2猫のしっぽ カエルの手「菜種色の旅〜岩手県〜」 2015.05.27


山頂にうっすらと雪を残した東北の春。
4月下旬の…平安時代末期藤原氏によって築かれた平泉は豊かな自然と仏教によって独自の文化が育まれた地。
京都・大原に暮らす…岩手を訪れるのは初めて。
楽しみにしていた毛越寺の庭園。
ここは日本で最初のガーデニングブックといわれる「作庭記」に倣って造られた。
ベニシアさんかつて英語版でこの本を読んだ事がある。
(ベニシア)すごい大きい池。
岩があって…。
何かどこの国でもするけど自分の周りの自然を見てそれでミニチュアみたいな感じで庭を考えるのね。
石の形で何か美しいものを感じると思うのね日本は。
ただ置いとくだけで…。
何かやっぱり海を感じる。
こういう庭多分どんな人でも入ったら心が落ち着くのねそれが一番すごいと思うのね。
ホントすばらしい。
大きな池に配置された岩は海を思わせる。
大自然への憧憬が庭という凝縮した世界に表現される。
ベニシアさん日本の寺や庭に身を置くと心からの安らぎを感じると言う。
こんにちは。
(志羅山)こんにちは。
仏様が住む世界を表しているんですね。
ですから今ご覧頂いている庭も石を敷いて池を掘って実は人工的に自然を造っているんですね。
このデザインは誰が考えたんですか?恐らく京都の庭師…その当時「作庭記」というお庭を造るための指南書がありましてそれに沿った形で忠実に守られて造っているのは確実なんですが。
あの本の中に日本の庭の一番…3つの岩みたいな事がすごく大事でしょ。
ここもそんな感じあるのかな?正面に立石という石が。
ああいった形で突き出ている石というのはなかなかないと思うんですけど。
大体2.5mぐらいあるんですが。
あの石がすごく象徴的で毛越寺の空間を引き締めている。
この池水はどこから来るんですか?あそこに岩組みが見えますかね?遣水といって山から水を引き込むための水路なんですが。
遣水というのは実は大きな川を表していて川が大きな海に水が流れ込む様子を表しているんですよ。
海の中には何があるかというと右手にあります石がゴツゴツなってるあれは築山といいまして150個ぐらいの岩を積み重ねたものなんですね。
絶壁を表しているんですね。
日本の中にあるきれいだといわれている風景を表してますよね。
自然な感じ。
自然な感じをつくっててそれが日本人の美の感覚というか…。
いにしえこの庭を造った人々の気持ちは時を超えて確かにベニシアさんに伝わった。
平泉から北へ20km…ここはベニシアさんが興味を持つ岩手ならではの伝統工芸が生まれた場所。
水沢は南部鉄器発祥の地。
その歴史は今からおよそ900年前平安時代末期にまで遡る。
平泉を築き東北を治めていた藤原清衡が近江の鋳物師を招いたのがそもそもの始まりといわれている。
古くから良質の砂鉄が取れ北上川から取れる砂や粘土など原材料が豊富な事から鋳物作りが盛んに行われてきた水沢。
当時は実用的な鍋や農機具などが多く作られていた。
江戸時代に入り南部藩が台頭してくると盛岡で茶道が盛んになった。
そして優れた鋳物の茶の湯釜が作られるようになる。
南部鉄器という名の由来はここから来ている。
時代の流れの中で生まれたのが鉄瓶。
いわば鋳物のやかん。
不思議なほどまろやかな湯をつくる道具の一品だ。
ベニシアさん南部鉄器の工房を訪ねる。
こんにちは。
(佐藤)どうもいらっしゃいませ。
突然ですけどすいません。
迎えてくれたのは…鉄器作り60年。
よかったら中見せて下さい。
どうぞ。
工房の方。
南部鉄器は今では機械で作るのが主流。
でも佐藤さんの工房は今も昔ながらの作り方を守っている。
ここが型作りする土台だね。
これは粘土じゃない?砂と粘土。
…を混ぜて型を作るための。
材料ですね。
鋳物はまず川の砂に粘土を混ぜたもので型を作る事から始まる。
ここに溶けた鉄を流し込む。
型から手作りだ。
じゃあ型作りの方を…。
ああ〜!これは桜の模様。
ああ桜。
型の表面に鉄瓶の紋様を押す。
使う道具も全て自作。
頭の中でイメージした紋様を手作業で一つ一つ押し込んでいく。
型押しは1日かかるね。
8時間は絶対かかるね。
一つ一つ押す。
細いもんだから。
この鉄瓶を作る時一番難しい事は何ですか?模様を押す事だね。
それによっていい顔が出るか悪い顔が出るかそこで決まる。
結構芸術的にならないとアカン。
いや自然に。
どうぞ。
佐藤さんに勧められてベニシアさん1つ紋様を押してみる事に。
端々にやるように。
そうそうそう。
これ結構力要るよね。
あっなった〜。
なったやん。
すごい。
花びらが重なった桜。
出来上がるまでに多くの工程を必要とする南部鉄器。
鋳型作りから完成までは1か月ほどかかるという。
原料となる砂鉄を溶解炉に入れ高温で溶かす。
甑と呼ばれる昔ながらの溶解炉での作業は長年の経験と勘が必要になる。
1,400度以上に熱せられ溶けた鉄。
職人たちは昔から湯と呼んでいる。
鋳型に湯を流し込む。
鉄器作りで最も重要で緊張する工程。
鋳込みと呼ばれるこの作業は家族全員で行う。
息の合った者同士でなければ危険な作業。
余分な鉄は固まらないうちに落とさなければならない。
大変な仕事だ。
1分ぐらいで固まる。
中見えないもんだからね同じ事やってても失敗はあるっていう事ね。
鋳物屋には。
慣れると特にね。
慣れ過ぎて。
鉄が冷えたら型を外す。
出来栄えが分かる瞬間。
やっぱり鉄の温度が高けりゃいい訳。
温度が低い時もあるから。
温度見てこりゃ大丈夫だって分かるようになる。
赤いうちは温度が低い。
白くなると温度が1,500度ぐらい。
色で判断して。
内側の型を壊し更に余分な部分を取り除くと鉄瓶の形が姿を現す。
でも鉄器作りはここからが重要。
仕上げの担当は佐藤さんの弟…さび止めのために漆を熱した鉄器の表面に焼き付ける。
更に茶とおはぐろを混ぜた液体を塗る。
するとタンニンが鉄器に独特の色と風合いを与える。
職人の技と伝統の知恵で作られる南部鉄器は美しい。
鉄分が溶け出したまろやかな湯でお茶を頂く。
100年もつから。
十分に使い放題使って下さい。
ありがとうございます。
大事に使えば100年もつという。
こうして文化はつながっていく。
翌日。
平泉から東へ25kmの…ここにベニシアさんが岩手に来る最大の目的があった。
いつも京都で買ってる菜種油はどこで作ってるのかなと。
最初は京都の近くと思ったらそうじゃなくて岩手いいます。
それを絶対どうやって作ってるか見たいなと思って。
油といえば菜種油と言うベニシアさん。
この工房に来る日を待ちわびていた。
こんにちは。
(伊東)こんにちは。
すいませんベニシアです。
うれしいですお会いできて。
菜種油工房の発起人…家でここの油使ってるの。
そうなんですか。
だから場所を見たいと思って。
どうぞご案内します。
ここでは菜種の栽培から油作りまで行っている。
こんにちは。
お邪魔します。
油をどうやって作るか是非見たいと思って。
油搾りの作業を任されている…早速菜種油が作られる工程を拝見させてもらう事に。
原料は無農薬で育てた国産の菜種だけを使う。
去年の夏から秋にかけて収穫されたものだ。
まずまきで炊いた釜で菜種を30分ほど焙煎する。
乾燥し過ぎると粉になってしまうし足りないと油が出ない。
味と風味を決める大切な作業だ。
春にすごいきれいに咲く花がこういうふうに種取ってできるのね。
すごいね。
自然がすごいね。
(小野寺)花も見れて油も食べれて搾ったあとのカスは肥料に使えるので。
これ真っ黒なんですけど…。
ああ黄色やん。
中が黄色いんですよ。
すごい発見。
なので油が黄色いというか。
黄色くなるの。
ああいう色に。
何か菜種の油の香りがちょっとするね。
だいぶ温度が上がってきて香りも出てきましたね。
このぐらいに上がれば大丈夫です。
煎った菜種をいよいよ搾る。
この工房では薬品の力は借りずに機械の圧力で潰す方法で油を搾り出す。
油出ますよ。
いっぱい。
ホントだ。
今来てる。
出てきましたね。
イエ〜イ!搾られた油は混じりけのない100%菜種だけの油だ。
出ましたね。
すごいたくさん。
すごいね。
10kgの種でどのぐらい油出来るの?10kgだと3〜3.5kg…4割弱ぐらいですね。
大量生産はできない作り方。
でも一番おいしく出来るという。
この工房は地域の仲間で運営されている。
始めた理由は学校給食の栄養士だった伊東さんが質のよい油を探して菜種油に出会った事がきっかけだった。
おいしく体によい油を作りたいと菜種を育てるようなり今では京都の老舗の油屋も一目置く菜種油を作れるようになった。
出来上がったばかりの菜種油を味見させてもらう。
風味が…。
う〜んおいしい。
ホントおいしい。
菜種の葉っぱの味もあるしね。
そうですね。
サラダドレッシングおいしそうよね。
そのままかけても。
すごいマイルドな。
これがもっとおいしいですね。
この状態がおいしいですね。
でもこれを作るの大変よね。
この機械を…。
そうですね。
これがないと。
これを3日ほど置いて不純物を分離させ更に水分を抜いて殺菌すれば菜種油が出来上がる。
手間をかけ原料や搾り方にこだわるからこそ安全でおいしい油が出来上がる。
全部目で確認しながらの作業なので。
貴重な油と思いますよ。
そうですね。
私もこの油すごく好きだから。
岩手とか東北となるとやっぱり今放射能の心配されてる方結構いますし。
幸い油の方からは検出されないという事で分析結果も頂いてますので安心というか安全だよというのも一緒に添えてお届けしたいなと。
放射能のセシウムなどは水溶性。
だから油には移りにくい性質を持つ。
もちろん今も検査は続けているという。
工房の仲間たち。
菜種栽培や機械のメンテナンスなどそれぞれ役割分担がある。
栽培しながら搾るという感じなので。
だからもう仲間になっちゃったんだね。
菜種仲間。
何か一つのパズルみたいにみんながちょうど出会うっていう感じ。
最初はホントにね。
今でこそいい油が出来るって皆さんに言われますけど…。
(小野寺)出なかったですからね。
私も来たから応援しますよ。
(笑い声)だってこういう気持ちいい場所で作ったらやっぱりいいものも作れると思うのね。
せっかくいい油を作ってるんだから昔からの食文化郷土食を皆さんで廃れないように守る立場になってほしいなっていう思いで油やきっていうお菓子なんですけど。
この辺の?おやつの定番でした。
私たち子どもの頃は。
どんなものかな?じゃあこれから作ってみます?すぐ作れる?すぐ作れます。
菜種油を使ったお菓子作りを教えてもらう事に。
油やき。
油が入ってる?油で焼く。
油を引いて焼く。
砂糖は黒砂糖です。
これ1kgの粉でいつも作ってあちこち皆さんに差し上げたりするんです。
1kg…結構たくさん作るよね。
いっぱいです。
その時は砂糖を500g使います。
覚えやすいね。
これを入れて…。
それで60〜70度ぐらいのお湯を入れます。
黒砂糖をぬるま湯で溶き塩重曹を加えて混ぜる。
ここに酢を入れると重曹と反応して膨らむんです。
これも大体目分量で入れますが小さじ4杯ぐらいですね。
こういうふうに泡が出て膨らむ原因を作ってくれます。
あとは小麦を入れれば。
この小麦もこの辺で出来るの?私が作った小麦です。
え〜っびっくり。
更に小麦粉を加えて混ぜる。
これで種の出来上がり。
このぐらいでいい?よろしいです。
ここに入れて下さい。
これがそのスーパー油。
菜種油。
ストップかけます。
このぐらい?もう少しすいません。
はいそのぐらいでよろしいです。
菜種油を引いたフライパンに種を落として弱火でゆっくりと焼く。
泡がプチプチ出てきてますよね。
いつまでもこの泡が出なかったりするとなかなかふわっとしたのが出来ないです。
早く出たらもう大丈夫?早く出たら大丈夫です。
泡が全体に広まってちょっと周りが乾いてきたなと思う頃がフライ返しで返すタイミングです。
へえ〜。
私はこの時サービスするんですよ。
もう一度油を入れてあげるんです。
そうすると裏も表も油っこくなっておいしくなる。
あ〜そうか。
そして揺らしてあげる。
そうすると今まで揺れなかったのが揺れる。
もうこれで出来上がりです。
出来たてほやほやの油やき。
すぐ出来る。
そうです。
ちょっと食べてみていい?どうぞ。
何の味か…。
う〜んおいしい。
菜種油の味もちょっとするね。
そうですね。
たっぷり使ってますので。
菜種油の香ばしさと黒砂糖のコクが後を引く素朴なお菓子。
ほかにも菜種油を使った料理をたくさん作ってベニシアさんを誘ってくれた。
う〜ん…おいしいね。
シソ…シソ料理って初めて。
これすごいおいしい。
(伊東)わあよかった。
おいしい。
(伊東)多分今日おいしいって召し上がって頂けるのは油のせいです。
ねっおいしいよね。
口に入れるものが人の体を作る。
そう信じるベニシアさんにとってうれしい出会いだった。
こいのぼりと満開の桜。
そして歩く人の笑顔。
東北は京都から1か月後れて春らんまん。
2015/05/27(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「菜種色の旅〜岩手県〜」[字][再]

ベニシアさん、岩手県平泉の毛越寺の庭園美に心打たれる。奥州市の南部鉄器の工房を訪ね、製造工程を見学する。一関市の菜種油工房を訪ね、菜種油を使った郷土料理に舌鼓。

詳細情報
番組内容
京都と並ぶほどの地方文化を築いた岩手県平泉。ベニシアさん、日本最古のガーデニングブック「作庭記」にならって忠実に造られたという庭園を見てみたい、と毛越寺を訪ねる。平泉文化の象徴ともいえる鉄を使った民芸品、南部鉄器の製造工程を見学。一関市の菜種油工房を訪ねる。初めて見る菜種油作りの工程に興味津々のベニシアさん、搾りたての菜種油を味見させてもらう。その後、夕飯に招待され、菜種油を使った郷土料理に舌鼓。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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