お楽しみ下さい。
重厚で厳かなたたずまい。
日本美術の粋を集めた宝。
その名は…そんな国宝を軽やかな視点で身近にしてくれる人がいます。
今注目のライター橋本麻里。
国宝ブーム立て役者の一人です。
日本美術に詳しい橋本さん。
数々の著作を通して敷居の高い国宝を分かりやすい言葉で表現し本質をつく事で定評があります。
徳川家ゆかりの建築は「デコ」。
古都の寺院は平安貴族の「テーマパーク」。
天才絵師が描く屏風絵は「グラフィック」。
あの最強絵師集団は「ゼネコン」。
…などなどこれまで8回にわたりお届けしてきた国宝を巡る旅。
仏像や建築絵画土偶に至るまで各地の名品に出会ってきました。
さあ橋本流の切り口で国宝を体感してみましょう。
きっと日本美術が好きになるはず。
橋本さんと旅をするのは作家・演出家で最近は絵画も手がける大宮エリーさん。
そしてミュージシャンで俳優のマキタスポーツさんのお二人です。
総集編ではこれまで訪ねた国宝を年代順にご紹介します。
まず最初は縄文時代の国宝。
土偶にはその土地ならではの方言のような特徴がありました。
長野県茅野市。
諏訪湖から八ヶ岳に広がる一帯は「縄文王国」と呼ばれるエリア。
「縄文のビーナス」はこの地域から出土しました。
やって来たのは…
(マキタスポーツ)おお〜!おお〜!これ。
(橋本)これですね。
うわ〜…なんかふくよか。
高さ27センチ。
重さおよそ2キロ。
縄文中期およそ5,000年前の土偶です。
粘土で作り人の形に素焼きしたものです。
ちょっとグルッと回ってみるとまさにこの立体ぶりがよく分かると。
うわうわ!すごいお尻の…。
お尻礼賛がすごいですね。
もうこの作り手は尻ですね。
尻ですね。
臀部愛がすごいですね。
本当にそうですね。
更に注目すべきは顔。
お目目がちょっとつり上がった感じなんですね。
お鼻がちっちゃいんですけどきちっと表現されている。
実はこういう顔が…みんなこの顔している。
この顔はある意味方言のようなというかローカルルール。
ルール?ルールがあったんだ。
こちらは同じエリアで出土した出産土器。
母親の体から子供が誕生するシーンをイメージしたものと言われています。
土器についている顔がそっくり。
実はこの顔八ヶ岳山麓でしか出土しない造形。
これが土偶のいわば「方言」。
土偶や土器の造形で地域共通の文化や仲間意識を示そうとした縄文人。
それは彼らにふるさとが生まれた証しでもあったのです。
さあ続いては平安時代に建てられた…さてどんな世界が広がっていたのでしょうか。
旅人は大宮エリーさん。
京都・宇治川のほとりにその国宝はありました。
朱塗りの表門がテーマパークの入り口です。
(大宮)お〜!これ!?今まだ真横ですね。
すごいな真横からもうすごいね。
正面の方にこれから回っていきたいと思います。
なんかすごいなあ。
鳳凰が羽を広げたようなフォルム。
平安中期藤原道長の息子頼通が極楽浄土をイメージして造りました。
中央にある中堂。
その中には西方極楽浄土の仏阿弥陀如来が安置されています。
結構斬新な考え方ですよね。
鳳凰の形をした建物でパカッとやると阿弥陀如来がいるっていう。
アハハハ!すごいよね。
なんか漫画の世界ですよね。
「マジンガーZ」みたいな。
なんか分かんないけど。
平安時代中期ですね。
藤原道長って名前は日本史で習ったと思うんですがその摂関政治が頂点に達した11世紀半ばですね。
このころっていうのはアジア全体で末法思想というある種の終末思想の流行があったんですが…。
仏教が衰え暗黒の時代がやって来るという考え。
「1052年から末法の時代に入る」と言われていました。
極楽浄土を具体的にイメージすれば極楽に近づける。
貴族たちはこぞってテーマパークさながらの寺院を造り始めました。
じゃあみんなのために造ったよという事ではないんですね。
残念ながらそこが違うんですね。
自分のためだけ?自分とうちのため。
うちの極楽浄土。
これ個人用ですか!?個人用です。
プライベートです。
貴族たちは自分がどう極楽に旅立っていけるのかもイメージしました。
阿弥陀如来を囲むように飾られた…創建当時は彩色されていたとか。
今以上に華やかな極楽浄土の世界が広がっていたんですね。
雲中供養菩薩はその一部が平等院内にあるミュージアムで間近に見る事ができます。
エリーさんここ26体いますけれどもどの菩薩がお好みですか?ずっと探してて結構迷ったんですけど私一番あれが…あの菩薩さんが好きです。
一番上段の…。
左から2番目の。
踊ってる人ですかね。
すごいポージングですよね。
なかなか…こういうやつです。
なかなかないですよ。
こんな楽しそうな…。
そういうダンサーもいるんですね。
ミュージシャンとダンサーがいるんです。
優美な菩薩が舞う世界。
平等院は栄華を極めた藤原氏ならではのテーマパークなのです。
次も平安時代の国宝…作者もストーリーも謎だらけの絵巻に「妄想力」で迫りました。
東京国立博物館で開かれていた特別展「鳥獣戯画京都高山寺の至宝」を訪ねました。
さあこの先に今日の国宝が待っております。
(マキタスポーツ)はい。
これ?これです。
ここからです。
うわ〜…。
甲巻は兎蛙など11種類の生き物が擬人化された絵巻です。
代表的な場面を見てみるとまずは水遊び。
兎と猿が川で泳いでいます。
ひしゃくで背中を流したり。
楽しそう。
こちらは賭弓。
動物たちが弓を射って賭け事に興じています。
そして有名な相撲のシーン。
「えいっ!」。
技が決まり兎が投げ飛ばされてしまいました。
最後は猿がお経を唱える法会の場面。
そのユニークさで人々を惹きつける作品ですが実は謎だらけ。
多くの場合…それを読めば物語の流れが分かるんですけれどもこれの場合どこにも字がない。
通常絵巻物は右から左へと物語が展開します。
シーンのつながりからストーリーを読み解く事もできるはずですが一部「あれ?」と感じる部分が。
例えばすごろく盤を担ぐ猿たち。
遊びが始まるのかと思いきや次に続くのは法会のシーンです。
よく見て頂くとちょうど「高山寺」というはんこが押してあるんですがここを「紙継ぎ」といいまして絵巻って最初からこう長い紙ではなくてちょうど肩幅サイズの大きさのものをつないでいますので途中で…入れ代わったりとか場合によっては抜けちゃったりって事もありえるんですよね?そちらもいくつか確認されています。
その一部を今回の展覧会で見る事ができました。
これは蛙や猿がユニークな格好で行進する断簡。
その背景をよく見ると黒い点々があります。
これを絵巻の一部に描かれた花びらと重ねてみると…。
ぴったりとつながり不自然な絵のつなぎが解消されます。
しかし順番が分かっているのはほんの一部。
誰が何のために描いたのか特定されていません。
生き生きとした動物たちの動きをどう読み解くのかは見る人の妄想力次第。
「もっとこういうふうに見ろ」みたいな事があるんだったら当然書いたと思うんですよね。
あえて書かなかったって事は「お任せしますよ」と。
身構えずに自由に発想して面白がってもいいかなと思うし僕それがメッセージのような気もしましたけどね。
続いては鎌倉時代。
荒廃からの復興を目指す仏師が求めた究極のリアルとは?奈良・東大寺。
2体の仏像は南大門に安置されています。
像の高さはおよそ8メートル。
国宝「金剛力士立像」。
通称「仁王像」です。
門に向かって左に位置する阿形。
そして右の吽形。
「阿」と「吽」。
2体で物事の始まりと終わりを示します。
仏師運慶が誇張してまで追求したリアルな肉体美。
その過剰なまでの力強さは仏教の力を取り戻すために生み出されたのです。
そして安土桃山時代。
400年にわたり日本画壇のトップに君臨した狩野派。
そのしたたかな生き残り戦略を見つめました。
狩野派の中でもカリスマ的な力を発揮した永徳の代表作の一つ。
屏風からはみ出さんばかりの力強い画風。
狩野派は時の権力者に重用され城郭や大寺院の装飾を現代のゼネコンさながらに一手に引き受けました。
こちらは…永徳亡きあと一族の存亡を懸けて活躍した狩野長信の風俗画です。
満開の花の下で男装の貴婦人たちが踊ったりうたげを繰り広げる様子がこまやかに描かれた名品です。
さてお次は江戸時代の天才絵師尾形光琳の…その斬新な技法に注目です。
橋本さんと大宮エリーさんが訪ねたのは…こちらですね。
光琳晩年の傑作です。
この絵には当時最先端のデザイナーとして活躍した光琳の美意識の全てが凝縮されています。
(大宮)館長さん真ん中の川がすごく幾何学模様というかかなり抽象的じゃないですか。
それなのに両サイドの梅の木がかなりリアル…。
(内田)実はそれがもう光琳にだまされてるわけなんですよ。
私だまされてるんですか!?
(内田)ええ。
これご覧頂いて…よく見ると花びらが一続きに描かれディテールが省略されています。
梅の花をデザイン化する事で写実的な枝との対比を面白がっていたのでしょう。
全てを捨て去って切り捨てていくで抽象化していく。
波もこういう抽象的な波になっている。
そこは光琳の天才性なんじゃないでしょうかね。
評価されているっていうか。
「紅白梅図屏風」のレプリカを部屋の中に置いて鑑賞させて頂きました。
グッと変わりますね。
え〜すてきですね。
またほんとにイメージ違いますよね。
あと大きく感じますよね展示室より。
なんかでも部屋が広く感じます。
置いたから狭くなってるはずなのにすごく奥行きが出た感じしますね。
まさにモダンアートって鑑賞するものとして生活の場から切り離される事で成立したはずなんですけれども他のいろいろなものと立体の工芸品とすごく重なりながら存在している感じがあってそこも光琳ならではの魅力の一つなのかなと。
やっぱり美術って美術館で「あ〜すごいね」ってガラス越しに見るっていうものではなくて人の心をもっと美しくしていく…しぐさとか所作とか言葉遣いがきれいになってく…そういうものだったんだなというのを改めて感じさせられましたね。
そしてこちらも江戸時代の国宝。
建物に施された豪華絢爛な彫刻を堪能します。
日光東照宮は1617年徳川家康を神として祭るために創建された神社です。
重要な建物ほど彫刻の数が増えよりデコラティブに。
その代表の一つが…彫刻の数はおよそ500。
まさにあふれんばかり。
龍は中国の故事にちなんだ強さと繁栄を象徴する霊獣。
「日暮の門」と呼ばれる陽明門。
彫刻の意味を考えていたらまさに日が暮れそうです。
陽明門は現在平成の大修理中。
今回特別にその修理現場を見せて頂ける事に。
向かったのはこの辺り。
門の2階部分です。
金箔を施す前の漆塗りの途中でした。
陽明門の彫刻の修理を目の前で見られるなんて何ともぜいたく。
これチョコレートみたいですね親方。
これチョコレートです。
(佐藤)もう仕上げたとこです。
金箔をこの黒い所におしたやつと茶色い所におしたやつだと…そんな質感ですか!?すごい芸術的ですね。
こちらは鮮やかによみがえった龍。
修理が完了したら是非門を見上げて金色の違いも感じてみて下さい。
およそ400年前天下太平の象徴として施されたデコ。
職人たちが絶え間なく続ける修理は当時の思いを色あせる事なく次の世代につないでいく大切な営みでもあるのです。
みんなが豊かでね。
心も食べ物もみんな豊かで仲良く暮らしていけるようにといういろんな人の思いが詰まってる。
だから国宝なんだなって事がすごく分かってね。
「佐藤さん」みたいなね。
そういう陰で伝承してる方の事も思いをはせられたすごくいい機会頂きましたね。
マキタスポーツさんは国宝の旅いかがでした?
(マキタスポーツ)ウキウキですよ。
だから僕ねほんと声が大きくなると思うんですよ。
国宝を見た時って。
そのぐらい心動かされましたね。
現在国宝に指定されている作品は1,093件。
今回の旅で紹介したのはそのごく一部です。
皆さんも是非各地の国宝に会いに行ってみて下さい。
その美しさだけでなく作者の思いや時代背景まできっと新しい発見が待っていますよ。
ねっ橋本さん。
なのでまずそこから日本美術を見る入り口にしてもらってそこからどんどん「その次はこれ」とか「これに関係する別の作品」とか…そこも国宝を見る楽しみじゃないかなと思います。
2015/05/26(火) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
趣味どきっ! 国宝に会いに行く[終] 第9回「総集編」[解][字]
いま注目のライター橋本麻里が、軽やかな視点で各地の国宝の魅力を伝えてきた「橋本麻里と旅する日本美術ガイド」の総集編。あの国宝の見どころ、出会いの感動を再び!
詳細情報
番組内容
日光東照宮は“デコ”、平等院鳳凰堂は“極楽浄土のテーマパーク”、東大寺の金剛力士像は“リアル”など、わかりやすいキーワードを切り口に、国宝の見方、楽しみ方を伝えてきたシリーズの総集編。数ある日本美術の中で「国宝は一番いい上澄み、面白くて素敵に思える確率が高い!」と語る橋本麻里が、大宮エリー&マキタスポーツをナビゲート!出会ってきた各地の名品の数々を、縄文、平安、鎌倉、江戸と時代を追って振り返る。
出演者
【出演】ライター、編集者、明治学院大学・立教大学非常勤講師…橋本麻里,【旅人】大宮エリー,マキタスポーツ
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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