクの売人は女の家で逮捕。
だから俺は言ったんですよ〜。
自宅になんかノコノコ帰るわけないって。
課長の指示ですから仕方ありません。
上ももう少し俺らの実績を認めてくれてもいいじゃないすかね〜。
ああ〜君は文句が多いですねぇ。
(ラジオの音)イライラを静めるには美しい曲に限りますよ。
「『アメイジング・グレイス』」
(DJ)「『アメイジング・グレイス』をお聴きいただきました」「ではリクエストです」「東京都にお住まいの山田さんとお電話が繋がっています」「もしもし山田さん?」
(男)「…もしもし」
(DJ)「お電話ありがとうございます」「山田さんのリクエストはバッハの『アヴェ・マリア』ですね?」
(男)「はい。
思い出の曲なんです」
(DJ)「どういった思い出かお聞かせいただけますか?」
(男)「実は…昔人を殺したんです」
(DJ)「はい?何とおっしゃいました?」
(男)「見知らぬ若い女性をこの手で殺しました…」
(DJ)「山田さんご冗談は…」
(男)「本当です。
…15年前の事です」「女性を尾行してマンションの廊下で襲ったんです」「逃げる彼女を屋上まで追い詰めて転んだところで後ろから首を絞めました」「首を絞めている間ずっと頭の中で『アヴェ・マリア』が鳴り響いてました」「あの旋律が…」「僕は今彼女を殺した場所に来ています」「この思い出の場所でぜひ『アヴェ・マリア』が聴きたい…」「そしてあの瞬間の興奮を思い出したいんです」
(DJ)「山田さん冗談はそのくらいで…」
(男)「ええ冗談ですよ…。
付き合ってくれてありがとう」「
(電話の切れる音)」
(DJ)「もしもし…?」ったくタチの悪い冗談っすねぇ。
亀山君。
橘町へ向かってください。
はい?橘町です。
急いでください!あ…はい!
(ナースコールを押す音)
(看護師)高岡さんどうしました?
(高岡義一)警察だ…。
は?警察に連絡してくれ…!落ち着いてください!殺人犯が…ラジオに電話してきたんだ。
(看護師)高岡さん落ち着いてください!橘町事件の犯人が…!落ち着いてください。
警察だ…!早く!!『アヴェ・マリア』この場所で過去に殺人事件が?「橘町女子大生殺人事件」15年前の未解決事件です。
1991年11月このマンションに住んでいた20歳の女性が何者かに首を絞められて殺害されました。
先程のラジオで男が語っていたのはその話の内容から見てその事件の事だと思われます。
(伊丹憲一)ハァ…ハァ…!ハイハイハイ…。
「朝から亀山君に会えてうれしいです」と?ふざけんなっ!!どこにでも現れやがって!
(三浦信輔)まったくいつもいつも先回りしてくれますね警部殿。
あなた方もあのラジオをお聴きになったのですか?
(芹沢慶二)いえ。
一課に連絡があったんです。
高岡刑事から。
…高岡刑事?確か病気で入院していると聞きましたが。
病院でラジオを聴いてたみたいで。
ベラベラしゃべってんじゃねえよ!どうやらただのイタズラではないようですよ。
どういう事です?あっ…!?15年前の事件も凶器は赤いリボンでした。
うーん300人体制の捜査だったんですねぇ。
被害者の長沢智世さんに目立ったトラブルもなく犯人の目撃証言も皆無。
凶器から採取された指紋にも前科はありませんでした。
でおみや入りと…。
「転倒した被害者を背後から絞殺」…。
ラジオで男が言ってたとおりですね。
さらに凶器に赤いリボンが使われた事も当時マスコミには発表されませんでした。
じゃあヤツがホンボシ…?これが…犯人とおぼしき男の姿です。
事件当時マンションの防犯カメラに映ってました。
これじゃ顔はわかんないっすねぇ。
時効まで…1か月弱。
(米沢守)タイミングがいいですね。
つい先程防犯カメラの映像が届いたところです。
そう思ってお邪魔しました。
さすがです。
では早速。
そうおっしゃると思って準備してあります。
さすがです。
(米沢)7時55分怪しい男がマンション内に入りました。
顔はよくわかりませんが手に持っているのは携帯ラジオだと思われます。
帽子にコート赤いマフラー…15年前の犯人と同じ服装ですね。
ちょっと早送りにしてみましょう。
住人の出入りがありますね。
ええ。
しかし今のところ先程の怪しい男の目撃情報はありませんねぇ。
まもなく男が現れます。
これが8時21分です。
つまり男がマンションの中にいたのは…26分間。
そのうち20分間が『モーニング・クラシック』のオンエア時間と重なりますね。
じゃやっぱりヤツは屋上から電話を…。
『アヴェ・マリア』を聴き終わりフェンスに赤いリボンを結びつけて立ち去った。
時間的に不自然じゃありませんね。
それにしても不思議だと思いませんか?犯人はなぜ時効を間近に控えた今頃になってラジオ番組に電話などしてきたのでしょう?そらああれでしょ自己顕示欲。
よくいるでしょう警察に声明文を送りつけたりして世間を騒がせたがるバカ野郎が。
15年も経った今になってですか?ですよね〜う〜ん…。
では参りましょうか。
はい。
(角田六郎)よっ…!暇じゃありませんよ。
ああ…そう。
どっか出かけるの?はい。
高岡刑事のところへ。
高岡刑事…?ああ捜査一課の?橘町事件について少々お訊きしたい事が。
ああ…あの人もこの事件のせいで人生おかしくなっちまったもんなぁ。
はい?刑事にはよくある話だよ。
捜査に没頭して女房子供を顧みなくなる。
気がつけば家庭での信用はゼロ。
フッ…お前も気をつけろよ。
俺は大丈夫ですよ。
信用されてますから。
いやいや油断は禁物だよ。
いくらね犯人捕まえてもね女房に逃げられちまったらおしまいだよ〜。
あ…悪い悪い…。
僕は別に逃げられたわけではありませんよ。
…だよね?では行きましょうか。
行きましょう!おうおう行ってらっしゃい。
ああ…。
あ…留守は任せて。
(高岡)特命係…?そうか君たちが…。
でラジオの男足取りはつかめそうなのか?現在捜査一課がマンションの周辺に聞き込みを行っております。
防犯カメラの映像も分析を急いでいます。
クソ…私がこんなザマじゃなければな…。
橘町事件に関する資料を拝見いたしました。
捜査は当初からきわめて難航されたそうですね。
最初のボタンを…掛け間違えたんだ。
事件発生当時捜査本部は犯行の動機を怨恨と判断し被害者の周辺を徹底的に洗ったようですね。
判断を下したのは私だった。
被害者に性的暴行を受けた形跡はなく所持品も盗まれてはいなかった。
恨みによる犯行に違いないと確信したんだ。
しかし調べれば調べるほど通り魔的犯行の疑いが強くなった…。
初動捜査のミスを認めるのは…プライドが許さなかったんだ。
プライド…ですか?そうだよ!…腐ったプライドだ。
失礼ですがこちらの病院に入院されたのはいつでしょう?5日前だ。
ご存じの方は?…あ?あなたが入院された事をご存じの方です。
身内の方は皆さん当然ご存じでしょうねぇ。
捜査一課もみな知っている。
その他には親しいご友人に報告はなさったのでしょうか?私の事はどうでもいい。
それよりこんなとこに来る暇があったら聞き込みにでも行ったらどうなんだ!どうか興奮なさらずに。
こうしてる間にも時効は迫ってるんだぞ!
(ドアの開く音)高岡さんどうされましたか?
(高岡)早く行ってくれ!早く!!俺にもわかんないっす。
何であんな質問したんですか?高岡刑事が入院してまもなく犯人を名乗る男からラジオ番組に電話がかかってきた。
タイミングが合いすぎると思いませんか?あ!犯人は高岡さんの入院を知る者の中にいる?もちろんまだ確信はありませんが。
なるほど…。
いらっしゃいませ。
(高岡ちひろ)いらっしゃいませ。
高岡さんのお嬢さんですか?お父様早く回復されるといいですねぇ。
私には関係ありません。
10年も顔を合わせてないともう他人と一緒ですから。
10年ですか…。
この先もあの人に会うつもりはありません。
唐突な質問で恐縮ですがお父様の入院についてどなたかに連絡されましたか?まさか。
報告したのは母の仏壇にだけです。
失礼ですがお母様はいつ…?14年前です。
父を失ったのも同じ日でした。
どうしてよ?お父さん。
お母さん明日の朝まで持たないかもしれないのよ!
(高岡)ちひろすまない。
お父さんな今夜そっちに行けないんだ。
今橘町事件の犯人を張り込んでいる。
事件なんかどうでもいいじゃない!あっ…ヤツが帰ってきた!すまん切るぞ!
(ちひろ)それから2時間後…母は息を引き取りました。
あの人が張り込みから帰ってきたのはその翌朝…。
結局犯人だと思っていた男は事件とは何の関係もなかったそうです。
母はあの人を待ちながら死んでいった…。
あの人も同じ思いをすればいいんです。
来ない娘をずーっと待ち続ければいいんです。
いや…そこまで言わなくても…。
すみません。
仕事がありますので。
あ!あと1つだけ。
お父様の入院をあなたはどなたからお聞きになったのですか?刑事さんからです。
特命係じゃない伊丹!特命係じゃない…!?そうだよ!おめえ何しにきやがった?お前高岡刑事の娘さんに会いに行ったか?何か怖い顔した人…。
あなたの事ではないかと。
会いに行ったら何だってんです?高岡刑事の入院を疎遠になっているお嬢さんにわざわざ報告に行った…。
随分気が回ると思いましてね。
何か理由でもおありだったんですか?頼まれたんですよ高岡さんに。
娘のちひろに私が入院したと伝えてくれないか…。
会いに来てほしいとは言わない。
…ただ知らせるだけはしておきたい。
伝えます。
必ず。
それとなすまんが長沢智世さんのご遺族に会いに行ってくれないか。
ガイシャの遺族に…?時効はもう目の前だっていうのに私はもう捜査には戻れない…。
私が詫びていたと…そう伝えてほしい。
(芹沢)高岡さん…。
あの人たちは…私の事を信じてくれていた。
私がいつか犯人を逮捕するとそう信じてくれていた。
それでご遺族に…?本人の頼みですから。
あの人もう長くないらしい。
捜査中にばったり倒れて病院に担ぎ込まれたんです。
手術も何もかももう手遅れだとよ。
今まで動いていたのが不思議なくらいだ。
それ…娘さんには話したのか?言えるわけないだろ!そんな事を。
(内村完爾)杉下!誰の許可を得てここへ入ってきたんだ?申し訳ありません。
行きましょう。
失礼します!ラジオの男の身元は割れたのか?現在全力で捜査中です。
(中園照生)時効まであとわずかだ。
必ず犯人を挙げろ!
(三浦・伊丹)はっ!これ全部高岡刑事からの手紙ですか?
(長沢苑子)この15年間毎月のように届いてました。
消印はどれも27日。
智世さんの月命日ですね。
智世のお墓にもよくお参りしてくださいました。
本当にいい方で…。
ご病気と聞いた時にはもうみんな驚いてしまって…。
失礼。
「みんな」というのはあなたとご主人と…?すぐに西さんにも連絡したんです。
そしたら…。
あすいません。
西さんというのは?婚約者でしたね智世さんの。
(苑子)ええ。
…15年前の。
西康介。
15年前に容疑者として取り調べを受けています。
被害者のフィアンセなのにですか?捜査が怨恨の線で進められたために身近な人物から疑われたのでしょうねぇ。
しかしすぐにアリバイが証明されて疑いは晴れています。
お待たせしました。
あ…!?今朝の『モーニング・クラシック』の同録です。
たびたびお手数おかけします。
いえいえたびたびお役に立てて何よりです。
西康介さんですね?
(西康介)…あなた方は?警察の者です。
警察の方が…どういったご用件ですか?
(再生ボタンを押す音)
(男)「女性を尾行してマンションの廊下で襲ったんです…」「逃げる彼女を屋上まで追い詰めて…」あなたの声ですよね?あなたは今朝事件現場からラジオ番組に電話をした。
そして15年前の犯人と同じ服装で防犯カメラに映り15年前の凶器と同じ赤いリボンをフェンスに結びつけた。
事件当時マスコミにも発表されなかった犯行の状況をあなたは詳しくご存じだった。
なぜならば容疑者として取り調べを受けたからです。
その際の情報を利用して巧みに犯人のフリをなさった。
意外と…早くバレるもんですね。
西さんお詫びしなければなりません。
…は?15年前恋人でありながら容疑者扱いされたあなたのご心痛がいかばかりだったか…察するに余りあります。
警察官の1人として深くお詫びいたします。
15年前…高岡という刑事もそうやって頭を下げてくれました。
そして約束してくれたんです。
いつか必ず自分が犯人を挙げると…。
この15年間僕は彼の言葉を信じずっと待ち続けていました。
しかし数日前智世さんのお母様から高岡刑事の入院を知らされた…。
望みの綱が切れてしまいました。
こうなったら自分で警察を動かすしかないでしょう?警察を動かすためにあんな狂言したんですか?犯人を装って挑発的な行動をとれば警察はもう一度あの事件を大々的に捜査せざるをえない。
お気持ちはわかりますけどねぇ…。
あんた恋人を殺された事があるのか!?どうして智世が殺されなきゃならなかったのか…。
僕はこの15年間…ずっと答えを待ち続けた。
諦めろって言うのか…?このまま何もせずに諦めろって言うのか…。
(西の嗚咽)
(亀山美和子)じゃあ結局ラジオの電話と犯人とは何の関係もなかったわけ?ああふりだしに戻っちまった。
明日捜査一課が高岡刑事に報告に行くそうですよ。
(宮部たまき)その刑事さんさぞかしショックだったでしょうね…。
たまきさんお茶漬けを。
あらもう?朝が早いもので。
時効まで20日あまり…。
橘町事件を調べ直さなければなりませんねぇ。
何度も言わせないでください!あの人に会うつもりはありません!顔を見せるだけでも…。
このとおりです!やめてください!何であなたがそこまでするの?いやとにかくあの…。
(携帯電話)ちょ…ちょっと…。
(携帯電話)…亀山です。
高岡刑事が病室から姿を消しました。
高岡さんが!?…どういう事ですか?彼はまだラジオ番組に電話をしてきたのが橘町事件の犯人だと信じています。
まさか…捜査に?例のマンションに向かったと思われます。
何てこった…わかりました。
俺もすぐ向かいます!放っておけばいいんです。
あんな人放っておけばいいんです!心配なんかしてあげる必要ありません。
もう長くないそうです。
…お父さん。
たった1人の家族に最後まで嫌われ続けるなんて…。
あんまりっすよ…。
あっ右京さん!マンションにはいませんでした。
そうですか…。
亀山君。
はい!…あっ!?
(高岡の苦しむ声)高岡さん!大丈夫ですか?君たちか…。
亀山君救急車。
はい!タクシーを…タクシーを捜してくれ…!え…?近所の住人がヤツを見てた…。
ヤツがタクシーに乗るのを…。
いや…。
(苦しむ声)あ…おい!…高岡さん!?病院…病院連れてけよ!!おう!はいはいはい!さあ立って…立って!今コートの男性がエレベーターに乗りました。
ええ。
ここ。
男性と入れ替わるように西さんは入り口を出て行きました。
そして彼はマンションの表でタクシーを拾った。
となるとそのタクシーというのは?今の男性が乗ってきたタクシー。
そう考えてしかるべきでしょう。
では次の疑問。
コートの男性はなぜ早朝にタクシーを飛ばしてこのマンションに駆けつけたのでしょう?住人の誰かに用事があった…。
あるいは住人の朝帰り?どちらもありえますねぇ。
しかしもう1つ可能性は考えられませんか?可能性…?あのラジオを聴いてマンションに駆けつけた可能性ですよ。
確かにマンションの前でタクシーに乗りました。
そのタクシーはもともと路上に?ええ停まってました。
他のお客を降ろした直後だったんじゃないかな…。
どちらのタクシー会社だったか覚えてらっしゃいますか?ええ。
マンションの前でお客を降ろしましたよ。
そのお客さんというのは60歳ぐらいの男性ではありませんか?そうです。
上品な感じの。
その方を乗せた場所覚えてらっしゃいますか?ええ。
これがまたでかい家でね。
あっ自宅から乗せたんですね?ええ。
(お手伝い)「旦那様は3時間くらいしたらお戻りになりますのでまたいらしていただけますか」わかりました。
ほらジュンちゃんこっちこっち…。
ほらいらっしゃい。
ジュンちゃんというんですか?あはい。
これまたかわいい犬ですねぇ。
ありがとうございます。
ほらこの子賢いんですよ〜。
アハ…かわいいかわいい。
ちょっとよろしいですか?あ何でしょうか?こちらのお宅随分立派なお屋敷ですねぇ。
金持ちですもの。
石黒ギフトの社長さんのお宅。
石黒ギフト…?知らない?ほらコマーシャルやってるじゃないですか。
「赤いリボンで心を繋ぐ」ってやつ。
ああ〜あのコマーシャルね。
はい。
赤いリ…!?…赤いリボン。
こちらの家族構成おわかりになりますか?は?何なの?あなた方。
あ…警察です。
ご主人の他にご家族は?ご主人だけです。
奥さんは亡くなって息子さんはずっとアメリカだとか。
アメリカ?ええ。
城南大からあっちの大学に留学とかで…。
城南大学…。
(高岡)じゃ…ラジオにかかってきた電話は…?
(三浦)被害者の…元恋人による狂言でした。
(芹沢)真犯人とはまったく繋がりがなかったんです…。
あと…20日しかないんだ…。
時効まであと20日しか…。
やりきれんな…。
(携帯電話)はい。
「杉下です」ヘッ…特命係の杉下警部が…。
(伊丹)「何の用ですか?」至急調べてほしい事があります。
ある人物の消息について。
あいにく俺らは特命のパシリじゃないんでね。
まあそうおっしゃらずに。
今から名前と現在わかっている情報を申し上げますので。
人の話聞いてます?ねえ?橘町事件の事です。
橘町事件…?…はい。
おいちょっとメモメモ!早く出せ!はい!日本での最終学歴は城南大学経済学部中退。
以上です。
よろしくお願いします。
右京さん!当時のゼミの教授まだいました。
話聞けそうです。
行きましょう。
(ノック)
(石黒喜久雄)はい。
旦那様あの…お客様です。
(石黒)どうぞ。
警視庁の杉下と申します。
亀山です。
突然すいません。
警察の方が何の用です?唐突なお話で恐縮ですが昨日の朝タクシーでラフィネ橘町というマンションへ行かれましたね?防犯カメラにあなたの姿が映ってました。
友人を訪ねたんです。
それが何か?その方のお名前と部屋番号を教えていただけますか?お教えする義務はありません。
15年前の写真です。
左に写ってらっしゃるのはあなたの息子さん石黒信也さんですね?この写真をどこで?城南大学の教授にお借りしました。
1991年ゼミのメンバーで写した写真だそうです。
この写真が撮られた半年後に息子さんはアメリカに留学なさってますよね?ゼミの教授によると書きかけの論文もそのままに理由も告げずに休学届を出されたとか。
一体何をお調べなんですか?橘町事件です。
何です?それは。
1991年11月調布市橘町で女子大生が殺される事件がありました。
あのマンションの屋上が殺害現場でした。
事件の半月後息子さんは日本を離れている。
まるで…何かから逃れるように。
ハハハ…呆れましたね。
息子がこの事件と関係があるとでも?そう仮定すれば昨日のあなたの行動にも説明がつきます。
昨日あなたはたまたまラジオのクラシック番組をお聴きになっていた。
(男)「見知らぬ若い女性をこの手で殺しました…」
(DJ)「山田さんご冗談は…」
(男)「本当です。
…15年前の事です」会話の中で男は明らかに橘町事件の事を語っていた。
それを聞いたあなたは混乱した。
この人物は一体何者なんだ…?息子と繋がりのある人物なのだろうか…?真相を確かめるべくあなたはタクシーを呼び…。
事件現場のマンションに駆けつけた…。
しかし…ラジオに電話をしてきた人物はすでに屋上を去った後だった。
バカバカしい。
もう結構。
お引き取り願いましょう。
もう一度写真を見ていただけますか。
ここに1人の女性が写りこんでいます。
事件の被害者長沢智世さんですよ。
当時彼女は文学部2年息子さんは経済学部4年…。
2人の間にはまったく接触がなかったために息子さんは当時捜査線上には浮かび上がりませんでした。
しかし息子さんが彼女を知っていた可能性は十分にあります。
推測に過ぎない!!ではお尋ねします。
息子さんはなぜ事件の直後にアメリカに渡ったのでしょう?勉強のためだ。
他に理由なんかない!ちなみに何の勉強でしょう?経営学だ。
もう帰ってくれ!ああ思い出しました!そういえば…論文を拝見したんでした。
…論文?留学の直前に息子さんがお書きになった論文ですよ。
ゼミの教授が保管していました。
その論文から指紋が採取されました。
15年前の息子さんの指紋がね…。
…指紋?一致しましたよ。
…橘町事件の犯人と。

(ため息)そうですか…息子の指紋が…。
申し訳ありませんでした。
任意で提出された指紋ではありません。
しかし息子さんからお話を伺う必要がありそうですねぇ。
息子が中学生の時…妻が自殺した。
原因は私の不倫だ。
それ以来息子は人間が変わってしまった。
まるで汚いものでも見るように私を眺めるようになった…。
(アナウンサー)「昨夜橘町のマンション屋上で首を絞められて殺害された女性が発見されました」「警察の発表によると殺されたのは都内の大学に通う長沢智世さん20歳で犯行の行われたマンションに住んでおり帰宅時に襲われたものと思われます」「またマンションの防犯カメラには犯人と思われる男の姿が映っており警察では情報を一般から広く集めるため公開しました」「この不審な人物は黒い帽子とコート赤いマフラーを着用し身長は175センチ前後年齢は20代から30代ぐらいと思われます」「警察は映像の分析を急ぐとともに怨恨による犯行の可能性が…」
(石黒信也)「赤いリボンで心を繋ぐ」…。
「贈り物なら石黒ギフト」…。
だけど社長の息子は人殺し。
悪い冗談はよせ!!あの女親父の愛人に似てたんだよ。
学食ですれ違った時すぐに気づいた。
災難だよね。
似てただけで殺されちゃうなんて。
何でそんな顔するの?俺は親父の真似しただけだよ。
親父だって女を殺した事あるだろ?お前…!母さんはあんたが殺したようなもんだろう?どうするの?警察に突き出す?あんたにできるの?
(石黒の声)息子があんな人間になってしまったのはすべて私の責任だ。
だからこそ守らなければならないと思った。
父親である以上息子を守らなければと…。
守る…?ふざけるなよ!!亀山君!石黒信也がこの世のどこにいようとまもなく警察が居所を突き止めるでしょう。
彼には法による厳しい罰が下されます。
息子はすでにもう罰を受けています。
はい?あなた方より先に天が罰を与えたんです。
(携帯電話)杉下です。
…ええ。
本当ですか?そうですか…。
ありがとうございます。
伊丹刑事からでした。
石黒信也の消息がわかりました。
死亡しています。
…えっ!?1992年シアトルで…。
バイクによる自損事故だそうですね。
ラジオを聴いた時本当に驚きました。
息子は犯行現場を誰かに見られているかもしれない。
息子の犯罪が明らかになれば私の名誉にも傷がつく…。
何とかしなければと…。
ふざけんな…。
それじゃ高岡刑事は15年間もこの世にいない犯人を捜してたのか…。
15年間もずっと…。
すみませんでした…。

(ノック)高岡さん大丈夫ですか?言ったはずだ。
こんな所に来る暇があったら事件の聞き込みにでも行ってくれ。
橘町事件は解決しました。
…ええ!?真相が明らかになりました。
…本当か?ええ。
あの事件の犯人は…。
犯人は身柄確保されました。
ついさっき。
1408号室…。
一緒に行きますか?犯人…とっくに死んでたそうですね。
15年間…父はずっと…。
プロの仕事を続けてきた…それだけの事ですよ。
刑事の女房にはしない。
は?高岡刑事の口癖です。
あなたを絶対刑事とは結婚させないってね。
会ってやんなさいよ。
犯人の名前は石黒信也。
犯行当時は大学生でした。
確かに…そいつが犯人なのか?はい。
どうやってその男にたどりついたんだ?あ…それは…。
…タクシーです。
昨日の朝石黒信也は偶然あのラジオ放送を聴いていたそうです。
犯人を騙る男の存在に激怒した彼は男に会おうとタクシーで犯行現場に駆けつけました。
(高岡)じゃあ西康介がつかまえたタクシーは…。
石黒が乗ってきたものでした。
運転手の証言から石黒の自宅が明らかになりました。
間違いないのか?本当に間違いなくその石黒って男が犯人なのか?間違いありません。
指紋が凶器と一致しました。
指紋が…?そうか…一致したか!1台のタクシーがすべてを解く鍵でした。
そしてそれを我々に教えてくれたのは高岡さんあなたです。
犯人を逮捕したのはあなたです。
(嗚咽)…おめでとうお父さん。
ちひろ…すまん。

(嗚咽)
(ちひろの嗚咽)
(風の音)ほら飲みたまえよ。
うん…。
俺…間違ってたよな。
でもまあ嘘も方便って言うからね。
優しいのが薫ちゃんのいいところさ。
そうですよ。
思いやりから出た嘘なんですからね。
いらっしゃい。
あ右京さん遅かったですね。
ええ。
捜査一課に寄っていたものですから。
え…一課に?高岡刑事が亡くなりました。
…え!?お嬢さんから連絡があったそうです。
そんな…だって昼間あんな元気そうだったじゃないすか。
夕方容体が急変したようです。
つい先程静かに息を引き取ったとの事でした。
(ため息)…薫ちゃん。
たまきさんお酒。
はい。
「人生で一番いい日だった」…。
亡くなる間際にそう言い残したそうですよ。
右京さん俺…。
…僕も同罪です。
2015/05/26(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season5[再][字]

「赤いリボンと刑事」

詳細情報
◇出演者
水谷豊、寺脇康文 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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