(パトカーのサイレン)
(音川音次郎)おはようさん。
(鈴木捜査一課課長)どなたです?どなたて…。
・
(秋山管理課長)おう音やん。
ちょうどええとこへ来てくれた。
これどないすんねやお前…。
あんたそんなとこで何してまんのや?見てわからんのかい。
こいつ使えるようにつなぎたいんや。
そんな事言うても私にはわかりますかいな。
いやぁホンマに…。
えっ?誰でんのや?知らん。
キャリアのおばはんとちゃうんか?・
(鈴木の咳払い)あなたですか音川さんっていうのは。
あっはい。
今度来はった捜査一課の新しい課長はんや。
お前はんが研修に行ってる間に人事異動があったんや。
鈴木といいます。
今度秋山さんに代わって捜査一課の課長を引き受ける事になりました。
はあ…。
ちょっとほんならあんたここで何しまはんねや?わしかい?わしはお前これや。
これでお前はんらの勤務状況捜査資料の管理する事になったんや。
へえ〜。
音川さん今時携帯電話くらい持ってもらわないと困りますね。
えらいすんまへん。
あれどうも性に合いまへんのや。
すぐ吉田山へ行ってください。
えっ?男の死体が見つかりました。
遅うなってすまん。
(草森刑事)あっどうも。
(小杉刑事)胸を刺されたようですわ。
(山田刑事)死後1週間ちゅうとこですな。
よそで殺られてここへ運ばれてきたんやな。
えっよそでって何でわかるんですか?おいちょっと説明したれ。
(ため息)アホ!よう見てみぃ。
どこにも血の跡も争った形跡もないやないか。
ホンマにもう…。
はあ…。
(土井刑事)放置されたのは昨日の夜とみて間違いないでしょう。
物取りやないな。
万札がぎょうさん入ってはる。
大神章本籍は大阪現住所は京都市西京区上桂…。
何やこれは…。
高木俊也?同じ名刺ぎょうさん持っとるな…。
何や?音川さん…。
うん?これ何ですやろ?鑑識へ回してくれ。
はい。
ああまた消えた…。
すんまへんけどちょっと教えてもらえまへんやろか?
(鈴木)はいみなさんちょっと聞いてください!みなさん立ってください。
立ってください。
ええ21世紀はみなさんもご存知のとおりITの時代です。
今こそ我々警察の持つオーガナイジングアビリティーを最大限に発揮。
オーガナイズなんちゃらって何やねん?さあ…何のこっちゃわかりませんわ。
活力のある軽やかな行動を目指して…。
ニュースニュース!ガイシャに前のある事がわかりました。
何や?恐喝で前科2犯。
合計3年くろうてますね。
草森君!報告は直接私にしてください。
はい。
日本エコノミープレス社記者…。
ジャーナリストですか?いやそれはですね元総会屋でたかり専門の雑誌社ですわ。
それより検視の結果わかったんかい。
秋山さん…あなた部外者なんですから口出ししないでいただきたいですね。
あのちょっといいですか?管理担当いうたかて秋山さんも捜査一課の一員じゃないですか。
課長は私です。
君の指図は受けません。
それで検視の結果は出てるんですか?大体死後10日くらい経過してるそうです。
なら犯行は1月の25日前後っちゅう事になるな。
でガイシャの靴の裏に挟まってたやつあれ一体何やったんや?しじみの貝殻やそうです。
えっ?しじみの貝殻!?どうぞ。
はいおおきに。
しかし何でまた急に新しい課長が来ましたんやろうな。
例のほれ山科の事件あれが2年越しで未解決や。
あれが原因と違うかな?それやったら私にも責任ありますがな。
まあまあまあええわいな音やん。
ああいうキャリアの連中はな警視庁以外はほんの腰掛けのつもりでいてよる。
1年も経ったら転勤や。
そうなったらまたわしが返り咲いてやなもうひと花咲かせたろうやないかい。
そう気張んなはんな。
血圧上がりまっせ。
上の人も課長の体の事心配して現場から外しましたんや。
ヘッ…。
しょうもない気遣いしやがって。
まあここは親心やと思ってちょっとのんびりしなはれ。
まあその分私が課長の代わりに頑張りますがな。
まあまあ気張ってや。
ええ。
ところでな折入って頼みがあんねん。
何ですのや。
うちのおばはんからな見合い写真預かってきてんのや。
またでっかいな…。
お前はんとちゃうがな。
洋子ちゃんのほうや!洋子の!?うん。
なかなか男前でなうちのがえろう気に入っとんのや。
知り合いの甥っ子らしいわ。
何してはる人ですのや?銀行員や。
まあ洋子ちゃんもないつまでも再婚せんとおる訳にはいかんやろうが。
頼むわ。
まっ帰って相談しときますわ。
うちのおばはんえらい気に入っとんのや。
(音川洋子)この人歳いくつ?33とか言うてたな。
私より年下やないの。
何や年下あかんのか?別にあかん事ないけど。
歳は下でもな年収は800万あるそうや。
へえ〜。
でも遠慮しとくわ。
何でや?うん?そうかてやね私がおらへんようになったら誰がごはん作んの?お前まだそんな心配してんのか?そうかて…。
いつまでもお父ちゃんの心配ばっかりしてたら一生バツイチのまま終わってしまうかもわからんぞ。
ほっといて。
なぁ何がきっかけでええ人にめぐり会うかもわからへんがな。
減るもんやないねん。
いっぺんぐらい会うたれや。
えっ?うん…。
(小杉)大神章さんやけど車を持っておられましたか?ええど派手な車でね真っ赤なBMWですわ。
ほう…BMWね。
駐車場には置いてないようですが。
ああそういえば10日ほど前から見ませんな。
どっか乗っていかはったんちゃいますかね?ああ。
こらまたようけなスクラップやな。
一応はブンヤさんでんな。
新聞記事ぎょうさん集めてますわ。
うん案外マメな男やったんやな。
音川さん。
おう。
大神は「たちばな」に出入りしとったんですかね?えっ?タチバナって何?何屋さん?おい教えたりぃ。
(土井)京都のな超一流の高級料亭や。
たちばな…。
《大神のような奴が出入りできるような料亭と違うんやけどな…》あっちょっとすんませんな。
はい。
私あの警察の人間なんですけどこの写真の男がですなちょいちょいこちらへお邪魔してたっていうんですけど。
高木はんどすか?高木…。
いえこの人大神章さん違いまんのか?けどうちでは高木はんと…。
高木…?すんまへん女将さんいはりまっしゃろか?・
(立花千恵子)ごめんやす。
あっどうもお忙しいところすんまへんな。
女将の立花千恵子でございます。
京都府警の音川と申します。
あっどうぞお座布を…。
ええおおきに。
ほんならごめんやす。
あの高木さんの事で何ぞ?ええその高木っちゅう男なんですけどもここへはよう来てはりましたんですか?ええ去年の暮れから3回ほどお見えです。
ああさようか。
最後に来たのはいつでっしゃろな?確か10日くらい前やったと思いますけど。
正確に日にち覚えてはらしませんかな?先月の24日やったと思います。
1月の24日の夜ですな。
あの帳面見たらはっきりしますけど。
その時ですな誰か連れと一緒でしたか?いいえいっつもお1人で。
女将さんその高木俊也なんですけどもそれは偽名でしてね本名大神章っちゅうんですわ。
大神章?ええ。
その大神がですなこちらへお邪魔に上がった翌日かその次の日あたりに何者かに殺害されとるんです。
えっ!?その1月24日ですけども大神の他にこちらへどんなお客さんお見えでしたやろかな?もし差し支えなかったら…。
へえあの晩はあのお方お1人で。
なんせ不景気どすさかいなぁ。
ちょっと…。
ええ?例の見合いですけど…。
おお…。
あれ私洋服新調せなあきまへんやろか。
そらもう洋服ぐらい新調しぃな。
なんせ相手は銀行のエリートやさかいな。
うちのおばはんがえらい気に入ってるさかいに。
しかし洋服新調するわ見合いパーになるわ…。
音川さんちょっと!はあ。
例の料亭たちばなの件なんですけど。
ええ何ぞわかりましたか?いやそういう事じゃなくて。
しばらくたちばなには近づかないでいただきたいんです。
どういう事なんですかそれ。
いろいろありましてね。
いやいろいろではわかりまへんな。
あなたに説明するような事じゃありません。
それにこれは私からではなく刑事部長からの命令です!ああおったおった。
おばちゃーんわしはうどん定食頼むわ。
はい秋山課長さんうどん定食です。
わかったで。
たちばなに近づくなっちゅう訳が。
えっ?特捜の連中がな刑事部長を通じて鈴木課長に圧力かけとんのや。
特捜?何でんねんや?特捜では公共事業の入札を巡って代議士の谷川一郎と北嵯峨建設の山下社長との間に談合があったんやないかと内偵しとんのや。
その2人がや大神がたちばなへ行った1月24日の晩あの店で密会しとったんや。
しかしあの女将そんな事一言も言うてまへんでしたで。
そら嘘ついとんのや。
で特捜は何でわしらに近づくな言うてまんのや?殺人事件の捜査が入ったら警戒されて汚職の摘発は難しなる。
そんな縄張り争いしてる場合とちゃいまっせ。
うん…。
そこでや音やん。
大神は恐喝の常習犯や。
不正入札のネタつかんで谷川議員をゆすっとるという事は考えられんか?こんにちは。
あっお店へ伺ったらこっちやって聞いたもんですから。
何ぞお願い事ですか?へえ。
この娘が初めてリサイタルを開くもんで。
ほうお嬢ちゃん音楽やらはりますのか?アメリカのジュリアード音楽院でずっとバイオリンの勉強してまして。
ほうそら楽しみですな。
(立花仁美)そんならうち用事があるさかい。
失礼します。
ごめんやす。
女の子はお嬢ちゃんくらいの年頃が一番元気があってよろしいな。
刑事さんにもお嬢さんいてはりますの?ええ。
うちのはもっと歳とってますけど。
けどかわいいもんですわ。
1月24日の晩の事なんですが大神が店へ行った時ですね谷川先生と北嵯峨建設の社長さんがお店へ来ておられたそうですな。
その事何で黙っておられたんですか?谷川先生はうちの大事なお客さんどすし。
谷川先生の座敷にですな大神が同席したって事はありませんかな?いいえございません。
えらいはっきり覚えてはりますのやな。
ええ。
あの晩は先生のおそばにずっとおりましたさかい。
女将さんがですか?へえ。
24日の日に谷川先生と山下社長はんがお見えになったのは娘が初めてリサイタルを開くんでそのお祝いに来てくれはったんです。
娘もうちもずっとお相伴させてもろてましたし大神さんは同席してへんとはっきり言えるんです。
ご用件ってそれでおしまいどすか?ええ…。
音川さんちょっと。
あなたに1週間の自宅謹慎を命じます。
謹慎?何ですねんそれ。
確かたちばなには近づくなと言いましたね。
それなのに…刑事部長に呼び出されてとんだ赤っ恥をかきましたよ!待ったってください!音やんは捜査上やむにやまれん気持ちでたちばなへ行ったんどす。
わかったってください。
あなたには関係ない事です。
(山田)そうですか。
わかりました。
大神の車が発見されたそうです。
どこでです!?松江の駐車場です。
松江っちゅうたら島根県の松江かい?はい。
おおきに助かりました。
どういう事ですそれ?一畑電鉄松江温泉駅前の駐車場に1月25日の朝から京都ナンバーの赤いBMが止めてあって10日経っても持ち主が現れへんのでこっちに照会の電話があったそうです。
それが大神の車だった訳か…。
はい。
つまり大神は1月24日の晩料亭たちばなに行きそのまま車で京都を発った。
あくる25日松江へ到着。
そこで殺害され死体のまま京都へ戻ってきた。
松江で殺害されたとは断定できないでしょう。
いえいえそりゃあんた…。
ねえ。
すんまへんちょっとハンコおくんなはれ。
はあ?いえ松江行きますねん。
で松江行って大神の足取り追うんですわ。
何言ってるんです!?そんな事島根県警に頼めば済む事でしょう!これはうちの事件でっせ。
向こうの県警に任せっ放しでそれで仁義通りまっか?秋山さん!管理課長!いつもこんな出張認めてたんですか?いやまぁそれはまあ…。
けど音やん!ちょっと来う…。
今回はやめとき。
あの課長の言うとおり島根県警に任せたらええがな!なっ何や?何すんねんお前。
おい…。
何やねんもう…。
ちょっと座んなはれって。
カッコの悪い事すなやもう…。
課長今度ね見合いの時に着る奥さんの着物あれ30万したそうでっせ。
30万…?あんた家でね管理課長に格下げされた事奥さんにまだ話してまへんやろ?お前はんわしを脅迫するつもりか?誰が脅迫しまんのやな…。
あんたを男と見込んで頼んでますのや。
あんな新米のボンボン課長になめられてどうするんですか?頼みますわ。
島根行きのハンコ頼んます。
アホな事言うな。
第一見合いどないすんねん見合いを…。
洋子も大人でんがな。
お父っつぁん付いていかんでも1人でちゃんとやりますがな。
(ため息)もうしゃあないなぁ…。
わかった!ほなまああのボンボン何とかわしがするさかい土産頼むでぇ。
あっ土産ねぇ…。
あっ島根はどじょうすくいの本場ですさかいね宴会ん時に使うどじょうすくいのセット買うて来まひょか?そんなもんいらんわ!持っとるわ!カニやカニ!松葉ガニや!
(島根県警課長)ああ昨夜京都府警の秋山さんから連絡がありましてね。
大体のお話はうかごう知ります。
課長からでっか?ああ。
あっ新田君。
(新田刑事)はあ。
京都の…。
ああ例の車の件ですね。
はあ。
音川です。
よろしゅうに。
新田です。
よろしく。
あっどうも。
(新田)大神のBMWはちょうどここんところに止めてありましたけんね。
車の中に道路地図が置いてありましてね一畑電鉄の沿線を丸で囲ってありましたわ。
いやぁ手掛かりと呼べるかどうかまあわかりませんどもね。
はあそうですか。
いろいろお世話になりました。
音川さん車で案内しますで。
いや私は電車で行きますわ。
他にちょっと調べたい事ありますので。
そうですか。
じゃあ。
どうも。
(アナウンス)「出雲大社でご参拝の方は途中川跡駅でお乗り換え願います」「お忘れ物がございませんようご注意願います」1月25日ですか…。
私と藤井が当番でしたんで藤井にも訊いてみますわ。
1月25日の改札は岡本君が担当してましたけど今日の出勤は…午後からになっちゃいますが。
ああそうですか。
また後ほど伺う事になるかもしれませんがよろしくお願いいたします。
1月の25日なんですがこの沿線のどこかでこの男が…。
私はちょっと知りませんですが…。
ああそうですか。
(原口裕司)しかし刑事という仕事も大変なんですね。
日曜も祝日もないなんて。
ホント!お父ちゃん今頃足棒にしながら聞き込みに回ってますわ。
それもこれも世のため人のためや。
(秋山君江)まあそんなたいそうな。
たいそうな事あるかいな。
今の日本の治安が保たれてるのはみんなわしらの努力のお陰や。
僕の友人で今月警視庁から京都府警に転勤して来た奴がいるんですけどそいつも同じ事言ってました。
警察のお友達がいらっしゃるんですか?ええ。
何課の方ですの?さあそこまでは聞いてませんけど鈴木っていいます。
(原口)何でも前任者は高齢で体力的に使い物にならなくなったとかで代わりに現場の課長に就いたそうです。
まあお若いのにお偉いわもう。
うちの人なんか学歴がないもんやさかいにこの歳になってやっと課長。
ホンマに情けないわ。
アホな事言うな!あんな若造に刑事の苦労がわかってたまるか!
(原口)ご存知なんですか?鈴木を。
どなたですの?その前任の方って…。
ああ…。
ああ…。
まああんた行儀の悪い…。
すんませんホントに。
ああこれが岡本君ですわ。
ああ…。
こん人なら確かに降りましたで。
ホントですか?冬場はあんまこのへんはよその人は降りんもんで。
でここで降りてどっちへ行ったかわかりませんかな?そこんところを真っ直ぐ行って右に曲がってずーっと歩いて行きましたけども。
お客さんどこからお出でましたん?京都ですわ。
京都からですか。
ええ。
はあ仕事ですか?ええまあね。
おばあちゃん…。
まあどうもすみません。
いえいえ。
あっおねえさんちょっと訊きたいんやけどこの男に見覚えないかな?あっ覚えあります。
えっ?この間来ちょうやったですがね。
ここでラーメン食べたんですか?はい食べておられました。
おばあちゃんあっち行ってなさいって。
それでこの店出てどっちのほうへ行きましたかな?確か長江町のほうへはどう行くのかって道を訊いておられましたが。
長江町でっか?はい。
ここやないんですか?ああそりゃ隣の町ですわそんなら。
ああそうですか。
おいこれ見た事があるかや?ああ?覚えちょますよ。
この人ならアキさんちに行ったがね。
アキさん?・
(テレビの音)こんにちは。
ごめんやす。
こちらは野沢アキさんのお宅ですか?
(野沢アキ)そげですけど…。
あっ私京都府警の音川っちゅうもんなんですが…。
何事でございましょうか?あっちょっとお尋ねしたい事がありましてね。
実はですな1月25日の事なんですがこの男が訪ねて来ませんでしたかな?いいや…。
ああそうですか。
いやこの近所でこの男を見かけたっちゅう人がおるんですがね。
誰がそげな事言うちょなはったかいね。
まあ誰とは言いませんが…。
そりゃ勘違いですがね。
こげな一人暮らしのばあさん訪ねて来る人はおりゃあせんけんな。
ならこの男はご存じないとおっしゃるんですか?ありません。
(猫の鳴き声)この人何ぞ悪い事でも?いえちょっと足取りを調べとるんですがね。
はあそりゃあ寒い中ご苦労さんでございましたねぇ。
どうもお邪魔しました。
(しじみを踏む音)〔ガイシャの靴の裏に挟まってたやつあれ一体何やったんや?〕
(山田)〔しじみの貝殻やそうです〕いやぁ奥さんさっきはどうも。
ああどうも。
野沢アキさんの事でもうちょっとお話をお聞きしたいんですがね。
ああ…。
あっ…困りますわね〜。
付き合いもあんまねぇですけんね。
今お目にかかって来たんですが昔はべっぴんさんやったでしょうな。
ああそげん聞いちょいます。
どんなお仕事をなすってたんですか?うん…若え頃は旅館で働いちょったげなですがまああんま立ち入った事は…。
いろいろあった人ですけん。
いろいろって言いますと?このあたりにですなアキさんの身内の方おられませんかな?おらんと思いますよ。
だども珍しい事もあるもんだね。
えっ?先月の25日だったか男の人が訪ねたり家のそばに車が止めてあったりで。
車?それどんな車でしたか?白い車です。
白のね。
でどんな人が乗ってたか覚えてはりませんか?いや…遠くからちょんぼす見ただけだし。
ああそうですか。
でアキさんが働いてた旅館というのは?ああ…ようは知らんだども今は松江温泉とかになっちゅうとこの一番古い旅館だと聞いちょいます。
(仲居)それではお部屋のほうにご案内いたします。
どうぞ。
しっくりしたいいお宿ですね。
あっありがとうございます。
女将さん昔ですな。
ええ。
この松平閣さんで野沢アキさんっちゅう方が働いてたいうて聞いて来たんですけど…。
アキさん。
まあ懐かしい名前。
ほおアキさんの事覚えてはりますか。
ええ。
私はまだこんな小さな子供でしたけどよく遊んでもらいました。
もう40年も前の古い話です。
そうですか。
いやその当時のアキさんの事を知っておられる方どっかにいらっしゃいませんかな?ええ…。
松平閣の女将さんから聞いたんですけども中里さんは以前山陰中央新聞にお勤めやったそうですな。
(中里順平)はあ。
新聞社のほうはもう定年退職して今は堀川めぐりの船頭をしとります。
そうですか。
私は外者でして。
以前ここに取材に来てこの町が気に入りまして今はばあさんと一緒に暮らしてます。
おお〜そら結構ですな。
(中里)アキさんは安来節の名人でした。
安来節の。
へえ。
誰に教わった訳でもない素人の名人でしたけど私は安来節を日本中に広めた初代お糸さんにも匹敵する唄い手だったと思っております。
ほお…。
ええ。
私は文化部に所属してましてよ〜く取材に行ったもんです。
はいどうぞ。
はい。
昭和30年代の事ですな。
あっこれが当時のアキさんの写真です。
当時は花嫁御寮が嫁入りして来ると長持唄で迎える風習がまだまだ残っておりまして。
唄い手のアキさんは婚礼がある度にご祝儀をもらって喉を聞かせていたんです。
はあ〜目に浮かぶようですなその当時の風情が。
いやしかし人の幸せを見過ぎたせいかアキさん本人は不幸でした。
松江に巡業に来ていた旅役者に惚れて夫婦も同然の関係になったのです。
ところがほうぼうに女を作る性質の悪い男でしてね。
もうきっぱり別れてしまえばよかったのにアキさんはいったん惚れたら後戻りができない…。
まあ何というか。
生真面目な人やったんですなぁ。
へえ。
アキさんは男に結婚を迫ったんですが結局捨てられてしまった。
そうなると女の執念です。
思い詰めた末に男のところへ乗り込んで行った。
ところが折悪く男は別な女と同きんしておりまして。
後は修羅場です。
アキさんはその女と口論になりはずみで刺し殺してしまった。
懲役7年。
出所後どうなったか…。
今でも時々アキさんの長持唄がふっと聞こえてくる事があるんです。
いやぁしみじみした実にいい声でした。
(長持唄)おおっ音やん。
ご苦労はん。
こんな遅うまで残業でっかいな。
ああ。
今週中になこれ全部打ち込めって言いよんのや。
ああ…。
殺生やホンマにもう。
まあまあご苦労さんですな。
ああ…。
あっそらそうと課長。
ええ?見合いうまい事いきましたか?おおそれがなぁ…。
ええ。
相手の男がなこの鈴木のボンボンと知り合いやったんや。
ええ…?面目ない。
もうえらい慌ててしもうて粗相したんや。
そのうえな…。
ああほんなら奥さんに格下げされた事バレたんですか?そやがなぁ。
来月から小遣い半分や。
それはよ言わなあきまへんがな。
第一線から外されて隠居の身やっておいそれと言えるかいな。
ホンマもう…。
そらまあそうですわなぁ。
それより松江まで行って何ぞつかめたんか?ええ。
まあ何とのうね。
うん。
あっそれから向こうの課長に電話入れてくれはったそうでおおきに。
おおおお。
いやもうこのな鈴木のボンボンにはわしからちゃんと言うといたけども報告書はちゃんと出さんとあかんで。
はい。
わかりました。
報告書報告書…。
何ぞ忘れてへんか?お前。
えっ?何です?カニやがな。
カニ!あっ土産!そやがな。
ああそれコロッと忘れてた。
ははっ。
忘れたらどうならんわ。
ホンマに。
お土産お土産…。
ええ…へっへっへっ。
はい土産。
何やこれ。
何やこれって書いてますがな。
「しじみ」…。
そうです。
宍道湖のしじみはカニより体によろしいねん。
ええもうシケ続きでねカニが1杯も捕れまへんのやわ。
嘘つけ!ホンマに…。
あっ音川さん帰ってはったんですか。
おう。
おう。
あのね例の名刺の件ですけどおもしろい事わかりましたよ。
何や?高木俊也いう人物実在してたんです。
何やて?
(草森)え〜っと住所も大阪市東淀川区これ名刺にあったとおりです。
ふうん。
どんな男やねん?大神の同級生らしいんですけどそれが3年前交通事故で亡くなってるんです。
すると大神は死んだ友達の名前かたっとったんか。
それで高木の両親っちゅうのはどうなっとる?父親俊吉母親文子。
共に病死してます。
(草森)父親のほう何やら若い頃旅回りの役者してたらしいですよ。
役者。
役者…?洋子。
うん?見合い大変やったらしいな。
ひやひやもんよ。
世の中広いようで狭いね。
課長えらい謝ってたわ。
心配せんといて。
私のほうから断るつもりやさかい。
銀行屋気に入らなんだか?あかん。
そうか。
お賽銭足らんかったんかな。
お賽銭?うん。
出雲大社は縁結びの神さんやからな。
仕事のついでにうまい事いきますようにっちゅうてお願いしてきたんや。
ついではあかんねぇ。
このお守りどないしよ。
もろとくよ。
この次ご縁があるかもしれへんしね。
うん。
私もねお父ちゃんにあげるものあんのよ。
はい。
ジャン!これお父ちゃんのか?そう。
お父ちゃんの靴もうボロボロでしょ。
ほら立って。
履いてみて。
ええ…。
さらの靴っちゅうのは久しぶりやな。
ホンマ。
おう。
うん?こらええわ。
ピッタシや。
ええ?高かったやろ?なんぼやった?何言うてんの。
私が買うんやもん。
そんな高いもん違います。
そやな。
贅沢言うたらきりがないがな。
なあ。
刑事は歩いてなんぼの商売や。
どうせすぐにちびるさかいなぁ。
洋子…おおきにおおきに。
(望月)いらっしゃいいらっしゃいまもなく開演ですよ!いらっしゃいいらっしゃいありがとうございます。
まもなく開演ですよ。
へいらっしゃい!ちょっとすいません。
あのお伺いしたい事があるんですけど…。
何ですか?俺にはてめえという生涯強ぇ味方が…。
親分!あったのだ!
(拍手)へい。
あっどうもおおきに。
俊吉っつぁんと巡業に行ったんはもう40年ほど前になりまっせ。
40年ですか。
で巡業っていうのはどっちのほうへ?まあ関西一円と北陸でっかなぁ。
はあ。
山陰のほうは行ってませんかな?松江とかですね…。
あっ松江ってあの湖のあるとこ?ええ。
行きましたがな。
俊吉っつぁんおばちゃんに人気がおましてな。
もう巡業に行ったらおひねりがボンボン飛んできまんねや。
その頃高木さんご家族は?大阪に奥さんと子供さんがいてましたけどな。
あっそれねもう奥さんも息子さんも亡くなってますねん。
ホンマでっか?ええ。
ほなあの娘はんどないしはってんやろ…?えっ?娘さんもいてはったんですか?いえいえホンマの奥さんにできた子供ちゃいまんねんけどね。
あの巡業に行った先で行きずりの若い女の間にできた言うてました。
その巡業先っていうのはどこなんですか?あのさっき言うてはった山陰。
松江ですか?そうです!そこでできたんですわ。
ところがねその女といろいろごちゃごちゃあってね。
その女の子が2つか3つになった時に京都の祇園の置屋へ養女に出したんですわ。
養女に?
(望月)ええ。
いつや俊吉っつぁんと一緒に京都に行った時にその置屋の前通りましてな杉野屋言うたかなぁ。
(御詠歌)覚えてるか?ああそれならゆかりの事や。
ああゆかりさんの事かいな!ああそうやゆかりの事や。
ゆかりさん言うて山陰のほうから連れて来られた子を養子にしはったんどすわ。
一生懸命仕込んで舞妓にして出したんどすけど18か9の時に芸妓やめる言うてうち出て行かはって。
ほう。
まあそれからいろいろあったようどすけど今は大変なもんどすわ。
はっ?たちばなさんご存知どすな?ええ。
たちばなの女将さんどすがな。
大したもんや…。
女将さんお電話どす。
あっどなたはんから?女の人みたいですけど名前は言わはりません。
うん…。
お掃除やったら私がやりますけど…。
ええのええの。
自分でやるし。
あっ店に戻ってて。
へえ…。
もしもし立花どすけど。
もしもし?もしもし?どちらさんどすか?
(ウミネコの鳴き声)《高木ゆかりは高木俊吉の娘や》高木ゆかりと立花千恵子が同人物やとすると…。
その母親は…。
(バイオリン演奏)女将さん。
あのちょっと…。
ああ…きれいな音色ですなぁ。
へえ。
明後日がリサイタルなもんでどんなもんかとちょっと聴かせてもろてましてん。
そらまたえらいとこお邪魔しましたな。
いいえ。
あの今日は何のご用で?ええ。
早速ですねやけどな女将さん小ちゃい頃に祇園の杉野屋さんちゅう置屋はんに養女に入ってはりますな。
へえそうどすけど…。
戸籍上は千恵子さんやのうてゆかりさんとおっしゃるんですな。
へえ…けどそれが何ぞ?高木俊也の事をまあいろいろ調べてるうちに意外な事がわかりましてな。
高木俊也はですな母親違いますけども女将さんの弟かもしれまへんねや。
ご存知やなかったんですか?私が杉野屋に養女に入ったんは3つの時です。
それ以前の記憶はほとんどありません。
そやから親兄弟の事は何も知らんのどすえ。
子供を捨てて放ったらかしにするような親にはいっぺんも会いたいと思うた事はありまへん。
(ため息)私と母親をつなぐもん言うたら…。
これだけどす。
たぶん母親が持たせてくれた物や思いますけど。
小さい時分には何ぞあるとこれ握り締めてよう泣いてましてん。
置屋のお母はんは厳しいお人で稽古事や行儀作法ちょっとでも間違うたら柳の枝でここを叩きますねん。
子供心に何でこんな目に遭わないかんのやろ思うともうつろうて心細うて…。
けど私にはホンマのお母はんはいてしまへん。
このお守りしかおへんのどす…。
しかし親御さんもよっぽどの事情があったんと違いますかな?事情?どんな事情です?いえ。
つまりその…やむにやまれんような…。
刑事さん。
うちは主人が早う亡くなりましたさかい大概の苦労はしてます。
借金が返せんようになって何べんも死のう思うた事もあります。
けど娘を捨てよう思うた事はいっぺんもありません。
自分がしてきた苦労を子供にはさせとうない。
その一心で今日まで生きてきました。
それが親いうもんやおへんか?なあ刑事さんそうどっしゃろ?
(仁美)お母さん。
お母さん。
うん?うちそろそろ行かんと。
飛行機の時間あるし。
そうか…頑張ってや。
なあ仁美ちゃん!
(千恵子)これ持ってお行きやす。
けどこれお母さんの大切なお守りやないの。
あんたもこれから一本立ちしたらお母さんもう何にも手助けしてあげられへんし…。
明後日聴きに来るのん違うの?ああ行きますえ。
特等席取っといてや。
最前列の真ん中やで!あはっ!小学校の発表会みたいやな。
(電話)
(新田)ああもしもし。
あっ新田ですが。
ああ音川さん先日はどうも。
あっ調査の依頼ですか?ああ元山陰中央新聞の中里さんに野沢アキの事を。
ああとにかく大至急でお願いしますわ。
えええらいすんまへん。
ほなどうぞ。
(鈴木)音川さんちょっと。
はっ?私に隠れて何コソコソやってるんです?別にコソコソやってる訳やないんですが。
ちょっと急いでまんねや。
後でゆっくり報告しますさかい。
ちょっと待ちなさい!えっ?私は課長だよ!ちょっと…!・
(ドアの閉まる音)
(咳払い)ねえ刑事さんもうそろそろ片づけてもよろしおますやろ?次の借り手が待ってまんねやけど。
んな事言いないな。
事件が解決したら表彰状出すがな。
そんなもんいりまへんわ。
「立花仁美松江」…。
(電話)捜査一課音川です。
あっどうも。
お手数かけてすんまへん。
ああいやいや…。
まず野沢アキに子供があったかどうかなんですが中里氏によりますとですね子供はなかったそうです。
はい。
ただし知り合いから預かったと言ってアキが当時2歳くらいの赤ん坊を抱いているのをたびたんび見かけたとの事でございますがね。
はい。
ああ次に…アキと関係した旅役者の事ですが名前は高木俊吉。
(新田)「もしもし?」もしもし?あっすんまへん。
それからですね野沢アキに子供がいなかったかどうかもう一度詳しく洗い直していただけませんか?ああわかりました。
ああそれから一応参考資料送っときましたんで。
はい。
あっよろしゅうお願いします。
はい。
今日はアジだからね。
ああだんだんねぇ。
何ぞあったんだかね?刑事さんがあんたの事調べ回っちょなはけん。
調べるってどげな事を?子供を産んじょらんかー?とかまぁそげな事だわ。
ほんなぁね。
だんだんね。
(バットを落とす音)
(猫の鳴き声)
(猫の鳴き声)「はあうちをな出るときゃよ」「はああげはの蝶々行けばなあ」「ぼたんの花が咲く」
(電話)はいもしもし。
えっ?野沢アキが?そんなアホな…!どういう事なんですか?一体!どうもこうも自首してきたんだから仕方ないでしょ。
いやしかしですな野沢アキはもう70とうに過ぎてるおばあちゃんでっせ。
しかし自分が大神を殺したって認めてるんです!警察としては取り調べしない訳にはいかないでしょう。
鈴木はん。
気ぃつけたほうがよろしおまっせ。
もうだいぶ以前の話でっけどな簡単に自白信じたばっかりに裁判でどんでん食らわされてもうひどい目に遭うた課長がおりまんねや。
東大出の秀才やったけどそれがつまずきで惜しい事したもんや。
どど…どうなったんです?その人!ようは知りまへんけど風の噂ではエリートコース外されて九州四国中国路とうろうろうろうろ5年ほどうろついた揚げ句ボロボロになって京都府警へ辿り着きよったんだ。
えっ!?そんな人がいたんだ…。
誰です?わてでんがな!えっ!?
(2人)ははははっ!音川さん!すぐ松江のほうに行ってください!飛行機を使って急いで行ってください!いや新幹線で岡山行って岡山から伯備線で松江行きますわ。
東大出のエリートって誰の事でっか?知るかいそんなもん。
(鈴木)とにかく急いでください!・はっはっはっ…!ああ音川さん。
はい?これ。
野沢アキはどうしてますかな?ああこう留して取り調べちょおとこです。
被疑者の扱いですな。
いやぁ供述の内容に信憑性がありましてね。
えっ?野沢アキは大神の頭を石で殴りそれからナイフで胸を刺したと供述しちょおます。
これは解剖所見と一致しちょうし殺した本人しか知りえん事です。
(ため息)おい。
冷えますさかい。
ああ…すんません。
ああどうぞ。
刑事さん。
この間京都から来らっしゃった…。
音川です。
はあ。
さあさあどうぞ。
寒いのにこんなとこ来てたら体に堪えまっせ。
だんだんねぇ。
野沢アキさん。
あんた一体誰をかばってますのや?何の事ですかいね。
私が犯人ですけん。
そんなら動機はなんですか?えっ?何で人を殺したんですか?お金です。
そらおかしいな。
被害者の財布の中にはお金がぎょうさん入ってましたんや。
刑事さん。
人を殺したら誰でも気が動転しますがな。
血見たら財布どころではのうなりました。
うん。
さよか。
あなた車運転できますか?いいや。
できません。
ほお。
ほんならどないして死体を京都まで運んだんですかな?頼みました。
運転できる人に。
誰にですか?そげな事言えません。
頼んだ人に迷惑がかかりますけんねぇ。
なあアキさんもう一度訊きますけどなあなたはホンマに大神とは面識がなかったんですか?まあで知らん人です。
ほお知らん人が何であなたを訪ねて来ますんや?わかりません。
何でだか…。
ねえアキさんいつまでもこんな冗談言うてるとあんたホンマに起訴されてしまいまっせ。
構いません。
覚悟しちょおます。
そらダメや。
あきまへんで。
なんぼ我が子のためでもな。
アキさんこの赤ちゃんあんたの子と違いますか?これは…知り合いの子です。
子守り頼まれて預かっちょった…。
私は結婚もしちょいませんけんね。
そうですなぁ。
せやから自分の子やとは言えなんだ訳や。
何の事ですかいね。
そら今から40年も前の事ですからな。
結婚もしてない女性が子供なんか産んだら世間から白い目で見られますわなぁ。
あなたが旅役者の高木俊吉を思い切れずに殺人の罪まで犯してしもたんはこれみんな子供のためや。
子供の将来のためにもどうしてもあなたは高木俊吉と一緒になりたかった。
そやったんと違いますか?何と言わしゃっても産んどらんもんを産んだとは言えませんけんね。
だども刑事さんのお心遣いだけはありがたくちょうだいしときますけん。
急ぎの用って何どす?今日はうちにとって一生に一度の大事な日どす。
それはようわかっとるんです。
しかしどうしてもあなたに訊いておきたい事があるんですわ。
何です?野沢アキさんの事です。
野沢アキさんです。
アキさんって…そんな人知りません。
(拍手)
(バイオリン演奏)1月の25日あなたこの松江へ来られてますな。
お嬢さんと一緒にプラバホールの下見に。
ホールの職員がそう証言しとるんです。
その時にですね野沢アキさんを訪ねて行かはりましたな。
何で私がそんな人を?この記事をネタにあなたが大神にゆすられてたんや。
それで野沢アキさんが本当の母親かどうか確かめに行ったんや。
行ってません。
1月の25日あなた車でこの松江へ来られましたな。
アキさんの家へも車で行かはりましたんか?行ってないって言うてるやありまへんか。
大神の死体が積んであったんもその車ですな。
死体ってそんなもん…。
この松江の行き帰りにあなたどっか途中で大神の死体を始末しようと思うた。
しかしお嬢さんがいるんでそれもできずにそのまま京都へ積んで帰ったんです。
そして節分の夜あなたは大神の死体を吉田山へ放置した。
死体を一週間も車に積んでいたらどっかにその痕跡が残っているはずです。
調べたらすぐにわかる事なんです。
そうなったらすぐにでも逮捕状が請求できます。
その前にですな私はどうしてもあなたに自首してほしいんや。
私はアキさんなんて知りません。
これは40年前の野沢アキさんの写真です。
よう見てください。
この赤ちゃんを。
この赤ちゃんの胸にかかってるものを…。
野沢アキさんは間違いのうあんたのお母さんや。
その証拠はこの写真だけやない。
ついさっきアキさんが大神章を殺したんは自分やと自首して来たんです。
母親でもない人が何であなたの罪を被るんです?命を懸けてまで何であなたをかばおうとするんですか?
(バイオリン演奏)
(嗚咽)
(バイオリン演奏)大神が初めて店に来たのは去年の暮れでした。
高木俊也の名刺を出していきなりあんたの弟や金に困ってるから50万円都合してくれって言うんです。
もちろん断りました。
けどそんな事で引き下がるような男やありまへん。
(千恵子)マムシのようにしつこうて嫌らしい男でした。
金貸せんのやったらそれ買うてください。
それあんたのお母さんの記事ですわ。
(大神)人を殺して7年もムショ入りしてはったんです。
そんなんばれたらこの料亭潰れまっせ。
へっへっへっ…。
あんたうちを脅迫する気どすか?脅迫て…。
姉弟やおまへんか。
かわいそうや思うて50万頼みますわ姉上ふふふ…。
そんなもんあんたが姉さんやなかったらそんな値段では済みまへんのやで。
大神が高木俊也の名をかたっていた事はすぐに調べたらわかりました。
その事言うとかえって本性むき出しにして2百万円の金よこせと要求してきたんです。
それであなたはアキさんがホンマの母親かどうか調べようとした訳ですか。
何もかもが嘘であってほしい。
私そう思うて…。
ごめんください。
・
(アキ)何ですかいね。
あの…道を教えていただきたいんですけど…。
ああ道ですか。
どこから来なはったかいね?京都からです。
立花千恵子と申します。
(ウミネコの鳴き声)いいとこですねぇ。
はい。
よその人はみんなそげん言いなさるわ。
ずうっとこちらにお住まいですか?お1人で?お子さんは?ずうーっと独り身ですけん子供はおまっせんわ。
あんたさんは?娘が1人おります。
なんぼになられますかいね?25です。
はあそりゃあええですねぇ。
お独りで寂しくはありませんか?はい。
そりゃあ寂しいわね。
だあーも仕方ありませんわ。
そうですか…。
では失礼します。
あのちょっと待ってごしない。
あの…道は?大丈夫です。
(千恵子)1人で何とかしますから…。
あの人は子供を産んだ覚えはないと言い切りました。
しかしあなたはそれが嘘やという事がすぐにわかったんや。
アキさんもあなたを見てひと目で自分の娘やっちゅう事がわかったんや。
何十年会わんでもそれが親子っちゅうもんや。
はあ!!姉上。
ふっふっ…ふふふ…。
ちょっと待ってぇな。
(ウミネコの鳴き声)
(千恵子)離しておくれやす。
どうや!わしの言う事が嘘やないってわかったやろ。
私警察に行ってあんたの事訴えます。
何やて?たとえあの人が私の母親だとしてもそんな事で潰れるようなたちばなやおまへんね!離しておくれやす!女将さんええ匂いしまんなぁ。
けどお嬢さんもっとええ匂いしまっしゃろな。
警察行かんほうがためでっせ。
あんた娘に手ぇ出したら許しまへんで!お嬢さんそない大事でっか?ほら5百万ぐらいにしときまひょかお嬢さんの命。
ええっ?そんな難しい考えんとき保険に入るのと一緒や。
そんな…そんな出せまへんわ!
(嗚咽)
(舌打ち)泣いてる場合とちゃうやろ。
金や金!金出さんとお嬢さん…。
わあー!バイオリン弾けんようになりまっせぇ〜。
えらいこっちゃ〜ふっふっ…。
ギィーギィーギィーふっふっ…。
(大神)アアアアアアーふふふっふっ…。
わあ!
(バイオリン演奏)
(大神)何しとんねんこのガキは。
殺したろか殺したろかー!!
(千恵子)きゃあー!
(バイオリン演奏)怖かったんです。
とにかく無我夢中で…。
気がついたらこの手にナイフ握っていて大神は死んでいたんです。
(バイオリン演奏)
(拍手)
(拍手)お寒い中ご苦労さんでした。
今日はもう帰っていただいて結構です。
取り調べは?明日捜査員がお宅へ伺って執り行いますので…。
帰っていただいて結構ですよ。
車用意しましたから。
どうしましたんや?・
(ドアの開く音)ちょっちょっと待った!今いかんねや。
刑事さんどぎゃん事かいね?アキさんうちはもう何もかも話しました。
何言っちょうなぁだ!私が犯人ですけぇ。
この人放してあげてごしない。
殺したのは私ですけん。
刑事さーん!!お母さん…。
うちにはどうしても訊かないかん事があります。
何で?何で私を捨てたの?何で長い事放ったらかしにしていっぺんも会いに来んと…。
行ったわね。
会いに行ったわね。
刑務所を出てその足で京都へ汽車に乗って…。
その日は踊りの発表会の日であんたが踊るけん一緒に見に行こう言わはして…。
置屋のご主人さんが歌舞練場いうとこへ連れてってごしなった。
そん時あんたは9つだったわね。
ああ…きれいなべべ着てどこの子供さんよりかわいらしかった。
踊りも一番上手だったわ。
そば行って抱いて抱きしめて頬ずりしたかった。
そのうち私は怖なってきたあんたに会うのが…。
今さら名乗り出て名乗り出るのが身勝手なように思えて…。
それほどあんたは幸せそうだった。
人を殺して7年も刑務所におった母親にはあんまりあんたもったいのうて…。
とうとう会わずに…。
(号泣)あの…母なんですけどどれぐらいの罪になるんですか?そうですなぁ先にナイフを抜いたのは大神ですからな。
恐らく正当防衛が主張できると思うんですわ。
ホンマですか?うん。
お母さんに頑張るように言うてあげてください。
音川さん…。
私近いうちにもう1回松江に行ってみようと思うんです。
おばあちゃんに会いに行かはりますのか?そら喜びますわ。
仁美さんの音楽の才能はおばあちゃんから受け継いでますねんで。
今度リサイタル開かはる時は言うてください。
娘連れて聴きに行きますさかいな。
ありがとうございます。
風邪引かんようにな。
暖こなるまでまだちょっと暇かかりそうや。
じゃあ私失礼します。
うん。
私にかかればこれくらいの事件どうって事ありませんよ。
ええ。
最初っからあの女将が臭いと踏んでたんです。
あははは…!すべては私の指揮の下全員を動かしました。
私がやらせたんです!ははは…!えっ!?ホントですか?はい。
はいわかりました。
はい。
それじゃあ失礼いたします。
(咳払い)私はこれから本部長とお食事。
(鈴木の鼻歌)おのれ一人の手柄みたいに抜かしやがって…。
そう目くじら立てる事おまへんがな。
直にどっかへ転勤ですさかいに…。
ちょっとちょっちょっと…。
何や?音やんこの間の罪滅ぼしや。
ダブル見合いといこかいな。
えっ?これがおまはんの。
これは洋子ちゃんの分や。
ははは…。
私の分もありますのん?ああ。
げえーっ!!2015/05/29(金) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
京都殺人案内24[再][字]
松江・宍道湖、夕陽に消えた殺人者!音川刑事が歩く宿命の旅路
詳細情報
◇出演者
藤田まこと、萬田久子、渡辺美佐子、大谷直子、遠藤太津朗、伊藤俊人 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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