(「火の鳥」)開会式のクライマックス聖火点灯を盛り上げるこの音楽。
若きストラヴィンスキーはこの「火の鳥」の成功で大作曲家への道を歩み始めます。
「火の鳥」はバレエのための音楽。
発表当時その革新的な音楽は衝撃を持って迎えられました。
20世紀音楽最大の巨匠ストラヴィンスキー。
しかしその人生は度重なる戦争や革命によって波乱に満ちたものでした。
激動の時代を不死鳥のごとく生き抜いた一人の作曲家に迫ります。
「ららら♪クラシック」今日はストラヴィンスキーの「火の鳥」です。
本当にかっこいい曲ですよね。
はい。
モダンですよね。
それでは本日のお客様ご紹介しましょう。
デーモン閣下です。
(一同)よろしくお願いします。
まさに火の鳥がやって来た。
ちゃんと合わせてくれましたね。
ありがとうございます。
かぶりましたね。
(笑い声)今日もスタジオ華やか。
ほんとそうですね。
デーモンさんはストラヴィンスキー作品の録音に参加された事があるという事なんですが。
「兵士の物語」で悪魔の役を。
どんぴしゃの役ですね。
まあそのものなので。
ストラヴィンスキーとはじゃあ少なからずご縁がある。
そういう事になりますね。
我が輩がいわゆるクラシック作品と録音物で関わった最初の作品があれなので。
さあという事で番組ではストラヴィンスキーははじめましての作曲家という事でこちら。
ストラヴィンスキー1970年代まで生きたロシアの作曲家で20世紀を代表する作曲家の一人ですね。
代表作は…このあたりの作品はいかがでしょう?閣下。
名前はよく聞くんだけれどもあんまりしっかりと聴いた記憶がない曲が多いというかばかりというか。
でも今日はもうほんとに役作りは衣装でバッチリですので火の鳥は。
中身知らないのに役作りしているっていうね。
是非大好きになってね帰って頂きたいなと思います。
それでは「火の鳥」とはどういう曲なのでしょうか。
こちらをご覧下さい。
(「火の鳥」)この曲はロシアの民話がもとになったバレエのための音楽です。
作曲当時ストラヴィンスキーは27歳。
まだ無名の作曲家でした。
そんな彼に作曲を依頼したのは…伝説のバレエ団「バレエ・リュス」を結成した人物です。
バレエ・リュスは20世紀初頭時代の最先端を行く革新的な作品を次々と生み出しバレエの歴史を大きく変えました。
当時ディアギレフのもとにはロシアの一流芸術家やダンサーが集められていました。
そんな中作曲家として選ばれたのがストラヴィンスキーでした。
その事は彼の自尊心をくすぐりました。
依頼されたのは新作バレエ「火の鳥」の音楽。
…と不安を抱えながらも一流芸術家の仲間入りを果たす絶好のチャンス。
この機を逃すまいと作曲に取り組んだのです。
「火の鳥」はイワン王子が火の鳥の力を借りて悪の魔法使いカッチェイ王から王女を救い出す物語。
イワン王子は森の中で火の鳥を捕まえます。
火の鳥は魔法の羽根を渡し困った時には助ける事を約束して逃がしてもらいます。
カッチェイ王から王女を救うために戦うイワン王子。
魔法の羽根を一振りすると火の鳥が現れ王子を助け悪を滅ぼします。
そして王子はめでたく王女と結婚するのです。
1910年にパリで初演されたバレエ「火の鳥」。
それまでのバレエにはなかった斬新な振り付け見た事のない鮮やかな色使いの衣装や舞台美術。
そして強烈なリズムと響きを持ったストラヴィンスキーの音楽。
パリの人たちは圧倒的なエネルギーあふれる舞台に衝撃を受けたのです。
(拍手と歓声)公演は大成功!若きストラヴィンスキーは一夜にして時代の寵児に!才能あふれる若手作曲家として大きく羽ばたいたのです。
全体にこうエンターテインメントがすごいエネルギーに満ちてるというのがね分かりますね。
確かにねこの「火の鳥」よりも前のバレエというのは「ロマンチック・バレエ」と言われるような…白いチュチュを着て妖精がフワフワフワッと舞うような印象。
ですからやっぱり先ほどのね男性群舞結構ショッカーのような激しい…。
ショッカーのような。
フフフフ。
なかなか面白い動きをしていましたけれども。
火の鳥も真っ赤でしたもんね。
トータルでやっぱりこのセンセーショナルさというのは。
当時芸術の中心だったパリに未知の北の大国ロシアからいきなりバレエ団がやって来てそれが振り付けもダンスも音楽もどれもこれもレベルが高くてもうびっくりしたでしょうね。
パリといえばねやっぱりきっと芸術にはプライドがあるでしょうからね現地の人は。
ディアギレフさんというあの興行主が登場してくるわけなんですが非常に時代と才能を見抜く力があったディアギレフなんですが更に個性あふれる芸術家たちを束ねるという力。
それぞれやっぱり一流だからこそ個性も豊かですからね。
芸術家で一流ってなるともうものすごい扱いづらい連中がいっぱいいるよね。
その彼が結成したバレエ・リュス例えば画家だとピカソ。
ファッションの世界からはあのココ・シャネルも衣装を担当している。
衣装を提供している。
そうなんですよ。
そのころの本当の一流の芸術家を根こそぎさらってきて自分と一緒に仕事をさせちゃうっていう。
すごいエネルギーがあったんでしょうねそのバレエ・リュスにもディアギレフにもね。
でもねこのディアギレフさんまとめる力もあったしお金を集める力もあったんですが1つ何かちょっと足らないというか。
う〜ん…何だろうね…。
ケチ。
さあどうでしょう?ストラヴィンスキーも困っていたそうです。
一体どういう事だったんでしょうか。
こちらをご覧下さい。
「火の鳥」の成功の後ストラヴィンスキーとディアギレフは「春の祭典」をはじめバレエの歴史を変えたと言われる話題作を次々と生み出します。
ストラヴィンスキーは既に一流作曲家の仲間入りを果たしていました。
しかしディアギレフはギャラの支払いにルーズでストラヴィンスキーに十分な収入はありませんでした。
ストラヴィンスキーに新たな依頼主が現れた時の2人の会話です。
なかなか豊かにならない生活に第1次世界大戦とロシア革命が更に追い打ちをかけます。
お金に困ったストラヴィンスキーは収入を得る手だてを考えなければなりませんでした。
そこでヒット作「火の鳥」をオーケストラだけで手軽に演奏できるように6曲から成る組曲に作り替えました。
演奏回数が増えれば著作権料が手に入ります。
こうして「火の鳥」は生まれ変わってストラヴィンスキーを助けたのです。
やがて時代は第2次世界大戦へ。
戦禍を逃れアメリカに渡ったストラヴィンスキーに再びお金の問題が起こります。
既に大作曲家としての地位を築いていたにもかかわらずストラヴィンスキーは亡命ロシア人。
著作権は保護されていなかったのです。
そこでストラヴィンスキーは著作権を得るために再び代表作「火の鳥」を編曲します。
以前の組曲より曲数を増やし新たなバージョンの楽譜を出版しました。
「火の鳥」は作曲から30年以上たってもなお生まれ変わりストラヴィンスキーを救ったのです。
晩年になってようやく生活が安定したストラヴィンスキーは演奏旅行で世界中を巡りました。
1959年の初来日彼が指揮したのは「火の鳥」でした。
(「火の鳥」)ストラヴィンスキーは不死鳥のごとく何度も生まれ変わった「火の鳥」と共に激動の時代を生き抜いたのです。
(拍手)はあ…面白い。
曲のタイトルが「火の鳥」なだけにその「火の鳥」を何回も編曲し直して生き延びていく。
アメリカに行ったところで楽譜を売って権利を主張する事はできなかったって事ですよねきっとね。
新たに書かざるをえなかった。
それを繰り返してだんだんと豊かになっていったという事だと思うんですけどね。
ストラヴィンスキーはね作品を何度も作り替えているんですけれども彼自身も「カメレオン」と呼ばれたぐらいに時代に合わせて作風を変えているんですね。
例えば革新的な作品を作っていた時代でも流れが古典の方に向かうと新古典主義というふうな形でまた作風を変えたりという事を。
割と時代に合わせていこうとした人っていう事ね。
でもストラヴィンスキーの場合はそれぞれに合わせたものが全部割と名作として今も残っているので…難しいのはどんなものでもやっちゃうんだよねと言ってもかっこよくなきゃ駄目なんだよね。
ああ確かにね。
形としては作れるかもしれないけど…何かこう作家先生の世界でもあるんですか?何とか期何とか期みたいな…。
ジュラ紀白亜紀みたいな。
あれこれ考えたんですけど作家はあんまりないんですよね。
だから意外と音楽よりは思考法みたいなものがそのまま生で残ってしまうのでそこの部分って人間あんまり変えられないのかもしれませんね。
確かに音楽でも我が輩は作曲もするけど作詞もするんですが詞の世界はなかなか意識的に変えようと思わないといっつも同じような事を言ってる歌詞になりますね放っておくと。
面白いですね。
ストラヴィンスキーみたいに変わっていくよさもあるし一つの事を貫くよさもやっぱり両方あるんですよね。
表現の世界なので。
どちらがいい悪いではなく。
ただストラヴィンスキーみたいに変わっていく生き方は僕はかっこよくて好きですね。
ちょっと憧れです。
「火の鳥」は発表当時大センセーションを巻き起こしたバレエのための音楽です。
今日ご紹介するのは…ストラヴィンスキーの作曲の技に美濃さんが迫ります。
「火の鳥」の物語は善と悪がはっきりとしているんですね。
まずは悪の魔法使いカッチェイ王。
そして善の方はそれに対する…見ていきたいと思います。
まず…ちょっとメロディーを聴いてみて下さい。
これ実はね民謡からきているんです。
ロシア民謡「門のそばで松の木が揺れている」という。
長いタイトルですね。
そっくりですね。
そっくりどころかまさに本当にそのままご利用されているわけなんですけれども。
さあこのメロディーなんですけれども実は5つの音で出来ています。
5つの下がってくる音型。
ここで1回上がるんですがこれ実は…。
「ファミレドシ」だけで出来ている。
これを「善の音階」と覚えておいて頂きたい。
「ファミレドシ」が善の音階。
はい。
今度はですね悪の音楽を見ていきたいと思います。
楽しみですねこれ。
(低い声で)楽しみだね。
さあこちらも5つの音で非常に印象的な…。
(低い声で)こっちも5つなのか。
出だしなんですが冒頭部分はこんなふうになっています。
これ実は…。
ああ。
上から。
ウーウーウーウーウー。
5つの下がってくる音階。
うちのバンドで使いそうだな。
ダーンダーンダーンダーンダアーン!フハハハハハ!…って感じだよね。
ほんとですね悪の音階ですよ。
そのものですよ。
これをじゃあ知らず知らずにご利用していたわけですね。
そういう事ですね。
ストラヴィンスキーに著作権払わないといけないのかな。
さあこの音階が「悪の音階」という事で善の音階と悪の音階分かりやすくするために同じ場所でねもう一度紹介したいと思います。
まずは善の音階。
これで先ほどの「終曲」を弾くと…。
まさにこの音だけで作られています。
そして悪の方ですね。
これを使うと…。
これだけを使ってこのメロディー冒頭部分が出来てるという事なんですよね。
ではここで皆さんがよく知っている5つの音だけで出来ている名曲で実験をしてみたいと思います。
曲は「ちょうちょう」です。
・「ちょうちょう菜の葉にとまれ」・「菜の葉にあいたら桜にとまれ」すばらしいです。
さてこの曲をもし…。
これ今ね善の音階で出来ている「ちょうちょう」なんですがこれを悪の音階で弾くとどんな「ちょうちょう」に仕上がるのか。
どんな蝶なのか?閣下やってみましょうか。
これを使って「ちょうちょう」を歌うとどうなるのか。
楽しみ。
いきますよ。
さんはい。
・「ちょうちょうちょうちょう菜の葉にとまれ」・「菜の葉にあいたら桜にとまれ」おお〜すごい!怖い…。
1個ちょっとずれちゃったね。
(笑い声)でもたった5つの音だけなんですがこれほどに違う…ほんとですね。
こんなに小さな素材でも表情がガラッと変えられるんですね音楽って。
そうなんです。
そしてこの曲がかっこいいのは何といってもやはりリズムという事で実はこの曲3拍子で出来ています。
123123…と思って聴いてて下さいね。
そうなんです。
まさに…123の……っていう「ト」の方に音型が入ってくるわけなんですね。
それによって人間は心理的に「あれ?」。
ちょっとこう分からなくなる。
しかも緊張感とか…。
緊張感がわく…高まるし。
もしこれ…シンコペーションといってこの裏から出てくるのを使わないとどうなるのか。
普通だ。
これをシンコペーション使っただけで…。
(デーモン閣下の歌声)…というふうになるわけなんですよね。
この曲いいですね。
今日ぴったりです。
でもほんとにね私たち作曲家も…閣下もねシンコペーション…。
裏から入ればいいんだな次は。
メロディーがな。
よし次の作品はそうしよう。
楽しみですね。
しかもずっと裏ではないんですよ。
表になったりもするからややこしい。
そうなんです。
ここで重なるんですけど。
シンコペーションなだけで裏切りなうえに時々もう1個重ねた裏をかいてくるのでなんとも…捉えられないような音楽を聴いてる感覚にされてしまう。
やはり新しい事をするにはこうやって複雑さ…。
新たなチャレンジをする事で踊りも斬新な新しい動きというのがね。
音楽に引っ張られてね。
この音によってね導かれているというような大きな部分です。
それではストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」から「カッチェイ王の魔の踊り」と「終曲」です。
物語が分かる。
音楽聴いてるだけで。
しかもなんかもう映画の状態で一番最後戦いが終わって平和が戻って平和の象徴として門の前で松が風に吹かれてるわけですよ。
それをグーッと引いていくと…もうすごいロングで引いてって「THEEND」っつって出てくる。
ああ〜そうですね。
映画音楽の多くの作曲家はストラヴィンスキーから影響を受けてるに違いないと思いましたね。
そもそもストラヴィンスキーにこの作曲の依頼がきた時にもう作品のタイトルはきっと決まってたんだよね?テーマはでもそうだと思います。
「『火の鳥』ってやつをやるぞ。
お前『火の鳥』っていうバレエの音楽作れ」ってきっと言われてそれが一生の運命になったわけでしょ。
自分が考えたタイトルじゃないわけじゃない。
そこがまた面白いよね。
よかったですね「火の鳥」で。
これ「桃太郎」とかだったら大変ですよね。
(笑い声)いや「桃太郎」なら「桃太郎」で生き抜いていったんじゃ…。
音楽との幸福な出会いが皆さんにも訪れますように。
2015/05/28(木) 10:25〜10:55
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「飛べ!不死鳥のように〜ストラヴィンスキーの“火の鳥”〜」[字][再]
今回はストラヴィンスキーの「火の鳥」。ソチオリンピック開会式の聖火点灯を盛り上げた曲です。激動の時代を「火の鳥」と共に生き抜いたストラヴィンスキーの物語です。
詳細情報
番組内容
今回は、ストラヴィンスキーの「火の鳥」。2014年ソチオリンピックの開会式、聖火点灯を感動的に盛り上げた曲です。「火の鳥」はバレエのための作品で、パリで初演され、ストラヴィンスキーは衝撃のデビューを飾りました。その後も「火の鳥」とともに、激動の時代を生き抜きぬいたストラヴィンスキーの物語です。【ゲスト】デーモン閣下【演奏】渡邊一正(指揮)、東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)
出演者
【ゲスト】デーモン閣下,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【出演】渡邊一正,東京フィルハーモニー交響楽団,トーマス・O,マット・パーキンス,【語り】服部伴蔵門
ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ
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