0ガリレオ #08 2015.05.27


(花火の音)
(駒田)うわっ。
ああっ。
(キャスター)今日は東京湾では花火大会が行われておりお台場近辺は大勢の人でにぎわっています。
それでは全国の明日の予報…。
(花火の音)
(敦子)安部ちゃん。
待った?
(由美子)ううん。
全然。

(従業員)お待たせしました。
(由美子)衣装変更するの?
(敦子)私の衣装汚れた感じにしたいって。
駒田さんが。
でも台本じゃあの役のイメージは。
(由美子)敦子ちゃんの華やかさが消えちゃうんじゃ?
(敦子)私は大丈夫よ。
むしろ芝居がリアルになってお客さんに伝わるかも。
(由美子)そっか。
じゃあちょっと考え直してみる。
(敦子)うん。
(由美子)でも衣装のことなら私に直接言ってくれればいいのに。
駒田さん。
ねっ?
(由美子)ごめん。
駒田さん。
(敦子)きっと今の話よ。
(由美子)もしもし。
安部です。
もしもし。
もしもーし?どうしたの?
(由美子)音はするんだけど。
もしも…。
あっ。
切れちゃった。
切れた?
(由美子)つながってる感じだったのに声が全然。
あっ。
私にも着信入ってる。
19時31分。
うーん。
全然気付かなかった。
(花火の音)
(由美子)敦子ちゃん…。
知ってるでしょ?私たちのこと。
(敦子)駒田さん。
(由美子)駒田さん。
(敦子)鍵ある。
(由美子)あっ。
敦子ちゃん。
(敦子)駒田さん。
うわー!
(敦子)安部ちゃん。
警察に電話して!
(由美子)うん。
(パトカーのサイレン)
(美砂)湯川先生。
またしてもわれわれ警察の捜査の限界を超えた常識では考えられない事件が起こったんです。
完全な密室です。
(美砂)駒田良介さん35歳が自宅で何者かにナイフで刺されて殺されました。
(栗林)いいから君も帰って。
ハァー。
死体が発見されたのは午後7時50分。
殺されたのはその約20分前の7時31分ごろだと思われます。
(栗林)何で分かるんだよ?2人の劇団員がこの時間に駒田さんから電話をもらってるのよ。
でもこのとき駒田さんは何もしゃべらなかった。
(栗林)しゃべらなかった?というよりもしゃべれなかったのかも。
刺されて誰かに助けを求めていた。
(栗林)瀕死の状態でもう声が出なかったんだ。
おそらく。
駒田さんの部屋はマンションの20階。
ドアには鍵が掛かっていたし窓も開かない。
完全な密室な状態だったの。
(栗林)鍵は?室内にあった。
靴箱の上。
(栗林)合鍵は?一つだけ。
死体を発見した劇団員が持っていた。
(栗林)じゃあそいつが犯人だよ。
第一発見者が一番怪しいっていうしさ。
実はその人がこの神原敦子。
(栗林)ちょっと失礼。
知らないんだよな。
でも彼女にはアリバイがあるんです。
7時31分に駒田さんのマンションから4.8km離れた豊洲のカフェで駒田さんの電話を受けたのが神原さんなんです。
そして駒田さんの部屋に行くまでに劇団の衣装係の女の人とずっと一緒にいた。
(湯川)なるほど。
それなら密室殺人といえるかもしれない。
でしょ?しかも典型的で古典的な物理とは何の関係もない密室殺人だ。
(栗林)ですよね。
先生は捜査には協力しないよ。
密室ですよ?犯人はドアの鍵穴から逃げたとしか考えられない。
そんな人間いるかよ!?だから常識では考えられない事件って言ってんでしょ?湯川先生。
岸谷君。
現象には必ず理由がある。
帰ってくれ。
あなたは嘘をつかれましたね?
(敦子)えっ?
(太田川)駒田さんの部屋の合鍵を持ってた理由です。
あそこは劇団の事務所でもあったからとあなたはおっしゃいましたが。
ホントはお付き合いをされていたからじゃありませんか?駒田さんと。
個人的に。
誰かがそう言ったんですか?ホントのことを教えてください。
はい。
私は駒田さんと付き合っていました。
半年ほど前から。
(太田川)半年前?
(敦子)彼が。
駒田さんが急にそういうことを言ってきて。
あなたが好きだと?
(敦子)でも私たち恋人だったのかな?私にとってはやっぱり演出家として尊敬する人でしたから。
じゃあお二人の間には温度差があったということですね?
(敦子)温度差?正直駒田さんの気持ちがうっとうしかったとか?疑われてるんですか?私が。
(太田川)いや。
あなたにはアリバイがあります。
事実関係をはっきりさせたいだけなんです。
僕ら。
うっとうしかったなんて。
むしろ…。
もっと正直になればよかった。
私は駒田さんが好きでした。
(太田川)どうぞ。
(敦子)すいません。
(太田川)あっ。
もう一つだけ聞かせてください。
あの夜駒田さんはあなたと一緒にいた安部さんにも電話をされてますよね?瀕死の状態で恋人のあなたに助けを求めるのは分かりますが。
でもどうして次が安部さんだったんですか?
(太田川)彼女は劇団の衣装係ですが駒田さんと頻繁に連絡を取ることはなかったそうなんですよね。
(敦子)そんなこと聞かれても。
携帯に名前があったからじゃ?他にもたくさんの番号が登録されてますよ。
彼女の名前が一番最初だったとか?
(太田川)ああ。
あ行の一番上。
(太田川)安部。
確かにそうでした。
誰でもいいから助けてもらいたかったんだと思います。
(敦子の泣き声)ハァー。
(敦子の泣き声)ハァー。

(ドアの開く音)ベンディングマシン。
そう。
自動販売機は人類の英知を象徴するものの一つだ。
世界最古の自販機は紀元前200年。
古代エジプトの神殿に設置されていた聖水を販売するための装置だったといわれている。
その後文明の進歩とともに発展を続けた。
そして2013年。
現代日本の自販機は。
ハァー。
本物の豆をひいてコーヒーを作る過程をモニターで表示するとは。
フフフ。
実に凝った演出だ。
ハァー。
どっかお茶しに行くんじゃなかったんですか?コーヒーを飲むんなら別にどこでも構わないだろう。
先生の分は?気にしなくていい。
僕はインスタントコーヒーしか飲まない。
では本題に入ろう。
本題?君の仕事の話を僕の研究室に持ち込むのはやめてくれ。
そして今日のように愚痴るのは勘弁してほしい。
愚痴って。
代わりに君の悩みを解決しよう。
えっ?電話だ。
出た方がいい。
すいません。
はあ?何で栗林さんが?もしもし。
もしもし?どうした?うん?何かごそごそ音がして声が。
もしもし?もし…。
あれ!?切れた。
何なの?僕の携帯電話にも栗林さんから電話がかかってきていた。
えっ?3分前に。
まったく気が付かなかった。
あっ。
何かあったのかな?今のが答えだ。
えっ?言っただろ?君の悩みを解決すると。
あ…。
よく分かんないんですけど。
実は栗林さんの携帯電話はこのポケットの中にあったんだ。
はあ?さっき研究室を出るときこっそり拝借してきた。
(栗林)《どこまで人を疑えば気が済むんだ?この小娘は》《だって合鍵を持っていたのは彼女だけよ》つまり今ポケットの中にあった栗林さんの携帯電話から君に電話したんだ。
はっ?この手を使えば携帯電話のトリックを成立させることができる。
トリック?神原敦子はアリバイをつくることができる。
ねえ?何の話?僕が栗林さんを刺し殺したとする。
刺し殺す?今から20分前に。
(栗林)《もうすぐ帰るからね。
パスカル》《ああカワイイね。
パスカル》《栗林さん》《はい》
(刺す音)
(栗林)《えー!?》僕は栗林さんの携帯を持ち去る。
そして君を待たせていたこの教室に入る前にあのドアの向こうで。
僕は栗林さんの携帯を操作し自分の携帯に電話した。
(呼び出し音)つながったところですぐに切り着信履歴を残したんだ。
さらに栗林さんの携帯電話の登録者リストから君より前の登録者を全て削除した。
栗林さんの携帯にはあ行は井上教授と小川准教授だけ。
か行は岸谷君まで誰もいなかったので削除するのは2人だけで済んだ。
2人だけ!?あまりにも友達が少な過ぎるがそのことは今は関係ない。
そして僕は登録者リストの先頭になった君の名前を表示させたまま携帯をポケットにしまい手袋を外し自動販売機のコーヒーを持ってこの教室に入ってくる。

(ドアの開く音)はっ!?《ベンディングマシン》《文明の進歩とともに発展を続けた》《本物の豆をひいてコーヒーを作る過程をモニターで表示するとは》《フフフ。
実に凝った演出だ》そして君と会話をしながら僕はポケットの中の携帯電話の発信ボタンを押した。
《君の仕事を僕の研究室に持ち込むのはやめてくれ》《特に今日のように愚痴るのは勘弁してほしい》
(呼び出し音)《愚痴って》《はあ?何で栗林さんが?》《もしもし》当然返事はない。
《もしもし?》栗林さんの携帯電話は僕のポケットの中に入っていたわけだから。
《あっ。
切れた。
何なの?》そして僕の携帯電話にも直前に栗林さんからの着信があったことを君に見せたわけだ。
ってことは。
えっ?今の時点では栗林さんは生きていると当然君は思う。
しかし栗林さんはとっくに殺されていたんだ。
この手を使えば神原敦子はアリバイを成立させることができる。
マンションから衣装係の女性と会ったカフェまでの移動時間は?20階の駒田さんの部屋からマンションの表までは3〜4分。
そこからすぐにタクシーを使えば15分で着きます。
彼女がカフェに現れた時間は?7時25分ごろ。
ではその15分前7時10分ごろに神原敦子は駒田さんを殺してカフェに来ることができるわけだ。
そして7時31分に駒田さんの携帯から自分の携帯に電話をかけた。
コーヒーが冷めるぞ。
いや。
それはない。
だって駒田さんの携帯は遺体のすぐそばに転がってたんだもん。
死体を発見したとき携帯がそこに転がってるのを見た人間はいるのか?神原敦子が見たって。
一緒にいた衣装係の女性は?安部由美子さんも同じように証言しています。
その安部さんは本当に死体を発見した瞬間確かに携帯がそこにあったのを見たと言っているのか?それは…。
警察に通報してきたのは誰だ?その衣装係の安部さんです。
警察に電話しろと安部さんを廊下に出せば神原敦子はその間に死体のそばに携帯を置くことができる。
神原敦子が真犯人かどうか駒田さんを殺す動機があったのかそんなことはどうでもいい。
とにかく彼女のアリバイは完全ではないんだ。
(栗林)あっ!何でこんなところに?お茶するっていうから学食まで捜しに行っちゃいましたよ。
どうしました?実は僕携帯なくしちゃいました。
捜してるんですけど取りあえず今僕に大事な用はありますか?特にありません。
おや?栗林さん。
これは?えっ?同じ色。
同じ型。
僕の携帯だ!間違って持ってきてしまいました。
湯川先生!申し訳ありませんでした。
よかった!僕の膨大な個人情報がこん中に入ってるからさ。
これなくすと僕に連絡取れなくて困る人はたくさんいるからね。
助かった。
じゃあ研究室で留守番してます。
すぐ戻ります。
はい。
助かった。
あ痛っ。
お呼び立てしてすいません。
実は駒田さんの携帯に青野浩二さんと秋山敬一郎さんの名前が登録されていませんでした。
お二人は仕事関係で駒田さんとは10年以上のお付き合いだそうです。
そのお二人の名前が登録されていないなんて不自然じゃありませんか?そんなこと私に言われても。
お二人の名前を削除すればあ行の一番上にくるのは安部由美子さんです。
そういう細工をしておけば駒田さんが安部由美子さんに電話をかける理由ができる。
あなたはそこまで考えて…。
(敦子)待ってください。
えっ?いったい誰がそんなことを?自分ならそうするって簡単に思い付いた人がいたのよ。
神原さん。
信じられない。
こうやって冤罪ってつくられてくのね?ここに写っているのはあなたですよね?タクシーの車載カメラの映像です。
撮影場所は駒田さんのマンション前。
時刻は事件のあった日の午後7時14分。
安部由美子さんに会う前に駒田さんを訪ねたんですね。
はい。
何しに行ったの?合鍵を返しに。
でもそのとき駒田さんは留守だったんです。
駒田さんを殺して彼の携帯を持って安部さんを待たせているお店に飛んでいったんじゃないの?違います!じゃあ何でこのことを黙ってたのよ?私が疑われるに決まってるから。
怖かったんです。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
(バイブレーターの音)ちょっと待ってて。
(バイブレーターの音)
(バイブレーターの音)
(太田川)はい。
了解しました。
神原敦子はシロだ。
えっ?ちょっ。
ちょっと待って。
何で決め付けんの?とんでもないものが出てきたんだよ。
被害者の携帯から。
えっ?花火。
あの夜東京湾で花火大会がありました。
撮影されたのは午後7時10分。
湯川先生の仮説だと駒田さんが殺害されたとされる時間ですね。
殺される直前に撮ったんじゃないの?違う。
なぜなら駒田さんの自宅からはこの写真は撮れないから。
撮れない?説明します。
ここにレインボーブリッジがあります。
駒田さんのマンションはここ。
部屋は20階で北側と南側に窓があります。
こっちが北。
こっちが南。
そして花火が上がっていたのがここ。
えっ?写真ならこの窓から撮れるじゃないか。
北の空に月が上がるの?月?この時間月はこっちに見えたの。
南。
だからこんな写真は撮れない。
そうだ。
撮れるとすればこの辺りしかないんです。
そして神原敦子もこんな写真は撮れない。
なぜなら彼女はこの時間駒田さんのマンションの前にいたから。
これを見てください。
あっ!これ神原敦子だ。
やっと覚えました。
タクシーの車載カメラの映像です。
記録時間は?うん?午後7時14分。
4分でここからここまで移動できる?不可能だ。
つまり神原敦子が携帯を使ってアリバイを工作したという湯川先生の仮説は完全に外れ。
彼女を追い詰めたはずの証拠が逆に彼女のアリバイを証明する動かぬ証拠となってしまったんです。
分かった。
この花火は駒田さん自身が7時10分にこの辺りで撮影し。
で移動しながら7時31分に神原敦子に電話をかけ部屋に着くなり何者かに殺されそして7時50分に発見された。
例えばね。
何だよ?例えばねって!それ以外考えられないっしょ!とにかく犯人は神原敦子じゃないの。
そうだろうか?そうでしょ!そうでしょ!これが神原敦子が仕掛けた2つ目のロックだとするなら?えっ?2つ目のロック?通話記録と携帯写真。
この2つによって何が起こったのか?時間と空間がゆがんでしまったんだ。
はっ?時系列がシャッフルされ何が先で何が後か分からなくなりいるはずのない人間がいてはいけない場所にいてはいけない時間に存在していた。
つまりこれをわれわれ科学者の分かりやすい言葉で言うと何と言いますか?栗林さん。
特殊相対性理論。
正解です。
さっぱり分からない。
ハハハ。
ハハハ。
実に面白い。
・神原敦子さん。
少しお時間よろしいでしょうか?
(敦子)あの事件の捜査に?協力しています。
あくまで物理学者として助言をしているだけですが。
ああ。
すごい。
そんな方にお会いできるなんて。
ねえ?録音してもいいですか?私最近人と会うときは必ずその人の雰囲気や会話の内容を記録するんです。
それは演技の参考にするため?ええ。
相手が男性でも女性でも。
あっ。
録音するのは構いませんが僕は変人といわれることの方が多い。
科学者の典型だと思わない方がいい。
その方がむしろ面白いです。
(電子音)湯川学先生。
物理学者で帝都大学の准教授。
あなたとは対極にある職業です。
感情ではなく物事を全て理詰めで考える。
私も自分の芝居を理屈で突き詰めたいと思ってますよ。
というと?雰囲気だけの芝居は嫌なんです。
演技にはちゃんと方法論があるんです。
ある感情を引き出したいとき自分の実体験の中から一番近いものを引き出して当てはめていくというメソッドとか。
面白い。
恋に破れた女の役をやるときに自分の失恋体験が役立つように。
あなたに失恋の経験が?アハハ。
ありますよ。
しかし普通に生活していてはなかなかできない体験もありますよね?例えば殺人とか。
それも自分の引き出しの中から一番近い感情を取り出して。
そういうものがあるんですか?あなたの中に。
今度の舞台にも私が人を刺し殺すシーンがあります。
きっと真に迫ってると思いますよ。
殺されたのは確かこの方ですよね?今回は駒田さんの追悼公演です。
つらいけれどこれを経験にしてもっといい女優になることが彼に対してのせめてもの恩返しになると思っています。
先ほどチケットを買わせていただきました。
ありがとうございます。
この舞台を見てしまうと僕はきっとあなたのファンになってしまうんでしょうね。
フフッ。
だといいんですけれど。
犯人は捕まえられそうなんですか?分かりません。
僕の役目はあり得ない現象を科学的に解明することだけですから。
それはつまりトリックを暴くということ?その現象が人為的に行われたものだとするならばそういうことになりますね。
知的なゲームね。
演技の参考になりますか?もちろん。
ではもしあなたご自身に疑いが掛けられていたとしてもその追い詰められる緊張感も演技に生かされてしまう。
そういうわけですね?当然よ。
わくわくするわ。
フッ。
では舞台を楽しみにしています。
ええ。
失礼します。
室内はまだ事件当時のままです。
よろしくお願いします。
ここで駒田さんは亡くなっていました。
レインボーブリッジは?北です。
あの空に花火が上がっていました。
ということはあっちが南。
はい。
月は向こうの空に。
花火とは真逆の方向です。
写真を。
ここからじゃそんな写真は絶対に撮れません。
テレビがどうかしたんですか?先生?
(息を吹き掛ける音)何やってんですか?
(息を吹き掛ける音)ハァー。
説明してよ。
先生。
うわっ!何!?《北の空に月が上がるの?》
(栗林)《特殊相対性理論》
(敦子)《演技にはちゃんと方法論があるんです》岸谷君。
これと同じ花火を打ち上げたい。
はあ?東京湾に。
駒田さんのマンションにいらっしゃるのは事件以来ですか?
(敦子)これは実況見分?私は容疑者でもないのに?神原さんとぜひお話ししたいという方がいるんです。
どうぞ。
こんばんは。
やっぱり湯川先生。
ご存じなんですか?実は一度神原さんにはお会いしたことがあるんだ。
劇場で。
そしてここで起こった殺人事件の捜査に僕が関わっていることも話した。
先生から?華やかな女優さんを目の前にしてうっかり口を滑らせてしまったんだ。
フッ。
ホントかしら?公演直前にお呼び立てして誠に申し訳ありません。
実は今夜どうしてもあなたにお会いしたい事情があったんです。
僕の実験に協力してくださる方々の都合で。
実験?僕は殺人事件の捜査にはまったく興味がない。
僕が知りたいのはどうやったら駒田さんが亡くなったときあなたがここにいてこの写真を撮影できたのかということだけだ。
それが知りたいだけです。
録音していいかしら?面白いことになりそう。
どうぞ。
(電子音)
(敦子)警察に協力しながら捜査にはまったく興味がないと言い切る物理学者さん。
では始めましょう。
僕の仮説はあなたが罪を逃れるために二重のアリバイ工作をしたというものです。
1つは携帯電話の履歴。
そしてもう一つはこの写真で。
それで?携帯電話の履歴のトリックについてはすでに岸谷君に説明してありますから後ほど彼女からゆっくり聞いてください。
問題はこの写真です。
この部屋には北と南と2つの方角に窓がある。
事件があった日の夜花火が見えていたのは北の方角だ。
そして月は南の空に見えていた。
ああ。
今夜も奇麗な月だ。
でもここからじゃその写真は撮れないわね。
そうなんです。
だから警察は混乱しているんです。
混乱なんかしていません。
失礼。
だから岸谷君は捜査に行き詰まっているんです。
岸谷さんって私が思ったとおりの性格。
それってどういう?でも僕はこの写真を撮影することができる。
これを一つの現象とするならば現象には必ず理由がある。
いいせりふ。
そして仮説は実証して初めて真実となる。
実証?今からそれをご覧に入れましょう。
湯川です。
そちらの準備は?はい。
では今から45秒後に。
駒田さんを刺し殺したあなたはまず駒田さんの携帯電話をカメラモードに切り替えた。
花火大会が始まったのは午後6時45分。
つまりそのとき北の窓には花火が見えていたはずだ。

(花火の音)・
(花火の音)そして南の窓からは月が。
時刻は午後7時10分。
あなたが駒田さんを刺し殺した直後です。
学者さんが決め付けてかかっていいのかしら?あなたはこの位置で南の窓に向かって携帯電話を向けました。
画面には月が写っています。
そして花火が上がる。
北の空に。
(男性)3・2・1…。
(段田)いけ!岸谷君。
明かりを消してくれ。
あっ。
はい。
(段田)もう一丁。
(男性)ハハハ。
(女性)あっ。
花火じゃん。
(一同)おおー。
花火花火。
すごい。
(子供)早く。
(子供)うわー。
すごーい。
(男性)おおー。
花火が見えるのは北の窓。
南の窓からは月しか見えない。
しかし…。
鏡!?この位置から見える南の窓にはその鏡が映っている。
そしてその鏡には北の窓から見える花火が映りこむ。
最後だ!いけ!
(シャッター音)うまく撮れた。
おんなじ。
これが仮説の実証です。
(キャスター)《夏日になるところが多いでしょう》《3時間ごとの予報。
札幌から東京…》
(シャッター音)このテレビ画面には鏡面フィルムを貼ってみました。
スマートフォンにはよくある画面をオフにすると鏡になって姿見として使えるフィルムを。
実は初めてこの部屋を訪れたとき僕は妙なことに気が付いたんです。
この2つの窓には汚れがあるのにテレビ画面には指紋もほこりもまったく付いていなかった。
ほこり?あっ。
(息を吹き掛ける音)液晶テレビやプラズマテレビはブラウン管テレビのように静電気を発生することがないのでほこりを呼び寄せることはまずあり得ない。
しかし普通に生活していれば窓ガラス程度には当然汚れるものです。
にもかかわらずこのテレビ画面に指紋もほこりもまったく付いていなかったということは外部から何かしらの形で遮断されていたんでしょう。
つまり駒田さんがこのようなフィルムを貼って生活していたとしか考えられない。
そしてもちろんあなたはそのことを知っていた。
そしてこのフィルムはこのように小さく折り畳んでしまえばかばんにでも入れて簡単に持ち去ることができる。
ああ。
先生。
はい。
湯川です。
(段田)どうだい?先生。
うまくいったかい?ええ。
実に素晴らしい花火でした。
打ち上げ費用は先日お伝えした貝塚北署の岸谷君に請求してください。
ええ。
ありがとうございました。
いいだろ?もちろん。
すてき。
何て面白いの?湯川先生って。
ウフフ。
そうです。
全て先生の仮説どおり。
私が駒田を殺したの。
ああ。
追い詰められてく犯人ってこんな感情になるのね。
血が逆流する感じ。
フフフ。
指がしびれてる。
えっ?いいのよ。
これでいいの。
私は彼を殺したかったし。
殺人を犯すという行為を体験してみたかった。
許されないことだと知っていて?女優は人間の業をさらけ出すのが仕事よ。
常識やモラルから解き放たれてこそそれができるの。
自分は法律に縛られないとでも?科学者だって実験のためにマウスを切り刻むじゃない。
私はマウスの気持ちだって想像するわ。
どうして僕はこんな仕打ちを受けるの?僕のおなかを切り刻まないで。
ああ痛い。
やめて。
助けて。
何もかもが芝居の役に立つの。
湯川先生に追い詰められていくスリルさえもね。
これから始まる取り調べ裁判拘置生活。
めったにできる体験じゃないわ。
模範囚でいれば10年もすれば帰ってこられるでしょ?ああ。
そのとき私はものすごい女優になってる。
考えただけでわくわくするわ。
フフッ。
そうかな?あなたがステージに帰ってきたときそこにはもう客は誰もいないんじゃないかな?少なくとも僕はあなたの演技を見たいとは思わない。
どうして?人を殺した女優が殺人のシーンを演じる。
それが経験に裏付けられた最高にリアルな演技だと思い込んでいるのは演じている本人だけだ。
それを分かりやすい言葉で言うと何と言うかね?岸谷君。
自己満足。
正解。
では失礼します。
これは押収します。
証拠品として。
(電子音)
(笑い声)2015/05/27(水) 14:55〜15:50
関西テレビ1
ガリレオ #08[再][字]

「演技る(えんじる)vs狂気の女優!夜空に舞う花火の下で殺人劇場の幕が開く…」
福山雅治 吉高由里子 渡辺いっけい 澤部佑 蒼井優ほか

詳細情報
番組内容
 湯川学(福山雅治)を訪ねた岸谷美砂(吉高由里子)は、人気劇団の代表・駒田良介(丸山智己)が刺殺された事件について助言を求める。
 駒田の死体が自宅マンションで発見されたのは午後7時50分。殺されたのは、その約20分前だと思われた。なぜならその時間に、駒田は劇団の看板女優・神原敦子(蒼井優)と衣裳係の安部由美子(佐藤仁美)に電話していたのだ。ふたりは、カフェで一緒だった。そのとき駒田が
番組内容2
何も話さなかったのは、助けを求めようとしたもののすでに瀕死状態だったためではないかと推察された。駒田からの電話に異変を感じた敦子と由美子は、彼のマンションを訪れ、敦子が持っていた合鍵で中に入って遺体を発見したのだという。駒田の部屋はマンションの20階にあり、ドアも窓も施錠されていた。
 ほどなく美砂は、敦子が駒田と恋人関係だったことを知る。駒田の部屋は劇団の事務所でもあったから、と合鍵の件を
番組内容3
説明していた敦子は、その件を指摘されると、半年ほど前から交際していたことを認めた。またその際、駒田が由美子にも電話したのは何故だと思うか、と問われた敦子は、彼女の名前があ行の最初に登録されていたからではないか、と返していた。
 事件から数日後、美砂が湯川の研究室で捜査に進展がないことを嘆いていると、湯川は敦子がある方法でアリバイを作れることを証明して見せようとするが…。
出演者
福山雅治 
吉高由里子 

澤部佑(ハライチ) 
渡辺いっけい 

ほか
スタッフ
【原作】
東野圭吾 

【脚本】
福田靖 

【企画】
鈴木吉弘 

【プロデュース】
牧野正 

【演出】
西坂瑞城 
澤田鎌作 

【音楽】
福山雅治 
菅野祐悟 
『オリジナルサウンドトラック』(ユニバーサルミュージック) 

【主題歌】
KOH+『恋の魔力』(ユニバーサル J) 

【制作】
フジテレビドラマ制作センター

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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