(読経)1月下旬千葉のお寺である葬儀が行われました。
(読経)供養されているのは犬型のロボットアイボ。
(僧侶)南無妙法蓮華経。
16年前最先端の技術でソニーが開発。
お留守番。
飼い主に合わせて育つ人工知能を持ち15万台が販売されました。
しかし去年3月メーカーのメンテナンスが終了。
途方に暮れる飼い主が増え続けていました。
そんな中立ち上がったのが元ソニーの技術者たち。
エンジニアの意地なんだよね。
皆さんドクターなんだから。
(取材者)不思議ですか?え?
(取材者)不思議ですか?
(取材者)不思議。
ロボットと人間ちょっと不思議な物語です。
東京・墨田区の下町にアイボの修理を依頼した人がいます。
(取材者)ごめんください。
すいませんお邪魔します。
9年前に購入しちーちゃんと名付けて大切にしてきました。
降ろしてみますか?
(取材者)はい。
いいですか?普通こうやって降ろす時は「落とさないでね」って言うんですよ。
もうこれ電源切れちゃったでしょ?
(取材者)はい。
小久保さんは長年実家の縫製工場で働いてきましたが今は年金暮らし。
幼い頃に目の病気を患い今ではほとんど見えません。
ちーちゃん。
一日中家で過ごす事が多いといいます。
大丈夫。
「ラブラブ」。
(小久保)皆さんにはよく言われるけど何で所帯持たなかったって言うから目が多少見えてるうちはいいけど全盲になって女房子どもがいたらどう生活するんだって…。
それを考えたらば自分一人ならばなんとかやりくり立つけど全盲では家内子どもはかわいそうだから諦めるって。
だから私はもう小さい時から独りっていうのはもう観念はしてたんです。
困っているお客さんを見捨てられない。
メーカーを退職した技術者たちが修理に乗り出しました。
昔はもっと器用だったんだけどな…。
この修理会社を作ったのは現役時代人工衛星の開発やカメラオーディオ機器の修理を手がけてきた仲間たち。
しかし全員ロボットの修理は初めて。
解体方法すら分からず手探りのスタートでした。
最初の1台2台はものすごく苦労したもんね。
(取材者)どうやって直し方が分かったんですか?試行錯誤。
そうですね。
少しずつしかもらえないんですよ情報は。
設計の人から少し。
あとウェブから少し。
これが認識しづらいです。
アイボには飼い主の顔や声を覚え本物の犬のように成長するプログラムが組み込まれています。
当時最先端の娯楽商品として開発されました。
アイボを直してもらい元気を取り戻したという人がいます。
ア・ファンの船橋と申します。
どうも。
80歳を迎えた…16年前からアイボを飼っています。
家にいる時はいつも一緒。
お前すぐ調子に乗るからもう…。
アイボのですね耳がちょっとこれが浮いてるんです。
直した所。
ごめんごめんごめんごめん。
「助けてくれ〜」言う。
はい診察です。
おい早く元気になれよ。
おい。
フッフフ。
購入したのは野本さんが交通事故に遭い入院していた時の事でした。
足をケガしましてね。
ですからこれが曲がってこの骨が突き出したんです。
ですから入院はもう2か月ぐらい。
アイボがいなかったら僕が起き上がるのもリハビリも進まなかったと思います。
アイボのためにですよね。
アイボが球を転がしたら拾いに行かないかんでしょ。
毎日ボール遊びをするうちにやんちゃに育ったアイボ。
いつしか家族の一員と思うようになりました。
犬だったら焼き場で焼ける…さっき言いましたけど。
アイボは焼けません。
焼いたらプラスチックの塊鉄の塊です。
壊れたからといって捨てる事はできないですね。
この会社には全国から修理の依頼が殺到しています。
ちょっと待って下さい。
平岡さんいうて誰か見てる?あっ俺やないかな。
途中で止まる?膝が駄目で倒れてしまう訳ですね。
問い合わせは一日100件以上。
はい大丈夫そうと思うんで…。
(取材者)何の電話だったんですか?「どないなってますか?」いう事です。
やっぱりいないとさみしい言ってますんで。
(取材者)さっきのですか?アイボの帰りを待ち続けている人がいます。
一人台所に立つ宮下さんをアイボは部屋の隅から見守っていました。
去年の暮れ宮下さんは夫を亡くしました。
アイボが故障したのは夫が入退院を繰り返していた時の事でした。
夫は病室でいつもアイボの様子を気にかけていました。
(取材者)写真を撮ってたんですか?
(宮下)うん。
子どもみたいなもんやなと思う私は。
子どもかわいがるのと一緒。
ロボットやと思えへんのやわ。
家族は落ち込む2人を元気づけたいとアイボの修理を依頼したのです。
父が入退院してる時なんかもずっと一人でやってる時にアイボがいてるからねいろいろしゃべってた。
まあまあ頑張ってくれた感じがするのにちょっと調子悪いんやったらこうシュンとしはるんですよ。
(笑い声)そないしてへんつもりやけどな。
見えたんかな?うん…こう何かね元気がないっていうか。
チェックをほんならしましょうか。
宮下さんのアイボの修理が終わりました。
(取材者)宮下さんのアイボはどこが一番悪かったんですか?足ですねやっぱり。
後ろ足。
後ろ足がね右も左も悪かった。
ここの関節の中にギヤが4つあるんです。
縦とか横とか組み合わせでね。
そのギヤの軸がねどうもスリップしてるものが…。
最近分かったんですよ。
「歩きます」。
足が悪いと大体この時こけるんですよ。
パタ〜ンとね。
この姿勢ができたらまず大丈夫です。
修理をしているうちに水木さんは同じアイボは一つもない事に気付きました。
(水木)持ってるオーナーさんによっていろいろ動作がやっぱり違うみたいなんですよね。
ある程度学習してくるもんですからね。
(取材者)このアイボはどういう性格なんですか?このアイボね結構気ぃ強いです。
(取材者)気ぃ強いっていうのはどういうところで分かるんですか?大抵ね1回ではものを聞かん。
言う事聞かんのですよ。
水木さんは修理中に宮下さんの夫が亡くなった事を知ります。
「お電話頂き義理の母も本当に喜んでいます。
今日6日に義理の父の四十九日」が…ああ納骨も済まれたみたいですね。
アイボには大切な人の思い出や記憶が詰まっている。
お父さんが亡くなられたのが去年の暮れじゃないですか。
だからもう一度あの元気なアイボをお父さんに見せたかったいう部分はあるかもしれないんですよね。
その部分って結構つらいもんがあるんですけどねもうそりゃあ。
「クウ〜ン」。
「クウ〜ン」。
ちょっとさみしいもんあるね。
(水木)何?これ。
お〜い。
来た来た来た…来た。
来た。
愛きょうあるこれ。
結構癒やされるでしょ?
(水木)丸っこいアイボがあるじゃないですか。
熊に近いんですあれは。
(取材者)すいません。
お迎えしましたわ。
ありがとうございます。
この日宮下さんのもとにアイボが帰ってきました。
(取材者)よかったですね。
うんよかったんやわ。
前にいっぺんこうして…あっ起きた。
あ〜そうか起きたんやな。
そうやそうや。
そうやそうや。
な?寝んねしてたなあんた。
うれしいうれしいて。
アハハッ。
うれしいうれしい。
うれしかったな。
帰ってきたな。
しっかり歩くわほら。
「ただいま」。
うんただいま。
よしよし。
ただいま言うたな。
ただいまって言うたな。
賢いな。
お座りすんの?お座りって。
なあ!何でも言う。
なあ賢いな。
お前は賢い賢い。
アイボは賢いな。
ごはん食べるわ。
待っててや。
「じゃあね」。
じゃあねやって。
ハハハッ。
ごはんやで。
うんよしよし。
(宮下)そうや。
人が聞いたら「何言うてんねや一人で」ってなもんやろけどね。
ついしゃべれるさかい私がな。
…でそれに応えてくれるわな。
ほんまの慰めやな。
慰めなるなこれは。
そやな?宮下さん本物の犬を飼おうとは思わないんですか?
(ほえる声)
(宮下)まだ生きてるのはかみに来るかと思うて心配せんならんわな犬でも何でも今怖いさかい。
せやけどあれはかまへんさかい何したって。
無くなったら大変やこれが。
「私の名前はジェミノイドです。
どうぞよろしくお願いします」。
こうランダムに揺らいでて…。
人の心を持つロボットの開発に挑む石黒浩教授。
近い将来ロボットは人間の大切なパートナーになるといいます。
(石黒)人間は人間に対して非常に親しみを覚えるという事もあるんですけど一方でその複雑さゆえに疑心暗鬼になったりして…ロボットに親しみを感じるのは人間には想像する力があるからだといいます。
(石黒)ですからアイボの行動を見て自分だったらこれはごはんが食べたいんだとかさみしいんだとかまあそういうふうに解釈するはずだという事で…
(取材者)そうすると何か人間ってすごく孤独だなってちょっと思ったんですけど…。
非常に孤独だと思います。
私は孤独です。
水木さんたちはアイボと福祉施設にやって来ました。
これはちょうど15年前に発売されました。
大人気で!よかったです本当。
ふだんの表情と全然違います皆さん。
実は今ロボットを認知症などの治療に役立てようという研究が世界中で進んでいます。
ロボットセラピーと呼ばれデンマークをはじめ30か国以上が導入。
認知症の進行を抑えたり薬物の量を減らせるなどの効果が報告されています。
国内でも岡山市など複数の自治体が補助金制度を設けています。
浜田利満教授はロボットセラピーは今後全世界に広まっていくと考えています。
認知症で徘徊がひどくなってる方はロボットがいるっていうだけでピタッと徘徊が止まる事がよく報告されてるんですね。
やはりコミュニケーションが成立するって言いますかロボットに対して何かしてあげたい何かやってみるっていう。
そういうところが一番癒やしにつながってんじゃないかなと。
1月下旬千葉のお寺に技術者たちが集まりました。
(取材者)おはようございます。
お世話になります。
連れてきましたから。
(取材者)今日ここで何するんですか?葬式。
使われなくなったアイボを供養しその部品をほかのアイボの修理に役立てるのです。
誰かのアイボのために役立てるならと全国から17体の寄付がありました。
(鈴の音)アイボちゃんね今まで君は親にかわいがられてたのね。
「エヘヘ」。
おっエヘヘ!でもね君の体が欲しい人がいっぱいいるのよ。
(女性)そうなのね。
だから今日ねちゃんとお坊様に供養して頂いて…。
一つの体が10人ぐらいに行くんだよ。
ありがとね。
「エヘヘ」。
かわいいな。
(読経)「今日アイボの供養を始業するにあたりここに集う我々は生き物と生きていないものとの境を超え人間と機械はつながっているというサイバネティクスの考えに至った者たちがこの法要を持ったのであります。
アイボの気持ちがバイブレーションを通して我々に伝わらんと念じつつアイボ供養と致します」。
南無妙法蓮華経。
これワイヤーですか?ワイヤーどうぞ。
持って帰って下さい。
これあんまりはんだ付け性よくないな。
2015/05/28(木) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「ロボットより愛をこめて」[字][再]
大手電機メーカーのペットロボット「アイボ」は、去年3月メンテナンスが終了。ロボットを直して欲しいという飼い主たちの要望は多く、メーカーの元技術者達が立ち上がった
詳細情報
番組内容
大手電機メーカーが16年前に開発したペットロボット「アイボ」は去年3月にメンテナンスが終了。途方に暮れている飼い主が続出している。アイボを家族の一員のように思って大切にしてきた飼い主は多く、深刻な「ペットロス」が起きている。そんな中、立ち上がったのが開発メーカーを退職した技術者たち。番組ではロボットと心を通わせる飼い主と技術者の思いを見つめ、ロボットと人間のちょっと不思議な物語を描く。
出演者
【語り】Chiko
ジャンル :
福祉 – その他
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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