クローズアップ現代「新・産業革命?“モノのインターネット”の行方」 2015.05.29


フォークも。
トイレも。
そして、ショベルカーまで。
これらのものが、すべてインターネットでつながると一体何が起きる?今、パソコンや携帯だけでなくあらゆるものがネットにつながるモノのインターネット革命が進行中です。
例えばこのスプリンクラーはインターネットを通じて天気予報をみずから確認し晴れの日が続けば水をまいてくれます。
こちらのフォークは食事中の手の動きを計測。
ネット上で食べ方の癖を示し改善策も考えてくれます。
人の経験に頼ってきた土木工事の現場にも革命が起きつつあります。
地形データから、最も効率のよい手順をコンピューターが割り出し建設機械にリアルタイムで指示を出す。
工事の進め方は一変するといいます。

鉄道や航空産業エネルギーなどあらゆる産業の構造を根底から変えようとしているモノのインターネット。
これからどんな未来が始まるのかそして課題は何か、考えます。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
インターネットに接続できる機器といえばパソコン、スマートフォンを思い浮かべますが今、ありとあらゆるものがネットにつながりつつあります。
例えば、こちらにありますテニスラケット。
グリップのこの部分の中にはセンサーと通信装置が組み込まれています。
そして、プレーを解析してそして、ネットを介して指導を受けることもできるのです。
ありとあらゆるものがネットでつながった状態は何をもたらすのか。
働き方をはじめ、生産現場さらに生活への影響は非常に大きいと見られています。
センサーや通信機器の小型化によって身近な家電製品から住宅、自動車航空機、道路や信号などの交通インフラまでがネットに接続しそれぞれから膨大なデータが得られるようになります。
蓄積されたデータをもとにさまざまな課題に対する的確な解決へのアプローチを見つけ出すことも可能になるといわれています。
これまでよりも効率的な飛行ルートの発見や機械が故障する前に故障を予測し手が打てるようにもなってきました。
あらゆるものがインターネットにつながることで集められる桁外れの情報。
データそのものが大きなビジネスチャンスを生み出しこの情報が企業の競争環境を激変させるというふうに見られています。
身の回りのあらゆるものがつながる社会。
モノのインターネットともいわれる社会の実現で私たちの暮らしはどう変わるのか。
そして産業にはどんな変化が起きるのか、ご覧ください。

ここは、大手建材メーカーが手がける、実際の家を使ったモノのインターネットの実験場です。
よろしくお願いします。

一見、普通の家ですが仕掛けがあります。

ほかにも、扉や引き出しの一つ一つにまでセンサーが付いています。
その数200個以上。
その情報は無線を通じてコンピューターに送られます。
データを分析すれば住む人がいつ、どこで何をしたかが分かります。
この情報がなんの役に立つのでしょうか。
例えば具合が悪くなりトイレに長く閉じこもった場合。

反応がない場合照明をつけて周囲に知らせたり家族にメールを送るなどの対処を自動的に行います。
しかし本当の威力が発揮されるのはこうした行動データが多くの家から集まったときです。
大量のデータを分析することで例えば、暑い浴室から出るときどのくらいの温度差があると体調を崩す人が多いかといった傾向をつかむことができます。
こうした知見を蓄積していくことで健康で快適に暮らせる家の条件が浮かび上がります。
メーカーはそれを新たな家造りに生かすことができるのです。

モノから集めたデータを分析するビジネスは企業の競争力を左右するまでになっています。
大手建設機械メーカーでは販売するすべての製品にネット接続機能を持たせてきました。
エンジンやポンプに取り付けられたセンサーから温度や振動などのデータが刻一刻とメーカーに送られます。
故障につながる異変が検知されると、自動的に保守担当者に伝えられます。

お世話になります。

機械が故障する前に先回りして、部品の交換やメンテナンスを行っているのです。

この会社へは世界中にある40万台もの建設機械からデータが集まり続けています。
ここでは、データに基づいた販売戦略が立てられています。

情報を集計すると機械の稼働率が前年より高い地域ではさらに需要があると予測できます。
そこに重点的にセールスを行います。
また、機械の故障がどこで、どのような作業をしているときに起きやすいかデータから分析。
機械の改良や開発に生かしています。

さらに、土木工事の在り方を根底から変えるサービスにも乗り出しています。
工事の計画立案を人に代わってコンピューターが行うというものです。
ある土地を整地する場合現在の地形データと完成予想図を照らし合わせ最適な建設機械の台数と作業手順を割り出します。
工事が始まったらそれぞれの機械に、作業内容がネットを通じてリアルタイムで指示されるのです。

世界では今こうしたビジネス手法が猛烈な勢いで広がり産業の形さえ変え始めています。
アメリカを代表する巨大メーカーGE・ゼネラルエレクトリック。
発電用タービンや航空エンジンなどモノづくりを得意としてきたGE。
しかし今、みずからをソフトウエアとデータ分析の会社だと名乗り始めています。

例えば主力の航空機エンジンで利益を稼ぎ出すのは製品を販売したあとのデータ分析です。
数百のセンサーで飛行ルートや燃費など膨大なデータを集め最も効率のよい運航計画を割り出し、航空会社に有料でアドバイスします。
この台湾の航空会社はGEからの提案に基づいて飛行ルートを見直ししたところ燃費が大幅に向上しました。

GEは膨大なデータを従来の2000倍の速さで処理できるソフトウエアを開発。
これを安い価格でほかの産業にも提供し広めていく戦略です。

今夜は、あらゆるものがインターネットにつながるモノのインターネットを研究され、とりわけ海外企業の技術開発にお詳しい、東京大学先端科学技術研究センター教授の森川博之さんをお迎えしています。
こんにちは。
よろしくお願いします。
ありとあらゆるものがネットにつながる。
一般の生活者からすると、そんなことがなぜ必要なんだろうかと、ちょっと思ってしまうんですけれども、どういう所から今、変化が起きようとしているんですか?
ひと言で言うと、われわれの身の回りの、結構地道なところから、じわじわと起こっていくというふうに思ってまして、一例を挙げると、例えばごみ箱、われわれの公園にあるようなごみ箱にセンサーを付けることで、ごみの量が分かると。
それによって、回収するタイミングが分かっていくとかですね、それも一つですし。
あとは水道管のモニタリング、水道管が漏水してないかどうかを検出してあげて、アラームを発出するとか。
あるいは橋ですね。
橋のやっぱり老朽化が問題になってますので、橋の安全性というものをデータを集めて把握するとかですね、あとは例えば、水田での水の量、水の量を生産者の方に、センサーから得られたデータで教えてあげることによって、その生産管理を効率化していくとかですね、かなり地味な所から、地道に、じわじわと入っていくっていうふうに感じてます。

企業の動きを見ますと、一方ですでに、センサーを自分の商品に付けて売ったあとのいわばメンテナンスに利用したりとか、あるいは、より効率的なフライトのルートを提案するとか、そういったところに踏み込んでるんですけども、これから企業のいわばビジネスのもうかる柱というのは、データをベースにしていくんですか?
おっしゃるとおりで、恐らくキーワードとしては、サービス化っていうのがキーワードになってきます。
お客さんにものを売って、お客さんがどういうふうに使ってるのかっていうデータを集めることによって、新しい製品開発とかですね、あるいはお客さんに対して、新しい価値を提供すると、そういう形で、今までは製品を売りっぱなしだったわけですけれども、これからは、やっぱり、お客さんのニーズも踏まえたうえで、サービスとして製品を提供していく、そのような形に進んでいくと。
それは、今までは人がやってたわけですね。
この製品がいかなる形で使えるのかっていうのは、人がやってたわけですけども、それのデータが入ってくるように。
お客さんのデータが。
それによってですね、新しい、今まで分からなかったような新しい価値をお客さんに提案することができるのではないかと、そういうふうに時代が変わってきてるというふうに思ってます。

モノを売るだけでは、なかなかこう、もうからなくなってきてるんですか?
おっしゃるとおりで、差別化ができない。
製品だけだと、ものだけだと、いろんな人たちが同じもの作れるようになってしまいますので、そこでやっぱり、お客さんのデータを集めて、お客さんとしっかりした関係を築いて、そこで囲い込むというんですかね、そういった形でやっぱりお客さんに価値のあるサービスを提供していく、そういう流れに、今現在、進みつつあるように思ってますので、サービス化というのが、一つのキーワードだと思います。
本当にかゆい所まで手が届くようなサービスができると。
ただ、反対に、例えば、建設機器をオペレートしている方にとって見ると、膨大なデータから、ネットを通して、機械からこういう作業をしなさいっていうような、指示が来るのだとしたら、人間の作業は効率化しますけれども、ちょっと違和感も覚えないではない。
あるいは仕事はどうなっていくんだろうとか、人間と機械との関係が変わりそうな危機感もありますし。
おっしゃるとおりで、そこはいろいろな方がやっぱり、ご指摘されてる重要なポイントかというふうに思います。
こういう「IOT」の世界が進むとですね、今まで人がやってたことの一部はやっぱりコンピューターとか、機械がやることになりますので、そこに関しては、どうしても雇用は、やっぱり若干減少してしまうかなというふうには思っております。
が、そのかわりといってはなんですけれども、すべての分野に「IOT」が入ってきますので、そこで新しい職っていうのは、生まれてくるんだろうなっていうふうに思っておりますので。
これ、「IOT」というのはモノのインターネット化、いろいろなものがネットにつながるということですね。
そうした時代が始まろうとしている中で、今、繰り広げられている、しれつな競争があります。
モノのインターネットの統一規格を作ろうと、欧米では激しい、すでに競争が始まっています。

先月、ドイツで開かれた世界最大級の産業見本市ハノーバーメッセです。
会場で盛んアピールされていたのはインダストリー4.0ということば。
第4の産業革命という意味です。
ドイツでは、工場と部品メーカーさらに、消費者をネットでつなぎ製造業の効率を飛躍的に高めようという技術革新に取り組んでいます。
大手電機メーカー、シーメンスが発表したのは、消費者一人一人のリクエストに応じて香水を作る生産システムです。
実験レベルではネットでつながった消費者の好みをボトルに取り付けたICタグに記録。
それを機械が読み取り好みどおりのものを1本単位で作る技術が確立しています。
ドイツは、こうしたインダストリー4.0の規格を標準化し、さまざまな産業に広げようとしています。
去年決定されたドイツのIT戦略行動計画ではインダストリー4.0をさらに世界の統一規格にする目標が掲げられました。
ドイツは、これによってヨーロッパ全体の競争力を強化できると考えています。

一方、IT先進国のアメリカ。
民間企業主導でモノのインターネットの標準化が進んでいます。
GEなど大手5社は企業連合を結成。
かつてパソコンの世界でウィンドウズが勝ち得たようにモノのインターネットの基盤となるシステムを世界標準にする活動を始めました。
先週、この団体は初めて日本でも本格的な推進会議を開催。
日本の大手メーカー5社が参加しました。
アメリカ主導で新たな産業のルールが作られようとする動きに乗り遅れまいとする日本企業。

互いに独自技術で競争してきた日本のメーカー。
統一規格に対応できないと世界から取り残されるという危機感があります。

国もこのまま海外で標準化が進めば日本の国際競争力が大きく損なわれる事態になりかねないと警戒しています。

ドイツは、国を挙げて、このモノのインターネット時代を踏まえた製造業の競争力を高めようとしている。
一方でGEは、GEが主体となって、企業連合を構築しようとしているわけですけれども、具体的に何を、どういうものを作ろうとGEはしてるんですか?
ひと言で言うと、集まる場を作ろうとしていると。
あらゆるものがネットワークに接続されていくことになりますから、そこでやっぱり彼らの多くの仲間を、集める場を作ったほうが、価値が高まるわけですね。
それって例えば、ウィンドウズみたいなものでございまして、やっぱり多くの人たちが使えるようなものを作ることによって、プラットホームとも言いますけれども、そういうところで競争力を高めていくっていうところを狙っているというふうに認識してます。
ありとあらゆるものが、例えば工場と工場がつながったり、部品や企業がつながったりするときに、そのことばっていうのか、そのプラットホームにいないと、お互いにやり取りがしにくくなる?
そうですね。
というような状況ですか?
そこに入ってないと、仲間外れになってしまうっていうんですかね。
やっぱりそこのコアを占めたいということで、GEとかドイツとかが、今、戦略的に動き始めているということかというふうに思います。
日本の今の現状、日本の立ち位置、どういうものなんでしょうか?
日本はそれぞれの会社が、ものすごい技術を持っておりまして、GEとかドイツがやってるようなことは、実際は、似たようなことは、日本の一社で、一つの企業で、今現在、実現できるようにはなってきてます。

つまり、その工場内どうしでのつながっているとか、あるいは下請け企業との連携とかもネットでどんどんつながっている?
それは今現在はもう、可能なんですけれども、アメリカとかドイツと比べて違うのは、そういった集まる場を日本企業は、今のところは作っていないということで、そこが大きな違いにはなってます。

個々の企業が強い技術持っている。
したがって、彼らとしては、やらなきゃいけないんだろうと思いつつも、オープン化するっていうことは、リスクがありますから、そこのせめぎ合いのところで日本企業は、じゃあ、一体全体、これからどっちの方向に進めばいいのかっていうのを考えていると、そういうフェーズかと思います。
様子見という?
様子見ですね。
実際のところ、アメリカもドイツも、アドバルーンを上げてるっていう状況ですので、それは日本企業も今現在は様子見をしているということかというふうに思います。
このいろんなものがネットにつながるというこの時代、どんな、歴史的に見たら、変化をもたらすのか、どういうスピードで進んでいくのか、最後に教えていただけますか?
以前で言うと、例えば、蒸気機関が電気に変わった。
それは今から見ると、すごい大きな変化だったわけですけれども、その当時の人から見ると、恐らく電気に変えることの重要性っていうのは、そこまで認識していなかったというふうに思ってますので、それと同じような変化が、これから地道にじわじわと10年、20年、30年かけて起こっていくと。
したがって、われわれの身の回りには、いろんなデータがありますので、多くの方々がそれを考えていただきたいというのが、私の希望です。
何をつなげるといいかということを考えてほしい?
そういうことです。
ありがとうございました。
2015/05/29(金) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「新・産業革命?“モノのインターネット”の行方」[字][再]

あらゆるモノをインターネットに接続し、膨大な情報を収集・分析する新ビジネスが次々と生まれている。“情報独占”を目指す国際的な主導権争いに日本はどう立ち向かうか。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学先端科学技術研究センター教授…森川博之,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学先端科学技術研究センター教授…森川博之,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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