クローズアップ現代「足元に眠る宝の山〜知られざる下水エネルギー〜」 2015.05.27


あなたの台所から毎日出る生活排水。
ここから電気が生まれたり果ては、自動車の燃料まで出来るって信じられますか?地下に張り巡らされた下水道。
総延長は、なんと46万キロ。
これが今、新たなエネルギーの宝庫として注目を集めています。

発電起動。

全国の自治体では下水処理場に発電所を造る動きが加速しています。
処理場で下水を浄化するときに発生するメタンガス。
これを燃料に、発電機を動かし電力を生み出すのです。
それだけではありません。
下水から肥料を作ったり処理した水でのりを育てたり。
さらに、処理場のメタンガスから水素を取り出し燃料電池自動車を走らせる実験も始まりました。

今夜は新たなエネルギー源として期待を集める下水道。
その潜在能力を使い尽くそうという最新技術に迫ります。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
視点を変えることで、物の見方ががらりと変わることがあります。
汚い、臭いなどマイナスイメージが強い生活排水が今、幅広い活用の可能性を秘めた資源として投資を呼び込んでいます。
人間が生活しているかぎり生み出される下水。
この下水を燃料に発電したり水素を生み出して車の燃料にしたりまた下水を処理する過程で出てくる泥からリンを回収して肥料を作り出したりこれまで、やっかいなごみと捉えられてきた生活排水を利用しようという動きがじわりと広がっています。
こちら、ご覧ください。
これは、3年前に始まった国の再生可能エネルギーの買い取り制度で認定された下水による発電設備です。
全国30か所に上ります。
発電するときに利用されるのがメタンガス。
下水を処理する過程で生まれますが、かつてはほとんど焼却処分されていました。
下水を使った発電は風力や太陽光などと比べ生み出す電気の量は多くありませんが燃料が地域にある下水道というインフラを通して安定的に、また容易に集めることができるうえ天候に左右されずに発電することができるなどのメリットがあります。
この下水を利用した発電は二酸化炭素を増やさないクリーンエネルギーと見なされているのです。
初めに、全国各地の自治体で導入が広がるこの下水を利用した発電の動きからご覧ください。
発電起動。

ことし1月栃木県は、下水から電気を作る発電装置を稼働させました。

3台の発電機で1時間に300キロワット一般家庭およそ700世帯分の電力を生み出すことができます。
一体どうやって下水から電気を生み出すのか。
もとになるのは下水を浄化するときに大量に出来る泥です。
処理場では、泥の量を減らすためタンクの中で発酵させています。
このとき、都市ガスの成分に近いメタンガスが発生します。
これまでは使いみちがないためほとんどが捨てられていたガスです。
このガスで発電機を動かし電力を生み出すのです。
栃木県が下水発電に踏み出したきっかけは3年前に始まった再生可能エネルギーの買い取り制度です。

下水から出るメタンガスを利用した発電はほかの再生可能エネルギーよりも買い取り価格が高く設定されていました。
作った電気をこの価格ですべて売れば建設費を差し引いても年間4800万円の収益が出ると分かりました。
栃木県は、これを下水道の維持や災害の備えに役立てたいと考えました。
こうして、国内で新規の設備としては第1号となる買い取り制度の認定を受け下水からの発電を開始。
今では4か所で発電装置を稼働。
今後20年間でおよそ20億円の収益を見込んでいます。

全国でオープンが相次ぐ下水処理場の発電設備。
注目を集めるもう一つの理由は下水発電ならではのメリットにあります。
風力や太陽光発電は天候に左右されるため発電量が不安定です。
一方、下水を燃料にすれば常に安定して発電することができます。
もともと下水には、排水とともに有用物質を処理場1か所に集める特徴があります。
既存のインフラを通じて安定して燃料を集められる仕組みなのです。
買い取り制度の認定を受けた下水発電設備は、3年間で全国30か所に上っています。
可能性の広がる下水発電。
しかし財政規模の小さな自治体では発電設備へのばく大な投資に二の足を踏むケースも少なくありません。
そこで、民間の力を活用する動きも始まりました。
この機械メーカーでは地方自治体と共同で全国で8つの下水発電のプロジェクトを進めています。

すでに2つの発電装置が稼働。
売電を始めています。

発電機の稼働率。

このメーカーは自治体が受け入れやすい民設民営と呼ばれるビジネスモデルによって業績を伸ばしています。
発電事業を自治体単独で行う場合自治体は、売電による収入をすべて得られる一方ばく大な発電設備の費用を負担しなければなりません。
そこでこのメーカーは自治体に代わって費用を負担して発電設備を建設。
電力の売却収入も得ます。
その代わりメーカーは自治体に対して、ガスの代金と土地使用料を支払います。
自治体の収入は限られますが大きな投資も必要ないため全国の自治体を引き付けているのです。

国は今、下水資源の利用をさらに広げるため技術革新を進めようとしています。
120億円の予算を投じて各地でさまざまな実証実験が行われています。

福岡市では下水のメタンガスから水素を取り出し燃料電池自動車を走らせる世界初の実証実験が始まっています。
この春、下水処理場の中にお目見えした水素ステーション。
1日に車65台分の水素を製造できます。
処理場で水素の製造から供給までを行うことでCO2を出さない交通インフラが出来ると期待しています。

今夜は下水の活用にお詳しい、大阪産業大学教授、津野洋さんをお迎えしています。
下水は宝の山という発言も、今もVTRにありましたけれど、なかなかその生活者としては、その発想はないんですけれども、メタンガスから水素を作って、その水素で車を動かす。
あるいは発電をする。
今、この下水を巡る、この動きというのをどう捉えたらいいんですか。
下水道には、たくさんの資源が入ってると、私は見ております。
その下水道に入ってる資源は、すべて今の技術を駆使すれば、使い尽くせるというふうに考えております。
現代でも、下水汚泥は77%ぐらい、再利用されているといわれているんですが、建設資材が主でございまして、本当に下水に含まれている資源である、有機物であるとか、リンとかいうのは、まだまだ十分には、使い尽くされておりません。
わが国はご承知のように、20世紀型のエネルギー、化石燃料等のエネルギーや資源に乏しい国です。
したがって私ども、循環して利用できるものは、とことん使い尽くすという発想が大事で、今やっと、その時代がやって来たという理解をしております。
下水処理場で生まれる泥の中には、有機物がいっぱい含まれている。
そこからメタンガスが発生するわけですけれども、発電以外にも使えるんですか?
メタンガスは、自動車燃料にもなります。
というのはメタンガスは、都市ガスと同等ぐらいのカロリーを持っておりますので、都市ガスと同等の使い方という意味では、自動車にも使えますし、それから都市ガスと代替としても使えるということもできます。
ただ処理場から生まれるメタンガスの、作り出す効率というのは、いいんですか?
現在のところ、50%前後になります。
したがってこの技術開発で、これを60、70、あるいは別の有機物を入れるというような技術開発が進んでおります。
つまり、汚泥の中に食べ物ざんさなどを入れると、よりメタンガスが多く発生?
いたします。
発生します。
60でも70にもなります。
そうすると、どんどん効率が上がっていくと。
ただまだ効率が悪いせいなのか、それとも設備投資に巨額のお金がかかるせいなのか、買い取り価格がほかの再生可能エネルギーに比べると、非常に高く設定されてますね。
高く設定されるということは、結果として、電気を利用する、地域の住民の方々の、電力代金にはね返っていって、そういう高い発電をしてほしいのかどうかという意味では、反対する声も出てくるかもしれませんよね。
どう?
今のところ、再生可能エネルギーをどんどん使っていこうということで、設定されております。
したがいまして、大きな処理場から小さな処理場もありまして、比較的小さな所まで使えると。
そして5年で初期投資が回収できるだろうというようなことで、設定されたように理解していますが、これから技術革新をどんどんして、この初期投資も安くする技術を開発し、同時にこういう再生エネルギーを使うということの重要性の理解、必要性を情報発信、両方でこの理解を深めていくということが大事だと思っております。
多くの自治体が、認定を受けようと、すでに手を挙げて、認定されてますけれども、自治体にとってのメリットは大きいですよね。
これは大きいです。
処理場にとりましては、維持管理が安くなりますし、それから初期投資なしで、新しい技術が出来るということになりますので、自治体にとっては大きなメリットになると思います。
継続的に維持管理の収入、維持管理に向けた収入が入ってくると?
一部分、入ってくるということになって、これは大きなメリットだと思っております。
さあ、続いてご覧いただきますのは、今、全国に張り巡らされています下水管46万キロメートルに上ります。
そこから直接、エネルギーを回収しようという、新たな実験も始まりました。

今、新潟県で下水道の新たな可能性を探る実証実験が行われています。
この保育園では、部屋の冷暖房に下水から取り出した熱エネルギーを活用しています。
真冬でも、エアコンで暖めた室内の平均温度は25度。
エネルギーの源はすぐ横を流れる生活排水です。
マンホールを開けると下水管の中にチューブの束が入っています。

冬場、地下に埋められた下水管を流れる水は、平均12度。
外の気温に比べて暖かです。
そこで下水の熱を取り出すチューブを設置。
特殊な液を流しエネルギーを集め暖房に活用する仕組みです。

この実証実験を行っているのは下水管の補修を手がける企業です。
その特殊な技術を分かりやすく見せてもらいました。

使うのは、ガラス繊維を何枚も重ねた特殊な素材です。
表面の樹脂は光を当てると固まる性質を持っています。
これを、熱を回収するチューブの上に通します。
そして、1000ワットの強い光を当てると…。
下水管はコンクリートを上回る強度で補強され熱を回収するチューブもしっかり固定できます。
住宅地を走る細い下水管からも熱エネルギーを取り出すこの技術。
ことし9月から実用化される予定です。
日本列島に広がる下水道は46万キロメートル。
この巨大インフラから地域全体で熱を回収することができればばく大な省エネにつながります。
しかし、多くの地域の下水道は熱を回収する以前に解決しなければならない大きな課題を抱えています。
深刻な老朽化です。
昭和30年代から整備が進んだ下水道が50年の耐用年数を超えているのです。
こうした中、下水道の老朽化を逆に熱利用を進めるチャンスと捉える自治体が現れました。
仙台市は、下水道の更新と同時に熱利用を進める技術を大手メーカーと共に研究しています。
熱を回収するチューブが埋め込まれた樹脂製の板で下水管を内側から補強する技術です。

試験的に工事を行うことになったのは幹線道路沿いに新築されるスーパーマーケットでした。
下水熱を利用して調理場にお湯を供給すればガスで給湯するよりもランニングコストが8割近く安くなります。
しかし、問題は初期投資でした。
下水から熱を引き込む配管とお湯を供給する装置を合わせると3000万円かかりガスよりも割高になることが分かったのです。
今回は、国の補助金とメーカーが費用を負担することでなんとか実現にこぎ着けました。
仙台市では、もっと大きな建物やたくさんお湯を使う施設に導入すれば、採算が取れると見て研究を続けることにしています。

下水から熱を利用するというのも、大きなポテンシャルがあると思うんですけれども、でも実際に、この老朽化した下水管を取り替えて、そして同時に、付加価値の高い熱を取り出す下水システムに作り替えるとなると、場所はそれほどないのではないかという気もするんですけど、どう見たらいいですか?
小さなところではなくて、ある程度、熱容量がある下水管、ある程度の大きさのものでないと、なかなか難しいところがありますし、また使う側も、集中して多く使うところでないと、なかなか経済の面で、うまくいかないところがあるかもしれません。
しかし、大きな大規模開発などが行われる場所で、初めから設計して考える場合ですと、効率的に熱を利用できるかもしれませんね。
それは可能だと思いますし、都市の再開発だとか、これからスマートコミュニティーの開発だとか、そういうようなところでは大いに使える技術だと思っております。
きょう、いくつか、下水処理場から生まれる資源の可能性について見てきたわけですけれども、このほかの期待できる利用法というのはありますか?
下水汚泥、有機物の塊ですので、先ほど言いましたけども、メタンを作って利用するというほかにも、これから炭を作って石炭代替ができるような炭が出来ます。
あるいはそれを乾燥して燃やせる燃料にもできます。
そういった燃料を作って、石炭の代わりに使うというようなことが、有望視されておりまして、現在でもすでに数か所で、火力発電所であるとか、製紙会社のボイラーの燃料として、使われ始めております。
それは再生可能エネルギー、CO2を排出しない、増やさないエネルギーとして見られるわけですよね?
下水の汚泥はもともと私どもの食べ物ですので、もともとが食物から来ておりますので、これは地球温暖化には全く寄与しないCO2を出しますので、いわゆる再生可能エネルギーということは、十分見なされるものであります。
なるほど。
この日本のこの下水を利用した資源というものの開発、取り出す技術などは、世界レベルに見て、どの程度のレベルにあるんでしょうか?
レベルからいいますと、総じて高いレベルにあると思っております。
一部の技術は、いろんなところで競争段階にあるかもしれませんが、総じて高いレベルにあると思います。
これからいろいろ、水ビジネスとして出てくるだろうと思いますが、民設民営化が入ることで、一緒に自治体の方と議論したり、いろいろ相談をする機会が増えてくると思いますので、これから水ビジネスとして、世界に一体として産官、場合によっては大学も一緒になって出ていくということで、大いに期待できる糸口になるというふうに、私は別の意味で期待をしております。
じゃあ、メーカーが機械を作り、建設会社が実際に建設をし、そして自治体が維持管理をするなど、一体として。
そうです。
今まではなかなか、その間の情報交換ができなかったんですが、それができるようになると、ますます技術も開発されていきますし、それからさらに、一体として外国に出ていけるというふうに考えております。
改めて、この下水から出る汚泥を含め、利用し尽くすことの意味をお願いします。
先ほど申し上げましたように、わが国は20世紀型の資源エネルギーに乏しい国でございます。
だから植物由来のバイオマスというんですか、こういったものをぐるぐる回せるということで、使うということは非常に大事になっております。
下水からエネルギーだけでなくて、木材から化学製品の原料を作ったり、あるいは植物からプラスティックを作ったりとか、新たな技術展開というのは、これから日本の産業の発展にとって、非常に大事だというように考えております。
どうもありがとうございました。
2015/05/27(水) 01:24〜01:50
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「足元に眠る宝の山〜知られざる下水エネルギー〜」[字][再]

全国に46万キロメートルも張り巡らされた日本の下水道網。そこから集積される熱や水素が、冷暖房やエコカーのエネルギーの源として注目を集めている。開発の最前線を追う

詳細情報
番組内容
【ゲスト】大阪産業大学教授…津野洋,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】大阪産業大学教授…津野洋,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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