江戸時代幕府直轄の学問所が置かれた湯島聖堂。
日本の学校教育発祥の地と言われる学問の聖地。
…なんですが実はここ中国料理の聖地でもあるって皆さんご存じでしたか?中国全土の美味珍味を集めた究極の宴席料理として知られる「満漢全席」。
これを日本で初めて再現した人たちはなんと湯島聖堂にいたんです。
その名も…。
学者や料理人が集い戦後間もない日本に料理を通じて中国文化を伝える活動をしていました。
家庭料理から宮廷料理までありとあらゆる料理を研究した彼ら。
その成果として生み出したのが「聖堂式」と呼ばれるレシピです。
中でも極意がひときわ光るのが名付けて…その他に類を見ない味わいは研究会の解散とともにいつしか伝説となりました。
果たして「聖堂式酢豚」とは?かつて研究部に所属していた山本豊シェフを訪ねその味と秘められた極意を明らかにします。
3つのトライアングルで酢豚がたれが出来上がりますが…。
素材にからむあんの決め手はすっきりとした酸味を引き立てる甘みと塩けの絶妙な…「外脆内嫩」というね…。
外はカリッ!中はジュワッ!魅惑の食感を生み出す中国料理伝統のテクニック。
味のベースとなるスープ。
息づくのは歴代の皇帝の命を支えた…中国四千年の極意が詰まった伝説の酢豚。
今よみがえります!今日取り上げますのは酢豚。
実はですね伝説の聖堂式の酢豚というのがあるそうなんです。
早速味わってみたいと思います。
どうもはじめまして。
谷原と申します。
山本です。
(2人)よろしくお願いします。
伝説の聖堂式の酢豚ちょっと味わいたくて来たんですよ。
そうですか。
ありがとうございます。
ところがですね今はオンリストはしてないんです。
メニューに載せてないんですか?はい。
でもここありますよねこれ。
やっぱし今は時代的に黒酢が多いんですね黒酢酢豚の方が。
ですからリストにはないんですけども。
ガビーン!まさかの事態。
谷原さん酢豚を諦めないで!実はですねこれが…。
私は昭和43年にこの湯島聖堂に入社したんですけど18歳の時の拙い字ですけどここに21番に「糖醋肉」ございますね。
これがその時の今から48年前のレシピでしょうか。
盗み書きと言いましょうかね。
当時はほんとに手書きしかない時代でしたからこうして書く事で覚えたのかなって感じがしますね。
山本さんがいた湯島聖堂の中国料理研究部は昭和30年代に発足。
20年余りにわたり中国料理の研究と普及に努めてきました。
何にもない研究所ってのが第一印象でしてね。
中庭にデコラという台を置きましてそこにビニールクロスをかけてまな板を載せてはい!調理場出来上がり。
そこでじゃあクラゲを切って野菜を切ってお肉を切って。
さてじゃあ切ったらどこ入れよう?冷蔵庫もないんです。
十数名の部員とともに手探りで文献調査と料理の再現に明け暮れた山本さん。
本場の味を知るため危険を覚悟で文化大革命真っただ中の中国に渡った事も。
「食文化を知らずして中国文化を知るべからず」。
それが研究部のモットーでした。
こうしてまとめられてきたのが聖堂式の中国料理のレシピです。
その数およそ400。
全てが部員たちの飽くなき探究心のたまものです。
中でも極め付きが…そう酢豚。
ケチャップも黒酢も使わない滋味深い味わいは当時の酢豚の常識を覆すもの。
研究部が追い求めた中国料理の粋が詰まってます。
これはもう持ち出し禁止の。
これほんとにねさっぱりしてあれですけどもちょうど私がじゃあ作ってみましょうかね。
いいですか?今はメニューにはないんですけど今日は特別にお作りさせてもらいます。
すいません催促したみたいで。
さあいよいよ当時のレシピをもとに「聖堂式酢豚」を再現してもらいます。
これ特徴はどんなところなんですか?お肉選びからなんですけどもやっぱしお肉はやや霜降りになってる肩ロースですね。
食べた時にジューシーでおいしいですから。
ちょっと厚めで2cm厚みくらいに切りましたら…。
もうちょっとありますかね?くらいまでこうしてちょっとね花模様していきますと味が入りやすいですからね。
なるほど。
こうして切って大体全体的に2cmくらいでしょうかね。
2cm角くらいに。
さいの目にして。
これに下味をしていくんですか?下味ですね。
聖堂式といいますこの酢豚はですね非常に…あまり余分なものを入れないといいましょうかねシンプルにシンプルに仕上げているのが特徴でしょうかね。
そして今こしょうですか?今こしょうを入れましてそしてですねそしてモミモミします。
花切りした中に味がしみこむように混ぜ込んで味を中に吸収させますね。
このまんま10分くらいおくとほんとはいいんです。
縦横高さの立体形ですから立体形のものは大体下味したら少時寝かせるというのが基本ですね。
これで少時おきましてその間に野菜切りましょう。
聖堂式のこのレシピに添っていたしますとまあ大体季節のもの使えばいいんですが基本的には歯触りのたけのこ。
今日はですねゆでたてのたけのこですからフレッシュなたけのこでやりましょうか。
1皿分ですからこのくらいでしょうか。
フレッシュなたけのこですから…。
あ〜いい匂いですね。
それからしいたけ。
しいたけもですね中国料理ではいろいろなお料理に使う使っていいというフリーパスなのがしいたけたけのこなんで。
どんな料理にも合う?そうなんです。
ですから中国人の中では歯触りのたけのこそしてうまみと体に益するという意味でしいたけ。
この2つはですね名コンビなんですね。
その他今日ははすねぎでしょうか。
風味がいいねぎを斜めぶつ切りにして。
あとは色合いのピーマンですかね。
これで野菜の下ごしらえは終わり?OKですね。
10分たちました。
ここへですね卵を入れます。
中華の場合は下味をしてそして炒めるとか揚げてからからめるとかっていうテクニックが多いんですけどもその一つのルールとしてですね下味は薄めに。
下味が濃いと仕上げでまたたれをからめますからね。
濃くなっちゃいますから下味は薄めにそして衣づけしてたれをからめるとかから揚げとかの場合もそうですけども衣はやや厚めに。
これがね一つの…例えば今日の酢豚の時のセオリーですね。
どんな揚げ物でも下味薄め衣厚め。
衣が薄いと揚げてる時にどんどん油の方へですねジュースが取られちゃいますから何かパサパサになっちゃいますね揚げた時に。
それを防ぐためにやや厚め。
だいぶトロリとしてますね。
結構トロリとしてますね。
ではたれを合わせます。
おしょうゆと…おしょうゆは塩けですね。
そして甘み甘みが入ります。
今度お酢ですね。
チキンスープこちらですね。
甘みと塩みとしょうゆですね。
あと酸味なんですけども。
ちょっとどうぞ。
はい。
このくらいのね。
それでいてしっかりと。
甘みも過ぎず酸味もほどよく塩けもほどよい。
今日は3つのトライアングルでたれが出来上がりますが中国の料理で基本的には「五味」という。
そこに春は苦みそしてとんがらしの辛み四川料理なんかでね辛い料理。
基本は五味。
五味の中の今日は3つでこれで仕上げをします。
このトライアングルが大事なんですね。
そのトライアングルでもここがずれててはいけません。
これが一つの一番難しい酢豚の特徴ですね。
これがピタッと合う。
酸味甘み塩け。
それぞれが強すぎても弱すぎてもいけません。
このトライアングルの味わいに奥深さを加えるのがチキンスープ。
またの名を…。
体に益するスープ。
といいますのはこの48年前のレシピのここに「スープ」とございますね。
これが実はこちらのスープ。
当店の営業用のスープなんですけどもこれはもう常に丸鶏だけで。
おそばも宴会料理も全部このスープがベースになります。
聖堂式のレシピにあまた登場するチキンスープ。
研究部がたどりついた中国料理の極みです。
滋養を補うという名前のとおり体に優しいスープ。
よい食事で健康を支えるという医食同源の考えが根づいています。
歴代の皇帝の命を長らえるために欠かせなかったという黄金のスープ。
どうやって作るのでしょう?使うのは丸鶏10羽。
ガラではなく肉のついた鶏とはさすが皇帝のスープ。
しかもうまみが濃い成熟しきった雌鶏でなければいけません。
雑みを抑えるため内臓を取り除いてからだしをとります。
こまめにアクをすくいながらじっくりと煮込む事4時間。
更に澄んだスープに仕上げるための聖堂の技があるんですよね山本さん!ここのちょうど今真ん中からフツフツと沸いてる感じがありますね。
これを菊の花のスープという…。
菊の花のスープ湯…菊花湯。
北京語でチュホアタンといいます。
こう咲き誇る中心からこう広がるように沸く。
そういう意味をもって火加減を意味します。
すてきな表現ですね。
漢字の国だけありましてね。
非常に火加減までもちゃんと定義があります。
揚げ物で非常に重要な要素なんですけども例えば字で書きますとこういう字を使います。
「外脆内嫩」というね中国の調理用語。
これ外が香ばしく内側はジューシー。
「嫩」っていうのは「柔らかい」という中国語調理用語でして内側がジュースがまだしっかりと残ってる。
というのはうまみですね。
ジュースはうまみになります。
じゃカリッとした歯応え…。
これを100…そうですね120〜130℃くらいの中温よりやや低めの温度から。
そのくらいから入れていくといいと思いますね。
結構低い温度でやり始めるんですね。
初めは低くからスタートしてだんだん温度上げていきます。
こうして1切れずつですね入れていきます。
入れましたらすぐ箸を入れないで一呼吸置きましてそしておもむろに1切れずつほぐしてあげます。
うわ〜もうおいしそう!こういう感じですね。
そしたらもう1つずつ2cm角に衣がつきました。
ちょっと大きく感じますよね。
結構大きくなりましたよね。
かなり分厚く衣がついてると…。
ついてる感じですね。
この時の揚げ方が…。
徐々に温度が上がっていきます。
火力は上げません。
火力はそのままですけど自然と温度は上がっていきますからそれでどんどんどんどん火が通って外脆になっていく。
外が香ばしくなります。
外香ばしく中ジューシーに。
そしてその間にですね若干一作業いたしましょうか。
先ほど切りましたたけのこ。
これにですねおしょうゆをちょっとだけまぶして揚げるとたけのこも香ばしくておいしい。
ちょっとした事なんですけどこれもとても大事な事です。
風味が良くなるっていう事ですね。
はい。
もうしっかりと揚がってると思います。
だいぶいい色になりましたね。
そしてまあ触診といってお医者さんが使う用語触診といいますがちょっと押してみて野球の硬いボールくらいまで指をはじき返すくらいだったら弾力があれば…。
中がソフトボールみたいに軟らかいと生という事ですね。
さていきます。
ここでたけのこをまず入れましてたけのこがほんのり色がつくのを目安とします。
じゃしいたけとねぎも入れます。
ここで一旦ですねこの温度にピーマンを入れちゃうとピーマンが皮膚がやけどしちゃいますから。
そこで一旦温度を下げましてピーマンは100℃くらいからゆっくりと120℃くらいまでですね。
ほんの少しだけ温度を上げて今こちらですね。
それでもうプチプチで表面に白い泡が…。
もうこれぐらいでいいんですね。
白い皮膚ちょっとだけねやけどするくらいこの程度がまあもうこれで十分ですね。
そうしましたらここに先ほど合わせましたたれを合わせたのを入れます。
またこれも方程式なんですね。
沸いてからの方がクリアな澄んだとろみが得られます。
まだ沸かないうちに入れますと濁った仕上がりになります。
ここ今沸きましたから沸きましたらジュクジュクジュクッていってるその気泡を見ながら判断する。
ワッて沸いたあと一回火弱められたじゃないですか。
入れる直前もう一回火入れましたよね。
それもコツでずっと沸かしてますとお酢がとんじゃいます。
沸いた時点で一回火を消してかたくり粉の用意をしてそしてまた火をつけてこれパッと入れるんです。
これをですね仕上げの段階でやや厚くからめます。
濃度をですね濃度をやや厚くして濃いめにしまして。
粘度を高くするという事ですね。
そうする事でこのさっぱりとしたたれが非常においしく感じるというのが特徴です。
こんな感じです。
どうですか?さっぱりした感じでしょう。
もうこれがコクがあっておいしいんです。
やや厚めに衣がからんでると思いますね。
湯島聖堂で半世紀前に生まれた…今鮮やかによみがえりました。
最後の極意は当たり前のようですが出来たてをすぐに食べる事。
さあさあ!熱々のうちに急いで召し上がれ。
お肉からいってみて下さい。
う〜ん…熱っ!これ中がすごいジューシーでかんだ瞬間のカリッとがすごいですね。
カリッという感じが少し残ってますでしょ。
あんがからんでるのにしっかりとカリッとした感じが残ってます。
熱いんでしょう。
ごめんなさいね。
でもこれがねほんとにさっぱりしていくらでも食べれるくらいの味わいだと思います。
さあ谷原さんも気合いが入ってきました。
では伝説の酢豚に挑んでもらいましょう。
家でから揚げやる時はこれよりももっと薄い状態でやったりするんですけどこれはしっかりつけるんですね。
これくらいの衣で揚げますと中がほんとにジューシーさがそのまま残りますからきっとお子様は「お父さんいつもと違う」とおっしゃる可能性が…。
もう少しやってもいいですね。
そうですね。
ポイントもバッチリ!谷原さん余裕ですね。
おっと!カメラ目線。
わあ〜!きれいなきつね色に揚がっています。
うんここまではなかなか順調ですね。
美しい!さあ最後の難関あん作り。
絶妙なとろみ具合に仕上げて下さい。
この時お玉を右手で持ってて下さい。
もう持ってた方がいいですか?もういいですか?大丈夫です。
すぐ入れて下さい。
いいかもしれませんですね。
ちょっとお待ち下さい。
これでほんの気持ちだけ入れましょう。
この辺が微妙ですかね。
これぐらいですか?もうちょっとですかね。
はい…はい。
はいいいです。
はいこれで。
全開にして…。
入れたかたくり粉が完全に煮えるまで。
ちゃんと煮えなきゃ駄目なんですね。
そうです。
ではOKです。
入れま〜す。
もう即火を止めて下さい。
もう火を止めていいんですか?ここでからめます。
もうこれでOKですか?OKです。
もう完成です。
衣が厚めにたれが厚めにからみました。
極力盛る時はお肉が下になるように。
お野菜が上になると見た目もきれいでしょうかね。
どうでしょう?大丈夫だと思います。
うわっほんと出来上がりきれいですね。
いい揚がりです。
すばらしいです。
さあ酢豚が出来ました。
さあでは私も外脆を。
私が頂いていいんですね。
お願いいたします。
では谷原さんいただきます。
ん!シャリシャリバリバリいってます。
お〜ほんとですか?いけますね。
これが聖堂の酢豚なんです。
これが聖堂式なんですね。
微調整して追加した分がちょうどよかったです。
しばらくぶりに聖堂の酢豚を。
自ら食べるっていうのもめったにないんですけども。
おかげさまで僕も食べれます。
食べれました。
ありがとうございます。
よかったハハハ!おいしいです!ありがとうございます。
(拍手)中国料理研究部が編み出した聖堂式のレシピ。
部員たちの夢は歴史に裏打ちされた中国料理の奥深い味を日本中に広める事でした。
湯島聖堂の一角にある講堂。
ここで研究部は度々料理講習会を開きました。
家庭の主婦から料理人を志す若者まで数多くの生徒が学び聖堂の味は広まっていったといいます。
今では歴史の片隅に眠ってしまった聖堂式の名。
しかし皆さんが口にする中国料理にその味は今も息づいているかもしれません。
はぁ〜酢豚おいしかったなぁ。
(テーマ音楽)2015/05/28(木) 21:00〜21:25
NHKEテレ1大阪
きょうの料理 谷原章介のザ・男の食彩「よみがえる 伝説の酢豚」[字]
東京お茶の水にある史跡、湯島聖堂。ここに戦後日本に本格的な中国料理を広めようと、中国全土の料理の研究をする研究会があった。そのレシピの中から、伝説の酢豚を公開。
詳細情報
番組内容
俳優の谷原章介が、こだわりの味を追求するシリーズ。今回は「酢豚」。東京・お茶の水にある史跡、湯島聖堂には、昭和30年代、中国の食文化を研究し全国に広めようと活動する組織があった。残されたレシピの中に「聖堂式酢豚」と名づけられた、伝説の酢豚がある。ケチャップも使わず、黒酢も使わず、中国各地の料理のエッセンスを凝縮して作る、シンプルながら滋味溢れる逸品。その詳細な作り方を、研究会OBの山本豊氏が再現。
出演者
【講師】中国料理店オーナーシェフ…山本豊,【司会】谷原章介,【語り】江原正士
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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