デジタル家電全盛期なので、この疑問自体がもう風化しつつある気もしますが。昔、年配の方にこの質問をされた時に使ってた説明を思い出したので、書いてみます。開発出身でない、いわゆる「キャリア組」だけが課長職以上をしてた会社に居た事あったので・・・上役が電気知らないと無駄な会議が増えます。
それはさて置き、当時口答での説明では好評だったのですが、文章にすると怪しくなるかもしれません、意味不明だったらすいません。
「アナログ」とは?
スロープに立ってる絵です。結構不親切なまでの急斜面で、超短いです。こんな感じでスロープを上ることを考えてみてください。そしてスロープ上で、
自分のいる位置を完璧正確に説明する
ことができるでしょうか?奥行きは無視してください。
「スロープを登り始めた1歩目」とか、「大体10cmくらい」とか、不正確な表現しかできないと思います。巻尺で正確に距離を測るとしても、測り方次第で「誤差」が生じます。「完璧」な位置情報を伝えることはできません。
したがって、説明を聞いた人が「完璧」に同じ位置に立ってみようと試しても、
完璧に再現することは不可能
ということになります。惜しい所まではいくでしょうが、10回試したら10回とも、微妙に違う位置に立つことでしょう。
この「不正確さ」が存在している物がアナログです。
「デジタル」とは?
さっきのスロープを階段に改造しました。高さや距離は同じです。同様に奥行きは無視して、「自分の位置を完璧正確に説明する」ことを考えます。
これを説明するのは簡単です。ズバリ、
1段目に立っている
と伝えるだけで完璧です。誰が聞いても、何度試しても、完璧に「1段目」に立つことができます。
ズルイですよね、これ(笑)
でも、このズルさこそがデジタルの正体です。
デジタルがアナログより高品質とは限らない
今の例のデジタルだと欠点もあります。それは、
5段のうちの何処にいるか?
しか伝えることができません。もっと詳細な位置情報を知りたい!と思っても、1段目~5段目の何処か?という区分けしか存在しません。アナログのような「不正確さ」は無いものの、情報そのものが荒いですよね。下手すると、
不正確でもいいからスロープでの位置教えてもらったほうがマシ
ということになりかねません。スロープで超高性能巻尺を持って位置を測れば、誤差も相当減るでしょう。アナログ=ダメな子とは限らないのです。こういった場合、デジタル化したことでアナログより品質が下がる結果を招きます。
デジタルで品質を上げるには?
階段の段数を増やしてみればいいです。とりあえず20段にしてみました。細かすぎて、1段づつ上るのが困難になりました。
「5段階」でしか表せなかった位置情報が、「20段階」と、4倍の精度になりました。専用の靴が必要になりましたが!
アナログに肉薄するデジタル
更に超微細な靴の開発に成功しました。そこで、
スロープ並に滑らかな階段を作ってみました!
一見スロープにしか見えないのですが、拡大すると微細な階段になってます。僅かな距離に数万段とかあるかもしれません。バカですね。
これにより、スロープ並の精度を持ちつつ、完璧に正確な位置情報を説明することができます。5963段目!みたいな感じで。
とはいえ、このスロープ並の超微細階段にも欠点があります。それは、
この靴と階段作るのも使うのも超大変だろ!
ということです。そりゃそうですよね。完璧を求める故の代償です。まあこれはメーカーが苦労すればいいだけ(苦労してます・・・)なのですが。
ユーザーにも影響する問題もあります!
さっき出てきた「5963段目」という表現。その前は「20段」で、さらに最初は「5段」でした。
数字の桁がどんどん増えてる=容量が巨大化する
ということです。デジカメが一番身近かと思います。精度が上がり画素数が増えていくと、それに平行して容量がどんどん巨大化していきます画像圧縮技術が重宝されるわけです。
デジカメの高画素数化=スロープの超微細階段化と考えて差し支えないです。
数学を勉強している方は、高校で習う「積分」は「アナログ」であり、数列で用いる「Σ」は「デジタル」と考えるとしっくりくるかもです。Σはn=0,1,2・・・と整数で刻み幅を量子化している、みたいな。区分求積法は「スロープ」を「無限大の段数の階段」にしたデジタル的手法といったところでしょうか。数学あんまり使ってないんで詳細に説明できないですけど!
こんな感じでアナログとデジタルの説明をしてみました。簡単といいつつ長文で、お付き合いありがとうございました。
「完璧正確に説明する」ということは、「劣化の無いコピーを作れる」ことにも繋がってますので、デジカメで撮った写真をいつまでも保存しておけるのはとっても便利ですよね。