「きょうの健康」今日は「子宮筋腫」についてお伝えします。
30歳以上の女性のおよそ4人に1人が見つかる身近な病気なんですけれども不妊にも関係する事から最近注目されています。
テーマご紹介しますとご覧のようになっておりまして…どのような病気なのか詳しく伺ってまいります。
今日お話をして下さいますのは…産婦人科医で子宮筋腫などの手術がご専門です。
それではお話お願い致します。
よろしくお願いします。
では今日は子宮筋腫について3つのポイントでお話し致します。
ではまず初めに子宮筋腫がどのような病気かご説明致します。
まず子宮ですけれどもこれは皆さんご存じのように赤ちゃんが宿る場所です。
大きさは大体このレモンあるいは鶏の卵ぐらいの大きさです。
子宮が。
随分小さいんですね。
そして子宮筋腫というのはこの子宮にできる良性の腫瘍。
こぶのようなものなんですが大きさは小さい場合は米粒ぐらいの小さいものもありますけれども大きいものになりますとここにあるキャベツ大。
そんなに大きい…。
スイカぐらいにもっと大きくなる場合もあります。
そうですか。
それにしてもこぶですよね原因は何でこぶができるんですか?こぶができる原因というのはまだ分かっておりませんので予防法もないのが現状です。
ただし良性の腫瘍ですので悪性がんになる可能性は少ないのでそれほど怖がる病気ではないというふうに考えられています。
とはいってもやっぱりキャベツとかスイカと言われると何かしら影響が…どうなんでしょうか?確かに症状が強くなって健康に悪い影響が与えられる場合はあります。
それからこの筋腫の大きさですとか数位置によっては不妊症や流産の原因になる事もあります。
それでは2つ目のポイントに移ります。
日常生活妊娠への影響ですね。
そちらの模型でお願い致します。
はい。
こちらが子宮の断面図になります。
子宮の内側この黄色い所は子宮内膜という粘膜で赤ちゃんが宿る場所になります。
このピンクの組織という内膜の下にあるのが筋肉の組織ですが子宮筋腫というのはこの筋肉にできる良性の腫瘍こぶでしていろんな所に1つだけではなくて2つ3つとたくさんできます。
私の患者さんでは100個以上できた患者さんも…。
そんなにたくさんできる場合があるんですね。
人により数も大きさもさまざまです。
これは女性ホルモンの働きによって大きくなって数が増えるという事が知られておりますので月経が始まって年齢を重ねるにつれて数が増え大きくなるという事が知られています。
一般的に閉経してしまえば女性ホルモンの値が低くなりますのでだんだん小さくなってしぼんでいくという事が知られています。
この子宮筋腫の大きくできる場所によって3つのタイプに分かれます。
はい。
1つ目は…もう一つ目が子宮の外に飛び出して発育する…。
突き出るような?はい突き出るタイプです。
この2つのタイプの場合は小さいうちはそれほど症状が出ません。
子宮筋腫を持ってる方の大体7割がこの筋肉の中にできるタイプですので無症状で過ごされている方が多いという事が知られています。
ただしそれでも数が多くなったり大きさが大きくなったりすると月経量の多い過多月経ですとか下腹部に痛みが出る月経痛それから頻尿腰痛などの症状が出る事もあります。
続いて3つ目…これは筋腫が内側に突き出すようにできますので子宮の黄色い所子宮内膜という粘膜の表面積が増えまして本当に人さし指の先ほどの小さい筋腫でも生理月経の量が増える過多月経になって貧血になる場合があります。
女性は普通毎月生理があるぐらいでは貧血にならないようになっている訳ですけれども逆に軽度の貧血があると言われた場合は相当な危険信号だと思って注意してみられる必要があると思います。
それ以外にも日常生活に支障を来すような激しい月経痛を起こす場合もあります。
その大きさだけじゃなくて筋腫のできる場所によって大きく変わってくるという事なんですか?妊娠とはどういう関係があるんでしょうか?筋腫があっても何事もなく妊娠して出産してらっしゃる患者さんというのはたくさんいらっしゃいます。
ただ筋腫ができる場所や大きさ数によっては影響が出る場合もあります。
例えば卵管卵の通り道ですがここの近くに筋腫ができてしまいますと卵の通り道を塞いでしまって卵が子宮に入れないで不妊症の原因になります。
それから内膜の近く飛び出すようにできてしまいますとせっかく卵がここまで来ても着床できないでやっぱり不妊の原因になります。
それから胎児のその後の発育に影響する場合もあります。
更に妊娠した場合もその場合はこの内膜に近いタイプでなくて筋層の中あるいは外に出っ張っているタイプでも妊娠のホルモンや血流の関係で筋腫が大きくなったりあるいは性質が変わって痛みを起こして子宮を収縮させて早産の原因になったりあるいは逆に子宮の筋腫の方に血流が取られて胎児の発育に影響が出たりそれからお産の時に筋腫が邪魔になって帝王切開が必要になるとかっていう事で問題になる事もあります。
そうしますと子宮筋腫の場合にはできる場所といいましょうか場所が非常に重要で特に場所によっては不妊の原因になるとそういう事が言える訳ですね?そのとおりです。
先ほど申し上げましたようにこの子宮筋腫という病気は女性ホルモンの働きによって大きくなるという事が分かっておりますので生理の度に年齢を重ねるごとに大きくなっていく訳ですけれど大体この病気が問題になって見つかってくるというのは30歳代中盤から後半が多いです。
昭和50年には女性が最初にお子さんを産む年齢というのが平均25.7歳だったというふうに報告されています。
そうしますと筋腫がそんなに大きく成長しないうちにその女性が妊娠・出産を経験しますのでこの問題が注目されるという事は少なかったんですけれども平成25年にはその年齢が30.4歳に上がったと報告がありますがそうしますとちょうど子宮筋腫が大きくなって問題になる頃に妊娠・出産を経験するという時期が重なってしまいますのでそういった時期に筋腫が悪い影響を与えるという事が問題になってまいりました。
平成25年には30.4歳なんですね。
ちょうど重なった…。
筋腫が問題になる時期と妊娠・出産を経験する時期が重なってしまうので昔に比べてこの病気が問題になる事が。
最近注目されて。
増えてきたという事になります。
という訳で妊娠を希望する方はよく検診を受けられて筋腫があるというふうに言われた場合はどんな治療が必要なのかという事をよく主治医の先生と確認してほしいと思います。
では続きまして今日お伝えしているポイントの今2つ目まで来たんですけれども3つ目のポイントになりますね。
3つ目のポイントは…子宮筋腫の治療法には大きく3つございます。
1つ目が経過観察。
もう一つ目が薬物療法。
そして3つ目が手術です。
この治療法の選択は妊娠・出産を希望するかどうかで大きく変わってきますのでそれをまずよく主治医の先生と相談する必要があります。
まず症状がないあるいは症状があっても軽くて日常生活に支障を来さないという場合は経過観察を致します。
子宮筋腫は先ほど申し上げましたように良性の腫瘍ですので基本的に命に関わるという事はありません。
とはいってもやはり先ほど見せて頂いたキャベツとかスイカの大きさですとどうなんでしょうか?ただあのぐらいの大きさでも全く症状を感じないという方も中にはいらっしゃるのでその場合は後で申し上げる妊娠・出産に関係して治療するという方針をとる場合もありますけれど症状がなければ経過観察をしていくという事も選択する場合があります。
その場合の経過観察はどれぐらいのペースで?大体そういう場合は3か月から長くても1年に1回のペースでは子宮筋腫の大きさあるいは性質を見ていく必要はあると思います。
一方つらい症状があるという場合ですけれどもこの場合は薬物療法それから手術が選択肢になります。
薬物療法手術…まず薬ですね。
薬物療法について教えて頂けますか?まず初めに薬物療法で子宮筋腫を根治させるという事はできません。
ですのでまずお薬で対症療法症状に対する治療というのを行います。
例えば貧血があった場合は造血剤を使って血を増やす。
それから痛みがあった場合は鎮痛剤を使って痛みをとる。
あるいは漢方薬なども痛みをとるために使われる事があります。
一方ホルモン療法というのはよく聞かれると思いますがこれは月経量を減らしたり月経そのものを止める事で貧血や月経痛を抑える効果がありますし筋腫自体を小さくするという効果もありますけれどもこれはあくまでも一時的な効果でありまして筋腫そのものをなくしてしまうという治療ではありません。
ですので子宮筋腫でかなり強い症状が出ているあるいは根本的に治したいという場合は手術が必要になります。
その場合も妊娠・出産を希望しているかどうかという事も大事なポイントになりましてこの場合は症状が全くなくてもこういう事を将来あるいはその時に考えている場合は手術を計画するという事になります。
ただし妊娠を希望して手術をするという場合も手術をしたら100%妊娠するかといったらそういう訳ではありませんで手術をするデメリット手術をする事で子宮に傷がついて例えば術後半年ぐらいは妊娠をしないでおかなくてはいけないというような事を判断する事もありますので手術をすると計画した場合はその辺の時間もよく計算に入れて検討する必要があります。
でもどうなんでしょう妊娠するかどうか分からないけどそれこそ不妊の原因となっている可能性があると。
そうなってくるとなかなか決断ですよねなかなか決断難しいと思うんですけど。
子宮筋腫のあるなしにかかわらず出産する年齢が高くなればなるほどリスクも上がりまた妊娠しにくくなるという事も分かっておりますので妊娠・出産のタイムリミットというのをよく考えられて手術を判断するという事になると思います。
その辺りは主治医の先生とよく相談して検討して頂きたいと思います。
その相談をして手術をする事になりました。
そうした場合どのような手術になるんでしょうか。
子宮筋腫に対する手術としては大きく2つのタイプに分かれます。
一つは筋腫だけをくりぬく手術です。
もう一つは筋腫のある子宮ごととってしまうという手術です。
この筋腫だけをくりぬく手術というのは子宮は残りますので将来妊娠するという可能性は残ります。
ですがどうしても小さい筋腫がとり残されてしまって将来再発してしまうというリスクがあります。
一方子宮ごととってしまうという手術は月経がなくなりますので妊娠はできなくなってしまいますけれども全部とりますので再発のリスクは低いというか全くおそれがないと。
けれどもよく卵巣のホルモンの事を心配される方がいらっしゃるんですけれども卵巣は残す事ができますので女性ホルモンのバランスが崩れるという事はありませんのでそういう心配はございません。
なかなか短所長所があって悩むと思うんですけども手術法ですね手術法としてはどういう方法があるんですか?手術の方法には3つ大きく分けてございまして一つが開腹手術。
おなかにメスを入れて直接私たちが筋腫子宮を手で触りながら筋腫をとっていくというあるいは子宮をとっていくという方法です。
長所は…短所はどうしても傷あとが大きいですので残ってしまったり痛みがあるという事です。
2つ目の手術の方法が腹腔鏡下手術と呼ばれるものでこれはおなかに切らないで4つほど孔だけを開けてそこから内視鏡ですとか鉗子を入れておなかの中で操作をするという方法です。
これは医師側の高度なテクニックを要するという特徴もございますけれども長所としましては傷が小さいですので痛みは少ないですしそれに伴って入院期間も短くて回復も早いです。
ただ短所ですけれどもどうしても筋腫が大きかったり数が多かったりすると難しくてできない症例があると。
それから手術中にせっかく腹腔鏡で始めても開腹手術に移行しなくてはいけない場合もあるという短所というか問題もございます。
3つ目は子宮鏡下手術です。
これは本当におなかもどこも切らないで腟の方からカメラを入れてとるという手術で傷ができなくて回復も早いんですけれども適応が限られてあるいは1回にとりきれない子宮筋腫もあるという事が問題です。
いずれにしても今日選択伺ったんですけれども閉経後も一応心配した方がいいという事ですね。
閉経後も例えばまだ症状があったりする場合は肉腫といった悪性の病気になる場合もありますのでその場合は注意が必要です。
今日はありがとうございました。
2015/05/27(水) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「子宮筋腫 治療の選択」[解][字]
子宮筋腫は子宮にできる良性腫瘍だが、生活に支障を来すつらい症状が出たり、不妊や流産の原因になる場合も。妊娠希望の有無など、治療選択にあたってのポイントを伝える。
詳細情報
番組内容
「子宮筋腫」は、30歳以上の女性のおよそ4人に1人に見つかる身近な病気だ。基本的には命に関わることはないが、筋腫のできる部位、大きさ、数によっては、下腹部に激しい痛み、出血や頻尿、腰痛などのつらい症状が現れ、生活の質を大きく損なう場合もある。また、不妊や流産の原因になることもある。どのようなケースが妊娠・出産に影響するのか、また、治療を選択するにあたってのポイントを伝える。
出演者
【講師】東京大学大学院准教授…甲賀かをり,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:9690(0x25DA)