土曜ワイド劇場「事件16」 2015.05.30


(汽笛)
(汐田早紀)キャーッ!
(早紀の荒い息遣い)
(牧野春樹)どうしたんですか!?
(島岡達也)救急車…救急車呼んで。
(島岡)早く!!人殺し…。
人殺しだーっ!
(パトカーのサイレン)
(北村刑事)さっさと歩けこら!
(島岡)だから僕が来た時にはもうこういう状況になってたんですって!
(島岡)聞いてくださいよ!
(北村)わかったわかったほら!僕は刺してませんよ!
(北村)わかったわかった。
話は署で聞く。
本当に刺してないんですって!いいから乗って。
おら乗れほらっ!僕はやってない…。
(北村)わかったわかった。
(パトカーと救急車のサイレン)
(伊丹織枝)駄目ですね…。
(伊丹弁護士)そんな事ないよよくやったよ。
全然駄目です。
主任弁護人を私がやっていたとしても同じ判決だったと思うよ。
大丈夫!大丈夫。
(加瀬直人)伊丹先生いつ戻ってくるかわかんないんでしょ?
(本多和美)そうお伝えしたんだけど待たせてくれって…。
僕が話聞きましょうか?
(和美)加瀬先生だってお忙しいじゃないですか…。
(加瀬)案外イケメン好きかもしれませんよ。
はっ?伊丹先生遅いですね…。
あの…よろしかったら僕がお話伺いましょうか?あっ…申し遅れました弁護士の加瀬です。
(島岡香苗)伊丹先生をお待ちします。
ただいま。
本多さん悪いけどケーキ買ってきてくれないかな?織枝先生が大好きなお店なんていったっけ?おかえりなさい。
お客様がお待ちです。
あ…失礼しました。
刑事の私選です。
お金になります。
引き受けてくださいね。
お話はわかりました。
主人の弁護引き受けて頂けますか?一つ確認させて頂いていいですか?ご主人は殺人罪で起訴されています。
検察が起訴に踏み切ったという事はご主人が有罪になる可能性は極めて高い。
今の段階で無罪を保証する事は出来ません。
それはご理解頂けますね?検察が起訴したら99パーセント以上の確率で有罪だって聞いた事があります。
でもそれって検察も1パーセントは間違えるって事ですよね?だったら主人を起訴したのも検察の間違いかもしれないじゃないですか。
もちろん検察も絶対ではありません。
主人は人を殺せるような人じゃありません。
主人は絶対に無実です。
私は主人を信じます。
弁護士の伊丹です。
僕は汐田君を殺したりしていません。
僕は無実です。
どうか先生…僕を助けてください。
奥さんもあなたは絶対に無実だと信じておられますよ。
事件の事をいくつかお聞きしていいですか?はい。
亡くなった汐田早紀さんの事ですが会社ではあなたの部下だった…。
そうです。
あの晩汐田さんと待ち合わせをしていたんですよね?はい。
駐車場で10時に…。
(島岡の声)彼女のほうから連絡があって相談したい事があるって…。
キャーッ!どうかしましたか?その時車と車の間から男が飛び出してきて第1出入り口のほうに走り去るのが見えたんです。
顔も見たんですか?暗くてはっきり見えませんでした。
男が走り去ったという第1出入り口はあなたが入ってきた入り口とは反対側の出入り口ですね?そうです。
だ…大丈夫ですか?汐田君…。
(島岡)何?おくっ…。
(早紀の荒い息遣い)ナイフ?ナイフ…。
ナイフ…ナイフ抜くのか?
(牧野)どうしたんですか!?人殺し…。
人殺しだーっ!その時ナイフを握ったのはナイフを抜いてあげようと思って握ったというわけですか?そうです。
どうして抜かなかったんですか?ナイフを抜いたら出血がもっとひどくなるんじゃないかと思って…。
…ひどくなりますよね?そうなったでしょうね。
それとあなたが目撃した男性の事なんですが…。
あの男が汐田君を刺したんです。
間違いありません。
じゃなかったらあんなふうに走って逃げませんよ!出入り口は2カ所。
通用口と第1出入り口。
防犯カメラは双方とも設置。
まだお仕事ですか?うん。
ちょっとこれを見てくれないか?誰も映っていませんね…。
島岡さんはね男はここから出ていったって言うんだよ。
伊丹先生。
はい?手伝わせてもらえませんか?本当に?やってくれるの?はい。
ありがたいねえ〜。
この通用口から島岡さんは入ってきた。
防犯カメラ…。
ここが現場ですね。
この方向に逃げていく男を島岡さんはここから見た。
けど防犯カメラには映ってなかった。
島岡さん本当に男なんて見たのかしら…?あっすいません。
弁護士の伊丹と申します。
(戸崎琢磨)あ…どうも。
こちらサイドの出入り口はあの第1出入り口だけですか?
(戸崎)ええそうです。
防犯カメラは?あそこですね。
ここを出入りすれば必ずあの防犯カメラには映るわけですよね?ええ。
裁判とは直接関係ないと思うんですがこの事件が起こる前会社に退職願を出してますよね?ええ。
正式にはまだ受理されてませんけど…。
理由はなんですか?若い頃から小説家になるのが夢で…。
へえ…。
奥さんは反対されませんでしたか?妻とは出版社で知り合ったんです。
僕は食うために派遣で働いてたんですけど向こうは正社員で…。
しかもバリバリの…。
じゃあ奥さんもあなたの夢を応援してくれているわけですね?どうでしょう…。
ここから出ない事には夢どころじゃありません。
今日事件現場を見てきました。
もちろん防犯カメラの映像も…。
先生も僕の事を疑ってるんですか?島岡さん…。
僕は嘘なんかついていない!!確かに男が逃げるのを見たんですよ。
島岡さん…弁護人である私には絶対嘘はつかないと約束してくれますか?約束します。
男が逃げるのを本当に見たんですか?見ました。
お父さん来てくれたの?
(水木啓吾)なるようにしかならない。
余計な心配はしない事だ。
(廷吏)起立!
(金沢憲司)前記駐車場にて…。
所携の果物ナイフを用いて殺意をもって同人の背中を1回突き刺しよって4月9日22時50分頃搬送先の西区大原町1丁目2番5号所在のみなと総合病院において同人を右背部の刺創に基づく失血により死亡させて殺害したものである。
…罪名及び罰条殺人。
刑法199条。
以上につきましてご審理願います。
(裁判長)被告人は今検察官が読み上げた起訴状の事実に対して何か言う事がありますか?僕は汐田早紀さんを殺したりしていません。
被告人は起訴状の罪状を認めないという事ですね?はい。
まったく認めません。
起訴されるような覚えはありませんから。
裁判員の皆さんどうか冤罪の片棒を担ぐような事はしないでください。
(裁判長)被告人は質問にだけ答えてください。
(裁判長)弁護人は意見がありますか?はい。
弁護人は島岡達也さんの無罪を主張します。
あなたが押収したこの果物ナイフはどんな事に使われましたか?
(北村)被告人が被害者を刺すために使った凶器です。
このナイフの柄から指紋が採取されていますが誰の指紋ですか?そこにいる被告人のものです。
あなたが現場に駆けつけた時何が見えましたか?島岡さんが汐田早紀さんの背中にナイフを突き刺しているのが見えました。
被告人がナイフを刺している時の様子はどのようなものでしたか?とどめを刺しているって感じでした。
(牧野)ナイフをこうやってグイッと押し込んでる感じで…。
(金沢)証人は被害者の汐田早紀さんとはどういう関係ですか?
(石田真理子)会社の同僚です。
(金沢)汐田早紀さんとは仲が良かったんですか?
(真理子)はい。
(金沢)でしたら汐田早紀さんから相談なども持ちかけられましたか?
(真理子)はい。
(金沢)どういった相談ですか?早紀さん島岡さんと不倫していたんです。
(金沢)被害者は被告人と不倫関係にあったわけですね?
(真理子)はい。
亡くなる前の日にもその事で相談を受けました。
(金沢)それは具体的にはどんな相談ですか?早紀さんは島岡さんと別れたがっていたんですけど島岡さんのほうが別れてくれないって彼女困っていました。
(金沢)つまり別れ話で揉めていたというわけですね?はいかなり揉めていたようです。
という事は不倫関係のもつれが原因で今回の事件が起こった事は十分に考えられますね?異議あり。
明らかに誤導尋問です。
(裁判長)異議を認めます。
検察官は質問を変えてください。
(金沢)質問を終わります。
石田真理子さんの証言をあなたはどのように聞きましたか?早紀さん島岡さんと不倫していたんです。
石田君の証言はまったくのでたらめです。
僕は汐田さんと不倫なんてしていません。
だから揉めるはずがないんです。
あなたは被害者汐田早紀さんとは不倫関係にはなかったわけですね?はい。
だから別れ話で揉める事もなかったしましてや殺害する理由もないという事ですね?そうです。
どうして石田真理子さんはあのような証言をしたと思いますか?多分僕に仕返ししてるんです。
仕返し?なんの仕返しですか?石田君は会社の金を横領していたんです。
横領…?それは確かですか?確かです。
(島岡の声)僕は彼女の上司でしたから厳しく問い詰めました。
だけど彼女は最後まで横領を認めませんでした。
(島岡)もちろん会社の上層部にも報告しました。
その事で石田君は僕の事を逆恨みしているんだと思います。
その仕返しとして石田真理子さんは嘘の証言をしたと言うんですね?そうです。
同じように牧野春樹さんの証言をあなたはどのように聞きましたか?とどめを刺しているって感じでした。
ナイフをこうやってグイッと押し込んでる感じで…。
(島岡)彼の証言もおかしいと思いました。
確かにナイフは握りました。
だけどそれはあの…ナイフを抜こうかどうか迷っていただけです。
絶対にグイッと押し込んだりなんてしていません。
あなたはナイフを抜こうとしていたんですね?そうです。
質問を終わります。
水木です。
島岡がお世話になっております。
こちらの会社は投資顧問会社とお聞きしてますが…。
ええ。
本社はシンガポールにありましてねお客様からお預かりした資産を運用して増やしてお返しするまあ簡単に言えばそういう仕事になります。
彼が資産運用の全てを取り仕切ってくれています。
(山川公之)山川です。
資産運用部長をしております。
(水木)さあどうぞどうぞ。
水木さんにとって島岡さんは婿でもあり会社では部下でもあるという事ですね?ええ。
…聞いてますか?急に会社を辞めると言い出した事。
小説家になりたいとか…。
昔からの夢だと言ってね。
どうしたものかと悩んでいたら今回の事件で…。
香苗共々困り果てています。
会社を辞める理由なんですが他に考えられる事はありませんか?営業部長の肩書きが少し重すぎたかもしれませんな。
(水木)どう思うね?そうかもしれません。
彼は万年文学青年というか純粋な男なんですよ。
(男性)何回来られても困るよ。
うちはね他のところに入ってるんだから。
(島岡)お願いします。
少しだけでいいですから…。
お願いします。
(山川の声)それでも小説家志望から一転して慣れないこの業界で一生懸命営業していたんですけどね…。
(水木)香苗が見込んでお願いした先生ですからもちろん信頼しております。
先生のお力に見合った報酬は私のほうでご用意させて頂きます。
伊丹先生どうか先生のお力で島岡の事なんとか助けてやってください。
最善を尽くします。
それと先日証人として立った石田真理子さんの事なんですが…。
横領の件ですね…。
そうです。
島岡の報告を受けてこちらでも調べてみたんですがそういう事実は一切ありませんでした。
(山川)彼が何か勘違いしているとしか思えませんが…。
不倫の事については…?いや…島岡に限ってそんな事はないと思いますがね。
香苗どうなんだ?そこら辺は…。
主人に限って絶対にそんな事はありません。
そんな事してたら隠し通せるような人じゃありませんし…。
(水木)そうだな。
あの男に限って不倫はしないな。
亡くなった母です。
(水木)私10年前まで自分で別の金融業をやっておりました。
貸し付けていた町工場の社長夫婦が心中を図ったんです。
遺書にはうちの厳しい取り立てに耐えきれずに死を選んだと書いてありました。
(水木)当時はマスコミに叩かれました。
徹底的に。
私は叩かれても仕方ありません。
しかし会社と関係のない女房のほうは私よりかすっかり参ってしまいまして…。
私が…殺したようなもんです。
(和美)おかえりなさい。
いやあ…参ったな。
(和美)どうしたんですか?検察側が今になって新しい証拠を出してきたの。
えっ?
(ため息)島岡さん。
新しい証拠の事は気にしないで打ち合わせどおり冷静に質問に答えてください。
(金沢)前回あなたはこう証言しました。
石田真理子さんはあなたに横領を告発されたためその仕返しとしてありもしない事実を証言したと。
(島岡)はい。
(金沢)石田さんが横領したと言うのならその手口を説明してください。
(島岡)正確な日付は忘れましたが会社の経理から東京・大阪間の新幹線回数券80枚分の請求書がきていると…。
(裁判長)被告人はもっと大きな声で答えてください。
東京・大阪間の新幹線の回数券80枚分の請求書がきていると営業部に問い合わせがあったんです。
いくらなんでも数が多すぎるし回数券の現物が営業部にはなかったのでいつも旅行代理店に発注している石田君に確認したんです。
そうしたら自分は発注してないって。
それでおかしいと思ったんです。
恐らく発注した回数券をチケット屋に持ち込んで換金したんだと思い…石田君を問いただしました。
そうしたらどうでした?そんな…事はしていないと白を切られました。
モニターを見てください。
(金沢)これは資産運用部が東京・大阪間の新幹線回数券80枚分を発注した事を示す書類です。
(金沢)発注していたのはあなたが部長をしていた営業部ではなく資産運用部だったんです。
旅行代理店が請求書の宛名を間違えていたわけです。
つまり石田真理子さんが横領していたというのはあなたのまったくの思い違いだったわけです。
質問を変えます。
被告人は被害者汐田早紀さんと不倫関係にありましたね?不倫なんかしていません。
(金沢)もう一度聞きます。
あなたは被害者と不倫関係にありましたね?不倫なんかしてないって言ってるでしょ!
(金沢)モニターを見てください。
(金沢)1年前被害者汐田早紀さんは人工妊娠中絶手術を行っていました。
これはその時の中絶同意書です。
(金沢)この同意書のパートナーの欄に署名捺印をしたのは誰ですか?
(金沢)島岡達也。
つまり被告人あなたですよね?
(金沢)質問を終わります。

(すすり泣き)
(水木)香苗。
一緒に帰ろう。
汐田早紀さんと1年前は不倫関係にあった事は認めるんですね?
(島岡)認めます。
その関係はいつまで続きましたか?
(島岡)1年前のほんの短い間だけです。
ここ最近はそういう関係にはなかったというわけですね?
(島岡)まったくありませんでした。
完全に上司と部下の関係に戻っていました。
事件が起こった時点で汐田早紀さんと不倫の事で揉めていたという事はなかったという事ですね?はい。
そういう事は一切ありませんでした。
裁判員…特に女性は完全に敵に回しちゃいましたね。
裁判員の顔が判決に見えたわ。
(ため息)
(ため息)島岡さん私を見てください。
島岡さん!私には絶対に嘘はつかないでくださいと言いましたよね?すみませんでした。
これからは絶対に嘘はつきません。
約束ですよ。
約束します。
ですから先生僕を見捨てないでください。
頼れるのはもう先生しかいないんです!そんな事ありませんよ。
奥さんだって…。
妻を裏切ったんですから仕方ありません。
自業自得です。
汐田早紀さんの事を黙っていたのは奥さんに知られたくなかったからですか?
(島岡)妻は4年前から不妊治療を受けているんです。
妻が大変な思いをしてるのにましてやなかなか妊娠出来ないのに…。
外でそんな事をしていた事が知れたら…。
そういう思いがあるんならどうして汐田さんとそういう関係になってしまったんですか?彼女がストーカー被害に遭っているって僕に相談してきたのがきっかけで…。
ストーカー被害?
(島岡の声)被害らしい被害はなかったんです。
ただ…彼女がいつも誰かに尾行されているような気がするってすごく不安がっていて…。
そのストーカーが今回汐田さんを襲ったとは考えられませんか?ごく最近まで尾行されていたんでしょう?
(島岡)あ…いえ。
最近はストーカーの事は言っていませんでした。
彼女が怖がっていたのは1年前です。
(加瀬)僕は島岡さんの供述をまったく信用出来ません。
石田真理子が横領していたという事実もなかった。
牧野春樹が偽証しているという根拠も示せない。
大体島岡さんが見たという男は防犯カメラにまったく映っていないんですよ。
伊丹先生のストーカー説にしたってとにかく誰も映っていないんですから。
これでどうやって信じろって言うんですか?
(和美)うん確かにそうね。
でも法廷でもそれくらい弁舌が冴えるとよろしいわね加瀬先生。
(加瀬)冴えてるじゃないですかいつも。
汐田早紀とはやはり不倫関係で揉めてたんですよ。
それが原因だから奥さんや義理の父親の手前殺害も認められないんじゃないですか?いや確かに不倫については奥さんの手前嘘をついていたと認めたよ。
しかし…それ以外の事も嘘なのかねえ。
先生は証人が2人とも偽証しているって思われてるわけですか?それこそあり得ないんじゃないですか?うん…。
証言した石田真理子も牧野春樹も島岡さんの部下だった事とは関係ないかしら。
(加瀬)どういう意味?イネスタAMという会社自体に何か問題がある可能性よ。
(加瀬)会社自体の問題って?イネスタAMという会社について調べてみましょう。
島岡さんについても何か新しい事がわかるかもしれないわ。
いや調べたいんだけどねうちにはその調査員に払うだけの費用が…。
(和美)ございません!私たちイソベンがやります。
ね!加瀬先生。
僕も?えっ駄目駄目!加瀬先生は大事な裁判抱えてるんだから。
(加瀬)いい加減調査員雇ってもらおうよ。
先生いいから早く!女性は加瀬先生男性は私ね。
はい!
(加瀬)はいはい。
(男性)このあと一緒に飲みに行くか。
(佐山一平)いや明日があるんで…すいません。
(男性)なんだよ〜。
付き合い悪いなあ。
一番若いの。
わかった。
(佐山)お疲れさまでした。
(男性)お疲れ。
すみません。
(佐山)本当に弁護士なんだ。
こんなかわいい弁護士さんがいるとはね。
島岡さんって佐山さんから見てどんな人?信用出来る人?信用は出来る。
いい人である事は間違いない。
あっだけど仕事は出来ない。
そう…。
汐田早紀さんとは会社でも噂になってたの?噂にはなってなかったかな。
まったく?もっと聞きたかったらメアド教えて。
いいわよ。

(佐山)ねえ君…付き合ってる人いるの?う〜ん…。
うわ…意味深。
支社長だ。
一緒にいるのがさっき言ってた山川部長だよ。
右の人。
(佐山)うちの会社は山川さんでもってるようなものだから。
どうして?
(佐山)支社長がイネスタを興す時大手証券会社から引き抜いてきたらしいんだ山川さんの事。
有能な証券マンだったんだ。
(佐山)山川さんの資産運用の実績がなかったらイネスタの日本支社になんてなれなかったよ。
(佐山)場所変えようか。
近くにおいしい店があるんだけど…。
またの楽しみにしておく。
メルシー!ちょっと…!ん?これは…。
21時50分通用口から被害者汐田早紀さんが下りてきます。
証人が定時巡回をしたのは22時2分。
その3分後に今回の事件は起こりました。
22時5分通用口から島岡さんが入っていきます。
同時刻残念ながら第1出入り口の防犯カメラには逃げていく真犯人の姿は映っていませんでした。
22時6分牧野春樹さんが入っていきます。
そこで殺害現場を目撃し22時7分に出ていきます。
これが犯行時刻前後の駐車場の人の出入りの全てです。
次は22時10分の映像を見て頂きます。
右隅に小さく映っているパイロンに注目してください。
このままパイロンを見ていてください。
不思議な事が起こりますよ。
2つあるパイロンの1つが突然ずれたのがおわかりですか?もう一度見てみましょう。
戸崎さんこれはどういう事でしょう?質問の意味が…わかりません。
戸崎さんあなたは事件当日の映像を10分間事件前日の映像と入れ替えたんじゃないんですか?まさか…そんな事はしていません。
あなたは4年前電子計算機損壊等業務妨害罪で逮捕されましたね?はい。
あなたがかつて勤務していた会社のホストコンピューターをハッキングしてホームページを書き換えたからです。
そんな事が出来るあなたなら防犯カメラの映像を差し替えるなんて簡単な事じゃないですか?
(金沢)異議あり。
弁護人の尋問は推測であり証人の名誉を害するものであります。
(裁判長)異議を認めます。
ただし証人は弁護人が今言ったような映像の差し替えをしていたんでしょうか?答えられるなら答えてください。
(裁判長)答えられませんか?…差し替えました。
(裁判長)どうして差し替えたんですか?巡回を時々さぼってました。
だからそれがバレないように…。
(金沢)裁判長。
補充捜査の時間を頂きたいと思います。
いいですね?
(副裁判官)はい。
弁護人はいかがですか?然るべく。
さすが伊丹先生!もう惚れ惚れしちゃったわ。
おいおい何も出ませんよ。
やっぱりストーカーかしら?ひょっとしてさっき証言してた警備員?うーんどうかねえ。
そうよ。
だから映像を差し替えたのよ。
あっ金沢さん。
映像が入れ替えられていたのは本当は検察も気づいていたんじゃないんですか?補充捜査がありますので。
検察も気づいてたのに無視してたって事?捜査のプロが気づかないはずがない。
そうか。
誰も映ってない映像のほうが検察側が描いた犯人が島岡さんっていうシナリオには都合がいいものね。
うん。
(パトカーのサイレン)復元された映像なのにどうして誰も映ってないの?これが本当に事件当日の映像なの?検察のでっちあげの映像なんじゃない?それはないだろう。
やっぱりそんな男いなかったんじゃないんですかね。
(加瀬)島岡さんと被害者との痴情のもつれで…。
誰も映ってなかったからって戸崎という警備員がストーカーじゃないっていう事にはならないわ。
でもそれはそうだけど…。

(島崎)僕を見捨てないでください。
頼れるのはもう先生しかいないんです!私に手伝える事ありませんか?納得出来ないんでしょ?島岡さんがそこまでして嘘をつくような人には思えないんだよ。
依頼人をとことん信じる…か。
まあそこがお父さんのいいところなんだけどね。
あっ。
これちょっと見てくれ。
ここをよーく見てて。
何?今バーが揺れなかった?ほんのちょっとだけど。
そう動いてる。
動いた。
誰かがこのバーに触れたんじゃない?そう思う?そうよ。
もう1回見せて!これが防犯カメラの今の映像ですよね?
(六条稔)はい。
駐車場出入り口を拡大しましょうか?お願いします。
じゃあ外に出てみて。
はい。
ちょっとすいません。
ちょっと…。
今揺れましたよね?でも人は映りませんでしたね。
(六条)おかしいなあ。
前と映像が違う気がするんですよね。
カメラいじったのかなあ。
どうだ?
(鑑識係)複数の手袋痕があります。
比較的新しいものですね。
あんたが動かしたのか?違います。
本当に動かしてないんだな?
(戸崎)動かしてません。
何者かがこのカメラの角度を変えて出入り口に死角を作ったのは間違いありません。
いつカメラの角度が変えられたのか至急分析させてください。
わかりました。
ただカメラの角度を変えた人間がいたとしてそれが被害者を殺した人間という事にはなりませんよ。
わかってます。
島岡さんいい知らせです。
事件が起こる前々日の深夜何者かの手によって防犯カメラの角度が変えられている事がわかったんです。
本当ですか?ああよかった…。
先生ありがとうございます。
これでやっと僕の無実が証明出来ますね。
いや島岡さんそれはまだちょっと早い。
どうしてですか?カメラの角度を変えた人間が汐田さんを殺害したとは限らないからです。
そんな…!そいつ以外に誰がそんな事するっていうんですか?あの男以外考えられません!聞いてください島岡さん。
だからその男の手がかりが欲しいんです。
前に言っていた汐田さんが困っていたストーカー。
そのストーカーに繋がる手がかりはありませんか?手がかりですか?どんな小さな事でもいいんです。
汐田さんがストーカーについて何か言ってませんでしたか?関係あるかどうか…。
なんですか?汐田君が最後…。
お…おくった…。
(島岡)え?
(早紀)おくった…。
「おくった」。
今考えるとそう呟いたような気がします。
おくった?あなたに何か送った…っていう事ですね?メールとか手紙とか…汐田さんから何か送られてきませんでしたか?逮捕される前は何も…。
(水木)この鍵を預かっておいてくれ。
なんの鍵?お前の名義でトランクルームを借りた。
そこにお母さんが大切にしていたお茶道具を移した。
トランクルームに?どうして?この家が差し押さえになるかもしれないんだ。
その前にと思ってな。
会社危ないの?いやお前が心配する事はない。
とにかくこれを預かっておいてくれ。
(チャイム)奥さん思い出して頂けませんか?汐田早紀さんからご主人宛てに何か送られてきていませんか?奥さんのお気持ちはわかります。
ただ1年前の汐田さんの事ではご主人も深く反省されておられます。
お帰りください。
あの人の事なんかもう考えたくもないんです。
香苗。
伊丹先生に失礼だろう。
自分の苛立ちを先生にぶつけるのは筋違いだ。
今すぐ島岡を許せとは言わない。
ただこれ以上先生を困らせる事だけはやめなさい。
申し訳ありませんでした。
汐田さんから主人宛てに送られてきたようなものはありません。
そうですか。
ただ私宛てに…。
(香苗)第一回公判のあとに送られてきました。
その時はまだ主人の事を信じてましたから。
なんかの嫌がらせだろうって気にも留めてなかったんですけど。
差出人の心当たりは?ありません。

(島岡)みんな会社で撮られたものです。
いつ誰に撮られたか心当たりは?わかりません。
あの…これストーカーの証拠になりませんか?あっ!どうしたの?先生!ここにカレンダーが写ってます!ほらここです。
12年の3月…。
ほぼ1年前ですね。
そうだね。
ストーカーは1年前にイネスタAMの社内にいた人間!これで決まりです!いや警備員だって見回りで入れますよ。
1年前に撮った写真をなんで今頃送りつけてきたのかな?
(メールの着信音)会社にはタイプの女性はいないの?
(佐山)いないいない。
うちの会社は駄目。
飲んでないじゃない。
裁判で証言してた石田真理子さんなんてきれいじゃない。
彼女は派手で浪費家タイプ。
ああいう女最悪。
僕にまで借金してたんだから。
へえいくらぐらい?10万。
だけど最近は金回りがいいらしくて利子付けて返してくれたけどね。
亡くなられた汐田早紀さんは?死んじゃった人の事を言うのもなんだけど彼女ビジュアルはいいんだけど真面目で堅物タイプ。
仕事じゃこれまた堅物の陰気男と組んで営業回ってたんだけどあのペアで営業回らせちゃ駄目だよ。
誰?組んでた人って。
加瀬君いいかい?はい。
スタート。
ちょうど1分だ。
可能ですね。
お休みのところ申し訳ありません。
出かけるんで手短にお願いします。
大事な話があるんでちょっと上がらせてください。
すいません。
ちょっと…散らかってるから…。
いいんです。
(加瀬)失礼します。
なんなんですか?1年前まで汐田さんと組んで営業に回っていたそうですね。
しかし上司の島岡さんはあなた方ペアを解消した。
ちょうどその頃からなんです。
汐田さんがストーカーに怯えるようになったのは。
汐田さんをストーカーしていたのはあなたですね?まさか…!違いますよ。
(加瀬)この写真あなたが撮って島岡さんの奥さんに送りつけたんじゃないですか?違いますよ…。
写真だけじゃない。
あなたはあの駐車場で汐田早紀さんを殺害したんじゃないですか?しかもその罪を島岡さんに着せようとしたんじゃ…。
してない!そんな事してませんよ。
なら汐田さんが刺された時なぜ駐車場にいたんですか?車の中に忘れた資料を取りに行ったんですよ。
あなたは汐田さんを刺したあと防犯カメラに映らないようこのバーをすり抜けていったん外に出た。
そしてロビーを通って非常階段を降りてまたこの駐車場に戻ってきた。
違いますか?そんな事してないって言ってるでしょう!実際彼がやってみたんです。
時間にしてちょうど1分。
やってない!本当に殺したりしてませんよ!あっ…。
この写真はなんですか?や…やめてください。
ストーカーはしてました。
写真も撮りました。
だけど殺したりはしてませんよ!本当に殺してないんですか?殺してません。
僕が汐田さんを殺すわけないでしょう!じゃあどうして裁判であんな証言をしたんですか?こんな写真まで…。
僕の大事な汐田さんを島岡さんが殺したと思ったからです。
汐田さんを殺した奴の事絶対に許さない!ずっと汐田さんの事が好きだったんですか?好きでした…。
今でも好きですよ!ストーカー行為もずっと続けていたんですか?毎日気づかれないように見つめていただけですよ。
そうだとしたら何かに気づきませんでしたか?汐田さんが抱え込んでいたトラブルとか…。
山川さんとちょっとあったかな。
山川さん?山川です。
資産運用部長をしております。
(牧野の声)何度か見たんですよ。
汐田さんが山川さんに詰め寄っているところを。
部長!
(加瀬)イネスタAM日本支社の業務は団体の資産運用が中心です。
資産の運用を頼まれている団体が約150。
総額1000億円あまりを預かっているようです。
1000億!この横浜みなと商店街連合会の場合商店主から集めた資産をイネスタAMに預けて運用してもらいそれを将来退職金代わりに受け取るわけです。
そこの営業担当者が汐田さんだったわけ?そう。
牧野の話だとここ2年利益が出た時に付く中間配当金がここにはまったく出てなかったらしい。
(牧野)頼んだほうとしては資産運用がうまくいってないんじゃないかって不安になりますから当然解約も考えます。
だから汐田さんとしては資産運用を任されている山川さんに確認したわけですよ。
(牧野の声)だけど山川さん資産運用はうまくいってるって言うだけでまともに取り合ってくれないんですよ。
汐田さんがあれだけ真剣に訴えているのにですよ!そういえば山川って人この前見かけたわ。
一緒にいるのがさっき言ってた山川部長だよ。
(佐山)右の人。
どこで見かけたの?デートの最中です。
デート!?調査員またやりますか?また僕も?
(和美)当然です。
えーと…。
あっここですね。
おかえりなさい。
ご苦労さん。
(加瀬)ただいま。
(和子)早かったですね。
どうだった?トラブルは解決済みでした。
(加瀬)山川自ら配当報告書を持って事務局まで説明に来たそうです。
利益が出ていたって事か?はい。
実際2年ぶりに中間配当金も振り込まれたそうです。
それはいつ?汐田さんの事件が起こる前です。
そう…。
(電話)やっぱりあのストーカー男が汐田さんを殺したんじゃないんですかね?伊丹先生島岡香苗さんからお電話です。
伊丹です。
すみません忘れていた事があるんですけど…。
あなたが逮捕された翌日自宅に届いたそうです。
残念ながら差出人は汐田さんじゃありません。
この中にこのUSBメモリーだけが入っていました。
このメモリーのデータを印刷したのが…これです。
このデータが何を意味しているかわかりますか?会社でちょっと調べてもらっていた事があって。
そのデータです。
差出人の木佐っていう人は?金融関係の調査をやっている人です。
事件にはまったく関係のないものですか?事件とは関係ありません。
事件とは関係ありません。

(メールの着信音)10万。
だけど最近は金回りがいいらしくて利子付けて返してくれたけどね。
ごめんなさい。
大事な事言い忘れてました。
ん?最近お金に余裕があるそうですね。
どこから入ってきたお金ですか?そんな事弁護士さんに関係ないと思いますけど。
調べればわかるんですよ。
何が言いたいんですか?偽証罪の量刑って知ってますよね?案外重いんです。
三月以上で十年以下の懲役刑です。
あなたこの前偽証しませんでしたか?早紀さんは島岡さんと別れたがっていたんですけど島岡さんのほうが別れてくれないって彼女困っていました。
横領を帳消しにする代わりに島岡さんの裁判で偽証するように誰かに求められたんじゃ…。
してません!横領もしてませんから。
変な事言わないでください。
(加瀬)つまり先生はイネスタAMが会社ぐるみで石田真理子の横領を隠蔽したって考えているわけですか?会社ぐるみなのか一部の人間なのかそこまではわからない。
横領を帳消しする代わりに裁判で偽証しろ…。
なんのためにですか?横領なんかよりもっと重大な会社の不正を隠蔽するため?うん。
そんな気がするんだ。
誰かが陰で動いている事だけは間違いない。
現に防犯カメラは動かされているわけだからな。
木佐武…木佐武…。
木佐…。
武…。
「キサタケシ」反対から読めば「シケタサキ」…汐田早紀。
この住所も調べさせてもらいました。
汐田早紀さんのマンションでした。
あなたは気づいていましたね。
このデータの意味を。
あなたはこのデータを見て会社のなんらかの秘密を知ってしまった。
恐らく重大な不正を…。
そうですよね?あなたはこのデータから汐田早紀さんが殺害された理由も知ってしまった。
先生…これ以上僕を追い詰めないでください。
お願いします。
お願いします…。
島岡さん私を見てください。
島岡さん!私はあなたを追い詰めるつもりなんてありませんよ。
力になりたいと思っているだけです。
だったらほっといてください。
このとおりです。
申し訳ないがそうはいかない。
僕がいいって言ってるんですよ!ほっといてくださいよ!奥さんを気遣ってるんでしょう?イネスタAM社の支社長は…奥さんの実の父親だ。
そこまで察しているなら本当にもう…。
これ以上妻を傷つけたくないんです。
ご主人は会社の秘密を守るために犯してもいない罪をかぶるつもりです。
一度ご主人と面会して頂けませんか?あなたと会えばきっとご主人も考え直してくれると思います。
奥さん?あの人の事信じられません。
わざわざご苦労さまでした。
(ため息)あの…。
ご主人が会社を辞めようとした理由なんですが奥さんはどう思っていますか?本当に小説家になりたくて辞めようとしたと思っていますか?きっと殺された女性と揉めて居づらくなったんですよ。
本心からそう思っていますか?ご主人は以前から会社の重大な秘密に気づいていた。
しかしその事を告発するわけにはいかない。
だから苦しくなって会社を辞めるしかないと…。
ご主人の性格からしてそうは考えられませんか?ご苦労さまでした。

(和美)伊丹先生。
本当にすまなかった。
あなたの事信じます。
香苗…。
だから裁判で本当の事を話して。
父の会社の事も。
伊丹先生から聞いたわ。
話さないとあなたの無実は証明出来ないんでしょう?私の事気遣ってくれるのは嬉しいけどあなたがこのまま罪をかぶるなんて私には耐えられない。
早く元の生活に戻りたいの。
あなたと一緒に暮らしたいの。
お願いだから本当の事を話して。
本当の事を話したらお義父さんは破滅する。
それでもいいのか?
(蒲田徳三)おやじちょいとお出かけ。
(児島)あいよ。
ヘヘヘ…。
よいしょ。
奥さんがかわいそうだわ。
お父さんか旦那さんか…そんな選択。
織枝があの奥さんの立場だったらどうする?私だったらもちろんお父さん…。
じゃなくて愛する旦那さんを救うわ。
もちろん旦那様か…。
もしお父さんが悪い事しててよ?娘の私にかばわれて嬉しい?娘にかばわれたりしたら父親ってかえって傷つくんじゃない?うーん…。
なんとか島岡さんだけでも無実の証明が出来ないかな?私たちで真犯人を見つければいいのよ。
おいおい威勢がいいね。
(蒲田)おやじ!
(児島)はい。
俺の退職祝いここでやっていいかな?ああいいよ。
貸し切りにしちゃうかい?貸し切り。
いいね!おじさん1本。
あいよ。
どうです?ひとつ。
ああすいませんどうも。
娘さん?ええ。
いいなあ親子で…。
どうぞどうぞ。
あっいただきます。
退職なさるんですか?ええあとひと月。
ああやっとだ。
ご苦労さまです。
ああそうだ。
来てよ退職祝い。
ハハッ。
金は心配いらないよ。
退職金が出るから。
旦那のとこ退職金出るの?本当は出ない。
なんだい。
でもな組合のほうに少しずつ預けてそれがちょこっと増えて戻ってくるんだよ。
だからおかげで母ちゃんと温泉に行ける。
子供たちも働けるようになったし母ちゃんには苦労をかけたなあ。
でもな少しずつためててよかった。
あっおやじ。
(児島)えっ?おやじもな今からためてたほうがいいよ。
(児島)ん?退職金!
(児島)あっそう。
うん。
どうぞ。
(蒲田)すいません。
退職金か…。
私知ってます。
お父さんの会社の事。
もう本当の事話して!さっきから何を言ってるんだ?島岡が言うの。
汐田さんは会社の不正を知ってしまったから殺されたんだって。
だから自分の無実を証明するためには会社の不正を告発しないといけないんだって。
会社で不正なんかやっていない。
そういう事はもうしないとお前に約束したはずだ。
したわ。
だからお父さんを信じたいの。
でも島岡はそう言うのよ。
それにこの前お父さん言ったでしょ?この家が差し押さえになるかもしれないって。
どっちを信じるんだ?島岡と私と。
2人とも信じたいわよ!2人とも大事な人だから。
でも人が一人殺されてるのよ!どっちかが嘘を言ってるとしか思えない!お前にはかわいそうだが島岡君は不倫の果てに汐田君を殺してしまったんだよ。
会社に不正なんかないってお母さんに誓える?ああ誓えるよ。

(汽笛)10年前まで父の事は本当に大嫌いでした。
仕事でも家庭でもそれはひどい人でした。
この前父言ってましたよね。
私が…殺したようなもんです。
本当にそうなんです。
母は…自殺したんです。
(香苗)きっかけは例の町工場の社長ご夫婦の心中事件だったんですけどその前から精神を病んでいて…。
それだって父のせいです。
母が亡くなってから私も精神を病みました。
そんな時私の支えになってくれたのが結婚する前の主人だったんです。
出版社で出会われたそうですね?主人がいなかったら私も母の後を追っていたと思います。
主人は私と結婚するために小説家になる夢も諦めてくれました。
伊丹先生がおっしゃるように突然会社を辞めると言い出したのも自分の夢のためなんかじゃないと思います。
ご主人小説家になる夢を諦めてよく金融の仕事に就いてくれましたね。
父が私たちの結婚を許す条件が父の会社に入る事だったんです。
だから主人に対しては申し訳ない気持ちと感謝の気持ちでいっぱいです。
(香苗)その代わり母の事もありましたから父も心を入れ替えて生まれ変わるって私に誓ってくれました。
でも今また父の事が信じられなくなってるんです。
先生どうしたらいいんでしょうか?難しいですね…。
私だったら父親に少しでもやましいところがあると思ったら告発します。
そうしなかったら娘としていつまでも自立出来ないと思うんです。
例え対決する事になっても。
ごめんなさい生意気な事言って。
そうですよね。
織枝先生のおっしゃるとおりです。
実は…。
何か?香苗さん?実はこの前私のマンションに山川さんが訪ねていらっしゃったんです。
山川さんが?なんのために?
(香苗の声)私が父から預かったものを確認するためにいらしたんだと思います。
お父さんから何か預かったんですか?父からは生前母が大切にしていたお茶の道具を預けたと聞かされてましたがまったく別のものでした。
奥さんが訪ねて来てくれましたよ。

(すすり泣く声)香苗さん遅いわね。
ちょっと見てきましょうか。
大丈夫。
来た!
(山川)宣誓。
良心に従って真実を述べ何事も隠さず偽りを述べない事を誓います。
証人山川公之。
山川さん表1はどういうものか説明してください。
横浜みなと商店街連合会への配当報告書です。
つまりイネスタAM社が横浜みなと商店街連合会から資産を預かりそれを資産運用部長であるあなたが運用し利益が出たので今期は配当金がこれだけ出ましたよと報告したそういうものですか?そうです。
表2はなんの数表ですか?わかりません。
本当にわかりませんか?表2は汐田早紀さんが殺害される直前に島岡さんに送っていたものです。
(金沢)異議あり!弁護人は公判に関連性のない質問を続けています。
(裁判長)異議を認めます。
弁護人は裁判員の皆さんにもわかるように質問の趣旨を明らかにしてください。
弁護人はこれから行う証人尋問において被害者汐田早紀さんがなぜ誰によって殺害されたのかを明らかにしここにいる島岡達也さんの無罪を立証していくつもりです。
どうか質問を続けさせてください。
いいですかね?はい。
弁護人は質問を続けてください。
もう一度山川さんに聞きます。
表2は何か本当にわかりませんか?わかりません。
島岡さん表2について説明してください。
横浜みなと商店街連合会へ提出された配当報告書それの…書き換えられる前のものです。
表2は改ざん前の報告書表1は改ざん後の報告書という事ですか?そうです。
改ざんされた箇所決算を加えた詳細を用意しました。
島岡さん説明してください。
表2を見るとお預かりした資産約10億円の大部分が消失している事がわかります。
それなのに表1では4億5000万円の利益が出ているように数字が書き換えられています。
資産運用に失敗したにもかかわらずその事を隠しあたかも利益が出たかのように見せかけた嘘の報告書を作成したそういう事ですか?そうです。
改めて聞きます。
あなたは汐田早紀さんを殺害しましたか?いえ殺していません。
ではどうして汐田早紀さんは殺されたと思いますか?汐田君は横浜みなと商店街連合会の営業担当をしていました。
山川部長から出された配当報告書の数字に疑問を持ち調べていたんです。
調べていた事はあなたも知っていましたか?知っていました。
この配当報告書を見てください。
(島岡の声)汐田君から相談されました。
しかしそんな事はしないほうがいいとその時は言いました。
だけど人一倍正義感の強い汐田君は1人で調べ続けていたんだと思います。
事件が起こった晩あなたは汐田さんと待ち合わせをしていましたね?はい。
その時も汐田さんはこの事についてあなたに相談しようとしていたんですか?それはわかりません。
ただ会ってほしいと言われた時多分この話じゃないかって思いました。
だから本当は彼女と会いたくなかったんです。
だけど会わないのも良心がとがめて結局約束の時間に遅れて行きました。
もしも…もしも僕が時間どおりに行っていたら汐田君が殺される事はなかったと思います。
いえ…殺されなかった!会社に退職願を出したのも汐田君の目が怖かったからです。
不正を知っているのに知らんぷりして働いている自分の事を汐田君がどんな目で見ているかと思うと怖くて会社にいられませんでした。
僕は逃げたんです。
そのせいで汐田君は…。
僕は汐田君をナイフで刺してはいません。
だけど…見殺しにしたんです。
あなたは預かった資産の運用に失敗した。
それは認めますか?確かに失敗しました。
しかし…投資をしていれば常にあり得る事です。
想定内のリスクです。
莫大な損失を隠すためにデータを改ざんしあたかも利益が出ているかのように見せかけた。
しかも出るはずのない中間配当金まで偽装して出した。
それも常にあり得る事ですか?データの改ざんをあなたは汐田早紀さんに突き止められた。
それがトラブルの原因となり揚げ句の果てに汐田早紀さんを殺害した。
事前に殺害現場である駐車場の防犯カメラの向きを変えておいた。
つまりあなたは計画的に汐田早紀さんを殺した。
違いますか?山川さん答えてください。
黙秘します。
(裁判長)弁護側証人島岡香苗さん入廷してください。
最近あなたはお父さんから何か預かりましたか?はい。
何を預かったか教えて頂けませんか?金塊を預かりました。
それがこれですね?時価にして約17億円の価値があります。
(男性)ええっ17億だって!?すごいなあ…。
この金塊がどういうものかあなたは知らされていますか?いえ…父からは私の名義でトランクルームを借りて母のお茶の道具を預けたと聞いていました。
弁護人は証人の勇気ある証言に感謝します。
尋問を終わります。
あなたは最近島岡香苗さんの自宅を訪ねましたね?目的はなんでしたか?あなたは水木支社長が本当にこの金塊を香苗さん名義のトランクルームに預けたか確かめに行ったんじゃないんですか?一般に金塊は「資産の保険」とも言われます。
資産価値を失うリスクが極めて小さくいつどこでも換金出来る。
しかも隠しやすい。
この金塊はどういったものですか?答えられないほどやましいものなんですか?この金塊は顧客の資産から抜き取ったもの…。
つまりあなたが横領したものなんじゃないんですか?資産の運用に大きく失敗したあなたはせめて最後は自分の金は残しておきたい。
そこで思いついたのが横領した資産を金塊として残しておく事。
あなたは大勢の人に損をさせておいて自分だけ助かろうとしたんだ。
あなたは実にずるい人だ。
違う!何が違うんです?確かに投資に失敗したのは私のミスだ。
それは認める!でもあの金塊は…。
「あの金塊は」なんですか?答えてください!し…支社長が…。
あなたではなく水木支社長が用意した金塊なんですね?あなたが確保したものでないのならなんのために用意された金塊かきちんと説明してください。
山川さん!
(山川)言えません。
この金塊はあなたに対する報酬なんじゃないんですか?今回の事件の隠蔽データの改ざん汐田早紀さんの殺害それら全ての罪をあなた一人でかぶるための報酬です。
しかしもはやこの金塊はあなたの報酬にはなり得ない。
なぜならイネスタAM社は莫大な損失を出している。
あなたはそれを隠蔽しさらに虚偽の報告書を作成して顧客に提示した。
それは横領罪さらには詐欺罪にも問われるでしょう。
となれば損害賠償の原資としてこの金塊も全て差し押さえられてしまう。
つまりあなたが水木支社長をかばうメリットはもはやどこにも存在しない。
となれば真実を全て告白し裁判で情状酌量を求めたほうがいい。
そしてきちんと罪を償うんです。
亡くなった汐田早紀さんのためにも。
山川さん。
弁護士さんのおっしゃるとおりです。
私が汐田君を殺しました。
(山川)水木支社長の指示で…。
データの改ざんを汐田さんに知られましたね?そうです。
このまま不正を隠蔽するつもりなら私告発します!待ってくれ!考えさせてくれ汐田君。
(水木)損失を公表しろだと?ふざけるな!お前がしくじったんだぞ。
殺してでもデータを取り戻せ!いいな?水木支社長から汐田さんを殺してでも改ざん前のデータを取り戻せと命じられましたね?はい。
キャーッ!
(刺す音)
(島岡)どうかしましたか?しかもあなたは島岡さんを犯人に仕立てるために石田真理子さんに偽証までさせた。
島岡君と汐田君は不倫関係で揉めてたんだ。
いいね?あの…新幹線の回数券の事は…。
ああ…あれ私が発注したんだよ私が。
えっ?島岡君と汐田君は不倫関係で揉めてたんだ。
わかったね?はい…。
どうしてそこまでやったんですか?保身ですか?会社を守るためですか?水木支社長への忠誠ですか?
(水木)もとはといえば君が自分でまいた種だ。
それを君が刈っただけの事だろ。
私に指示されてやったと言ったところで君の罪に変わりはない。
私に指示された事を黙っていれば出所後この金塊は君のものになる。
(水木)どっちが得か考えてみたまえ。
この金塊はあなたが全ての罪をかぶり水木支社長の事は一切口外しないための報酬だった。
そうなんですね?おっしゃるとおりです…。
山川さんの証言を聞いてどう思いましたか?
(ため息)山川は私に罪を着せようとしております。
私はそのような指示をした覚えはございません。
嘘だ…嘘を言うな!
(裁判長)傍聴人は静粛に!支社長言ったじゃないですか!殺してでも…汐田君殺してでもデータ取り戻せって…。
(裁判長)傍聴人は退廷しなさい!
(山川)言ったんだよ!おい!言ったじゃないか!嘘を言うなよ!
(山川)言ったんだよ!
(ドアの閉まる音)水木さんあなたは見た事がありますか?いつか退職の日を迎え何十年もかけてコツコツためたわずかなお金でささやかだが幸せな日々を夢見る人たちの顔を。
あなたがやるべき仕事は預かったお金をただ増やすだけではなく彼らのささやかな幸せを守ってあげる事だった。
しかしあなたには数字しか目に入らなかった。
いや彼らの心の内を見ようともしなかった。
山川が資産運用に失敗して大きな損失を出してしまった事は認めます。
しかしそれはたまたまうまくいかなかっただけの事です。
いい時もあれば悪い時もある。
投資というのはそういうものなんですよ。
どうして損失を明らかにしなかったんですか?金融マンの自負とでも言うんでしょうか?すぐには言い出せなかったんです。
それは顧客をだます事になりませんか?すいませんでした。
誰にでも魔が差す時があるものです。
この金塊は元々あなたの隠し財産だった。
とんでもない!あれは損失を取り戻すための元手ですよ。
損失を隠蔽するためにデータを改ざんしろと山川さんに指示しましたね?
(水木)そんな事はしておりません。
汐田さんを殺してでももとのデータを取り戻せと山川さんに命じましたね?そんな事命じるわけがないでしょう。
つまりあなたは山川さんに汐田早紀さんの殺害を実行させた。
それは殺人の共謀共同正犯になります。
この罪は極めて重い。
そんな事はしていないと言ってるでしょ。
言いがかりはやめて頂きたい!あなたは何も悪い事はしていないと言うんですか?そうです。
私は何も悪い事はしておりません。
もう一度聞きます。
先ほどこの金塊は損失を取り戻すための元手だとおっしゃいましたね?それに間違いありませんか?間違いございません。
だったらなぜ娘さんに嘘をついたんですか?奥さんが大切にしていたお茶の道具などと。
それはあなたにやましい気持ちがあったからだ。
やましい気持ちが嘘をつかせた。
その嘘がどれだけの多くの人たちを傷つけたかあなたにわかりますか?この10年あなたの事を懸命に信じようとしてきた娘さんの思いを裏切った。
あなたに誠を尽くして亡くなった奥さんをも利用した。
人にとって一番大切なものは何か…あなたが全てを失う前に気づいてあげてください。
終わります。

(香苗)お父さん!お父さん!お父さん待って!これから警察に…。
お父さん…。
水木啓吾さんですね?恐れ入りますが署までご同行願います。
本当につらい証言をさせてしまいました。
…いいんです。
これでやっと父から自立出来ます。

(裁判長)主文。
被告人は無罪。
淡路島!?はい。
僕のふるさとなんです。
淡路島で小説家目指すんですか?いえ実家のオレンジ農家を継ぎます。
オレンジ待ってます。
はい。
伊丹先生。
先生に弁護をお願いして本当によかったと思っています。
先生にお願いしていなかったらどうなっていたか…。
本当にありがとうございました。
お力になれてよかった。
この裁判を乗り越えられたのはご主人と奥さんの思いが一つになったからです。
大丈夫!元気でいってらっしゃい。
(2人)いってきます。
いってらっしゃい。
2015/05/30(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「事件16」[デ][解][字]

はめられた男!不倫相手の女性を殺した!?カメラに映らない逃亡者の謎・妻の証言で逆転法廷に!

詳細情報
◇番組内容
北大路欣也が正義感あふれる弁護士を演じる人気シリーズ第16弾!不倫相手を殺害!?動機あり凶器あり、99%有罪の男…。弁護士・伊丹は逆転無罪を勝ち取ることができるのか!?
◇出演者
北大路欣也、滝藤賢一、雛形あきこ、神山繁、中原丈雄、山田まりや、神保悟志、近藤公園、山下容莉枝、山下徹大、松本莉緒、高橋元太郎
◇スタッフ
【脚本】田子明弘
【音楽】福井弘武
【監督】池添博
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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